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豊田市美術館「蜘蛛の糸」展 [美術]

今頃になってですが、昨年12月25日(日)、
豊田市美術館「蜘蛛の糸」展に行ってきたことを。
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「クモがつむぐ美の系譜―江戸から現代へ」
という副題がついています。

豊田市美術館の展覧会はいつもとてもいいことを知っていますし、
ツイッターで塩田千春のインスタレーション画像が
流れてきたりしていたので、いいなぁ、行きたいなーとは
思っていたのですが、ついついズルズルと‥‥で、
もうあきらめようかなぁとも思ったのですが、
最終日、翌週は元旦でやることもいっぱいある
(まだ年賀状も終わってなかった)っていうのに、
出かけちゃいました! 日曜だし、電車にした方がいいかなとも
思ったけど、Google Mapsで調べたら、我が家から豊田市美術館まで、
電車で2時間5分、車で1時間15分。これはやっぱり車かな。
ま、私の場合、高速道路の途中で休憩したりするので、
もう少しかかるんですが‥‥。

豊田市美術館は、いかにも車の街らしく、広い駐車場があります。
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6月23日(木)に「デトロイト美術館展」を見に来た時よりは空いているかな。
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-06-27

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観覧券を買おうと、美術館のチケット売り場で財布を出したら、
まずクジをひいてくださいって言われて、ひいたら、
なんと観覧券が当たっちゃいました!!
観覧料一般1,000円だったんですが、ラッキー!!

2階から見てくださいって言われて行くと、
塩田千春のインスタレーション《夢のあと》
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ツイッターで画像も流れてきていましたが、
やはりこの大きさは迫力です!!!
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黒い糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされた中に、
白いドレスが10着、吊り下げられています。
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インスタレーションを見ながら階段を上がり3階へ行くと、
まず、新宮晋の絵本《くも》の絵が並んでいます。

蜘蛛の生態や、あらためて蜘蛛の巣の形の美しさに気づかされます。
蜘蛛を嫌う人は多いですね。私は、そんなに嫌いでもないですが、
もちろん好きでもないです。
でも、蜘蛛や蜘蛛の巣をこんなに美しく描いたり、
工芸のデザインにした作品たちを見て、その魅力に驚かされました。
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熊谷守一《地蜘蛛》1963年 メナード美術館蔵
最初見た時、これってアリじゃないの?って思ったんですよ、
蜘蛛の巣も描いてないですし。でも、同じ部屋に展示してあった
猪瀬光の写真(チラシ裏面の熊谷守一の下の画像)を見て、
なるほど、これは蟻じゃなくて蜘蛛だわって。

江戸時代の《鍋島色絵蜘蛛之巣梅花散らし文八角》のモダンなデザイン!!

江戸時代の《槇に蜘蛛巣蒔絵螺鈿手箱》もスゴイ!!
気味が悪いと思われがちな蜘蛛の体が螺鈿で、
金で描かれた蜘蛛の巣のなんと豪華で美しいこと!!

チラシ裏面に載っている
明治時代の旭玉山《葛に蜘蛛の巣図文庫》清水三年坂美術館蔵
ホンモノが貼り付いているかのようなリアルな蜘蛛の巣は、
象牙(鯨ひげという説もあるそう)でできていると、
2015年11月に岐阜県現代陶芸美術館で見た
「超絶技巧! 明治工芸の粋」の図録で知りました。
(図録まで買ったのに、ブログに感想が書けておりません(^^;)

旭玉山(1843-1923)は、象牙の髑髏で知られた方ですね。
名古屋ボストン美術館「ダブル・インパクト」展で見た
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-08-30
ガイコツ《人体骨格》は鹿の角でできていましたが。

やはり岐阜県現代陶芸美術館「超絶技巧! 明治工芸の粋」展で見た
正阿弥勝義《古瓦鳩香炉》清水三年坂美術館蔵
瓦のように見えるけど鉄でできているんですね。

外の景色が見られるゆるやかなスロープを通って次の展示室へ行くと、

《ヤツデに蜘蛛の巣模様羽織》昭和初期 池田重子コレクション蔵
おぉー、このリアルな蜘蛛の巣を羽織のデザインにするのがスゴイ!

