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古川美術館「伊藤小坡」と「落花の夢」 [美術]

12月16日(日) 師走も半ば、衆議院議員選挙の日。
世間は年末の忙しい時期かもしれませんが、私は最近パートもヒマだし、
この日予定していた用事もなくなったので、どっか行こうかなーなんて
思ってたところ、ちょっと気になったのがこちらのチラシ。
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椿の花が落ちている情景って、絵になりますよね。
チラシ中面にあった木版画《落花の夢》もいいなぁって。
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チラシ内面(クリックで大きくなります)

古川美術館の分館「爲三郎記念館」の数寄屋造りの家と椿の花‥‥
どっちも私の好みだし、風情があって素敵だろうなって。

本館でやっている「女流画家 伊藤小坡の世界」も楽しみでした。
上村松園は知っていましたが、伊藤小坡(しょうは)は知りませんでした。
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伊藤小坡(しょうは)(1877-1968)

伊勢の猿田彦神社に生れた小坡は、幼少より絵に親しみました。
伊勢で磯部(いそべ)百(ひゃく)鱗(りん)、そして京都で森川曽文(そぶん)についた後、谷口香嶠(こうきょう)に入門し、歴史物語や日常の女性像を描いて画壇で本格的に活躍を始めます。大正6年には竹内栖鳳ら当時一流の画家と共に、女性としては上村松園とただ二人、当時の皇后陛下の御前で揮毫するなど、目覚ましい活躍を果たしました。


上村松園が1975-1949なので、ほぼ同時代人なんですね。
まだ女性が画家として生きることが困難だった時代、
小坡は画家として活躍するだけでなく、同門の伊藤鷺城と結婚し、
三児の母として、よき家庭人であったとのこと。

まず本館の「伊藤小坡の世界」から見ていきました。
入館料金は分館と共通で大人1,000円ですが、
ドニチエコきっぷで100円引きの900になりました。
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しかし、ここの美術館、和装の奥様たちが集っていたり、
受付の女性の上品な応対といい、とてもセレブな雰囲気‥‥

こじんまりした美術館なので、前期・後期でかなりの入れ替えがあったそうなんですが、
一階展示室の
孫に茶道を教える《はじらい》(チラシ表・下)の祖母の慈しみの視線とか、
画室で絵の構想を練る自画像のような《制作の前(下絵)》や、
朝の洗顔もそこそこに新聞の連載小説を読みふける女性を描いた《つゞきもの(下絵)》
赤ん坊のために熱い食べ物の匙を吹いている《母子図(下絵)》など、
日常の親しみやすい画風は、よき家庭人であったという伊藤小坡ならではの温かな視点で、
いいなぁって見ました。

奥の特別展示質では、
夫の伊藤鷺城の作品や、
娘の結婚や孫の節句のために描いた絵、
袱紗(説明書きには「帛紗」とありました)は、夫との合作であったりと、
良き家庭生活がしのばれる品々も展示してありました。

夫の伊藤鷺城は小坡の作画の手伝いをしたり、
展覧会の時など留守を預かったりと理解ある夫だったようですが、
やはり、この時代に家庭と画業を両立させることは大変なことだったろうと思います。

二階の展示室には小坡の図案や雑誌の挿絵なども展示されていました。
《ひいな遊びの図》が、大正頃に描かれたものと昭和初期に描かれたものが
並べて展示してあったのが興味深かった。
彦根屏風を思わせるような《元禄頃美人教示之図》が素敵でした。

映像上映プログラムの上村松園と伊藤小坡についても勉強になりました。
並んで写っている記念写真があったのですが、キリッとした顔つきの松園と、
ちょっと下膨れの穏やかな顔をした小坡と、なんかやっぱり描く女性に
似ているような気がして面白かった。

本館を出て、近くの分館「爲三郎記念館」へ。
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門を入ると‥‥
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一輪の椿の花が置かれています。
ホンモノの花ではなく、バルサ材を削って作られたもの。
館の中で工程が展示されていましたが、一つ一つ手作りで削って作っているそう。

玄関のガラス戸ごしにシルクスクリーンの《落花の夢》が見えます。
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(入口はこちらではなく、少し奥の売店のところに受付があります)
売店ではケースに入った椿の花や、椿がデザインされた手ぬぐい等も売られていて、
いいなぁって、かなり心が動いたんですが‥‥

数寄屋造りのあちこちに作品があります。
受付でもらったリーフ(さすが、デザイン的にも素敵です)によれば、
「インスタレーションとは、空間演出のことです。
 記念館のあちらこちらに設置されている椿は、椿そのものも作品ですが、
 椿が置かれた状況空間を含めて作品です。」


床の間に置かれた椿と掛け軸、沓脱ぎ石の上の下駄に置かれた椿や、
庇の瓦に散らされた椿‥‥
そして、瓢の間に砂を敷き詰めて作った空間の椿。

やはりこのインスタレーションを味わうには、お抹茶をいただかないと!
チケットを買った時にもらった200円割引券と500円で、椿の花の和菓子も素敵な
お抹茶がいただけます。(珈琲等のメニューもあります。)
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高北幸矢氏は、名古屋造形大学学長や清須市はるひ美術館長などを務めておられるそうで、
展覧会最終日でもあり、関係の方々も多くいらしてました。

趣のある数奇屋建築
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お茶室の畳に描かれた椿の花が迫力!
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中庭の竹林に散らされた椿(室外作品は撮影可とのことでしたので)
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別棟のお茶室
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こちらの床の間にも椿が‥‥
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庭に咲いていた山茶花
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古川美術館のHP: http://www.furukawa-museum.or.jp/
高北幸矢氏のブログ: http://www.nzu.ac.jp/blog/gakucho/

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prismiclyon

年末、って感じの風景ですね。
by prismiclyon (2012-12-17 23:11) 

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