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愛知県美術館「コートールド美術館展」 [美術]

1月7日(火)、愛知県美術館へ行ってきました。

「コートールド美術館展
 魅惑の印象派」をやっています。
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新年1月3日から始まった展覧会、
マネ最晩年の傑作《フォリー=ベルジェールのバー》をはじめ、
印象派の名品が見られるってことで―チラシ中面を見ても、
これらの絵が全部見られるの?!って―これは混むだろうからと、
会期早々、パートの休みであった7日(火)に出かけました。
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平日のせいか、愛知県美術館のゆったりした空間のせいか、
それぞれの名画がじっくりと見られてとても良かった!!

最初の部屋の ゴッホ《花咲く桃の木々》1889年
(チラシ中面下段左から2番目)
春の光にあふれた桃の花が咲く風景の穏やかな美しさ!!
点描で意外な色が道や畑や空に使われていて、細部を見て、
また全体を見て‥‥と、いつまでも見ていられる!!
私それほどゴッホのファンではなかったんだけど、
この絵はすごくいいと思った。
解説を読むと、右奥に描かれた雪を頂く山にゴッホは
日本の富士山の姿を重ねていたようだと。
そうか、なんとなく日本の春の風景のようでもあるのが
私が親しみを感じた理由かも。

モネ《アンティーブ》1888年 がまたすごくいい!!
(チラシ中面下段左)
松の木や海や対岸の山に降り注ぐ光がキラキラと輝いている!
なんかこの場に立っているような空気感!
モネが手紙で「黄金と宝石で描かなければならない」って
書いていたそうだけど、値千金! ってカンジの風景だと。

モネの大きな花の絵《花瓶》もいいなぁ!
モネの静物画ってちょっと意外だったけど、
この絵は、1881年に着手したものの、完成させられることなく、
その後40年以上経ったモネ80歳となる1920年頃にようやくサインが
入れられて売却、1923年にコートールドが購入したとのこと。

次の部屋へ進むと、セザンヌが9点も並んでます!!
それも《大きな松のあるサント=ヴィクトワール山》1887年頃
(チラシ中面上段左から2番目) とか、
《カード遊びをする人々》1892-96年頃
(チラシ中面上段左) とかの代表作ともいえるような名品が!!

《カード遊びをする人々》は、5点あるうち、
カード遊びをする人が3人のヴァージョンを2点描いた後、
1890-92年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館
1890-92年 フィラデルフィア、バーンズ財団

2人のヴァージョンを3点描いたうちの2点目だそう。
1890-95年 パリ、オルセー美術館
1892-96年 ロンドン、コートールド美術館(展示作)
1892-96年 個人蔵

Wikipediaの「カード遊びをする人々」の項で、
5点全ての画像を見ることができます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E9%81%8A%E3%81%B3%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%80%85

Wikiだと、個人蔵の作品がカタール王室となっていて、
1892-93年と、オルセーの1894-95年より早いことになるけど‥‥

私が持っているセザンヌの画集
「〈愛蔵普及版〉現代世界美術全集3 セザンヌ」集英社 1971年初版
には、コートールドのもの(上)と、オルセー(印象派美術館ってなってる)のが
載っていて、どちらも制作年が1890-92年 となってる。
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今後も研究が進むとわかってくることもあるんでしょうね。

隣に《カード遊びをする人々》の左の人物を描いた
《パイプをくわえた男》1892-96年 があったのも興味深かった。

《キューピッドの石膏像のある静物》1894年頃
一見、セザンヌらしい静物画って思ったけど、解説を読んでいくと、
リンゴの皿の下の青い布が画中の絵に描かれた布とつながっていたり、
奥のリンゴは、私最初テーブルにあるのかと思ったけど、
床にあるのだとすると大きすぎない?とか、不思議な空間に
なっていて見飽きなかった。

部屋の中央にはセザンヌの手紙が展示されていました。
もちろん読めないけど、文字の斜めのラインが長く勢いがあるのが
印象的だった。エミール・ベルナールに宛てた手紙で、
セザンヌの芸術に対する理論が書かれていると。

展覧会の最後の方にもう1点セザンヌがあって、
《曲がり道》1905年頃
未完成作ってことで、カンヴァスがむき出しの部分も多いんですが、
セザンヌのタッチが現代の抽象絵画のようでもあり、
私このままの絵すごくいいなって思った。

次の部屋では、コートールド美術館の創設者である
サミュエル・コートールド(1876-1947)についての展示がありました。
20世紀初頭に人絹(レーヨン)製造で財をなした氏は、
まだイギリスで評価が定まっていなかった印象派の作品に魅了されて
コレクションを始めたそう。

絵画の購入の領収書があったりしたのも興味深かったし、
絵に捧げる詩を書いたりもしていたそうで、絵を楽しんでいたんだなと。

展覧会場のあちこちに、出品されている絵が飾られた室内
―ホーム・ハウス(旧コートールド邸)―の写真が等身大で掲示されてて、
私はなんて素敵な空間!!!って―豪華だけど、ゴテゴテではなくて、
どこか静謐とも感じられる整った、モダンと言ってもいい?空間―
羨ましさを通り越して、感嘆するしかなかったです。

会場を出たところにあった記念撮影コーナー
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こんな椅子にゆったりと腰かけて絵を鑑賞できたら、
なんて贅沢なんでしょう!!

