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ヤマザキマザック美術館「世界に挑んだ明治の美」 [美術]

6月14日(日)、名古屋・新栄町のヤマザキマザック美術館へ行きました。
「世界に挑んだ明治の美
 宮川香山とアール・ヌーヴォー」という企画展をやっています。
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このチラシ見て、うーんちょっと私の趣味とは違うかな?って
気もしたんですが‥‥ヘビとかリアル過ぎてグロテスクだし、
あまりに装飾過多でゴテゴテしてるじゃないですかぁ‥‥
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でも、開館5周年記念展ってことだし、
ヤマザキマザック美術館は私の大好きな美術館で、
これまでの企画展は全部見てるし、
明治の超絶技巧ってのを見てみようと。

ヤマザキマザック美術館「エマイユの煌めき」展で、
明治の七宝の超絶技巧を見て、気の遠くなるような職人技に感心したんですが、
陶芸の超絶技巧ってのはどんなものなのかって。

ヤマザキマザック美術館は地下鉄東山線「新栄町」のスグ上。
当日一般入館料1,300円のところ、スタンプカードでゲットした割引券で
1,100円になりました。

エレベーター4階で降りて、無料の音声ガイドを借りて見て行きます。

入った正面に飾られている蛇の皿《飾碟(パリッシーウェア)》
ヘビの嫌いな人は見たくもないでしょうね。
ヘビだけでなく、周囲の虫やトカゲ、カエルや貝、シダもリアル過ぎて
気味が悪いくらい。

これは、19世紀ドイツで制作された復刻版「パリッシー・ウェア」で、
イギリスのサウス・ケンジントン博物館から日本の帝国博物館(現・東京国立博物館)に
寄贈されたものだそう。この2年前の1874年、ウィーン万博に出品した日本の美術品や
ヨーロッパで購入した美術品などが日本への帰国途中に沈没してしまい、その損失を
埋めるべく贈られたのだそう。

ウィーン万博に出品した美術品が沈んでしまった!!ってことも初めて知って、
お宝が~~なんてもったいない!!って思ったんですが、
パリッシーについても初めて知りました。

ベルナール・パリッシー (1510頃-1590)
フランス生まれ、ルネサンス期の陶工、技術・科学者。
イタリアの名工ジラが作ったフェラーラ製の陶器コップを見たパリッシーは、 その美しさに魅せられ、上質で美しい陶器を作る研究を始めました。日夜実験を繰り返し、 生活費は使い果たし困窮しながらも15年ほどの歳月をかけ、ついに、 魚や蛇などを写実的に表した独自の陶器《田園風陶器》を完成させました。
(展覧会のリーフレットより)

へーそんな昔の人なのね、知らなかったなーって、音声ガイド聴いていたら、
明治の教科書(?)にパリッシーの伝記が掲載されて、明治の日本人には、
パリッシーのことは広く知られていたそうです。
品質の高い陶器を作るために私財をなげうって薪を買い、薪がなくなれば家具を薪にくべ、 痩せこけ、骨と皮だけになりながらも、研究を継続するパリッシーの姿に、 明治の人々の心は動かされたのでした。

エミール・ガレ、ルネ・ラリックらもパリッシーから多大な影響を受けたそうで、
ガレを称して「20世紀のパリッシー」とする論評もあった程だそう。

そして、世界を驚かせた宮川香山の高浮彫の作品が並んでいるのは迫力でした。

宮川香山(1842-1916)
京都眞葛ヶ原の陶工の家に生まれた宮川香山は、 1970(明治3)年に輸出用陶磁器の制作の為に横浜に移住。 以降、香山のつくりだすリアルな彫刻を施した高浮彫をはじめとする作品は、 国内外の主要な博覧会や展覧会で受賞を重ね世界各地で絶賛されました。
(チラシ中面より)

世界を驚かせた「眞葛焼」ですが、香山没後、二代、三代に引き継がれましたが、
1945(昭和20)年5月の横浜大空襲で窯が破壊され、家族・従業員の多くが戦死。
戦後、四代香山によって復興が試みられるも、1959(昭和34)年の四代死去によって
80余年におよぶ眞葛焼の歴史はその幕を閉じました。
そして、作品のほとんどは海外に売られ、
日本国内に残された作品はごくわずかだったことから、眞葛焼は
「幻の焼き物」となり、香山の存在は忘れられていったそう。

近年、個人コレクターたちの努力によって海外から里帰りする作品が増え、
再評価の動きが急速に進んでいるとのこと。(リーフレットより)

ゴテゴテして趣味じゃない‥‥って思っていたんですが、
やはりこれだけの精巧で緻密で大きな作品を見せられると、
すごい!!と感心して見入ってしまいます。

鷹の羽の繊細な表現、ゴツゴツした岩や、からまっている植物、
そして、壺に描かれた文様のなんと細かく美しいこと!!

