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岐阜県現代陶芸美術館「コレクション×キュレーター」展 [美術]

4月8日(日)、岐阜県現代陶芸美術館へ行きました。
「コレクション×キュレーター
 7人の学芸員が紹介するコレクションの魅力」展の最終日。
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岐阜県現代陶芸美術館のチラシはいつも、とても素敵で豪華
なんですが、今回は予算がなかったのか?
もちろんデザイン素敵ですが、裏面はモノクロだし、紙も薄いww
(なので、スキャンしたら裏が透けちゃってますー)
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以下、裏面の文章より
「美術館の活動」と聞いて、多くの人々が思い浮かべるのは、企画展ではないでしょうか。

ハイ、「ミュシャ展」に66万人入場したとか、
「国宝」展は62万人だとかって話題になりますよね。

もちろん企画展は重要ですが、例えばルーブル美術館にある 「モナ・リザ」のことを思えば、所蔵作品が美術館の性格を表し、 美術館活動の基本にあることに思い至ることができるでしょう。 美術館の基本的な使命は、美術作品を体系的に収集し、保存し、 来館者に公開し、教育普及活動を行っていくことにあります。
こうした美術館活動は、学芸員(キュレーター)と呼ばれる職員たちの 地道な仕事によって支えられています。 当館にも、館長を含め、学芸員が7名います。 それぞれ専門としてきた分野も異なり、 興味や研究の対象も少しずつ異なっています。

という、岐阜県現代陶芸美術館の7人の学芸員が、
コレクションの中から、それぞれの視点で作品を選んで
展示する展覧会。

会期中の毎週日曜日14:00~学芸員による展示解説があり、
最終日の4月8日は館長の高橋秀治氏が担当されました。

あちこちで春祭りが開催されている日で、
多治見でも陶器まつりが開催されているとのことでしたので、
セラミックパークMINOも混んでいるかな?
って思ったら、いつもに増して閑散としていまして‥‥
(陶器まつりは多治見の街中―本町オリベストリート一帯―でやってます)

高橋秀治氏の解説に集まったのは4名だけという、
なんとも申し訳ないような‥‥

最初の展示室が館長・高橋秀治氏が担当された、
第1章 新収蔵品を通して美術館の活動を知る=美術館の魅力は所蔵品から
ここに展示されている作品はすべて、平成28年度に
岐阜県現代陶芸美術館の収蔵品となったものだそう。

(以下、あくまで私の記憶で書いてますので、
聞き違い等もあるかもしれません)
美術館が作品を収集するには、購入、寄贈、そして
他団体からの移管という方法があるそう。
他に期間限定での寄託ということもあるとか。

ということで、まず購入した作品
フィンランド・アラビア社の
ルート・ブルックの陶板付きデスクや、鉢など。
ちょっと素朴な詩情を感じる作風の方だなぁと見ました。

そして、私が素敵!!って見たのは、
ミントン《金彩透し彫りボーダー パツィオパット天使図飾皿》1898/1905
イギリスの今はもうない陶磁器メーカー・ミントンの
縁は透かし彫りに金がキラキラで、中央に、パツィオパットという
カメオのようなブルーに半透明の陶土を盛り上げる方法で
天使が描かれている皿が並んでいまして、なんとも豪華でした。

ロイヤルコペンハーゲン《結晶釉北極熊トレイ》1925
氷の海に飛び込もうとしている北極熊。
結晶釉で表現されている氷の質感がとてもきれいです。

そして、寄贈
人間国宝の加藤孝造氏から寄贈された《志野白帯文壺》1962頃と、
チラシ裏面の中央に使われている《赤絵輪連文壺》1958頃
写真がモノクロなので残念なんですが、へー加藤孝造さん
こんな鮮やかな壺も作っているの?ってちょっと驚き。
(抹茶茶碗のワビサビがイマイチわからない私はこういうキレイな壺の方が好き)

加藤孝造氏からは自作の作品だけでなく、師にあたる
荒川豊蔵の作品も寄贈いただいたとのことで、3点並んでいました。

名古屋のギャラリー「ハセガワアート」より寄贈されたという
人間国宝・鈴木藏《志野花器》1980 などや

岐阜県文化振興課より移管という形で収蔵された
鯉江良二《ミザル・キカザル・イワザル》2002
鯉江良二の作品にしてはフツーの直方体の壺っぽい?と見たら、
やっぱり、なんか不思議でしたー

