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あいちトリエンナーレ2019(5) 名古屋市美術館 [美術]

しつこくあいちトリエンナーレ2019のレポートを続けます。

豊田エリア良かったけど、まだ見てない作品があるので、
先に名古屋市美術館のレポートから。
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あいちトリエンナーレ2019で名古屋市美術館へ行ったのは、
8月27日(火)が1回目。愛知県美術館友の会の鑑賞会が10:30から
あったんですが、私のことなので‥‥時間に間に合わず
1人で鑑賞しました。その日は午後から愛知県美術館の鑑賞会で、
そちらに間に合うようにと、途中からかなり急いで見たこともあり、
9月24日(火)にもう一度回りました。なので、写真が混在しています。

名古屋市美術館の周囲にカラフルなゴミ箱が設置されているんですが、
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これ、作品なんです!
【N12】バルテレミ・トグォ
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袋にはアフリカ54カ国の国旗がプリントされ
あ、万国旗かと思ったら、アフリカの国旗だけなんですね。

カメルーン出身である作家は、西洋とアフリカの関係性を背景に作品を作り続けています。 植民地時代から続く歴史の中で、宗主国より様々なことを押しけられてきたアフリカという存在について思いを巡らせると、このゴミ箱が象徴する局面へと想像が及びます。
(あいちトリエンナーレHPより https://aichitriennale.jp/artwork/N12.html)

植民地としてアフリカはゴミ箱のような存在だったと?
作品とは思わなかったのか? ゴミが捨てられているのもありました。
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フリーパスを提示して最初の展示室へ入ると、
【N01】碓井ゆい「ガラスの中で」
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巨大なシャーレのような透明なアクリル枠が天井から吊るされて、
アップリケや刺繍が施されたオーガンジーの布が張られています。
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天井からの光で儚げで美しい。
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乳児や家族に関連するモチーフが2つずつ描かれているのは、
「染色体の構造にならい、左右対称で二つひと組みとなって」いるからだそう。
(あいちトリエンナーレHPより https://aichitriennale.jp/artwork/N01.html)


【N02】今津景《生き残る》
吹き抜けの展示室に吊るされた巨大な幕とキャンパスに描かれた絵。
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壁のプロペラには踊るゴリラが映し出され、
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トカゲ(?)の前のスクリーンにはいろんなイメージ――
ポリゴンのような銃撃者、ジャングルや動物や人間など、
いろんなモチーフが絡み合い、現れては消える‥‥
破壊される自然?


【N03】藤井光《無情》
「海ゆかば」の歌声が響く展示室。モノクロの古い映像は、
国立台湾歴史博物館に収蔵されている歴史資料で、
台湾の人々を「日本人化」する目的で台湾内に複数設置された
「国民道場」の様子を報じたもの。
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そして、横の壁の4面のカラー映像は、
愛知県内で学び働く若い外国人らが、フィルムの中で行われている訓練や、宗教儀礼の様子を再演した映像
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映像の冒頭に挿入される文章は、日本で育った台湾人文学者、周金波による「国民道場」を舞台にした1944年発表の小説『助教』(日本統治下の 台湾総督府情報課委嘱作品)より引用されています。
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作家は近年、歴史的な事象を現代において再演する手法(リエナクトメント)を用いて作品を制作・発表しています。再演することによって、単にこれらが過去の事実であったということ以上の感情を、現代の観客に対して呼び覚まします。
(あいちトリエンナーレHPより https://aichitriennale.jp/artwork/N03.html)

確かに‥‥古いフィルムは貴重な記録で、こんなことが行われていたんだなぁって
感慨がありましたが、どこか歴史的な目で見てたんです。それを
若い、日本それも愛知県内で働く外国人が再演すると、今、
外国人研修生の待遇なども問題になっていたりするけど、
同時代の問題は、近視眼的になって冷静な目で見ることができないだけに、
考えさせられました。
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【N04】モニカ・メイヤー《The Clothesline》
「表現の不自由展・その後」の中止を受けて、展示内容が変更されています。
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モニカ・メイヤーは、メキシコのフェミニスト・アートのパイオニア的存在で、
彼女が1978年に始めた《The Clothesline》という参加型プロジェクトでは、ピンク色の紙に、参加者が日常生活で感じる抑圧やハラスメントなどを匿名で書いてもらったものを展示する。」という展示だったのが、

