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豊田市美術館「ブリューゲル展」 [美術]

なかなかブログが書けないのですが、5月13日(日)に、
豊田市美術館へ行ってきたことを。

「画家一族 150年の系譜
 ブリューゲル展」をやっています。
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16世紀フランドルを代表する画家、ピーテル・ブリューゲル1世に始まり、 150年にわたって画家を生み出した、ブリューゲル一族。その系譜を 辿りながら、風景画、風俗画、花の静物画など、一族やその追随者たちが 手がけた作品を通して、16、17世紀フランドル絵画の魅力に光をあてます。
(チラシ中面より)
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チラシ中面のデザイン、家系図とからめていて、いいですね。
(クリックで拡大します)

《バベルの塔》や、農民の生活を描いた《農民の婚宴》《雪中の狩人》、
中野京子著『怖い絵』で取り上げられていた《ベツレヘムの嬰児虐殺》で
有名なブリューゲル(1世)ですが、彼には同名の息子(長男)がいて、
父親の作品を多く模写しているんですね。
次男ヤン・ブリューゲル(1世)も画家で、花の絵を多く描いたことから
「花のブリューゲル」と呼ばれるそう。
そしてその息子(ピーテル・ブリューゲル1世からいうと孫)
ヤン・ブリューゲル2世も画家、
その息子(ピーテル・ブリューゲル1世のひ孫)
アブラハム・ブリューゲルも画家、という画家一族。
(同じ名前の人がいてややこしいですが)

通常観ることのできない貴重なプライベート・コレクションで、
ほとんどが日本初出展だというこの展覧会、
チラシもA4二つ折りで力入ってます!
表面に使われているのが、ピーテル・ブリューゲル2世の
《野外での婚礼の踊り》(部分)1610年頃

裏面がヤン・ブリューゲル1世、ヤン・ブリューゲル2世
《机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇》(部分)1615-1620年頃
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ブリューゲルの絵見たかったので、この展覧会楽しみにしていました。
それに、豊田市美術館は、去年、奈良美智展に行った時に、
年間パスポート買っちゃったんですよ!!ジャコメッティ展もあるしって。
その後の「ビルディング・ロマンス」展は行けなかったんですが、
今回の展覧会へ行って、しっかりモト取れました!!
(奈良美智もジャコメッティもすごく良かったのに、ブログに感想が
書けておりません。あまりに素敵だと、力入れて書かなくちゃと
思っちゃうので、かえって書けないんですよねー。で、今回も
そうなりそうだったんですが、頑張って?書きます!)

5月13日(日)は大雨でした。でも館内はそこそこ混んでおりました。
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受付で年間パスポートを提示して、観覧券を受け取ります。
私は普段あまり音声ガイド借りないんですが、今回は
宗教や中世の風俗など説明してもらった方がいいかなと
奮発しちゃいました。520円
私は声優さんとか全く知らないのですが、ナレーターは石田彰さんだそう。
ブリューゲル一族の工房の一人って設定で、当時の工房で絵がどのように
制作されていたかなんてことも説明してくれて興味深かったです。


第一章「宗教と道徳」
ヒエロニムス・ボスが下絵を描いた版画と、
ピーテル・ブリューゲル1世が下絵を描いた版画が展示されていました。
なるほど、ブリューゲル1世が「第二のボス」と呼ばれたのも納得できます。
でも、ボスが社会を痛烈に批判したのに対して、
ブリューゲル1世はユーモアにつなげているようなところがあると。

第二章「自然へのまなざし」
ピーテル・ブリューゲル1世、ヤーコブ・グリンメル
《種をまく人のたとえがある風景》 1557年
手前に種をまく人が描かれています。種を道端にまけば鳥に食べられ、
石の上にまけば枯れ、イバラの間にまけば育たない。
良い土地にまけばたくさんの実を結ぶ。
つまりちゃんとキリストの言葉を聞きなさいという教えを描いているそう
なのですが、バックの雄大な山や大河の風景の方に目が行ってしまいます。

