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名古屋市美術館「岸田劉生展」 [美術]

1月28日(火)に行ってきた
名古屋市美術館「岸田劉生展」のことを
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劉生というと「麗子」なのかな? でもそれだと、
なんか不気味な絵を描く画家、みたいなイメージになっちゃうのでは?
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日本の近代美術史に比類なき足跡を残した岸田劉生(1891-1929)。劉生といえば愛娘を描いた「麗子像」が代表作として挙げられますが、肖像画だけでなく、静物画、風景画といった多彩なジャンルで独創性豊かな傑作を残しました。劉生はものの存在を見つめ、美を求め、さらに深い精神性を追求する独自の写実絵画の道を歩み続けました。その劉生の美意識は、新しい美術を模索する若い作家を中心に当時の洋画壇に強い影響を与えました。
(チラシ中面の文より)
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私は岐阜県美術館で岸田劉生《自画像》を見たり、
愛知県美術館の《高須光治君之肖像》を見て、
その深い写実表現すごいなって見てましたし、
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(愛知県美術館蔵のこの絵、もちろん展示されてました)
愛知県美術館ウェブサイト
コレクション検索で公開しているデジタル画像のうち、 「Public Domain」(パブリックドメイン)の表示があるものは、 当館に申請することなくダウンロードし、自由に複製、 再配布することができます。

愛知のこの100年のアートシーンを辿った
愛知県美術館「アイチアートクロニクル展」で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-04-15

私は、劉生が中心となって結成された「草土社」や
「草土社」の愛知での展覧会に触発されて結成された「愛美社」の
画家たち―河野通勢、大澤鉦一郎、宮脇晴、山田睦三郎たち―の絵が
一番気に入ったというか‥‥まぁ、私は写実絵画が好きというか、
その後の前衛的な絵画ってやっぱりよくわからないってこともあって。

日曜美術館で、東京ステーションギャラリーの展覧会が取り上げられて、
会田誠さんが<意識高い系>画家って言ってて面白かった。
(私が見に行った後の2月2日に再放送があって、復習しながら興味深く見ました)

なので、1,200円の前売券買うつもりでいたら(当日一般1,400円)
金券ショップで前売より20円安いチケットを発見して買っちゃいました。

できるだけ混んでいない会期早めの平日に行ったつもりでしたが、
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展覧会場は意外と鑑賞者がいました。

入口のパネル
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この展覧会、しりあがり寿さん描く麗子がカワイイ!
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麗子の赤い肩掛けとカツラをつけて記念撮影ができます!!ハハハ!!
(前の二人が盛り上がって写真撮ってたので、
この写真撮るまでかなり待った(^v^)

第一章
まずは1907年、劉生16歳のみずみずしい水彩画から。

そして黒田清輝の白馬会葵橋洋画研究所で学んでいた頃
劉生18歳の《橋》1909年9月15日 は、浮世絵風でもあり、
川面の反射が印象派風でもあって、とても気持ちのいい絵だと見ました。

そう、この展覧会で気がついたのは、ほとんどのキャプションに
絵の制作年月日まで記されていたこと!

年月日まで正確な年代順に並べられた絵で、
劉生が辿った絵の道がよくわかります。

劉生が「第二の誕生」と呼んだ雑誌『白樺』との出会い。
『白樺』が紹介する後期印象派の画家たちの絵から
影響を受けて描いたゴッホ風の《自画像》1912年3月14日や、
マチスのような色面構成による風景画

第二章では、
「首狩り劉生」と呼ばれた友人たちの肖像画、
そして自画像が正確に年代順に並べられているので、
筆致が細かく、細密に、より写実へと進んでいくのがわかります。

よく見ている(はずの)岐阜県美術館蔵の《自画像》1914年5月20日 も
もちろん並んでましたが、
自画像の中でわりと遅くに描かれた作品なんだと確認しました。
しかし、パッと見、同じような自画像が並んでて、
あ、これ岐阜県美術館の?って見たら違ってたりして、
まぁ飽きもせずに描いたもんだって気持ちと、よくこれだけ
様々な所蔵者から集めてきたものだ、大変だったろうなーなんて。

第三章
名古屋市美術館の展覧会では劉生の風景画の傑作で、
重要文化財にもなっている
《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年11月5日
が展示されてなくて残念だったんですが、
その場所を遠くから見た風景画
《代々木附近(代々木附近の赤土風景)》1915年10月15日 があって、
あ、ここを描いたのね! と興味深かったし、

《冬の崖上の道》1915年12月23日 や、
《冬枯れの道路(原宿附近写生)》1916年1月7日 などは、
土の道しか描いてないのに、不思議な迫力がありました。

劉生が肺結核の療養のために転居した家の隣に住む医師を描いた
《古谷君の肖像(草持てる男の肖像)》1916年9月10日 が良かった!