これまでに集まった回答は取り外され、新たな回答は受け付けられず、
回答用紙が床に散らばっています。
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‥‥この作家らしい抗議のやり方だと思いました。
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名古屋市美術館地下1階 常設展示室3の
【N40】アート・プレイグラウンド つくる CREATE の入口前で、
モニカさんの同意のもと、自主的な企画として、
《子ども版 The Clotheslin》というプロジェクトが行われています。
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Q.子どもとして、嫌だな、と感じたことはありますか? それは何でしたか?
という問いの回答が展示してあります。
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うん、これいいですね! 今の日本では、強くなった女性(でもまだまだだとは感じる)より、
子どもの方が、虐待や抑圧にさらされているのかもしれない。

モニカ・メイヤーさんのプロジェクトの意義がわかったような気がしました。
本来の展示も見たかったです。


【N05】桝本佳子《五重塔/壷》ほか
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おー!! これ面白いです!! 私、岐阜県美術館後援会員になってて、
3,000円の年会費で、岐阜県現代陶芸美術館の展覧会も
企画展毎に1回ずつ無料で見られるので、近年見に行くようになって、
現代陶芸のオブジェ的なものも面白いなって見るようになったんですが
(陶芸の技術的なことはあまりわからない私には、むしろ
伝統的な抹茶茶碗とか壺なんかよりそっちの方が面白い)
こんな、伝統的な陶芸と現代的なオブジェを組み合わせた作品って
見たことがなかった!!
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伝統的な陶芸のパロディ?
ちゃんと伝統的な技法を見に付けた人でないとできない造形ですね!
かなりの超絶技巧なのでは?
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《カジキ釣り/壷》
波が描かれた大きな壺、明治の超絶技巧を扱った展覧会なんかで
見そう。その壺からカジキが飛び出ているのが面白い!!
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壺や皿で街ができています。
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学校。校庭で遊ぶ子どもたちが赤絵?の技法で描かれています。
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《イカ/壷》
この白いキラキラはラスター彩?
イカの中でランプがほのかに光るのがいい!
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《メロン/壷》
確かに、この壺(緑釉?)の表面ってメロンを想像させますよね!
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壺から鳥が出てきたみたいな。
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お皿に伝統的な技法で描かれた絵と立体が融合しています。
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《壷/桜》
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《圧縮紋(武人埴輪)》
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《五重塔/壷》
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陶芸の知識がもっとあると、この人の技術のすごさがもっと
わかるかもしれない。


階段を上って2階の展示室へ。
【N06】パスカレハンドロ
(アレハンドロ・ホドロフスキー&パスカル・モンタンドン=ホドロフスキー)
サイコマジック:アレハンドロ・ホドロフスキーへの手紙
「アレハンドロ・ホドロフスキーのソーシャル・サイコマジック」

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壁に手紙が張り出してあり、その訳文が冊子になっています。
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奥の部屋の映像はアートとセラピーを組み合わせた
「サイコマジック」の様子とのことだけど、なんか‥‥
カルト宗教みたいな印象なんだけどー
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熱狂する人々‥‥なんか私はこういう雰囲気苦手。
ちょっといかがわしいって感じてしまうんですけど。
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【N07】青木美紅《1996》
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18歳のある日、母親から、自身が両親に切望されて配偶者間人工授精で産まれてきた 子供であることを知らされる。それは、幼い頃より彼女が感じてきた 「尋常でない母親からの愛」に理由があったのだと感じた瞬間でもあった。 奇しくも世界初のクローン技術で生まれた羊の「ドリー」と同じ年に生まれた彼女は、 以降自分を含めた「選択された生」にまつわる偶然と必然、 与えられた祝福と呪詛について考察を続ける。
(あいちトリエンナーレHPより https://aichitriennale.jp/artwork/N07.html)
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展示室びっしりにラメ糸などで刺繍された布が張り巡らされ、
あちこちにゾートロープ(映像的に回転する連続絵)や、
自動的にめくれる絵本などが展示されたインスタレーション。
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なんか展示室の密度がすごく濃いっていうか圧倒されます。
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動画OKだったので、ゾートロープの1つを



【N08】タニア・ペレス・コルドヴァ
一列に並べられた7つの作品からなるインスタレーション
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《Time-lapse》
灰と化粧品と石灰化した土からできているそう。
「Time-lapse」とは、低速度撮影とか、コマ落し って意味らしいですが??
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この作品がやっぱり目を引きます。
《Second Figure standing next to a fountain》
三つ編みにされた長い髪の毛が天井から吊られ、
バケツのなかで自動的に洗髪されています。
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軽石に唇の彫刻が施されています。
《Mouth》 ‥‥そのままのタイトルですね
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《Portrait of a woman passing by》
模様のある大きな壺が置いてあります。
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花瓶と同じ図柄のワンピースを着た女性が会場内に現れるかもしれません
って、パフォーマンスがあるみたい。
(あいちトリエンナーレHP https://aichitriennale.jp/artwork/N08.html)
パフォーマンスの写真ありました(^▽^)

