碧南市藤井達吉現代美術館「画家たちの二十歳の原点」展 [美術]
9月4日(日)、碧南市藤井達吉現代美術館の
「画家たちの二十歳の原点」展へ行きました。
先月、佐川美術館へ行った時にこのチラシを見て、
へーー、いい展覧会やってるじゃないって思ったんです。
今は「二十歳の原点」と言われても、
高野悦子さんのベストセラー本を知らない人も多いんでしょうね。
私は学生運動には遅れた世代ですが、当時話題のこの本は読みました。
学生運動が過激派やリンチ事件などで挫折をしていくのを見ていて、
怖いという気持ちと、すこし上の世代が社会について議論をするのを
憧れのような気持ちも抱いておりました。
二十歳というのは、日本では今も当時も成人の年ですが、
当時、二十歳になるということは、すごく大人になったというか、
年取ったというカンジがしていました。
でも自分が二十歳になってみると、相変わらず迷ってばかりだし、
(これは五十代になった今も変わりませんね。
昔の五十代はすごく年寄りでしっかりしていたように思うのに、
今の私の体たらくは何なんだろうって)
世間から大人だと言われるのに、自立もできていない。
何かすごいことができるんじゃないかという根拠のない自信と、
将来はどうするのか、どうなるのかという不安‥‥
自分の二十歳頃を思い出すと、懐かしさと恥ずかしさというか‥‥
甘酸っぱいような気分になります。
多分、多くの二十歳が同じような問題で悩んだでしょうね。
そんな揺れ動く二十歳の頃に描かれた絵を集めた展覧会です。
(54作家の約120点が展示されています)
チラシ裏面の展覧会の主旨の文章が素敵です。
人生においてもっとも多感でナイーヴな十代の最終章、二十歳という象徴的な時期は、多くの芸術家にとって表現の原点であり、出発点にも位置づけられます。この時期、未熟と成熟とが葛藤しつつ、世界との関係の中で客観的な自己の形をつくり始めるのです。
この文章というか、チラシがとても素敵だったんですよね。
裏面の草間彌生の作品、水玉の原点ねーって。
で、わー、碧南市藤井達吉現代美術館、わりと最近できたんです(2008年)よね。
気になった展覧会があって調べたりしたことがあったんですが、
まだ行ったことはなかったので行ってみたいって。
でも、勢い込んで友人に話したら、
「二十歳の頃の油絵なんて、ヘタじゃない?
やっぱ画家はある程度歳とってからの作品の方がいいわよ」って、
あっ、そういう見方もあるわね‥‥
で、行こうかどうしようかちょっと迷っておりましたが、
4日(日)のNHK日曜美術館で取り上げられておりまして、
見てたら「やっぱ行きたいー!でも日曜美術館見て来たって思われるの
ミーハーぽくて嫌だな」(実際そのとおりなんですが)って。
日曜美術館見終わってから遅い朝食食べて、洗濯とかしていたので、
出かけたのは12時過ぎになってしまったのですが、
6時まで開館しているってのは嬉しいです。
名鉄碧南駅までは、最寄の名鉄の駅から約2時間。
名鉄本線知立駅で、名鉄三河線に乗り換えて終点。
そこから美術館へは徒歩約6分です。
観覧料一般600円を払って二階へ。
明治期に青春期を過ごした黒田清輝、熊谷守一、青木繁‥‥そうそうたる作家が
並んでいます。
画家たちの二十歳頃の言葉と、経歴なども一緒に展示されているのがいいですね。
熊谷守一は後の独創的な作風とは全く違うアカデミックな裸婦だなぁ。
青木繁のロマンチックな雰囲気いいなぁ‥‥と見ていきました。
そして大正期
岸田劉生の自画像もいいですが、高島野十郎の《傷を負った自画像》
血を流しているからだけでなく、その痛々しい表情がすごく印象的でした。
関根正二の絵が何点かありましたが、いいですね。
夭折した画家の絵って、やはり何か感じるところがあるような気がします。
今まで知らなかった画家ですが、柳瀬正夢の鮮やかな色を使った
夢の中のような風景画、いいなぁって思いました。
戦没画学生の遺作を集めた美術館「無言館」を設立した野見山暁治の絵と
言葉、この時代に若き日を過ごした世代の痛ましさを思いました。
一階は二十歳を戦後に迎えた世代で、
色々なスタイルの絵が並んでいて、色々挑戦してますってカンジ。
最後の部屋は1951年以降に生まれた若い世代。
何と言っても部屋の真ん中に置かれた
会田誠の《通称:まんが屏風》がインパクト大です。
そして、私がこの展覧会で一番見たいと思っていた
石田徹也の《飛べなくなった人》この人物の何ともいえない哀しい表情が印象的です。