1877(明治10)年、殖産興業政策を推し進めるために開催された
第一回内国勧業博覧会に出品された香山の壺は、
明治天皇が思わず手を触れて鑑賞したほどだったそう。

1881(明治14)年の第二回内国勧業博覧会に出品された
渡り蟹の鉢《褐釉蟹貼付台付鉢》は迫力でした。
東京国立博物館蔵で、重要文化財になっているものだそう。
(6月28日(日)までの展示)

高浮彫で世界を驚かせた香山ですが、1882(明治15)年頃から
釉薬の下に絵を描く技法「釉下彩」の研究に没頭するようになったそう。

これは、外国人の趣味がだんだん濃厚に飽きて、清楚でシンプルな陶器が
次第に好まれるようになってきていた時代のニーズに合わせて表現を変えたと。

そうして作られた釉下彩の作品は、ガラスのような質感にも見える
光沢のあるツルリとした表面の下に繊細な絵が描かれていて、
高浮彫の作品とは真逆と言ってもいいような表現で驚きます。

そして最晩年の作品《琅玕釉蟹付花瓶》
小さな蟹が花瓶のふちによじのぼってきたかのような、
渋い作品で、高浮彫なのにゴテゴテしてなくていいなぁーと。

宮川香山について初めて知って、その超絶技巧に驚きましたが、
この展覧会「宮川香山とアール・ヌーヴォー」って副題で、
宮川香山の作品と、エミール・ガレやラリックのガラス作品も
一緒に展示されているんです。

アール・ヌーヴォーを代表するガラス作家・エミール・ガレ、
私も大好きな作家ですが、宮川香山の高浮彫の作品と並ぶと、
なんと似ていることかと!

ルネ・ラリックの魚とあぶく模様の青い大きな皿《ロスコフ》
気に入りました!(成田美術館蔵だそう)

そして、明治時代、ヤマザキマザック美術館があるあたりは、
輸出向け陶磁器産業の中心地だったと。
現在の株式会社ノリタケカンパニーリミテドをつくった「森村組」の
デザイン画帖と製品が展示されていました。
「金点盛」と言われる凸模様に金を塗りかぶせた豪華な装飾と
アール・ヌーヴォー風の優美な曲線が素敵です。
これらの陶磁器も「世界に挑んだ明治の美」なんでしょうね。

さすがヤマザキマザック美術館、パリッシーや、宮川香山を知って、
大好きなエミール・ガレやラリックについても新しい側面を見たようで、
とても良かったです。

そしてもちろん、私の大好きなロココ部屋、堪能してきました。
(この部屋、写真OKなんですよー!!)

正面に展示されているのは、ロココを代表する画家・ヴァトーの作品
《夏の木陰》
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この部屋が素敵!! ヤマザキマザック美術館を代表する
フランソワ・ブーシェの大きな作品《アウロラとケファロス》をはじめ、
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ナティエ、ラルジリエール、ルブラン、ドラクロアなどが並びます。
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この部屋で5月22日(金)に「クラシックバレエの夕べ」が開かれたんですって?!
うわー!なんて素敵!行きたかったなぁ!!
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(中日新聞2015年5月24日(土)朝刊の記事)


ヤマザキマザック美術館のHP: http://www.mazak-art.com

過去記事
ヤマザキマザック美術館: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-01-24
ヤマザキマザック美術館「ロココの雅」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-08-28
ヤマザキマザック美術館「エマイユの煌き」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2012-08-09
ヤマザキマザック美術館「フランスの美しい風景」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-05-29
ヤマザキマザック美術館「森の夢」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-07-28
ヤマザキマザック美術館「動く絵」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-02-06
ヤマザキマザック美術館「ポール・デルヴォーとベルギー近代絵画」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-09-10
ヤマザキマザック美術館「名古屋ひつじ物語」: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-01-15
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