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メナード美術館「舟越桂」展 [美術]

9月21日(金)、メナード美術館の
「舟越 桂 2012 永遠をみるひと」展へ行きました。
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すっごく良かった!!!
もちろんそれぞれの作品も素敵なんだけど、
美術館の空間を含めた雰囲気がすごく素敵!!

そんなに鑑賞者がいないので、
(これは美術館の方は嬉しくないことかもしれないけど)
舟越桂の、あの独特なまなざしの人物像がたたずむ空間に、
なんか自分もその人物の一人として紛れ込んでしまったような、
そんな不思議な感覚を味わいながら見ていくことができました。

この展覧会、メナード美術館の開館25周年記念展ってことで、
チラシも2つ折りの豪華版!
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(チラシ内面 クリックで大きくなります)

今年6月にメナード美術館「田渕俊夫」展へ行った時に、
年間スケジュールで「舟越桂」展やるって知って、
 会期2012年9月15日(土)~11月25日(日)
すごい!って楽しみにしていたんです。中部地区では初の個展だとか。

2007年にメナード美術館「シャガール版画展」へ行った時に、
舟越桂の《長い休止符》を初めて見て、すごく感動したんです。
私にしては珍しく、ポストカードまで買ってしまいました。

なので、この展覧会の図録の表紙も《長い休止符》
メナード美術館の展覧会だけの図録なのがすごい。2,000円。
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友人が名古屋の金券ショップで見つけたと、チケットを
プレゼントしてくれました。
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チケットに使われている作品は《羽の門》個人蔵(平塚市美術館寄託)

友人と車で行きました。小牧城のふもとの小牧市役所の前の道を
東へちょっと行ったところにあります。
いつも、この建物素敵だなぁって思います。
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エントランスの受付でチケットを見せ、扉を開けて、
メナード美術館の目玉作品・マリノ・マリーニ《馬と騎手(街の守護神)》が
おいてある最初の展示室へ入ると――

長い革の耳を垂らした両性具有の妖しく謎めいた雰囲気のスフィンクスたちが
3体並んでいます。もう、この空間に入った時に私はノックアウト!

チラシ表面に使われているのが《戦争をみるスフィンクス》2005年制作(個人蔵)
静かな表情で、どこか遠く―永遠?―を見ています。
その隣が、舟越桂の彫刻には珍しく、なんともいえない表情を浮かべています。
怒りでも悲しみでもなく‥‥哀れみ?あきらめ?
《戦争をみるスフィンクスⅡ》2006年(個人蔵)
そして、《森に浮くスフィンクス》2006年(個人蔵)
ひざ上までの像が雑木で支えられて浮かんでいて迫力です。

そして次の展示室は、楠による半身像として最初の作品
《妻の肖像》1979~80年(作家蔵)―これはまだ眼が大理石ではないですね―
を始め、《冬の木》1988年(作家蔵)がドローイングと一緒に展示されていたり、
《ルディーの走る理由(わけ)》1982年(野木町(栃木県立美術館寄託)
眼鏡が印象的な《教会とカフェ》1988年(個人蔵)などの木造肖像。

全身像の《静かな鏡》1989年(西村画廊)は、展覧会の入口を入った時に、
次の部屋への入り口を通して見え、本当の人が立っているのかと、
思わずドキッとしてしまった作品です。今回の展覧会そんな見せ方がすごく上手!

全身像の《長い休止符》1993年(メナード美術館)もこの部屋にあり、
美術館スタッフから「足元にも作品がありますので気をつけて」と言われました。
《長い休止符》の手にはバイオリンはなく、影となって床に置かれているんです。
‥‥確かに、ちょっと踏んでしまいそう。
鑑賞者が多くなってくると、スタッフも気が抜けないのでは?

展示室3は、舟越桂が家族のために、木彫をやって出てきた木っ端を
利用して作ったおもちゃが展示してあって、これすごくいい!
なんか、レトロでなつかしい雰囲気。板きれの人形とか、
教会の天使や、マリアさまとキリストは舟越桂の彫刻のミニチュアのよう。

伝統木版画の技を使って絵物語を再現しようというプロジェクトの
原画として描かれた水彩画《ピノッキオ》

舟越桂が使っている道具とか、新作の長すぎた首を切った木なども
展示してあって興味深かった。

そして圧巻が、いつも《長い休止符》があるミニギャラリーに展示してあった
この夏に完成した新作《月の降る森》2012年(作家蔵)
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このあたり一面に楠の香りが強烈に漂っていました。
「深い森の奥の古い教会のような建物から女性が生えている。
 月に照らされて青い影をまとっている。女性はその建物と同じくらいに大きい。
 建物を通って大地から生えてきているようにも見える。
 あるいは建物から浮き上がっているようにも見えた。
 もしかしたら、いつか教会から放れていくのだろうか?」