コートールド氏は個人の楽しみだけではなくて、芸術が社会に
貢献する力を信じて、国の美術館が作品を購入するための基金を
創設したり、美術史を専門としたイギリスにおいて初めての
研究・教育機関となるロンドン大学付属コートールド美術研究所を
創設したそう。なので、コートールド美術館は研究・教育にも
力を入れているそう。
この展覧会も、各作品に付けられた解説が詳しくて、
作品への理解が深まりました。

そして、ウジェーヌ・ブーダン《ドーヴィル》1893年
マネ《アルジャントゥイユのセーヌ河岸》1874年
モネ《秋の効果、アルジャントゥイユ》1873年
と、鉄道網の整備で、郊外やノルマンディーの海辺へと
気軽に行けるようになったことで描かれた新しい風景画

ルノワール《桟敷席》1874年 (チラシ中面上段右から2番目)
第1回印象派展に出品された記念すべき作品。
太い黒のストライプのドレスは当時流行のものだそう。
華やかなアクセサリーを見に着けて着飾った女性は
とても魅力的。でもこの女性は高級娼婦だとする説もあるんですね。
(ルノワールは弟とお気に入りのモデルにポーズさせて描いたそうですが)

そして、この展覧会のメインビジュアルにもなっている
マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年
なんとも魅惑的というか、見ていて飽きない絵です。
NHK日曜美術館がこの絵だけで一回の番組を作ったのが、
愛知県美術館での会期が始まってまた再放送されましたね。
まず、正面を向いた女性の謎めいたうつろな表情!
そして、背面の鏡に写った光景が実際とは違うところ。
私最初にこの絵を見た(もちろん画集とかで)時は、
後ろ向きになっているのは別の女性だと思ってたんですよ。
鏡だとは思わず‥‥だって、こんな風には写らないじゃないですか?!
この不自然さはマネが意図的につくったもので、
X線調査で、鏡像の位置が右にずらしていったことがわかっているそう。

フォリー=ベルジェールは、パリの大衆的な劇場で(現在も営業している!)
当時は歌や踊り、曲芸なども行われたそうで、この絵でも
左上に空中ブランコの曲芸師の足がちょっとだけ描かれています。
当時のフォリー=ベルジェールのバーでは、バーメイドは
酒だけでなく自分自身も売る娼婦でもあったそうで、
鏡の中でバーメイドと向き合っている男性は何を話しているのか?
都会の喧噪の中で、一人立っている女性の孤独感のようなものも
ヒシヒシと感じられるような絵です。

展覧会の図録も《フォリー=ベルジェールのバー》が表紙です。
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それぞれの解説も詳しいですし、主要な絵には、
シートに書かれた解説が、絵にかぶさるようになっているのも
わかりやすくていいですね。2,500円(税込)
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マネのスキャンダルを巻き起こした《草上の昼食》と同じ構図の絵が
あって、タッチは荒いんだけど、え?!これって‥‥??って解説を
読むと、オルセー美術館の《草上の昼食》1863年 を描いている
途中、背景の検討をするために描いたものではないかとのこと。

セザンヌの未完成作を含む、ドーミエやドガの未完成作、
スーラの点描画や習作が並び、

モディリアーニ《裸婦》1916年 (チラシ中面上段左から3番目)
顔と身体の筆づかいが全く異なるって解説を読んで絵を見ると、
デフォルメされた顔だけ優美な裸婦の身体にくっつけたようにも
見えてしまいました。

ゴーガン(この展覧会、ゴーギャンではなくゴーガンって表記なんですね)の
タヒチで描いた《ネヴァーモア》1897年 (チラシ中面下段右から2番目)
横たわる裸婦という西洋の伝統的なモチーフだけど、タヒチの暗い肌の
女性の力強さ。周囲に描かれた植物文様の装飾性。背後の二人の謎。
解説を読んで、「悪魔の鳥」とゴーガンが呼んだ窓辺の鳥は、
エドガー・アラン・ポーの「大鴉」から着想されたものだろうと。
(ゴーガンは絵と詩との直接的な関係は否定しているが)
ポーの詩で、恋人を失った主人公のもとに姿を見せた大鴉が
「ネヴァーモア」と繰り返すと。

ゴーガン《テ・レオリア》1897年 も不思議な絵で良かった。
《ネヴァーモア》の2、3週間後に、10日ほどで描かれたという絵。
「テ・レオリア」とはタヒチ語で夢という意味だそう。

ゴーガンの大理石の彫刻はちょっと意外でした。
妻の《メットの肖像》1879-1880年
え?!上手いんじゃないですか? 当時ゴーガンが家族で暮らした家の
家主であった彫刻家ジュール=エルネスト・ブイヨが制作に
関わった可能性が指摘されているそう。

会場を出たところにあった記念撮影コーナー
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なかなか感想が書けずに、
展覧会を見てきてからもう2週間も過ぎてしまいました(^^;)

愛知県美術館はコレクション展もすごくいいので、
展覧会レポート続きますー。


愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/
コートールド美術館展公式サイト: https://courtauld.jp/
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Craziest Cat

英ザ・ガーディアン紙「最も狂った猫クイズ」(The Craziest Cat Quiz Ever)から出題。
https://www.theguardian.com/artanddesign/2015/aug/24/tails-of-the-unexpected-the-craziest-cat-quiz-ever#top

6. マネの研究者によると、彼女が娼婦の猫であることを示唆している絵の中のものは?
(What in this painting, according to Manet scholars, suggests that we are looking at a cat of easy virtue?)

・彼女の右前肢の腕輪(The band around her right paw)
・彼女の胸の開いたドレスの花(The flowers at her décolletage)
・彼女の前のオレンジの入ったボウル(The bowl of oranges in front of her)
・バーの前方に傾いた彼女の姿勢(Her posture, leaning forward on the bar)
by Craziest Cat (2020-01-22 23:52) 

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