あいちトリエンナーレ2013 (5) 納屋橋エリア [美術]
9月12日(木)あいちトリエンナーレ2013に行きました。
9月1日(日)に愛知芸術文化センターを見て、
9月9日(月)に岡崎エリアを見てきて、
12日もパートの休みだったので、この日で
トリエンナーレの残り全部見ようって思ってたんですが、
前日の疲れで午前中ダラダラしていたのと、電車に乗る前に
iPhone忘れたのに気がついて取りに戻ったのとで、
名古屋駅に着いたのがもう1時半頃になっちゃってました。
まずは駅から一番近い納屋橋会場から見ようと。
納屋橋会場は、ボウリング場として建設された東陽倉庫テナントビル
3年前のあいちトリエンナーレでも会場になってました。
ボウリング場だったという建物から飛び出してくるボウリングのレーン!
リチャード・ウィルソンの《レーン61》という作品
ベロタクシーの事務所(?)もあって、ベロタクシーが止まってました。
階段で2階の入口へ。
入口ホールのガラス越しに堀川が見えます。
ガラスには「境」をテーマにした中学生の文章が書かれています。
下道基行の《14歳と世界と境》という作品
愛知県内の中学校で特別授業を行い、「身の回りの境界」について書いてもらった文章で
《14歳と世界と境》という小さな記事を中日新聞の水曜日の夕刊に連載中とのこと。
川の向こうは違う中学校の学区で、違う世界のように感じたとか、
(「境川」って名称の川は各地にありますよね。)
カーテンで分けられた自分と弟の部屋とか‥‥
そして、福島の立ち入り禁止区域を分ける柵とか、
武蔵野美術大学と朝鮮大学の間の、美大生から「国境」と呼ばれていた
塀の上の鉄条網とか、そんな「境」について考えさせられる展示でした。
次の部屋が池田剛介の作品。
自転車のホイールのドームが共鳴して音を奏でます。
自転車発電装置を用いているらしい。
壁には缶に植えられた植物が静かに回って、かすかな音を立てています。
次に見たのが、ニラ・ペレグ《安息日》
エルサレムの超正統派ユダヤ教信者の居住地で、安息日の前日にバリケードを
築く住民の姿を映した映像。境界とか排他性とか、そんなことを考えてしまった。
一切の説明というか、人間の会話がなく、バリケードを引きずる金属音ばかり
ってのがよかった。
ミハイル・カリキス&ウリエル・オルローの映像作品《地底からの音》
人生の年輪を重ねたという風貌の老人たちが、荒涼とした大地に立って歌っている。
なにか不思議な荘厳さを感じた。後で説明を読むと、
閉鎖された炭鉱跡地にて、かつてそこで働いた高齢になった男たちが当時聴いていた音(爆発、警報、蒸気、機械の音など)を思い出しながら歌う映像作品
とのこと。荒涼とした大地と、それぞれ風格のある老人たちが迫力だった。
クリスティナ・ノルマンの映像の部屋には、中心に金色の銅像が斜めに吊るされている。
エストニアの首都・タリンにある銅像をめぐる争い。1947年に作られた彫像は、
エストニア人にとっては、ソヴィエトによる占領、抑圧、大量の国外追放のシンボルで、
ロシア人にとっては、ナチズムに対する勝利のシンボルだったと。
そして2007年にエストニア政府はタリンの中心区にあった銅像を郊外へ移してしまう。
それに反対したロシア人の暴動は単なる犯罪人とされたと。
作家は、2009年に彫像が置かれていた場所に、その彫像の原寸大のレプリカ(この金色の像)を
持ち込んでみる。当然起こる警官とのトラブル。それらの映像がいくつかのスクリーンで
映し出されている。
‥‥うーん、重いなぁー。政治的なことには疎いので
(だいたいエストニアがどこにあるかもおぼつかない)
そんな問題があったってことも知らなかったけど、
民族で異なる歴史の解釈‥‥ってことは、日本と韓国、中国の間にもありますね。
例えば、加藤清正の銅像なんか韓国人はどう思うかなとか、
最近では慰安婦の像の問題とか‥‥。
そんな重い映像を見た後だったので、リチャード・ウィルソンの《レーン61》
建物内から見たところ。単純に楽しめました。
ボウリングのボールはレーンに固定されているんですね。
建物の穴からボウリングのピンが戻ってくるところ。
竹田尚史の秤に乗った家の作品《ダブルフィクション》
この部屋には横の入口から入ることができるということで入らせてもらいました。
左右反転した時計とか、8の字型(無限大記号∞ ?)に並べたドミノとか楽しかった。
その横にあった部屋には、新美泰史の絵。
一見抽象とも思える太い線で描かれた絵は、あっ、犬だ!って。
その奥には、荒井理行のコラージュなどを用いた非現実的な写真。
そして竹田尚史の部屋に戻り、その奥の隠し部屋のようなところにあったのが
片山真理の展示
一見、ちょっとセクシーな下着を着けた女性のポートレートかと‥‥思うと、
両足がない‥‥! 先天性の病で両足を切断している作者のセルフポートレートだそう。
ズラリと並んだビンは、片山真理が日記がわりに、食べたものや身につけたものを
食用油で瓶詰めにしたものなんだそうだが、やはり、イメージするのはホルマリン漬け!
