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あいちトリエンナーレ2019(3) 愛知芸術文化センター8階 [美術]

あいちトリエンナーレ2019 のレポート、しつこく続けます。

8月4日(日)に、愛知県芸術文化センター10階を見てから
8階へ行きました。

この日は途中までで閉館時間になったので、その後、
18日(日)に続き(っても8階は入口が一つだけなんですね)を見に行き、
27日(火)にも見て回ってます。
さらに9月11日(水)に、大阪の友人と一緒に見て回りました。

以下、ネタバレがありますので、これから見に行かれる方はご注意ください。

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10階から8階へ、エスカレーターで降りると、

【A40B】アート・プレイグラウンド あそぶ PLAY
の部屋があります。

建築家の遠藤幹子さんと、アーティストの日比野克彦さんと共に、ダンボールの造形を研究してきた愛知県内の小学生「ダンボール研究会(通称ダン研)」のメンバーが中心となって、使い方の決まっていない遊具などをつくっています。来場者のアイデアで変形・拡張されていく、自己責任で自由に遊ぶ公園です。

見学はこちらの通路からできます。
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段ボールでいろいろ作られていて、楽しそうです。
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吹き抜けの回廊にあるのが
【A60b】高山明 (Port B)
『パブリックスピーチ・プロジェクト』


岡倉天心『東洋の理想』、孫文『大アジア主義』、柳宗悦『朝鮮の友に贈る書』の
朗読が聴けるようになっています。
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これらの文章は、
アジアの友情と連帯を志し、現代人の情にも訴える名文だが、他者を同化する危険を孕むものでもある
『アジアはひとつ』という理想を掲げつつ、日本のアジア侵略を正当化もしくは正当化に利用された 戦前のアジア主義の言葉」を考えます。

‥‥私は時間がなくてほとんど聞いてませんが。

吹き抜けを見下ろす
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8階の愛知県美術館ギャラリーの展示室に入ると、まず

【A19】今村洋平 「tsurugi」「peak」
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シルクスクリーンを繰り返し刷り重ねて彫刻的な作品を制作する今村洋平さん。
私、この方の作品、見たことがあるはずなんですが‥‥どの展覧会だったのか?
シルクスクリーンをやったことがある私としては、これらの作品がどれほどの
手間をかけて作られているのか、すごくわかります。
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その制作の様子を記録した映像や道具類も展示されていました。
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【A20】袁廣鳴(ユェン・グァンミン)《日常演習》
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巨大なスクリーンに映し出される真昼の大都会、だけど、その街には
人が一人もいないんです! 停車した車が少し見えるけど、動いていない!
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最初に見た時、これは現実の世界?? CG?? って衝撃でした。
台湾では1978年より毎年春先に日中の30分間人々が屋内へ避難する
「萬安演習」という防空演習が行われているんですってね!

隣の部屋の《トゥモローランド》も衝撃だった
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遊園地が突然爆破され、元に戻るのがエンドレスで上映されています。

《日常演習》のサイレンと、《トゥモローランド》の爆破音が会場に響きます。


【A18c】ジェームズ・ブライドル《継ぎ目のない移行》
《ドローンの影》の作家の映像作品。
なんかRPGの背景のような映像って見たら、やっぱり、これは、
3Dアニメーションによって描かれた建物なんだそうですね。
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英国の入国審査、収容、国外退去の3つの管轄区域について、計画書や衛星写真などを手に入れ、中に足を踏み入れた人へのインタビューを通じて再現した
ものなんだそう。「この建物を通過する人々は強制的に国外へ移送されます。送還のために使用している拘置施設、法廷、飛行機を撮影することは違法です。


【A21】パク・チャンキョン《チャイルド・ソルジャー》

「表現の不自由展・その後」の中止に伴い、作家から展示一時中止の
申し出があり、8月6日(火)から展示室が閉鎖されています。

私が最初、4日(日)に行った時には見ることができました。
ライトボックスに入った9点のデジタル写真と
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それらを含む静止画にサウンドをつけたスライドショーで構成した映像インスタレーション