第2章 やきものってなんだ? 陶芸ってなんだ?
~やきものに広がる世界を楽しむ 花井素子


前回の「1964」展の担当学芸員だった花井素子さん
この美術館で一番長い学芸員の方だとか。
部屋の左側に並ぶのが、河井寛次郎、三輪壽雪、塚本快示、小山冨士夫
といった作家の鉢や壺

右側の壁に並ぶのが、森正洋デザインの無印良品の器や、
アラビア社のカティ・トゥオミネン=ニイットゥラ デザインの
プロトタイプ(ストーリーバード)と製品という量産品のやきもの

そして、中央のガラスケースに、
富本憲吉《色絵金銀彩四弁花模様飾壺》1960(チラシ表面3段目)
このキラキラの作品はここでよく展示されていて、
ボランティアスタッフによるギャラリートークで、
当館きってのお宝って話は聞いたことがありましたが、
この美術館で一番高い作品で、購入にあたって議会の承認も受けていると。
5,000万円以上は議会の承認が必要だそうですが、この壺は8,000万円。
議会では壺一つに‥‥って意見もあったそうです。

富本憲吉は奈良のお金持ちの家に生まれて、私費でロンドンへ留学。
ウィリアム・モリスの工芸運動に影響を受けたんだそう。
‥‥あ、そういわれれば、この壺の模様、モリスのデザインと
通じるものがありますね!

第3章 明治陶芸とは何か 立花昭

明治期の超絶技巧って大きな作品が並んでいます。
去年見た「明治有田超絶の美」展のよう。
輸出用、万国博覧会用に、技巧を凝らしたものが作られたのだと。

宮川香山(初代)《浮彫蓮子白鷺翡翠図花瓶》明治時代前期 は、
それまでの輸出用の金をたくさん使ったものは、材料費が高くつくので、
こういった浮き彫りにしたそうなんだけど、
やっぱり手間がかかって高くなったとか。

西浦焼というのを、昨年秋「引き継がれるコレクター魂」展
見に来た時に、ショップのギャラリーで展示してあったのを見て
知ったんですが、今回いくつか展示してありました。
西浦圓治(五代)《上絵金彩染付四季図大長頸壺》明治時代前期-中期
(チラシ表面左上)
写真では大きさがわからないんですけど、大きさにまず驚きます。
武士や鷹などが描かれているのも日本趣味っぽさを狙ったのかなとか。

第4章 新たな美の生まれるところ 山口敦子

「アール・ヌーヴォーの装飾磁器」展 でも見た
ローゼンブルフのティーポット(チラシ表面右上)や、
コーヒーポット、花器やカップ&ソーサーがとても素敵!!

そして、「フランス印象派の陶磁器」展 で知った
北斎漫画から図柄をとった
フェリックス・ブラックモン
《セルヴィス・ルソー》の皿や脚付鉢もありました。
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(その展覧会でアンケートに答えてもらったポストカード)

第5章 現代アートと陶芸 岡田潔

用を離れた、アートとしての陶芸
2015年の「きになるかたち」展 で展示されていた
(この展示も全て所蔵品で構成されていて、
コレクションの質と量に驚いたんですけど)
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中島晴美《反転しながら増殖する形態》2009
(「きになるかたち」展のチラシで使われているのは
《苦闘する形態》1995 の方ですが)
重松あゆみ《骨の耳'92-14》1992(チラシでは一部切れてます)
斎木俊秀《三つ足(フラワーベース)》1995
そして、宇宙服を着た赤ちゃんが3体並んでいる
林茂樹《Q.P》2006
などが展示されていました。
陶芸の技術(土とか釉薬とか)的なことにはあまり興味のない
(わからない)私には、こういう現代アート的な陶芸、面白いです。

第6章 種と大地 林いづみ

一番若い学芸員の方だとか。

杉浦康益のひまわり3部作―ひまわりの花と種ができたところと、
朽ちた殻の姿の大きな陶の作品や、
自然を感じる素焼きの風合いと、ちょっとユーモラスな形の
ユン-ドン・ナム《種》1989
カルロ・ザウリ《耕地》1976 (チラシ表面左下)など、
陶芸って土からできてるんだなーなんて感じる作品が
展示されていました。