もしかしたら人体の一部とか入ってるんじゃないかって思っちゃうような不気味さも
感じるところが、濃密で妖しく美しい‥‥。
こんな、生活感あふれるキッチン(片山真理が生活する部屋を再現したものだそう)など、
人のプライベートを覗き見したような、背徳感のようなものを感じちゃいます。
台の上のマットのように見えるのは、片山真理の亡くなった祖父が好きだった
タバコ、ピースの箱を布の袋に詰めてつなげたもの。
奥には祖父が好きだったという黄色いバラのドライフラワーが
たくさん吊るされています。
‥‥この片山真理の退廃的な雰囲気の世界、すごく私の好みです!
私的に納屋橋会場で一番気に入った展示かな。
2階の吹き抜けにあったのが、青木野枝の作品《ふりそそぐもの》
この大きな空間に、鉄板が軽やかにふりそそいでいて、いいなぁ。
ブーンスィ・タントロンシンの《スーパーバーバラ世界を救う》
あちこちの会場でスーパーバーバラのアニメ映像が見られますが、
ここではそれらの映像の全てのバージョンを見られます。
もうかなり見たものがあるんですけど、なんかクセになるというか‥‥
結局一回り全部見てしまいました。
イントロの「ア~~」っていうバーバラの声もいいな。ハハハ。
それから階段を上がって、3階へ。
名和晃平《フォーム》
あいちトリエンナーレを紹介した新聞やツイッターなどでもかなり話題になっていました。
でも前知識が多すぎたのか、私的にはなんか、見た驚きがないというか。
確かに、泡の大きさは迫力です。(この臭いは何の臭いだろう?)
もう少し動きがあると面白いんだけどなーってカンジ。
微妙に泡がパチパチ、キラキラしているところはきれいなんですけど‥‥
でも、納屋橋会場、充実してました。映像作品はあまり好きでない私なんですが、
ちょっと政治的な難しいものも含めて、結構見入ってしまいました。
おかげで、名古屋市美術館に行くのが遅くなって‥‥名古屋市美術館内は一応見たんですが、
ちょっと消化不良のところもあって、名古屋市美術館のレポートは、
もう一度行ってからにしようって思ってます。長者町も行かなきゃ行けないし!
今までのあいちトリエンナーレ2013のレポート記事
あいちトリエンナーレ2013 (1) 愛知芸術文化センター その1: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-04
あいちトリエンナーレ2013 (2) 愛知芸術文化センター その2: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-06
あいちトリエンナーレ2013 (3) 岡崎エリア その1: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-10
あいちトリエンナーレ2013 (4) 岡崎エリア その2: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-11
あいちトリエンナーレ公式サイト: http://aichitriennale.jp/
9月1日(日)に愛知芸術文化センターを見て、
9月9日(月)に岡崎エリアを見てきて、
12日もパートの休みだったので、この日で
トリエンナーレの残り全部見ようって思ってたんですが、
前日の疲れで午前中ダラダラしていたのと、電車に乗る前に
iPhone忘れたのに気がついて取りに戻ったのとで、
名古屋駅に着いたのがもう1時半頃になっちゃってました。
まずは駅から一番近い納屋橋会場から見ようと。
納屋橋会場は、ボウリング場として建設された東陽倉庫テナントビル
3年前のあいちトリエンナーレでも会場になってました。
ボウリング場だったという建物から飛び出してくるボウリングのレーン!
