「としのこえ、とちのうた」のこと [美術]
前記事で、今頃あいちトリエンナーレ2019年の
パフォーミングアーツ「サエボーグ」のことを取り上げたんですが、
昨年の画像フォルダを見ていくと、あいちトリエンナーレのことは
しっかりブログ記事にしたけど、そのせいでブログに感想を書けなかった
展覧会とかたくさんあるなって。
なので、時間もあることだし(パートも先月から3人でやるところを
2人でやるようになったので、休みも増えてるし、何より
新しい展覧会を見に行くこともできないしー)思い出しながら
(まぁ何分忘れていることも多いだろうけど)書いていこうかと。
2019年10月13日(日)に、
旧豊田東高等学校内、弓道場周辺 で開催されていた
「としのこえ、とちのうた。」へ行きました。
チラシの下部分に書かれている文章
としのこえ、とちのうた。
2017年から、とよた市民アートプロジェクト「Recasting Club」では、旧豊田東高校(以下:東高)の一角を少しずつ整備しつついくつかのイベントを開催してきた。なかなかハードな場所で、最初は、電気は発電機、水は美術館から数十メートルくらいホースで引っ張り、トイレは仮設だったり。最初は、と言ってみたものの、実は今もそんなに変わってない。どうやらあいちトリエンナーレの会場の一つになるらしいし、会期に併せて何かやりたいな、と思っていた矢先に、敷地内でこれまで見逃していた奥まったエリアがあった。当然のことながら廃墟だ。でもなんだか想像力を掻き立てられる佇まいの一角だった。
まずはRecasting Clubに参加する個性的な面々のグループ展をしたいなと思った。あと、1月に開催されたトリエンナーレの地域展開事業に出品されていた荒木優光の豊田で制作した作品がとびきり素敵で、連なる展示室に散りばめられたら素敵だなと思った。この2年半ほど豊田に通う中で参加者の顔や街、背景のことが少しずつ見えてきたのもあって、豊田に所縁のある人に出品してもらいつつ、それぞれのインタビューを録らせてもらって作品と共にその言葉も展示させてもらおうと思った。土地や街に根ざした作品や言葉、声や歌の響いて交差するような空間がなんだかこの場所にとても似合うような気がした。(中崎透/本展キュレーター)
この展示を知ったのは、ツイッターで、
あいちトリエンナーレに行った人が、ついでにここも見て
面白かったってツイートしてたから。
旧豊田東高等学校は豊田市美術館の隣で、
ここの使われなくなったプールの底を立ち上げた
高嶺格の作品がトリエンナーレの作品として話題になっていました。
あいちトリエンナーレ2019(6) 豊田市美術館・旧豊田東高校プール
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-10-17
あいちトリエンナーレ2019の会期が14日(月・祝)まで、
豊田市美術館ではそれに加えて「クリムト展」もその日まで
開催されていたので、駐車場は満車。臨時駐車場として
案内されたのが豊田市立童子山小学校。
歩いて(結構距離あった)旧豊田東高等学校の校庭へ行くと、
「HYBRID BUNKASAI Ⅱ」ってイベントが開催されていて、
にぎやかでした。
えーーと、弓道場ってどこ?? あ、矢印があった!
この先? とちょっと不安になりながらも矢印をたどって行くと
案内の人が立っていました。(帰る時に撮った写真)
こんな場所だから、ここだけでなく
会場内は蚊取り線香の煙が立ち込めてました。
急な階段を降りていくと、
昼間でも薄暗い中に、蛍光灯の光が目立ちます。
本展キュレーターでもある
中崎透 NAKAZAKI Tohru の作品
取り付けられた板には、
豊田自動車の期間従業員をやってて、
期間工っていうんですけど、期間契約で、いわゆる契約社員。
バイトとはちょっと違って、ボーナスがあって、
正社員に登用される機会がある枠で、そこから社員になる人も多かった。
チラシの文にある「豊田に所縁のある人に出品してもらいつつ、それぞれのインタビューを録らせてもらって作品と共にその言葉も展示させてもらおうと思った。」
ってことですね。
あちこちの壁や窓などに書いて(シルクスクリーン印刷?)ありました。
ドアに書かれている文
昭和42年にトヨタに入った。ものすごい急勾配の時期。
ある時にね、会社の工場、製造ラインのところ、
床はもともと木だったんだけど、そこにグリーンの絨毯をバーっと敷いたの。
びっくりして、どういうことって、工場に絨毯ってって?
