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愛知県美術館「地球・爆」展 [美術]

11月14日(木)愛知県美術館へ行きました。
「地球・爆」展をやっています。
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この日、友の会の特別鑑賞会があり、ちょうど私のパートが休み。
せっかくの機会なので、参加しようと思ったんです。
特別鑑賞会は昼の部10:30~と、夜の部17:30~が
あるんですが、まぁ、朝の遅い私には昼の部には間に合わないので、
夜の部に行くことにしましたが、その前に自分一人で鑑賞しようと。

展覧会のチラシ、4種類あるみたいですね。裏面もそれぞれ違ってます。
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チラシでは、イラストとかマンガも思わせるような、
軽妙で洒脱な印象の絵だけど、テーマは「反・戦争」

「地球・爆」は国内各地域で活躍する10人の画家──伊坂義夫、市川義一、大坪美穂、岡本信治郎、小堀令子、清水洋子、白井美穂、松本旻、山口啓介、王舒野──による絵画プロジェクトで、11組で合計約150点の絵画パネルで構成され、全長は200メートルを超えます。(チラシ裏面の文)

入口で展示会場マップと解説をもらって見て回ります。
全長200mを超えるという絵画が迷路のように展示されてるけど、
特につながりってこともないみたいだし‥‥
(順番が入れ替わっているところもあったし、
第2番の最初の絵だけロビーに展示されてたりした)

第1番から第11番まであるけど、それぞれの違いとか、
どうもよくわからないなぁ‥‥
ところどころ同じようなモチーフが出てきたりしてるし‥‥
うーんなんかジミな展覧会って印象。


友の会の特別鑑賞会は、まず12階の部屋で、
企画業務課長の拝戸雅彦氏のレクチャーがありました。

「地球・爆」の制作の中心である岡本信治郎のビデオから。
鎌倉の自宅からアトリエへ向かい、制作している様子を。

拝戸雅彦氏によると、彼は現在入院中で、この展覧会にも
来られない程の体調だそう。

2001年に起こったアメリカでの同時多発テロ事件に呼応して岡本と伊坂と王が企画し、彼らの呼びかけに賛同した7人の画家が加わりました。構想図案から検討して「共作」する、というアイディアのもと、2003年に着手。全決定稿がそろったのが2007年9月で、そこから本画の制作が始まりました。2013年2月に完成していた第1番は、同年開催の「あいちトリエンナーレ2013」で紹介されました。(チラシ裏面の文)

あいちトリエンナーレ2013で第1番が展示されてた??

えー?! 全然覚えてない‥‥って、私のブログ見たら、
あいちトリエンナーレ2013 (1) 愛知芸術文化センター その1
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2013-09-04

愛知芸術文化センター10階で岡本信治郎の作品が展示されていて、私、
明るくポップな作品に、もっと若い作家かと思ったら、1933年生まれで
東京大空襲をテーマにされてて、そのこめられたメッセージに驚いたんですが、
一緒にこの「地球・爆」も展示されていたのは全く印象に残ってないんです。
多分モノクロでジミだったからなんでしょうね。

最年長の岡本が、少年時代に衝撃を受けた1945年の東京大空襲や広島と長崎への原爆投下も含め、20世紀以降の戦争が人類にもたらしたものをテーマとする、この絵画プロジェクトでは、それぞれの画家が個性を生かして描き方に変化を与えつつも、全体としては、ユーモラスで乾いた形で、あたかも一つの「絵巻物」のように表現されています。(チラシ裏面の文)

この展覧会は、岡本画伯から、絵が完成したから展示したいってことで
展覧会を企画したら、実は他の画家に任されていた部分が
まだ完成していなくて、展覧会ギリギリまで制作が続けられてたとか。
最初のうちは一つのパネルに複数の画家が描く、文字通りの「共作」だったけど、
そのうちに画家の仲間内で対立やら何やらおこったりしたそう。
(アーティストにはありがちなことですよね(笑)

などという興味深いお話を聞いた後、閉館後の展示室で、
ギャラリートークをしていただきました。

「地球・爆」の最初の絵が、ポスターになっているこちら
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「10人の画家による大共作」というプロジェクトの始まりが、未知の大航海に乗り出す船にたとえられています。参加メンバーを乗せた白い箱舟、あるいは工作船が、錨を上げ、まさに出航しようとしています。ここから、左から右へとイメージが展開する「地球・爆」が始まります。(会場入口でもらったマップの解説より)

錨の右に描かれているのは、「モービイ・ディック」アメリカの小説家ハーマン・メルヴィルの代表作『白鯨』(1851年)に登場する白鯨の名前で、岡本信治郎が描いていて、

そのバックに描かれた棘を持ち複雑に絡み合う刺草は、キューバ東南部のグアンタナモ湾にあるグアンタナモ米軍基地の、アフガニスタン紛争およびイラク戦争の過程でアメリカ軍が拘束した人物を収容する収容キャンプの鉄条網と重ねられていて、清水洋子が描いた

‥‥などと説明していただいて、いろんなメッセージが込められていることは
わかるんですけど。

モノクロの絵ってのは共通しているけど、よく見たら、画家の個性も感じられたりして。
キッチリとした絵を描くのが岡本信治郎、清水洋子は画面が黒い、
「土」の字がモチーフの松本旻、タロットカードの絵のような雰囲気なのが白井美穂
絵の中にそれぞれサイン(きちんとした活字体で)が入ってるので、それを
見ていくのも興味深いけど。

