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中山道広重美術館「日本のポスター芸術」展と講演会 [美術]

10月25日(土)、岐阜県恵那市の中山道広重美術館へ行きました。
「サカツ・コレクション
 日本のポスター芸術
 浮世絵、引札から始まった広告アート」
 という展覧会を見て、講演会を聴いてきました。
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10月9日(木)、岐阜県現代陶芸美術館「大織部展」を見に行った時に、
この展覧会のポスターが貼ってあって、
おぉー!! なんて私のツボの展覧会なんだ!! と。

そして10月19日放送の日曜美術館のアートシーンで紹介されたのを見て、
うわー! これは是非見てこなくては!! と。
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中山道広重美術館には2011年の秋に
「抒情の系譜」という展覧会を見に行ったことがあります。
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-11-21

この時も「私のツボだ」と思ったんですが、今回はさらにど真ん中かも?
一応、私、大学ではグラフィックデザインを専攻しているんですよねー。
私の学生時代は、サントリーをはじめとする酒造メーカーや、
資生堂とカネボウ化粧品、そしてPARCOや伊勢丹などの広告、
特にポスターがカッコよくて、憧れでした。

で、私のパートが、なんと土曜日に休みがもらえたんですよ。
日曜日は休みなんだけど、土曜日は忙しいことが多いし、他の人が
休みを希望することも多いので、土曜日の休みって初めてかも?

で、この展覧会の公開講演会がこの日にあるということを知って、
こんなラッキーな機会を逃さないようにしなくては!! と。

中山道広重美術館、以前行った時に、恵那ってずいぶん遠いんだ~!
ってことは知ったのですが、まぁ、2時間みればいいだろうと、
講演会が午後1時30分からだったので、11時に出発するつもりだったんですが、
まぁ‥‥自分だけだとズルズル遅くなり、ガソリンスタンドに寄ったり、
途中で道の駅にも寄ったりしていて‥‥
恵那の駅西駐車場(市営)に入れたのが1時半を少し過ぎた頃で、
(美術館受付で駐車券を提示すると90分間無料になります)
そこから美術館まではスグなんですが、15分くらい?遅れてしまいました。

中山道広重美術館(帰りに撮影)
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ウインドーにポスター(複製)が飾られています。
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受付で観覧料を払い、3階の講座室へ。(特別企画展大人820円が、
 岐阜県現代陶芸美術館でゲットした割引券で660円になりました)

チケットが洒落てますね! ビール瓶の形だー!!
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講演会
「日本の広告美術の流れ~浮世絵・引札・ポスター~」
講師は、この展覧会の調査協力もされている青梅市立美術館学芸員の
 田島奈津子氏

入口でレジメをもらって後方の椅子に座りました。

途中からになってしまいましたが、
映像を使って、西洋のポスターと、それに影響を受けた日本のポスターを
並べて解説をしていらしたところでした。

ベラスケスの《鏡を見るウェヌス》と天狗煙草のポスターとか、
ミュシャの《ジスモンダ》と牡丹煙草とか。

煙草は、1904年に専売制度が始まるまで、海運・百貨店と並ぶ、
ポスターの大クライアントだったと。(この展覧会では展示されていません)

今回展示されていたポスターでは、
アングル《泉》の影響がわかるサクラビールの海外向け「Kembangビール」とか、
マネ《フォリー・ベルジェールの酒場》をヒントにしたと思われる
アサヒビールの「酒場の棚の前の女性」とか。
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今回の展覧会は、名古屋市に本社を構える酒類販売会社
サカツコーポレーション(あ、「アルコ」はここの小売部門なのね)の
先代社長(六代目) 故 牧野純三氏が収集した酒類のポスター
「サカツ・コレクション」から約80点が展示されています。

外国のポスターの絵をそのまま使った例もありました。
今なら盗作とかパクリとか問題になるんでしょうが、当時は
外国の文化に接することのできる人は少数で、見習うべきとされて、
褒められこそすれ、非難する人はいなかったと。

フランスに留学していた画家が、帰国時に現地で「最新の美術」として
流行していたアール・ヌーボー様式のポスターを持ち帰って、
展覧会で公開したこともあったそうです。

