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岐阜県美術館「曝涼展」 [美術]

4月22日(日)、岐阜県美術館へ行ってきました。

「曝涼(ばくりょう)展」をやっています。
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「曝涼(ばくりょう)」とは、
天気のよい日に図書や衣類、道具などを日に曝して風をとおす
「虫干し」のこと。

岐阜県美術館は2018年11月4日から1年間、建物のリノベーション期間に入ります。 その間、作品を安全な場所に移動するにあたって、作品を「虫干し」します。 タイトルの「曝涼」とは、天気のよい日に図書や衣類、道具などを日に曝して 風をとおす「虫干し」のこと。収蔵庫から作品を順次「虫干し」のように展示して いきます。中には普段お目にかける機会の少ない作品もあるかもしれません。 何がでるかはお楽しみです。他にも、作品の採寸・点検など作品の 「知られざる日常生活」を合わせてご紹介します。(チラシ裏面の文より)
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‥‥ってことで、まぁこの展覧会、私も岐阜県美術館の後援会員で、
全ての企画展が一度ずつ無料で見られるってことでなければ、
行かなかったかもしれません。この日は岐阜でついでもあったので。
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展示室入口で後援会員証を見せると、
「今回の展示は作品にキャプションがついてないので」と、
出品作品の目録がもらえました。

まず、池田虹影(1892-1956)《家鴨》1912年
飼われている鴨たちが精細に穏やかに描かれていて素敵。
こういう絵、私の好みです。

そして、今村紫紅(1880-1916)《蟠龍》1915頃

垣内右嶙(1825-1891)《楊柳観音》と《山水》
どちらも制作年不詳
このあたりの掛け軸、箱も一緒に展示してあって、
《山水》は箱に書かれているタイトルと違うけど、
収蔵した時――次の展示の垣内雲嶙との作品と共に、高山の
飛騨・世界生活文化センター所蔵だったものが移管された――から
この状態だったとか、各作品に詳しい説明があって良かったです。
学芸員の方の熱意を感じました。
(あ、うろ覚えで書いてますので、間違って記憶しているかもです)

垣内雲嶙(1845-1919)《鍾馗》《水墨山水》《雛図》
雲嶙は右嶙の息子なんだそうですね。飛騨高山の出身で、四条派を学んだと。

狩野伊川院栄信(1775-1828)《松樹棲鶴》《南極壽星》《竹間遊鶴》
三幅対になった掛け軸。
川合玉堂の小学校の同級生で支援者でもあった杉山半次郎氏の息子
杉山勝三氏からの寄贈だそう。

で、次のなんとも上品な中国の人物の絵が、
川合玉堂(1873-1957)《杜子美図》1905
「杜子美」とは杜甫のことなんですね!
次に並んでいた《鍾馗図》1902 も川合玉堂で、共に杉山勝三氏の寄贈。

上品な《杜子美図》とはちょっと違った勢いのある筆の線で描かれた
《鍾馗図》は、杉山氏の息子誕生のお祝いとして描かれたと。
あ、この絵と、川合玉堂が杉山半次郎宛に書いた手紙、
岐阜県美術館で2013年(平成25年)に開催された
「素顔の玉堂~川合玉堂と彼を支えた人びと~」展で見たなと。
(出品リスト見たら、その展覧会に《杜子美図》も出てました)
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2013年の「素顔の玉堂~川合玉堂と彼を支えた人びと~」展のチラシ
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所蔵品展の方でも杉山半次郎氏が収集して勝三氏から寄贈された
杉山半次郎コレクションが展示されていて、
玉堂の《藍川漁火図》1893 《晩帰》1899頃 などや、
松尾芭蕉の真跡《山かげや》1688 も展示されていました。