第三章「冬の風景」
ピーテル・ブリューゲル2世は、父の作品のコピーを多く制作したそう。
そんな作品《鳥罠》1601年(チラシ中面2段目左)
いかにもブリューゲル!って冬の風景
絵の中に鳥を捕るための鳥罠が描かれていたり、氷に穴が空いていたりと、
注意しないと人生は危ない、なんて寓意も含まれているのだそう。

第四章「旅の風景と物語」
ピーテル・ブリューゲル1世が下絵を描いた版画
《イカロスの墜落の状景を伴う3本マストの武装帆船》1561-1562年頃
当時の帆船がとても正確に描かれているそう。
そんな中に神話の一シーンが描き加えられています。

ヤン・ブリューゲル1世や2世が茶色のインクで描いたペン画、
なんかマンガの背景みたいwwなんて。

第五章「寓意と神話」
ヤン・ブリューゲル1世《ノアの箱舟への乗船》1615年頃(チラシ中面右上)
これ、私にはノアの箱舟がどこにあるのか、よくわからなかったんですよね。
横で見ていた人(全く知らない人だったんですけど)に
「ノアの箱舟がどこにあるかわかります?」なんてささやいてしまいました。
その人も「私もどれなんだろう?って見てたんですよ」と。

ペーテル・パウル・ルーベンスと工房、フランス・スナイデルス
《豊穣の角をもつ三人のニンフ》
並んでいる絵がどちらかというと小さめで、人物なども小さく描かれていて、
絵のあちこちを謎解きのように見て楽しんでいた中で、
この絵だけ見上げる大きさ(207×153cm)!
豊満な半裸の美女たちがバーンと描かれていて目立ってました。
さすが、ルーベンスの工房で描かれたんですね!

第六章「静物画の隆盛」
なんと!! 第六章と第七章は撮影可!!!だったんです。
5月31日まで、ってことでしたが、さっき豊田市美術館のHP見たら、
6月17日(日)まで延長されたそうです!!

花の絵を多く描いたことから「花のブリューゲル」と呼ばれる
ヤン・ブリューゲル1世(1568-1625)

ピーテル・ブリューゲル1世(1525/30-1569)の次男で、長男(ヤンの兄)の
ピーテル・ブリューゲル2世(1564-1637/38)が父親のコピーを多く制作したのに比べ、
ヤン・ブリューゲル1世は父親の模倣にとどまらず、独自の道を進みました。
その作品は貴族等に人気で、高値で売れたので、生活に困窮した兄とは
暮らしぶりもだいぶ違ったそう。ルーベンスとの交流もあったと。

そのヤン1世と息子が共作した花の絵。チラシにも使われています。
《机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇》1615-1620年頃
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珍重された縞模様のチューリップは、ウィルス性のモザイク病によるものだそう。
トンボや蝶や蜂などの昆虫も描き込まれています。
季節が違う花も一緒に描かれているので、そのまま写生したわけではないのですね。

ヤン・ブリューゲル2世(1901-1678)
《籠と陶器の花瓶に入った花束》1640-1645年頃
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描かれているコロンとしたオールドローズ、私の好みです!!

ヤン・ブリューゲル2世、フランス・フランケン2世
《彫刻と鍍金の施された花瓶に入った花束》1625-1630年頃
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花瓶も豪華だし、花も豪華!
この時代は共作で絵を仕上げることもよくあったみたいですね。

アンブロシウス・ブリューゲル(1917-1675)
ヤン・ブリューゲル1世の息子(ヤン2世とは母親が違う)
《花瓶に入ったチューリップとダリア》1645-1650年頃
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《ガラスの花瓶に入った花束》1650-1660年頃
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どちらも小品ですが、細かく描き込まれています。

ヤン・ブリューゲル2世の息子、ピーテル・ブリューゲル1世のひ孫となる
ヤン・ピーテル・ブリューゲル(1628-1664)
《花の静物》1661年
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同じくヤン・ブリューゲル2世の息子、ピーテル・ブリューゲル1世のひ孫
アブラハム・ブリューゲル(1631-1697)
《果物と東洋風の鳥》1670年
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《果物の静物がある風景》 1670年
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一族のブランドが受け継がれていますね。

そして、これスゴイ!!って見たのが、
ヤン・ブリューゲル1世の娘の子、ピーテル・ブリューゲル1世のひ孫となる
ヤン・ファン・ケッセル1世(1626-1679)
《蝶、カブトムシ、コウモリの習作》1659年
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《蝶、コウモリ、カマキリの習作》1659年
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大理石に油彩で描かれていて、まるでホンモノがそこにいるみたい!!