目(眼)と昆虫の羽からなる生物は、地上で最も先鋭的で効率的な
生物を空想した結果、対象を見るための目と、飛ぶための羽だけの存在になったと。
対象をとらえ飛行する存在はミサイルといった兵器のイメージとも重なるそう。
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陸軍を表す星、海軍を表す桜のモチーフは「地球・爆」の中に
しばしば登場しています。
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愛知県美術館コレクション展の部屋へ進むと、
テーマは「戦争の手触り」
オットー・ディックスの『戦争』シリーズがずらっと並んでいて迫力。
第一次世界大戦に従軍して、戦争の悲惨さやグロテスクさを表現するが、
ナチス政権下で、退廃芸術とされ、美術館から作品が撤去されたそう。

退廃芸術とは、「ナチス党が近代美術や前衛芸術を、 道徳的・人種的に堕落したもので、ナチス・ドイツの社会や民族感情を 害するものである、として禁止するために打ち出した芸術観
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%80%E5%BB%83%E8%8A%B8%E8%A1%93

民族感情を害するものである」か‥‥なんか
トリエンナーレの騒動を思い出してしまう。

で、そういった「退廃芸術」を晒し者にする展覧会
「退廃芸術展」が開催されたそう。
貧相な建物に、わざと劣悪な展示で、18歳未満立ち入り禁止。
悪意的な煽り文句、抽象画や表現主義の風景画が
狂気や病んだ精神の見た風景」だとか、
作品の購入金額が書かれていて「国民のなけなしの税金で、 民族に奉仕すべき美術館やその職員たちが 出来損ないの作品を大量に買い集めて自己満足に浸った」と
非難されたそう。

ナチスの政策にのせられて「普段美術館を訪れたことのない市民も怖い物見たさや好奇心、動員で訪れ」「作品の余りの過激さと購入金額の高さに怒り心頭に発しており、ため息や怒りの声が上が」ったそうだけど、「ハノーファーのシュプレンゲル夫妻のようにここでノルデの作品を見て逆に感動し、以後彼のコレクターになり戦時中も生活を支え続けた人も現れた

じゃ、ナチスはどんな芸術を良しとしたかってと、
「美しい物を好ましく壮大な物を崇高に」描くこと
で、農民とか、裸体像(女性は豊かな肉体、男性は筋肉ムキムキ)とか、
巨大彫刻だったそうで、ハハ、なんか古臭~い。

退廃美術弾圧によりドイツやヨーロッパの優れた芸術家が、あるいは命を落とし、あるいはアメリカ合衆国へと去ってしまった。ドイツは芸術を破壊した国家という汚名をかぶることになった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%80%E5%BB%83%E8%8A%B8%E8%A1%93
このあたりの歴史を覚えておかないといけないと思う。
美しく心地いいものだけが芸術ではないと。


北村西望《将軍の孫》1918年(大正7)
軍神といわれた橘中佐の立像制作のため遺品を預かっていたところ、
西望の当時3歳だった長男がアトリエに遊びに来て、
ぶかぶかの軍靴を履いて敬礼をした。その姿を制作したと。
愛らしい子どもの姿が好評で、あちこちに設置されたそう。
井之頭公園や八王子駅前にも設置されたとあったので、
えー? 私が学生時代(1976-80)八王子に住んでいた時には
気が付かなかったけど、時代に合わずに撤去された? って
グクったら、設置は1989年とのこと。
うーん、1989年にわざわざこの像を設置する??

ヤフオクやamazonでもレプリカが売られているので、
人気はあるんでしょうねぇ‥‥確かにカワイイけど。

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藤島武二の《朝鮮服の女》という絵が2点展示されていたのには、
岐阜県美術館で開催された「日韓近代美術家のまなざし」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2015-07-23
チラシのメインビジュアルになっていたのは
藤島武二の絵だったな、って思い出したり。

しかし、2015年のブログに「日韓関係が微妙なこの時期に」って
書いてるけど、現在はさらに悪い状態になっちゃいましたねぇ‥‥

梅原龍三郎《北京紫禁城》1939年
川瀬巴水の版画《朝鮮智異山泉隠寺》1940年
川島理一郎《フィリピン服の少女》1943年
とか、当時日本が支配していた国の風景や風俗も絵のテーマとして
人気があったのかなと。

展示室6は、愛知県美術館が誇る
クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》1903年 が、
豊田市美術館のクリムト展から戻ってらしたのをはじめ、
モディリアーニ《カリテアィード》1911-13年
ピカソ《青い肩掛けの女》1902年
マックス・エルンスト《ポーランドの騎士》1954年
ポール・デルヴォー《こだま(あるいは「街路の神秘)》1943年
など、西洋絵画の名品がずらっと並んで、
迫力だったけど、ちょっと部屋が狭すぎですね。

展示室7では、小企画「岸本清子 メッセンジャー」
 岸本清子(1939-1988)は愛知県名古屋市出身の画家です。1958年に県立旭丘高校美術科を卒業した彼女は、同校の先輩である岩田信市、赤瀬川原平、荒川修作らと交流し、多摩美術大学在学中に読売アンデパンダン展(第12~15回)やネオダダ展(第2~3回)への参加などで注目を集めます。名古屋に戻った1979年以降は、乳がんの治療と躁鬱病に苦しみながらも精力的な制作を続けますが、乳がんの再発によって1988年に死去しました。
愛知県美術館HPより
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/000226.html

全く知らない画家で、いろんなタイプの絵やパフォーマンスの映像も
流れていたんですが、特別鑑賞会の開始時間が迫っていて、
しっかり見れてないです。まぁ私の趣味とは違うんですが、
パワーは感じました。



愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/
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