杉山半次郎氏(1873・明治6-1960・昭和35)は、
岐阜市の杉山半七(はんしち)の長男として生まれ、 後に半七が金華山(きんかざん)のふもとで営む料亭旅館「萬松館」(ばんしょうかん)を継ぎました。 長良川の鵜飼を見るために岐阜に訪れて萬松館に滞在した文化人は数多く、 風流を好んだ半次郎は玄中庵(げんちゅうあん)と号して、それらの美術家や文学者と 交友しました。特に川合玉堂とは、岐阜尋常高等小学校(現・岐阜市立岐阜小学校)の 同級生でもあり、親しい付き合いでした。その後、杉山家は萬松館の経営から 離れましたが、半次郎氏と玉堂との交友関係は晩年まで続いていたことが 書簡から確認できます。
(所蔵品展の出品リストより)

ついでに‥‥2013年「素顔の玉堂」展と同時期に、
玉堂の生誕地に建つ「一宮市立玉堂記念木曽川図書館」でやっていた
「川合玉堂 ふるさとの風景」展
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今は閉館した大松美術館所蔵の玉堂作品なども多く来ていました。
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玉舎春輝(1880-1948)《磯辺》1933 四曲の低い屏風
海がリアルだけど、詩情が感じられるように描かれていていいなと。
玉舎春輝の《貴妃追夢》1925 は所蔵品展でよく見るけど、
この《磯辺》は初めて?かな。新しく作られたという
収蔵する箱も展示されていました。

そして熊谷守一(1880-1977)の墨画淡彩の掛け軸が5点!!
いいなぁ、守一。3羽の鵜が木にとまっている《鵜》1950年代 なんて、
思わず笑っちゃう。

川崎小虎(1886-1977)の房州や水郷でのスケッチシリーズが並んでいました。
‥‥うーん、私はどうも川崎小虎の絵はそんなにいいと思わないんですけどね。

そして展示室のコーナーには大きなビニール袋のテントがありました。
作品の燻蒸をするための装置。
今は昔のように有害な薬剤は使わず、窒素ガスで害虫を駆除するのだそう。

次の部屋には
土屋禮一(1946- )のわりと大きめの日本画が6点展示されていました。
土屋禮一氏の絵は《時》《輝》《水たまり》《映河》というタイトルからも
わかりますが、水に映る空とか、どこか普遍的な風景(の一部)、
茫洋とした‥‥ちょっと抽象画にも見えてしまうような、そんな雰囲気が
いいですね。

李禹煥(リ ウーファン)(1936- ) の3枚組の大きな作品《風と共に》1987
ブルーの線が並んだ《線より》は所蔵品展でわりと見るけど、
こんな大きな作品も持ってたのねーって。

白髪一雄(1924-2008)《地魔星雲裏金剛》1960
足で描く画家の迫力のある絵。赤い絵の具が強烈です。
(公財)岐阜県美術振興会・安藤基金より寄贈された作品
岐阜県美術館には安藤基金から寄贈された現代美術の作品が多くあります。

傍島幹司(1960- )《赤と白の時間》2003 赤い画面に白い人物
人物に頭がない? 足も3本ある?? みたいにも見えて印象的な作品だった。

チラシ裏面の右2段目に使われている変形キャンバスの作品
奥村晃史(1972- )《地上の食卓》2009 

岐阜県美術館「Artのメリーゴーランド」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2010-01-10
奥村晃史さんが紹介されて、この絵も展示されていたので、
展覧会の後で美術館が購入したのかと思っていたら、
目録の寄贈者の欄に藤原洋氏ってありました。

奥村晃史さんは各務原市生まれ・在住の方なので、
各務原市中央図書館で展示されたこともあります。
奥村晃史展「すごいどうぶつ」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2012-02-22

そして展示室のコーナーに大きな机や箱などがあり、
日比野克彦(1958- )の作品が無造作に置かれていたりします。

作品の採寸・点検など、普段バックヤードで行われている作業を
紹介するコーナー。

ブログに記事が書けてないのですが、去年9月8日(金)~10月29日(日)に
岐阜県美術館で開催された「BY 80s FOR 20s」展で、
日比野克彦の《SWEATY JACKET》1982 が展示されていて、
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作品のバックのパネルで保存と修復について説明がありました。
段ボールでできているこの作品、経年劣化が進み修復が必要なんですが、
作者である館長の日比野克彦氏が修復するのはダメなんだそうです。
それは「再制作」になってしまうからと。
でも作家がどうやって制作したか、詳しいことが聞き取りできるのは
修復にはすごくいいことだと。