第7章 加守田章二の陶芸 顧問 榎本徹

前館長の榎本徹氏が担当した、最後の部屋は、
加守田章二の作品が4点並んでいました。
《灰釉大鉢》1966頃
《曲線文扁壷》1970(チラシ裏面左上)
《彩色角壷》1972年
《壷》1980年
これ一人の作家が作ったの? ってほど違う作品。

陶芸の大家も知らなかった私ですが、
「コレクション×クロニクル」展 で《灰釉大鉢》を見て、
大きな鉢なのに、シャープですごいなーって迫力は感じました。
《曲線文扁壷》もスゴイ‥‥って(語彙が貧しくてスミマセン)
それが《彩色角壷》になると、なんかカワイイ?って感じがして、
最後の《壷》は模様がデザイン的で洗練された雰囲気も。

加守田章二は若くして亡くなられたそうなんですが、
作風の変遷がわかるそれぞれの時代の代表作が
コレクションに入っているのは美術館として誇れることだと。

岐阜県現代陶芸美術館へはもう何度も来てますから、
見たことがある作品も多かったんですが、
やっぱり、コレクションの質と量、すごいです。

そして今回、それぞれの学芸員の興味や研究対象について、
知ることができて、展覧会を見る楽しみが一つ増えた気がします。


今年は桜が早く咲いて、我が家の周辺ではほとんど散ってしまった
状態だったんですが、ここではまだ残っていました。
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山も新緑になりつつありますね。
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駐車場からのギャラリーウォークから見る渓には
ミツバツツジが鮮やかに咲いていました。
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岐阜県現代陶芸美術館の展覧会の過去記事:

岐阜県現代陶芸美術館「1964」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2018-01-28

岐阜県現代陶芸美術館「引き継がれるコレクター魂」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2017-10-29

岐阜県現代陶芸美術館「明治有田超絶の美」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2017-09-07

岐阜県現代陶芸美術館「コレクション×クロニクル」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2017-06-02

岐阜県現代陶芸美術館「ふりそそぐ白の世界」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-12-13

岐阜県現代陶芸美術館「石黒宗麿」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11

岐阜県現代陶芸美術館「土の冒険のぼうけん」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26

岐阜県現代陶芸美術館が主催する魅力発信事業の講演会
佐藤卓講演会「モダンデザインの時代から始まった、デザインに対する誤解。」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-07-14

岐阜県現代陶芸美術館「リフレクション」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-06-17

岐阜県現代陶芸美術館「セラミックス・ジャパン」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16

岐阜県現代陶芸美術館「山田光」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-04-30

岐阜県現代陶芸美術館「アール・ヌーヴォーの装飾磁器」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-04-28

感想が書けておりませんが、
「超絶技巧! 明治工芸の粋」と、
同時開催されていた「吉田喜彦とうつくしいものたち」見てます。

岐阜県現代陶芸美術館「きになるかたち」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-06-27
同時期に開催されていた「リトルガーデン」展のことも書いてます

岐阜県現代陶芸美術館「世界とつながる本当の方法」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-03-20

岐阜県現代陶芸美術館「大織部展」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-10-15

大織部展と同時にセラミックパークMINOで開催されていた
国際陶磁器フェスティバル美濃'14
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-10-17

岐阜県現代陶芸美術館「フランス印象派の陶磁器」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-08-30

岐阜県現代陶芸美術館「ラテン!」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-06-18-1

岐阜県現代陶芸美術館「デミタス コスモス」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-06-18

岐阜県現代陶芸美術館「陶芸の魅力×アートのドキドキ」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-07-09

ただ、申し訳ないですが、これらの展覧会、私は岐阜県美術館の
後援会員証で見せてもらっているので、観覧料を払ったことがありません(^^;>
岐阜県美術館後援会の年会費3,000円はなんておトクなんでしょう!!
(岐阜県現代陶芸美術館友の会(一般会員年会費3,000円)に入会されても、
岐阜県美術館の展覧会を各1回ずつ無料で見られますよ!!
どちらも、どなたでも入会できます)

岐阜県現代陶芸美術館: http://www.cpm-gifu.jp/museum/

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