でも、日本のポスターはすべて外国のモノマネだったわけではなく、
そこには江戸時代から続く木版による引札や大小(カレンダー)等の
日本の伝統があったと。
特に海外向けのポスターには、日本の浮世絵を使ったものが多いと。

そして、お酒のポスターのモデルの変遷
初期は芸妓さん‥‥萬龍とか、まり千代とか、当時の芸妓さんは
今のスター的な存在だったそう‥‥とか、和服にエプロン姿の女給さん、
映画女優となり、戦争の影響で軍事色を帯びた女性や軍人へと。
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女性のファッションが、日本髪に着物から、洋髪に着物、そして洋髪に洋装へと
変わっていくのを見るのも面白いと。
但し、ビールでは洋服や水着姿のポスターも多いが、
日本酒では依然として和服が好まれたりすると。(現代でもそれはわかりますね)

初期のポスターは、お酌をする女性だったが、自分でお酒を好んで飲む
「新しい女性」へとなってきたとか。

1920年代にバレエの女性が登場するのは、アンナ・パブロワの来日で、
大バレエブームが起きたからだとか。

同じ絵柄で全く違う業種や商品のポスターがある
「名入れ違い」のポスターのシステムがあったってのが面白かった。
印刷会社が制作したいわば「出来合いポスター」に
商品名や社名を入れて作る、今でいうと年賀状の印刷を頼むみたいな。
そのためのポスター見本カタログなどもあったそう。

ビールのポスターで、アサヒもサッポロもエビスビールもあるのは、
当時、大日本麦酒がこれら全てのビールを作っていたからだそう。
戦後に財閥解体で分割されたとのこと。
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‥‥等々、興味深いお話を次々とされて、講演会の予定は3時半までで、
かなり時間もなくなっていたんですが、それから、NHKで放送された
(谷啓さん出演の頃の)「美の壺」の「レトロポスター」の会から、
美人の肌を美しく印刷する多色石版刷りの職人技についてのシーンや、
(講師の田島奈津子氏も出演されてた)
石版(平版)印刷の技法についての映像では、私、大学時代に、
実習でやったなー(ジンク版にダーマトグラフで描いた一色刷りでしたが)
こんな面倒だったっけ? って懐かしく見ました。

そして質疑応答もあって、盛りだくさんの講演会でした。

それから1階の展示室へ。
前室で、ここの美術館が所蔵する浮世絵から、
店の看板やのぼり等、広告が入ったものの展示(この部屋は展示替えがあるそう)

そして、サカツ・コレクションのポスターの展示へ。
ポスターの状態がとてもいいのに驚きました。もちろん、掲示されていた時の
傷みとかもありましたが、きちんと額装されてきれいでした。

展覧会のポスターに使われている
菊正宗の「歌舞伎模様の和服を来た女性」北野恒富 1915年頃
その大きさと美しさにビックリ!!
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有名な、我が国初のヌードポスター
(っても上半身もあまり見えない現代からするとカワイイものですが)
赤玉ポートワイン「グラスを持つ半裸の女性」1922年
2枚展示してありました。印刷の色がセピアっぽいのと紺色っぽいもの。
評判でスグに盗られてしまって、刷り直したそう。

そして2階の展示室へと続き、女性以外のモダンなデザインや、
戦時色が濃くなってきた時代のポスターとか。

閉館の5時ギリギリまでいて、売店で、今回の図録はないので、
サカツ・コレクションを紹介したこの本
『明治・大正・昭和 お酒の広告グラフィティ』
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5,800円+税で、6,264円という、
高価な本なんですが、買ってしまいました!!

明治・大正・昭和 お酒の広告グラフィティ―サカツ・コレクションの世界

明治・大正・昭和 お酒の広告グラフィティ―サカツ・コレクションの世界

  • 作者: 田島 奈都子
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 大型本



恵那駅前の商店街には、展覧会のポスターがたくさん掲示してありました。
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恵那と言えば「栗きんとん」お店も多いですね。
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中山道広重美術館: http://museum.city.ena.gifu.jp/

サカツコーポレーションのHP: http://www.sakaz.co.jp/
サカツ・コレクションのページ: http://www.sakaz.co.jp/gallery/
 いくつかのポスターの画像と説明が見られます。

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