でもその効果は絶大で、すごい力があった。
それをやることによって、全部が変わっていった。
釣り合うように綺麗にとか、周りを整頓しなきゃとか。
これはすごいおもしろかった。
カラフルな光が薄暗い会場で幻想的です。
(撮影した時間が違うので、西日が入って印象も違います)
旧トイレだった場所には
河西進 KAWANISHI Susumu
「韓国で贈られた私への大切な手紙と時間」
韓国の切手が貼られた作品がドアに貼られています。
トイレ個室の中にも作品がありました。
膨大な作品量です。
挙母(ころも)って街が豊田市になった。
豊田市っていうのはもともとトヨタの名前だった。
会社と街は普通の生活として繋がってるんじゃないかな。
奥へ進むと、
高校で、トヨタ自動車の養成校というのがあって、
豊田学園っていって、二年生になるとトヨタ自動車の社員になる。
即戦力を作るために自動車工学とか電気系とか習って、
4年かけて卒業で、トヨタの中で高卒だけど学園卒って括りが違うの。
田代智裕 TASHIRO Tomohiro
「中庭の獣」
志賀ニュータウンっていう、親父が長崎から移ってきた。
年代的に、集団就職。金の卵とかなのかな。
親父もトヨタだし、うちの近所のおじさんたちもみんなトヨタ。
上手く写ってなくてスミマセン‥‥
水野なな MIZUNO Nana
「師匠と豊田といろんな日々たち」
安藤卓児 ANDO Takuji
「じくたうどんあ」
カラフルでパワフルな作品が並びます。
今は小原地区というとこにいて、
おじいちゃんおばあちゃんの家で、自分のルーツに繋がってる場所。
墓もあって、子供のの頃、薪で焚く風呂があったり、原点みたいな。
もともとは小原村というところで、たぶん20歳くらいの頃に合併。
だからあんまり豊田ってイメージじゃないかも。
梶千春 KAJI Chiharu
「JKN-DOTシリーズ」「JKN-KMシリーズ」「JKN-TCシリーズ」
ロッカールーム?の棚にいろんな作品が置かれています。
高校生の頃、あのグラウンドのむこう側には、
童子山小学校があって、そこが移転になって、
あれ、その場所が美術館になったのかな。
つちやみさ TSUCHIYA Misa
「きっとおおがかりなこいでした」
長い洗面台の中に大量の作品が置かれています。
鏡にも作品が貼られているのが面白い
風呂場(なんてのが高校にあったんですね!)には
山岸大祐 YAMAGISHI Daisuke
「Receptacle of Perception」
この人の陶芸作品、私
岐阜県現代陶芸美術館「世界とつながる本当の方法」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2015-03-20
で、見たことがあります。
2014年、多治見で開催された「第10会国際陶磁器展美濃」の
コンペティションで入賞されてましたね。
1984年 豊田市生まれの方なんですね。
ちょっとエロティックな形が面白いなって見たんですが、
こんな場所に置かれると、猥雑さ?みたいなのがよけい感じられて
面白いけど、私はちょっと生理的嫌悪感みたいなカンジも‥‥
千賀英俊 SENGA Hidetoshi
「石和温泉郷」
旧男子トイレには、石和温泉郷で出会った人々を撮った写真が
「蒼茫の記憶」
豊田市の保見団地で撮った肖像写真
移民としてブラジルに渡り、ブラジルから帰って来た人たちだと
普段から被写体は探していたけど
きっかけは偶然で、団地があるなって入ってみたら、
外国の人が多くて、なんだか雰囲気が違ってた。
声をかけて写真を撮るところから始まった。
あまのしんたろう AMANO Shintaro
「愛環クエスト・豊田編」
岡崎で、248号線から少し入ったところに自分の家があって。
248号線は豊田の市街地を通っていてそこからまっすぐ行ったところ。
陸上をやっていたので、豊田は陸上競技場が猿投にふって大会で行く場所だった。
あ、展示写真の下にプラレールの電車が! 面白い!