《燃料補給のような食事》は現代社会の寒々とした雰囲気があまりに
身に染みて、見てて痛々しいくらい。
不慮の事故で26歳で亡くなった野村昭嘉の不思議な世界も良かったし、
山口晃、上手いですね。
この展覧会、図録として制作されたのがこちらの本。
会場においてあるのを手に取ったら、つい読みふけってしまい、
定価3,000円+税のところ、会期中は2,700円で購入できるとのことで、
買ってしまいました。こういう形の図録っていいですね。
せっかく碧南市「藤井達吉」現代美術館へ来たのだからと、
地下の常設展示室へも行ってみました。
藤井達吉氏について私は全く知りませんで、
行く前に美術館のHPでやっと知ったというくらい。
碧南市生まれの美術工芸家(1881年~1964年)で、
官展に工芸部門を加えるための運動をするなど、
工芸の後進の育成などにも力を注いだ人だそうですね。
ただ、今展示されているのは、文人画のような掛け軸が多かったのですが、
私はあまり感心しなかったのですが‥‥
美術展の最後はやっぱりカフェですよね。
ここ、今朝の日曜美術館のアートシーンの収録をしたとこですね。
実は昼ごはんを食べてないので、かなりお腹が空いてたんですが、
もう閉館近いので、飲み物しかできませんということでした。
でも、ここはパン工房がやっているカフェで、美味しそうなパンがあったので、
一つ買ったら、スライスしてトーストまでしてもらえました。
しっかりした生地のパン。美味しかったです。
美術展に行くと、他の美術展のチラシやポスターがあって、
行きたい美術展が次々と出てきて困ってしまいます。
ここの次の企画展のチラシ。わーーすごく面白そう!
たしか先週のアートシーンでやってましたね。
高岡市美術館: http://www.e-tam.info/ で9月19日(月・祝)まで。
その後こちらへ巡回してくるんですね。
‥‥割引券ももらったし。10月4日(火)~11月13日(日)かー。
碧南市藤井達吉現代美術館のサイト:
http://www.city.hekinan.aichi.jp/tatsukichimuseum/
この後、美術館のまわりの町を歩いてみたんですが、
レトロな町並みがとても私好みでした。そのことは次の記事で。
「画家たちの二十歳の原点」展へ行きました。
先月、佐川美術館へ行った時にこのチラシを見て、
へーー、いい展覧会やってるじゃないって思ったんです。
今は「二十歳の原点」と言われても、
高野悦子さんのベストセラー本を知らない人も多いんでしょうね。
私は学生運動には遅れた世代ですが、当時話題のこの本は読みました。
学生運動が過激派やリンチ事件などで挫折をしていくのを見ていて、
怖いという気持ちと、すこし上の世代が社会について議論をするのを
憧れのような気持ちも抱いておりました。
二十歳というのは、日本では今も当時も成人の年ですが、
当時、二十歳になるということは、すごく大人になったというか、
年取ったというカンジがしていました。
でも自分が二十歳になってみると、相変わらず迷ってばかりだし、
(これは五十代になった今も変わりませんね。
昔の五十代はすごく年寄りでしっかりしていたように思うのに、
今の私の体たらくは何なんだろうって)
世間から大人だと言われるのに、自立もできていない。
何かすごいことができるんじゃないかという根拠のない自信と、
将来はどうするのか、どうなるのかという不安‥‥
自分の二十歳頃を思い出すと、懐かしさと恥ずかしさというか‥‥
甘酸っぱいような気分になります。
多分、多くの二十歳が同じような問題で悩んだでしょうね。
そんな揺れ動く二十歳の頃に描かれた絵を集めた展覧会です。
(54作家の約120点が展示されています)
チラシ裏面の展覧会の主旨の文章が素敵です。
人生においてもっとも多感でナイーヴな十代の最終章、二十歳という象徴的な時期は、多くの芸術家にとって表現の原点であり、出発点にも位置づけられます。この時期、未熟と成熟とが葛藤しつつ、世界との関係の中で客観的な自己の形をつくり始めるのです。
この文章というか、チラシがとても素敵だったんですよね。
裏面の草間彌生の作品、水玉の原点ねーって。
で、わー、碧南市藤井達吉現代美術館、わりと最近できたんです(2008年)よね。
気になった展覧会があって調べたりしたことがあったんですが、
まだ行ったことはなかったので行ってみたいって。
でも、勢い込んで友人に話したら、
「二十歳の頃の油絵なんて、ヘタじゃない?