《Various pocket coins》
メキシコとアメリカのコイン(複製)が溶け合っているように見えます。
微妙な関係にある両国の価値体系を象徴するコインは、物理的に溶け合い交じり合った状態」だと。
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《Placebo》
Placebo‥‥偽薬って意味。プラシーボ効果とか言いますね。
アルミニウムの彫刻に、金色のチェーンネックレスと
純金のチェーンネックレスが使われているそう。
私にはどちらが純金なのか見分けがつきませんが。
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《Un parpadeo》
大理石の円柱の上には水盤が形成され、中にはカラーコンタクトレンズが片方だけ密やかに配されています。 もしかしたら同色のコンタクトをした人物が会場内にいるかもしれません。
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【N09】Sholim《Sholim Inspired by Tokyo Story》
わーー! うなされそうな画像!!
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マグリットの絵のようでもあります。
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これらは「GIFアニメーションの作品群です。作家はインターネット上で人気を誇るGIFアニメクリエイターで、日本で行われるGIFアニメ コンテストの審査員なども務めています。

Sholim の作品は、手持ちのスマホで鑑賞できるそう!
インターネット時代ならではの作品ですね。
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【N10】カタリーナ・ズィディエーラー《Shoum》
英国ニューウェイヴ・バンドのTears for Fearsによる1984年のヒット曲「Shout」を聞きながら、二人の男性が手分けして文字を書き連ねています。
セルビア人である彼らは英語がわかりません。聞こえてくる歌詞の音の響きに、知っている言葉で近いものがないか探り、何にも似ていない言葉に独自の解釈を加えてなんとか文字にしようと試みます。

(あいちトリエンナーレHPより https://aichitriennale.jp/artwork/N10.html)
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外国語がわからない日本人が外国の歌を聞いて、テキトーにカタカナにするみたいな?

移民が言葉がわからない国に行って不安になるカンジ?

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あいちトリエンナーレのチケットで、地下1階のコレクション展も
見ることができます。

最初に喜多村麦子(1899-1986)《暮れ行く堀川》1928年がかかっていて、
初めて知った画家ですが、昭和初期の堀川に多くの舟が泊まっている
風景の日本画で、へーって見ました。

現代美術はくり返しや連続というキーワードで
アグネス・マーチンや山田正亮のストライプの作品や、
ショーン・スカリーなどが展示されてて、まぁいつものことながら
ふーーんってカンジで見てきました。

中村宏《車窓編 TYPE10-A,B,C》は、車窓にレオナルドダヴィンチ、
セザンヌ、デュシャンの絵が見える1981年に描かれた絵ですが、
今見ると、車窓がスマホの画面のように見えるなって。

エコール・ド・パリのコーナーでは、名古屋市美術館が誇る
モディリアーニ《おさげ髪の少女》はもちろんですが、今回、
パスキンの絵が並んでいて、あら名古屋市美術館こんなに持ってたんだ!と。
岐阜県美術館「パスキン展」のことはこちら:
https://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-07-13

そして、今年6月に名古屋市に寄贈された藤田嗣治晩年の絵2点が
名古屋市美術館で初公開されていました。
中日新聞6月21日(金)夕刊の記事
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この作品たち、岐阜県美術館「小さな藤田嗣治展」に出てた作品だ。
https://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-10-04

翌6月22日(土)中日新聞朝刊の記事
寄贈者・平松潤一郎さんと河村たかし名古屋市長とが写っています。
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中日新聞7月12日(金)夕刊の記事。藤田嗣治の名画を寄贈する記事に、
作品の写真を使ったら、39000円の著作権料がかかったが、
朝刊では寄贈者と市長との写真を使ったので著作権料は発生しないって
記事があって、難しいんだなぁと。
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sknys

ゾートロープの白い動物はネコかしら?
10月1日、ソネブロの名称とドメイン(URL)が変更されました。
ブログ記事は自動的にリダイレクトされるそうですが、
ゲスト・アイコンを自作している場合は下記の新URLに変更しないと
表示されません^^
https://blog.ss-blog.jp/_img/cmn/profile_guest.gif
by sknys (2019-10-04 19:22) 

しーちゃん

sknys さん、教えていただいてありがとうございました。なんで勝手に(?)ドメイン変更したんでしょう? IDやパスワードも変更しなきゃいけないから、管理ページに入るにも苦労したってのにー。昨年URLがhttp⇒httpsになった時にもやったハズですが、またhtmlの表示方法から忘れているから、調べて、やっとゲストアイコンが元に戻りました。

by しーちゃん (2019-10-08 15:07) 

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