第七章「農民たちの踊り」
「農民のブリューゲル」と呼ばれたピーテル・ブリューゲル1世
農民の日常風景を描いた絵は一族に受け継がれていきました。

マールテン・ファン・クレーフェ
《農民の婚礼(6点連作)》1558-1560年頃

男たちが婚礼へ向かう行列。3番目の男が花婿かな。
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こちらは花嫁の行列。花嫁はすぐわかりますね。
二人の子どもがドレスの裾を持っています。
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婚礼のプレゼントを持ってきたところのよう。
ちゃんと記録している人がいますね。
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花嫁が座っているテーブルの手前で、
赤ちゃんにおしっこさせてるじゃないですかww!!
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宴もたけなわ
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初夜のベッドを祝福しているのかな。花嫁が初々しい。
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子どもも生まれたようですが、窓から出ていく男は‥‥間男??
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同じく マールテン・ファン・クレーフェ
《強盗に襲われる農民の夫婦》1570-1577年頃
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緊迫の場面ですね。なんか映画でも見ているよう。
命乞いをする妻、この後どうなったのか‥‥?
当時はこんな事件が農村のあちこちであったのでしょうか。
1570年頃っていうと、日本でも戦国時代ですが。

ピーテル・ブリューゲル1世が下絵を描き、
ピーテル・ファン・デル・ヘイデンが彫版した《春》1570年
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庭を作っているところを見に来た奥方でしょうか。

ピーテル・ブリューゲル2世《聖霊降臨祭の花嫁》 1616年以降
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この作品だけケースに入って展示されていました。

この展覧会、キャプションにブリューゲル一族には
子や孫って表示もつけられていてわかりやすかったです。
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そして最後に、チラシにも使われている
ピーテル・ブリューゲル2世《野外での婚礼の踊り》 1610年頃
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花嫁さん以外の女性は“慎ましく”頭巾を被っているのが
当時の風俗だそうですね。髪飾りをつけて髪をおろした花嫁さん、
あまり嬉しそうでないのがちょっと気になるところでもあります。
皆、小太りで、現代だったらメタボっぽいけど‥‥
あと、やっぱり男性の股間が気になる(笑)
手を取り合ってダンスをしたり、抱き合ったり、
おおらかに生を謳歌する農民たちのパワーを感じます。

CGでこの作品が動く映像もあって楽しかった。

ショップも充実していました。

図録は表紙が《野外での婚礼の踊り》と、
《机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇》と2種類ありました。
どちらも中身は同じで税込2,200円 迷ったけど購入しませんでした。

《野外での婚礼の踊り》が箱に描かれたゴディバのクッキーを
お土産に買いました。税込1,188円
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さすがゴディバだけあって美味しかったし、
金色のロゴも素敵な紙バッグに入れてくれました。

ショップの出口にガチャガチャが並んでいたので、
小銭があったらやってみようかと財布みたら、1回できたので(400円)

ヤン・ファン・ケッセル1世《蝶、コウモリ、カブトムシの習作》を
モチーフにしたキーホルダー
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カブトムシをゲットです!

150年にわたって受け継がれていったブリューゲル一族のこと
16-17世紀フランドル絵画の細かい描写で、画面のあちこちを見て
当時の風俗を知ったり、人々の様子にクスッと笑ったり、
おまけに写真撮影までできて、とっても満足wwな展覧会でした。

ブリューゲル展のチケットで、豊田市美術館の他の展示も見ることができて、
そちらもとても良かったので、それは次の記事で!

豊田市美術館: https://www.museum.toyota.aichi.jp/
ブリューゲル展公式HP: http://www.ctv.co.jp/event/brueghel/


--過去記事--
2016年11月、ピーテル・ブリューゲル2世の絵を含む展覧会を見たこと
岡崎市美術博物館「ブリューゲルとバロックの巨匠」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-12-01

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