リチャード・ウィルソンの《レーン61》という作品
ベロタクシーの事務所(?)もあって、ベロタクシーが止まってました。
階段で2階の入口へ。
入口ホールのガラス越しに堀川が見えます。
ガラスには「境」をテーマにした中学生の文章が書かれています。
下道基行の《14歳と世界と境》という作品
愛知県内の中学校で特別授業を行い、「身の回りの境界」について書いてもらった文章で
《14歳と世界と境》という小さな記事を中日新聞の水曜日の夕刊に連載中とのこと。
川の向こうは違う中学校の学区で、違う世界のように感じたとか、
(「境川」って名称の川は各地にありますよね。)
カーテンで分けられた自分と弟の部屋とか‥‥
そして、福島の立ち入り禁止区域を分ける柵とか、
武蔵野美術大学と朝鮮大学の間の、美大生から「国境」と呼ばれていた
塀の上の鉄条網とか、そんな「境」について考えさせられる展示でした。
次の部屋が池田剛介の作品。
自転車のホイールのドームが共鳴して音を奏でます。
自転車発電装置を用いているらしい。
壁には缶に植えられた植物が静かに回って、かすかな音を立てています。
次に見たのが、ニラ・ペレグ《安息日》
エルサレムの超正統派ユダヤ教信者の居住地で、安息日の前日にバリケードを
築く住民の姿を映した映像。境界とか排他性とか、そんなことを考えてしまった。
一切の説明というか、人間の会話がなく、バリケードを引きずる金属音ばかり
ってのがよかった。
ミハイル・カリキス&ウリエル・オルローの映像作品《地底からの音》
人生の年輪を重ねたという風貌の老人たちが、荒涼とした大地に立って歌っている。
なにか不思議な荘厳さを感じた。後で説明を読むと、
閉鎖された炭鉱跡地にて、かつてそこで働いた高齢になった男たちが当時聴いていた音(爆発、警報、蒸気、機械の音など)を思い出しながら歌う映像作品
とのこと。荒涼とした大地と、それぞれ風格のある老人たちが迫力だった。
クリスティナ・ノルマンの映像の部屋には、中心に金色の銅像が斜めに吊るされている。
エストニアの首都・タリンにある銅像をめぐる争い。1947年に作られた彫像は、
エストニア人にとっては、ソヴィエトによる占領、抑圧、大量の国外追放のシンボルで、
ロシア人にとっては、ナチズムに対する勝利のシンボルだったと。
そして2007年にエストニア政府はタリンの中心区にあった銅像を郊外へ移してしまう。
それに反対したロシア人の暴動は単なる犯罪人とされたと。
作家は、2009年に彫像が置かれていた場所に、その彫像の原寸大のレプリカ(この金色の像)を
持ち込んでみる。当然起こる警官とのトラブル。それらの映像がいくつかのスクリーンで
映し出されている。
‥‥うーん、重いなぁー。政治的なことには疎いので
(だいたいエストニアがどこにあるかもおぼつかない)
そんな問題があったってことも知らなかったけど、
民族で異なる歴史の解釈‥‥ってことは、日本と韓国、中国の間にもありますね。
例えば、加藤清正の銅像なんか韓国人はどう思うかなとか、
最近では慰安婦の像の問題とか‥‥。
そんな重い映像を見た後だったので、リチャード・ウィルソンの《レーン61》
建物内から見たところ。単純に楽しめました。
ボウリングのボールはレーンに固定されているんですね。
建物の穴からボウリングのピンが戻ってくるところ。
竹田尚史の秤に乗った家の作品《ダブルフィクション》
この部屋には横の入口から入ることができるということで入らせてもらいました。
左右反転した時計とか、8の字型(無限大記号∞ ?)に並べたドミノとか楽しかった。
その横にあった部屋には、新美泰史の絵。
一見抽象とも思える太い線で描かれた絵は、あっ、犬だ!って。
その奥には、荒井理行のコラージュなどを用いた非現実的な写真。
そして竹田尚史の部屋に戻り、その奥の隠し部屋のようなところにあったのが
片山真理の展示
一見、ちょっとセクシーな下着を着けた女性のポートレートかと‥‥思うと、
両足がない‥‥! 先天性の病で両足を切断している作者のセルフポートレートだそう。
ズラリと並んだビンは、片山真理が日記がわりに、食べたものや身につけたものを
食用油で瓶詰めにしたものなんだそうだが、やはり、イメージするのはホルマリン漬け!