上村松園の嫉妬に狂う女を描いた《焔》の下絵が展示されていました。
残念ながら本画は図版でしたが、着物の蜘蛛の巣模様が
下絵では着物の裾に少しだけしか描かれていなくて、
本画で加えられたものだとわかります。そのため
女性の狂気がさらに増して凄絶な雰囲気になっているなと。
蜘蛛の巣のスケッチも展示されていました。
《焔》のためのスケッチかは不明だそうですが。

橘小夢《刺青》1923年 谷崎潤一郎の小説を題材にした木版画
おぉ、お耽美!! こういうアブナイ世界、私結構好きですけど、

森村泰昌《セルフポートレイト(女優)/ワカオアヤコとしての私》1996年
になると‥‥1966年の映画「刺青」の主演女優、若尾文子に扮した
セルフポートレイトってことですが‥‥ちょっと生々しすぎて。

月岡芳年《奥州安達がはらひとつ家の図》は怖くてアブナイ絵だけど、
どこか美しくてドキドキしちゃうところがあるけど、

荒木経惟の《緊縛シリーズ》の写真は、うーん‥‥
エロス? なんか生々しくてギャグのようにも見えちゃうんだけど。

岐阜県美術館が所蔵する山本芳翠《裸婦》1880年頃 が
展示されていたのにはちょっと驚きました。
日本人による油彩裸体画として最初期の、
重要文化財に指定されたこの作品、
岐阜県美術館の所蔵作品展でよく見ていますが、
豊田市美術館の明るい展示室で見るとまた違った印象!
今まで白い布と裸婦しか見てませんでしたが、バックの森や、
女性が見ている蜘蛛の巣や蜘蛛に気づくことができました!

愛知県美術館からは、
木村定三コレクションの英一蝶《王子喬図》や、
拾得が箒で蜘蛛の巣を掃っているというユニークな
曽我蕭白《寒山拾得図》が来てました。

工藤哲巳《無限の糸の中のマルセル・デュシャン。
プログラムされた未来と記録された記憶の間での瞑想》1977年
も、愛知県美術館のコレクション展「線の美学」で見て
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
なんかガラクタみたいって印象深かったヤツだ!

山口薫《孤独者のすまい》1955年 群馬県立近代美術館蔵
(チラシ裏面左中段)真ん中に描かれた蜘蛛がなんとも
愛嬌があるというか、カワイイというか‥‥

一見、街灯の写真かと思ってしまった小柳裕の作品が
2点並んでいました。カンヴァスに油彩で描かれているそう。
光っていると見えるところは、カンヴァス地が何も塗らずに
そのまま残してある部分だとわかると、
何も塗っていないカンヴァスが光っているように見える
絵の虚構?みたいなことに気づかされます。
《A Method/Source of Light 16-5》2016年の
街灯に照らされる蜘蛛の巣と蜘蛛がとてもリアル。

部屋で鑑賞していたら、隣の部屋のカラクリが始まりますよ
と教えてもらったので見に行くと、
ムットーニ《蜘蛛の糸》 本展覧会のために制作されたという作品
機械仕掛けのからくり時計の中で、蜘蛛の糸をよじ登るのは、
スーツ姿の男。なんか懐かしい見世物って雰囲気。
からくりをやっていない時の時計から漏れる光の演出も良かった。

展示室を出て、階段を降りると、そこに展示してあったのは
戸谷成雄の巨大な彫刻《雷神―09》 撮影可でした。
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1階の「蜘蛛の糸」展示室へ行く前に、
2階の常設展の展示室5を見ました。
2017年が酉年のためか、速水御舟の《鶏》1925年 や、
コンスタンティン・ブランクーシのブロンズ彫刻
《雄鶏》1924年(1972年鋳造)が展示されていました。
奥には豊田市美術館が誇る
クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》1913/14年や、
エゴン・シーレ《カール・グリュンヴァルトの肖像》1917年も、
展示されていました。

1階の展示室の前にあった
青木野枝《Untitled(NA84-1)》豊田市美術館蔵 撮影可でした。
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1階の「蜘蛛の糸」展示室ではまず
芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』が発表された
児童向け文芸雑誌『赤い鳥』の創刊号(1918年/大正7年)が
展示されていました。(但しこれは1986年の復刻版だそう)

壁では大藤信郎の白黒影絵アニメーション《蜘蛛の絲》が上映されており、

部屋の一角が藪内佐斗司《蜘蛛のいと》の展示になっていました。
カンダタや地獄の罪人たちが赤ん坊の姿で表現されていて、
この世へ生まれてくる場面のようにも見えました。

次の部屋には鴨居玲の《蜘蛛の糸》と題された絵が3点ありました。
どれもおどろおどろしい。カンダタはまだ地獄の血の池に浸かっていて、
蜘蛛の糸につかまった瞬間で、もう他の罪人たちも集まってきています。

でもこの部屋でものすごいインパクトだったのが
青木千絵の立体《BODY 08-2 ―昇華―》
足はリアルなのに、胴体が大木のようになって天井へ伸びています。
よく見ると、足は床スレスレに浮いているんです!!
漆でできているそう。

その隣の部屋は小泉明郎の映像
《悲劇の誕生(インスタレーション・ヴァージョン)》
男性が、ニーチェの『反キリスト者』を朗読していると、
たくさんの「腕」が彼にいたずらをしてきます。
顔をいじくったり、本をくしゃくしゃにしたり、
いたずらはだんだんエスカレートしていきます。