(この展覧会、日比野克彦の作品等が撮影可でしたし、
 日比野克彦氏の解説も聞いたし、ブログ記事にしたかったんですけどねー)

その時、「日本には海外の美術館のように専門スタッフを配置している美術館は少ない。 その中で、岐阜県美術館は保存を専門とする者と修復を専門とする者がいる、 全国的に見ても稀な美術館」だと知って、へーって感心したんですが。
そして監視係の方が書いた『ミュージアムの女』で、
岐阜県美術館では「監視業務の専門職になるには『学芸員資格』という 資格を有することが条件のひとつとして求められています。」って知って
ますますすごいって感心しました。

ミュージアムの女

ミュージアムの女

  • 作者: 宇佐江 みつこ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/09/27
  • メディア: 単行本



チラシ裏面に使われている幸野楳嶺(1844-1895)《四季草花図屏風》明治期
竹内栖鳳や上村松園、川合玉堂の師として有名な人ですね。

正直、古い小さな屏風‥‥くらいにしか見なかったんですが。
対になった片方が箱に入れられた状態で展示してあって、
へーこうやって保管してるのねと。

宗廣力三(1914-1989)の絣の着物が展示してあり、

荒川豊蔵(1844-1895)の茶碗が箱などと共にいくつか並んでいました。
地震の多い日本で、古くからの陶器が守られてきたのは、
箱文化によるところが大きいと。

並んでいる茶碗の箱を包む布が同じで、それに茶碗の写真の
カードがつけられていて、すごく大切に扱われていたんだなぁと、
感心しました。このあたりの荒川豊蔵の陶器、目録に
寄贈・高井備克氏とありました。

小山冨士夫(1900-1975)や林景正(1891-1988)の茶碗も
高井備克氏寄贈ってなってました。

山田喆(やまだ てつ)(1898-1971)の茶椀は寄贈・山田光氏
息子なんだ。

この展覧会「収蔵庫から作品を順次『虫干し』のように展示していきます。
なにがでるかはおたのしみ」ってことで、ここにレポートした作品も
展示替えされているかもしれません。
「あの作品が見たい」という目的を持って行く展覧会ではないですが、
岐阜県美術館の多彩な作品を、へーこんな作品も持ってるのね。
この作家いいなぁーなんて、掘り出し物を見つけるようなカンジで
ふらっと行ってみるのも楽しいですよね。なにより、
GW中も混雑とは無縁だと思われますし(笑)

ということで展示室を出て所蔵品展(「曝涼展」も所蔵品展なんですけど)へ。
展示室1-A室とB室を使って、坂倉新平の作品がずらりと並びます。

岐阜県美術館で2003年に開催された「クロスアート展」で、
天野裕夫と坂倉新平が紹介されていて、私、この展覧会で天野裕夫を知って、
すっかりファンになったんですよね。

今年2月に、瑞浪市陶磁資料館へ行った時、隣の市之瀬廣太記念美術館へ
行ったら、天野裕夫の彫刻がたくさん置いてあって、おまけに撮影可で
狂喜したことはこちらの記事に:
瑞浪市市之瀬廣太記念美術館の天野裕夫彫刻
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2018-02-20

坂倉新平(1934-2004)の方は‥‥正直よくわからなかったんですが、
図録は自動的に2人がセットになっていたので。
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今回の展示見ても、ブルーが気持ちのいい絵だなってのもありましたが、
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この《ブルーの根源-2》1998 とか、いいなって見ましたが、
やっぱり、よくわからないーって作品もありました。

ルドン部屋(って私が呼んでいる)展示室1-Cは、
ルドン(1840-1916)の絵やリトグラフをはじめ、
ピカソ、ブラック、ミロなども並んでました。
ルドンの油絵《アポロンの戦車》1906-07頃 の前にiPadが置かれていて、
タッチして絵にかざすと、絵の解説や絵の裏側の画像を見ることができました。
部屋の反対側の油絵の前に置かれたiPadでは、紫外線や赤外線撮影した
絵を見ることができたりと、ハイテク(って死語?)を使った試みも面白かった。