もしかしたら人体の一部とか入ってるんじゃないかって思っちゃうような不気味さも
感じるところが、濃密で妖しく美しい‥‥。
こんな、生活感あふれるキッチン(片山真理が生活する部屋を再現したものだそう)など、
人のプライベートを覗き見したような、背徳感のようなものを感じちゃいます。
台の上のマットのように見えるのは、片山真理の亡くなった祖父が好きだった
タバコ、ピースの箱を布の袋に詰めてつなげたもの。
奥には祖父が好きだったという黄色いバラのドライフラワーが
たくさん吊るされています。
‥‥この片山真理の退廃的な雰囲気の世界、すごく私の好みです!
私的に納屋橋会場で一番気に入った展示かな。
2階の吹き抜けにあったのが、青木野枝の作品《ふりそそぐもの》
この大きな空間に、鉄板が軽やかにふりそそいでいて、いいなぁ。
ブーンスィ・タントロンシンの《スーパーバーバラ世界を救う》
あちこちの会場でスーパーバーバラのアニメ映像が見られますが、
ここではそれらの映像の全てのバージョンを見られます。
もうかなり見たものがあるんですけど、なんかクセになるというか‥‥
結局一回り全部見てしまいました。
イントロの「ア~~」っていうバーバラの声もいいな。ハハハ。
それから階段を上がって、3階へ。
名和晃平《フォーム》
あいちトリエンナーレを紹介した新聞やツイッターなどでもかなり話題になっていました。
でも前知識が多すぎたのか、私的にはなんか、見た驚きがないというか。
確かに、泡の大きさは迫力です。(この臭いは何の臭いだろう?)
もう少し動きがあると面白いんだけどなーってカンジ。
微妙に泡がパチパチ、キラキラしているところはきれいなんですけど‥‥
でも、納屋橋会場、充実してました。映像作品はあまり好きでない私なんですが、
ちょっと政治的な難しいものも含めて、結構見入ってしまいました。
おかげで、名古屋市美術館に行くのが遅くなって‥‥名古屋市美術館内は一応見たんですが、
ちょっと消化不良のところもあって、名古屋市美術館のレポートは、
もう一度行ってからにしようって思ってます。長者町も行かなきゃ行けないし!
今までのあいちトリエンナーレ2013のレポート記事
あいちトリエンナーレ2013 (1) 愛知芸術文化センター その1: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-04
あいちトリエンナーレ2013 (2) 愛知芸術文化センター その2: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-06
あいちトリエンナーレ2013 (3) 岡崎エリア その1: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-10
あいちトリエンナーレ2013 (4) 岡崎エリア その2: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-11
あいちトリエンナーレ公式サイト: http://aichitriennale.jp/
お久です。
え!?このボーリングのレーン、出たり入ったり動いてるの?
ものすごく自己主張してる感じ。(笑)
しーちゃん、ほんとにいっぱい美術館・美術展行ってますよね。
娘が、もうすぐ独立するので、私もこれを機にいろいろやったり、行ったりしようと思ってるんですよ。
間違っても、「空の巣症候群」なんてやですもん!
で、手始めに、ず~っとやりたいと思っていたブログをはじめました。
まだまだつたないブログですが、いろいろ見たこと、感じたこと、作ったものなどをアップ4していきたいなぁって思います。
よかったら、遊びにきてくださいね。
それから、こちらのブログとリンクさせて頂きたいのですが、ご了承いただけますか?
よろしくお願いいたします。
by 神奈川のしーちゃん (2013-09-17 00:08)
神奈川のしーちゃんさん、コメントありがとうございます。美術展は行きだすとドンドン他のも見たくなっちゃうんですよね。今、名古屋と岡崎で「あいちトリエンナーレ」やってて現代美術がたくさん展示してあって面白いです。現代美術、うーん?ってのもあるけど、ボウリングのレーンが飛び出してくるなんて面白いーって単純に楽しんでます。
ブログ開設、待ってました!リンクしていただけるなんて嬉しいです。これからもよろしくお願いします。
by しーちゃん (2013-09-17 01:51)