階段を上がった2階の 第四章では、麗子ちゃんの肖像がずらり!
村娘のお松をモデルにした絵もありました。

メナード美術館が所蔵する、赤い肩掛けを着た麗子の水彩画が
良かった。額装に布が使われているのもいい雰囲気。

チラシ中面右下の《麗子座像》1919年8月23日 ポーラ美術館蔵 は
すごい迫力! 油彩で描かれた絞りの着物など、
手触りまで伝わってくるような細密描写がすごい。
後年、麗子が足が痛いのをこらえて、溢れてきた涙が
流れないようにしていたって回想しているそうだけど、
そんなうるんだ目や真剣な表情、鬼気迫るような絵だなと。

重要文化財にもなっている、劉生といえばイメージする
《麗子微笑》1921年10月15日 東京国立博物館
2月16日までの限定公開でしたが、見ることができて良かった。
写実を極めた後だからこその不思議な絵。
この麗子の微笑みは、モナリザの微笑みや、仏像の微笑みを
思い出させるようで引き付けられました。

で、第五章
《麗子微笑》で出てきた不気味さグロテスクさがもっと強くなった
《二人麗子図(童女飾髪図)》1922年3月21日 泉屋博古館分館 や、
《童女舞姿》1924年3月7日 大原美術館 にはうーん‥‥となって

絹本着彩の《七童図》1922年9月13日 は、力の抜けた感じが
微笑ましくはあるんだけど‥‥

1922年6月から、骨董の収集に没頭しだして、

第六章
1924年11月から始まった茶屋遊びの放蕩で、
生活と制作に支障をきたして‥‥って解説を読んで、
劉生さん、何やってるのww! って。

再起をかけて1929年満州へ渡り、
《満鉄総裁邸の庭》1929年11月 などを描いて画会を開くも、
体調不良で山口県徳山(現・周南市)まで戻り客死。享年38

‥‥38歳!!
独自の絵の道を突き進んでいった劉生の生涯がよくわかる展覧会でした。

図録がとても充実してます! 2,500円(税込)
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自立するほど分厚い図録の後半88ページにわたって、
山田諭 編「岸田劉生活動記録」が載ってます。

活動については劉生の日記や論考、書簡などから記載され、
制作した作品については現在の所蔵先はもちろん、
初出展覧会名なども付記されてて、ものすごーーく詳しい!!

名古屋市美術館「画家たちと戦争」展 で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2015-09-24
展覧会の企画・担当学芸員の山田諭さんによる作品解説会があって、
それぞれの画家たちのことを詳しく説明していただいて、
とてもよく分かったんですが、現在、山田諭さん
京都市美術館の学芸課長になっていらっしゃるんですね。

しりあがり寿さん描く麗子のクリアファイルも
買っちゃいましたよ! 407円(税込)
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名古屋市美術館のコレクション展の、郷土の美術の部屋では、
岸田劉生展にあわせ「岸田劉生と愛美社」として、
大澤鉦一郎、宮脇晴、山田睦三郎、水野正一らの絵と、
1921年の草土社名古屋展第2回の開催に尽力した一人で、
劉生に師事していた片野元彦へ、お礼と記念に贈った
岸田劉生《なわとびの図》や、1923年に関東大震災が起きた際、
片野は、鵠沼の劉生の家に駆け付け、京都に移るまでの2週間、
劉生一家を片野家に滞在させたお礼に贈った
《菊(君子独居)》の絵と、ろうけつ染めの布が展示されていました。



美術館を出て、隣の名古屋市科学館の間を通り抜けて帰ろうとしたら、
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(16時頃)プラネタリウムの最後16:40の回がまだ入れるって知ったので、
見ていくことにしました。800円 科学館のプラネタリウムは2回目。
前回は名古屋に遊びに来た友人たちと入ったんですが、
名古屋市科学館プラネタリウムと大須散策ミニ同窓会
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2017-03-07
学芸員の解説が穏やかな声で眠ってしまいました(;.;)
今回はちゃんと起きてましたよ(^v^)v
テーマが「オリオン座物語」で、この頃、オリオン座の
ペテルギウスが観測史上異例の暗さになってて、超新星爆発が
起きるのではないかって言われてたので、興味を持ってたって
こともあるんですが(その後、また明るくなりつつあるそうですね)

--オマケ--
中日新聞1月25日(土)の記事
Riusei-chunichi.jpg
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