作家の母がかつて北朝鮮の少年兵を目撃したエピソードの中の『政府からの伝達やニュースで見聞きしていた怖い兵士像とは異なり、山の中で遊ぶ銃を持ったただの子供だった』という言葉から着想を得」たという作品。
‥‥この少年兵のケガの原因は何?? 終盤に流れる歌謡曲が明るいだけになんか悲しい。

昔見た(2000年公開・日本では2001年公開)
韓国映画「JSA」を思い出したりしました。


【A22】CIR(調査報道センター)
「表現の不自由展・その後」の中止に伴い、辞退の申し入れがあり、
展示中止となっています。

8月4日(日)に行った時には見ることができました。
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1977年に設立された米国の非営利報道機関」で、
取材結果をアニメ、演劇、ヒップホップ、アプリなど、多様な表現を用いて展開

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牛肉の問題や、難民の子どもが親と引き離されて収容施設に入れられている問題などが
わかりやすく映像になっていました。

4日(日)に行った時は、ここで閉館時間になりました。


この展示室のさらに奥が、問題となった
【A23】表現の不自由展・その後

様々な脅迫を受けて、開幕から3日間で展示中止となったことは
こちらの記事に: https://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2019-08-28
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【A24】スチュアート・リングホルト《原子力の時計》
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大きな時計ですが、示されているのは現在の時刻ではありません。
この時計は「一日が18時間に圧縮された世界を表す大きな時計の作品」なんだそう。
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下に落ちている玉は、地球とか?
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10億年後には一日が34時間になるほどにまで地球の自転速度が低下していると予測されています
その頃には地球はどうなっている? 人類は存在している?


【A25】ワリード・ベシュティ
《FedEx》
《トラベル・ピクチャーズ》


FedExと書かれた段ボール箱の上にひび割れたガラス箱が乗っています。
世界的な運送会社FedEx社の段ボールでガラス箱を発送した結果で、
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壁の写真は、写真フィルムを空港の手荷物検査に通し、X線に感光させることで
傷みや変色が生じたものをそのまま現像・プリントしたものなんだそう。


【A26】パンクロック・スゥラップ《進化の衰退》

通路の壁に展示された巨大な木版画(写真4つつないでます)
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作家は、マレーシアの都市化されていない地域を活動拠点としたアーティストグループで、
木版画という技法は、電気・通信・流通といったインフラが安定していない社会においても、
手軽に素早く大量にいつでもどこでも情報が伝達できるということから、
木版画を用いて地域コミュニティやボルネオ島の先住民族が直面する問題を描いている
ということでした。

人の代わりに昆虫たちで社会の問題などを描いています。
細かく見ていくと面白いんでしょうね。

YouTubeや、ツイッターのマークも見えたり
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演説して兵隊を集めている?
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【A27】ハビエル・テジェス《歩行者》

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展示一時中止となっていますが、
私が行った8月18日(日)は、見られた最後の日だったはずなんですよね。
でも全く印象に残ってない‥‥多分、映像作品かーって、
通り過ぎちゃったみたいです。


【A28】イム・ミヌク《ニュースの終焉》

「表現の不自由展・その後」の中止に抗議して、
8月6日(火)から展示室が閉鎖されています。

8月4日(日)に行った時、時間がなくて、展示室入口に
カラフルなチマチョゴリが並んでいるのが見えたんですが、
展示室の閉鎖は残念です。

入口に提示されていたステートメント
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【A29】澤田華《Gesture of Rally #1805》

写真に写り込んでしまっている正体不明の何かを、様々な角度から検証し、その結果を提示
した作品。
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現代的なオフィスを写した写真に写り込んだこれは何?
っても、科学的に捜査しようってことではなくて、
なーんか、カエルみたいに見えるーみたいなノリ(?)だったりして
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【A30】タニア・ブルゲラ

展示室に入る前にみなさんの手にスタンプが押されます。この5桁の数字は、2019年に国外へ無事に脱出した難民の数と、国外脱出が果たせずに亡くなった難民の数の合計を表しています。
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そうして入った展示室の中にさらに部屋があり、その部屋は
メンソールが充満されていて、目元に刺激を感じます。