やっぱ画家はある程度歳とってからの作品の方がいいわよ」って、
あっ、そういう見方もあるわね‥‥
で、行こうかどうしようかちょっと迷っておりましたが、
4日(日)のNHK日曜美術館で取り上げられておりまして、
見てたら「やっぱ行きたいー!でも日曜美術館見て来たって思われるの
ミーハーぽくて嫌だな」(実際そのとおりなんですが)って。
日曜美術館見終わってから遅い朝食食べて、洗濯とかしていたので、
出かけたのは12時過ぎになってしまったのですが、
6時まで開館しているってのは嬉しいです。
名鉄碧南駅までは、最寄の名鉄の駅から約2時間。
名鉄本線知立駅で、名鉄三河線に乗り換えて終点。
そこから美術館へは徒歩約6分です。
観覧料一般600円を払って二階へ。
明治期に青春期を過ごした黒田清輝、熊谷守一、青木繁‥‥そうそうたる作家が
並んでいます。
画家たちの二十歳頃の言葉と、経歴なども一緒に展示されているのがいいですね。
熊谷守一は後の独創的な作風とは全く違うアカデミックな裸婦だなぁ。
青木繁のロマンチックな雰囲気いいなぁ‥‥と見ていきました。
そして大正期
岸田劉生の自画像もいいですが、高島野十郎の《傷を負った自画像》
血を流しているからだけでなく、その痛々しい表情がすごく印象的でした。
関根正二の絵が何点かありましたが、いいですね。
夭折した画家の絵って、やはり何か感じるところがあるような気がします。
今まで知らなかった画家ですが、柳瀬正夢の鮮やかな色を使った
夢の中のような風景画、いいなぁって思いました。
戦没画学生の遺作を集めた美術館「無言館」を設立した野見山暁治の絵と
言葉、この時代に若き日を過ごした世代の痛ましさを思いました。
一階は二十歳を戦後に迎えた世代で、
色々なスタイルの絵が並んでいて、色々挑戦してますってカンジ。
最後の部屋は1951年以降に生まれた若い世代。
何と言っても部屋の真ん中に置かれた
会田誠の《通称:まんが屏風》がインパクト大です。
そして、私がこの展覧会で一番見たいと思っていた
石田徹也の《飛べなくなった人》この人物の何ともいえない哀しい表情が印象的です。
《燃料補給のような食事》は現代社会の寒々とした雰囲気があまりに
身に染みて、見てて痛々しいくらい。
不慮の事故で26歳で亡くなった野村昭嘉の不思議な世界も良かったし、
山口晃、上手いですね。
この展覧会、図録として制作されたのがこちらの本。
会場においてあるのを手に取ったら、つい読みふけってしまい、
定価3,000円+税のところ、会期中は2,700円で購入できるとのことで、
買ってしまいました。こういう形の図録っていいですね。
せっかく碧南市「藤井達吉」現代美術館へ来たのだからと、
地下の常設展示室へも行ってみました。
藤井達吉氏について私は全く知りませんで、
行く前に美術館のHPでやっと知ったというくらい。
碧南市生まれの美術工芸家(1881年~1964年)で、
官展に工芸部門を加えるための運動をするなど、
工芸の後進の育成などにも力を注いだ人だそうですね。
ただ、今展示されているのは、文人画のような掛け軸が多かったのですが、
私はあまり感心しなかったのですが‥‥
美術展の最後はやっぱりカフェですよね。
ここ、今朝の日曜美術館のアートシーンの収録をしたとこですね。
実は昼ごはんを食べてないので、かなりお腹が空いてたんですが、
もう閉館近いので、飲み物しかできませんということでした。
でも、ここはパン工房がやっているカフェで、美味しそうなパンがあったので、
一つ買ったら、スライスしてトーストまでしてもらえました。
しっかりした生地のパン。美味しかったです。
美術展に行くと、他の美術展のチラシやポスターがあって、
行きたい美術展が次々と出てきて困ってしまいます。
ここの次の企画展のチラシ。わーーすごく面白そう!
たしか先週のアートシーンでやってましたね。
高岡市美術館: http://www.e-tam.info/ で9月19日(月・祝)まで。
その後こちらへ巡回してくるんですね。
‥‥割引券ももらったし。10月4日(火)~11月13日(日)かー。
碧南市藤井達吉現代美術館のサイト:
http://www.city.hekinan.aichi.jp/tatsukichimuseum/
この後、美術館のまわりの町を歩いてみたんですが、
レトロな町並みがとても私好みでした。そのことは次の記事で。
二十歳のころの記憶がどんどん薄れて行って、
遠い遠い昔のことになりました。
by スー (2011-09-16 02:16)
スーさん、nice! & コメントありがとうございます。他の記事のたくさんのnice!もありがとうございます。二十歳の頃の記憶、鮮やかに思い出すことと、人に言われても全く思い出せないこともあるんですよね。二十歳は遠くなりにけり‥‥です。
by しーちゃん (2011-09-22 03:22)