展示室1-Dは「杉山半次郎コレクション」上にも書きましたが、
川合玉堂の小学校の同級生で支援者でもあった杉山半次郎がコレクションして
岐阜県美術館に寄贈された作品が展示されていました。

展示室1-E 「志野三昧」
荒川豊蔵をはじめとする、志野の作家の作品が並ぶ、まさに「志野三昧」展
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 昭和5年(1930年)、荒川豊蔵が、岐阜県可児市の久々利大萱牟田洞で 志野の陶片を発見しました。これを機に、志野や黄瀬戸、瀬戸黒、織部と いった桃山から江戸初期のやきものが、美濃の地で焼かれたことが実証されました。
(志野三昧リーフレットより)
ってことは、岐阜県美術館の所蔵品展で
荒川豊蔵の茶碗と共に紹介されてたので知っていました。

リーフレット左が荒川豊蔵《志野茶碗 銘早春》1978-79
志野っていうと、こういう茶碗をイメージしますよね。
私もこういう茶碗好きだけど、あまりにありふれているというか、
茶道の体験などでよく使われているフツー(?)の志野茶碗と
どう違うのかなぁとか。(多分お値段はゼロが2つか3つくらい違いますよね?)

そして、へーこういうのも志野なの??って(私やきものは詳しくないんです)見た
上段の 鈴木藏(1934- )《志野花器》1985 とか、
下段の 加藤孝造(1935- )《志野陶筥》1985 なんて面白いって見ましたし、

私が岐阜県現代陶芸美術館のショップで、この人の作品欲しいなぁーって見てた
酒井博司(1960- )の《藍志野花器》2012 が出てました。

リーフレットで、酒井博司は志野の第三世代って知りました。
荒川豊蔵に始まる、加藤景秋、加藤清三、奥磯栄麓といった第一世代、 現代の美濃焼を支える鈴木藏、若尾利貞、加藤孝造、安藤日出武、吉田喜彦、 豊場惺也ら第二世代、そして21世紀に新たな志野を模索する酒井博司、 安藤工、加藤亮太郎の第三世代まで、当館の所蔵品を中心に新作も含め、約50点を ご紹介します。」

と、岐阜県美術館の多彩な所蔵品楽しみました。これだけの展覧会が
「曝涼展」の観覧料一般500円で見れちゃいます。大学生400円、高校生以下無料。
(「曝涼展」を見なかったら一般320円、大学生220円、高校生以下無料)

--オマケ--
岐阜県美術館の後はいつもの敷島珈琲店へ。
ここのホットケーキ大好きなんですが、今日は
季節限定メニューの「苺のパフェ」760円を。
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これにコーヒーを付けて1,000円でした。


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いであ

川合玉堂って美術館が青梅にあって、何度かバイクツーリングで通ってるのに
いつか行こうと思ってて、結局そのまま行けてないのです。
青梅なので生誕が関東かと思ってましたが、愛知県生まれだったのですね。(笑)

by いであ (2018-05-03 06:43) 

gillman

川合玉堂は良いですねぇ。昨年箱根の岡田美術館で彼の作品を観て感激しました。
by gillman (2018-05-03 09:52) 

しーちゃん

いであさん、コメントありがとうございます。川合玉堂、愛知県(現)一宮市木曽川町で生まれて8歳の時に一家で岐阜に移住、岐阜尋常高等小学校を卒業したそうで、岐阜県美術館が所蔵している作品も多いです。玉堂美術館は玉堂が晩年を過ごした青梅に建てられたそうですね。自然の中の風情ある美術館だと聞いて、行ってみたいと思ってます。

by しーちゃん (2018-05-04 10:21) 

しーちゃん

gillmanさん、ご訪問、コメントありがとうございます。玉堂の絵は、古き良き日本の自然や人の暮らしが描かれていて、とてもいいですね。岐阜県美術館でもよく展示されているので、嬉しいです。
by しーちゃん (2018-05-04 10:29) 

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