という舟越桂の言葉がありました。

展示室4は、手がありえないところに―まるで天使の羽のように―
付けられている《水に映る月蝕》2003年(作家蔵)や、
肩が山のように盛り上がっている《山を包む私》2000年(個人蔵)
など「異形」の人物像。
友人は展示室2の木彫肖像の方が好きだと言いましたが、
私は二人の体が一つになってしまったような
《支えられた記憶》2001年(金沢21世紀美術館蔵)(チラシ内面右上)とか
好きだなって。そしてやっぱり「スフィンクス・シリーズ」!

そして今回の展覧会、メナード美術館の所蔵作品を展示する
コレクション・コーナーが「舟越桂が選ぶ『西洋絵画名作選』」として、
舟越桂が選んだ西洋絵画作品16点が展示してあったんですが、
横の舟越桂のコメントがすごく興味深かったです。

売店で舟越桂が選んだメナード美術館の西洋絵画のポストカード、
《長い休止符》を含んで、8枚組で700円だったので買ってしまいました。
上段左より、ゴッホ、ピカソ、クノップフ、アンソール
下段左より、ルソー、セザンヌ、マネ。
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ピカソ《オルガ・ピカソの像》の絵では、ピカソのデッサンはすごい。
それを見てほしい。と。

フェルナン・クノップフ《婦人像》では、クノップフの絵は若い頃はあまり
感心しなかったけど、自分がスフィンクスの像を作るようになって、
クノップフの体がヒョウのスフィンクスの絵が気になるようになり
好きになった‥‥とか(うろ覚えで書いてるので違ってるかも)
とても小さい絵でしたが、不思議な表情の婦人の顔。
私はクノップフ好きなので、メナード美術館こんな絵も持ってるんだって驚きました。

エゴン・シーレのデッサンも賞賛してたし、
とにかくデッサンについてコメントしてました。
マネもセザンヌもデッサンを見てほしいと。

ジェームズ・アンソール《仮面の中の自画像》では、アンソールの代表作が
メナード美術館にあることにまず驚いていました。

人物像の舟越桂らしく、人物の絵が多かったですが、
アンリ・ルソー《工場のある風景》では、どんなに教育を受けても、
つまらない絵しか描けない人もいるし、素人でも素晴らしい絵が描ける人もいると。

最後に、お父さんの舟越保武の彫刻作品《N嬢》があって、
私は、えっ?!これもメナード美術館持ってるの?!!!って驚きましたが、
白い大理石がピカピカ光る、とても美しい女性の胸像。静かな微笑みを浮かべています。
父の作品は、静謐とか美しいとか言われるけど、強さを見てほしいと。

この美術館とても素敵なんだけど、以前、美術館内にあった休憩室が、
アネックスの方になったのがちょっと残念。
でも広い空間で、自販機の100円のコーヒーで寛ぎました。
舟越桂のアトリエでの制作の様子がスライドで上映されていたのも良かったです。
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とても素敵な展覧会でした。

メナード美術館のHP: http://museum.menard.co.jp/
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コメント 3

なおみ

コメント
by なおみ (2012-11-20 22:26) 

なおみ

はじめまして。 舟越桂の個展があるのを新聞でみてから ずーっと行きたいと、思っていましたが ようやくいってきました。
いくまえに、あなたさまのブログを拝見いたしました。なるほどー。私は素人で 芸術の事はよくわからないのですが、舟越桂さんの作品を以前どこかで みてから ずーっと気になったというか、実物をみてみたいというか そんなふうに思いました。
実際、みてみたら、好きでした。
楠だけど、体温を感じ皮膚は なめらかで柔らかいのだろうと思うほどの うまく言えませんが じっくりみていたいとおもいました。大理石の目玉は 目が合うことなく、どこかとおくを見続けて、半開きの口元からは 温かな息づかいが感じられそうでした。美しいとおもいました。
あなた様のブログみていってよかったです。
ありがとうございました。
by なおみ (2012-11-20 22:37) 

しーちゃん

なおみ さん、過分なお礼のコメントをいただき、ありがとうございます。メナード美術館の舟越桂の展覧会、とても良かったですね。やはり実物は等身大というか、存在感がとても素敵です。
by しーちゃん (2012-11-23 03:19) 

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