次の部屋へ進むと、草間彌生《No.AB.》1959年 豊田市美術館蔵
の巨大な絵(210.3×414.4cm)の前に椅子が並べられていて、
チケットを受け取った時にも案内されたのですが、
月一回行われているという
「作品をゆっくり読みとくギャラリートーク」が始まるところ
だったので、せっかくだからと参加しました。
ガイドボランティアの方に言われて、この絵をよく見て、
どんな印象を持ったか発表し合うのですが、
「木の幹の表面のよう」とか「海のうねりのよう」とかって意見が出て、
そうかー、皆さんイメージが豊かだなぁ~と。うーん私は、
これはドットを描いていったんじゃなくて、白い網目を描いていったのね
みたいな即物的(?)なことしか浮かんできませんでした(^^;)>
この絵、最初に黒で塗りつぶして、それから薄い白を塗り、そして、
無数の白い網目を描いていったのだそう。
でも、そう言われても、私には黒には見えなくて、モスグリーン色に
見えるんですけどー。

この部屋には田中敦子《'94B》1994年 豊田市美術館蔵
巨大な(300.0×510.0)絵もあって、強烈な色彩が
草間彌生のモノクロの絵と対照的で、インパクトありました。

このあたりから、少し見るのが疲れてきたかな。

秋山陽の大きな陶の作品《Heterophony 4》と
壁に並んだ《交信》という作品は、
クモの巣を鉄粉で紙に定着させたというもので、
蜘蛛の糸の造形の美しさに驚きます。
《交信》というタイトルも、自然との交信、
陶の作品との共鳴みたいなものを感じていいなぁと。

浅野弥衛の作品、線が詩的な雰囲気でいいなぁってくらいで
見て行ってしまったんですが、後で図録で
これらは油彩だって知って驚いているところです。

雪原の轍(わだち)のようだなぁって見た狗巻賢二の作品たちは、
白い油絵具を何度も塗る行為によって描(?)かれているそう。

さかぎしよしおうの造形も、磁土をスポイトから1滴ずつ垂らして
積み上げていくという作業を繰り返して作られているそう。

額田宣彦の一見コンピュータで作ったパターンかと思うような
平面作品、全てフリーハンドで描かれているとのこと。うーん‥‥

小川信治の、一見写真を対象にしてプリントしたのかと思う作品は、
実は紙に鉛筆で描かれているのだと!!
かなり近寄って見ないと描かれているとわかりません。
写真のキズなども描いていて精緻な描写力すごいけど‥‥

このあたりの展示「第5章 蜘蛛の巣のように立ち現れるものたち」
というテーマで「蜘蛛の巧妙で精巧な網づくりを彷彿とさせる
アーティストたちの多様な表現」が紹介されているそう。
‥‥ご苦労様です‥‥みたいな印象を持ってしまった(^^;)>

そして最終章の「第6章 見えない糸、希望の糸」の展示では、
人工合成クモ糸繊維QMONOS(TM)を用いたジャケットのプロトタイプ
「MOON PARKA(TM)」とか、

加藤翼の、大勢の人がロープで建造物を引き起こしたりする
プロジェクトのヴィデオが展示されていましたが、
私あまり映像作品は好きでないので、
このあたりかなり素通りしてしまいましたm(__)m
盛りだくさんの展覧会でとても満足です。

1階の常設展の展示室では、小堀四郎、宮脇晴の油彩と、
宮脇綾子のアップリケが展示されていました。
小堀四郎という画家、私知りませんでしたが、
確かな描写力もすごいけど、どこか深くて静謐さを感じさせる絵で、
いいなぁと思いました。

常設展の展示室の横のコーナーには
小泉明郎《インド人よ来たれ/これは茶番だ》2012年 がありました。
パル判事が書いた『パル判決書』を読む男性を
ジャマするたくさんの腕。モニタの周囲に散らかった紙が、
まるで画面から放り投げられたようでもあります。
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本展にあった、本を読む男性をジャマするたくさんの腕の映像
《悲劇の誕生》の方ですね。

いつ来ても、豊田市美術館の建物、素敵だなぁと。
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高橋節郎館も行ってみました。「蜘蛛の糸」展の期間中は、
「琴線」というテーマで、高橋節郎の漆の作品の線に注目して、
併せて豊田市美術館蔵の線をイメージさせる現代美術が
展示してありました。
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16:30より、塩田千春のインスタレーションの特別ライトアップが
あるとのことで、もう一度撮影してきました。
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この展覧会良かったです。観覧料が無料になったこともあって、
図録買ってしまいました!  2,700円
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豊田市美術館のHP: http://www.museum.toyota.aichi.jp/

--オマケ--
赤い帽子をかぶったピカチュウ発見!!
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残念ながら逃げられてしまいましたー

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