手に押されたスタンプの数字は、展示が始まった日からも
増え続けていました。

この作品、8月20日(火)からは展示一時中止となり、
展示室は閉鎖されています。
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【A31】ミリアム・カーン
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現代アートでは、こういった水彩画や油彩画の展示は
かえって珍しいかも。でもなんかとても美しい絵だなって見ました。
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彼女の絵画にたたえられている美しさは、単に美しいものを美しく描いた、 ということでは説明がつきません。幼い頃に見た原水爆実験のキノコ雲や、 それらの兵器開発を主導したオッペンハイマー博士が、自身と同じユダヤ人である事実
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原爆をめぐる「美」と「倫理」の葛藤を主題にした水彩シリーズ
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戦災で街が焼ける炎を美しいと見ていたって人の回想を聞いたことがありますね。

《笑わなければ》
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《美しいブルー》
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タイトルどおり、ブルーが美しい絵だけど、
「多くの難民が地中海を渡ってヨーロッパを目指している背景と関係があります。」
うーん、深い‥‥


【A32】藤原葵《Conflagration》

通路の壁に展示された大きな絵。
強烈な色彩と、メタリックなマテリアルもインパクトあります。
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1994年生まれの若い作家さんで、
アニメのエフェクトを引用した多様な『爆発』」をモチーフに
制作されているそう。
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【A33】キャンディス・ブレイツ《ラヴ・ストーリー》

手前の展示室内の巨大なスクリーンと、奥の空間にある6つのモニターによって構成されている映像インスタレーションです。
手前の部屋では、インタビューから抜粋・編集した難民のストーリーが、俳優(アレック・ボールドウィン、ジュリアン・ムーア)によって再演されています。

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何故わざわざそんな手間をかけたことを?
2人のプロの俳優が、それぞれ3人の難民のインタビューを断片的にごちゃまぜに
語るので、最初少し混乱します(あれ? さっきと言ってたことが違う? とか)
でも、さすがプロの俳優というか、その語りについ引き込まれて、
かえって奥の部屋で本人が語る映像よりも感情移入してしまいました。
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映像のバックの緑色と、床の緑色が美しい。
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奥の部屋にあるモニターには、6名の難民一人ひとりの実体験として、その逆境、脱出時の苦難、そしてたどり着いた現在の境遇について語っている様子が映されています。
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6人のインタビューを聞くのは時間がかかるので、そんなに聞けてないんですが、
祖国を離れる決心をしたこと、脱出時の苦難、現在の境遇など‥‥
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自分は祖国でそれなりの地位にいたし、国から逃れることになるとは
思ってもみなかった‥‥とか聞くと、今、日本でも「〇〇人は出ていけ」なんて
簡単に言う人がいるけど、自分が〇〇人だったら、ってことは
想像してみないんだろうか? って考えてしまいます。


愛知芸術文化センター地下2階のアートスペースXにあるのが、
【A34a】加藤翼《Woodstock 2017》
互いにロープで縛られたミュージシャンが四苦八苦しながらアメリカ合衆国の国歌を演奏する映像作品
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その近くの南階段下にあるのが
【A34b】加藤翼《2679》

愛知芸術文化センター隣にあるオアシス21の屋上で、互いにロープで縛られたミュージシャンが
四苦八苦しながら「君が代」を演奏します。
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加藤翼さんは、大きな木製構築物を地域の人々とロープを使って引き起こす
「引き興し」のプロジェクトの映像作品を豊田市美術館「蜘蛛の糸」展や、
https://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2017-01-15
「世界を開くのは誰だ?」展で見たことがあります。
https://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2019-07-11


やはり、あいちトリエンナーレのメイン会場だけあって、
愛知芸術文化センターの展示は見ごたえありました。
‥‥まぁ、ワタシ的には映像作品が多くて、ちょっと不満もありましたけど。


記事が長くてスミマセン。書くのに時間かかるのでなかなか進みませんが、
よろしければ今後もお付き合いください m(_ _)m

あいちトリエンナーレ公式webサイト: https://aichitriennale.jp/
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