廃墟のような会場内に、蚊取り線香の煙と共に
歌のような女性の声が響いていました。
キュレーターの中崎透さんが「トリエンナーレの地域展開事業に出品されていた荒木優光の豊田で制作した作品がとびきり素敵」って
荒木優光 ARAKI Masamitsu
「Sami-Khedi-Ra-Biot(microcosm)」
無人の豊田スタジアムで発声する女性の声が、
弓道場(今は林みたいになってるけど)や、
シャワールームや、
体育館やらのモニタやスピーカーから響いています。
「土地や街に根ざした作品や言葉、声や歌の響いて交差するような空間がなんだかこの場所にとても似合うような気がした。」
廃墟のような空間に流れる歌声。忘れ去られようとしている場所が
声をあげようとしているのかも。面白かったです。
この記事を書くにあたり、出店作家の一人、
あまのしんたろう さんのブログ記事を参考にさせていただきました。
かつて女子高校だった豊田の廃墟、その最深部がアート会場
『としのこえ、とちのうた。』
https://yummyart.shintaro-amano.com/entry/2019/09/15/080000
パフォーミングアーツ「サエボーグ」のことを取り上げたんですが、
昨年の画像フォルダを見ていくと、あいちトリエンナーレのことは
しっかりブログ記事にしたけど、そのせいでブログに感想を書けなかった
展覧会とかたくさんあるなって。
なので、時間もあることだし(パートも先月から3人でやるところを
2人でやるようになったので、休みも増えてるし、何より
新しい展覧会を見に行くこともできないしー)思い出しながら
(まぁ何分忘れていることも多いだろうけど)書いていこうかと。
2019年10月13日(日)に、
旧豊田東高等学校内、弓道場周辺 で開催されていた
「としのこえ、とちのうた。」へ行きました。
チラシの下部分に書かれている文章
としのこえ、とちのうた。
2017年から、とよた市民アートプロジェクト「Recasting Club」では、旧豊田東高校(以下:東高)の一角を少しずつ整備しつついくつかのイベントを開催してきた。なかなかハードな場所で、最初は、電気は発電機、水は美術館から数十メートルくらいホースで引っ張り、トイレは仮設だったり。最初は、と言ってみたものの、実は今もそんなに変わってない。どうやらあいちトリエンナーレの会場の一つになるらしいし、会期に併せて何かやりたいな、と思っていた矢先に、敷地内でこれまで見逃していた奥まったエリアがあった。当然のことながら廃墟だ。でもなんだか想像力を掻き立てられる佇まいの一角だった。
まずはRecasting Clubに参加する個性的な面々のグループ展をしたいなと思った。あと、1月に開催されたトリエンナーレの地域展開事業に出品されていた荒木優光の豊田で制作した作品がとびきり素敵で、連なる展示室に散りばめられたら素敵だなと思った。この2年半ほど豊田に通う中で参加者の顔や街、背景のことが少しずつ見えてきたのもあって、豊田に所縁のある人に出品してもらいつつ、それぞれのインタビューを録らせてもらって作品と共にその言葉も展示させてもらおうと思った。土地や街に根ざした作品や言葉、声や歌の響いて交差するような空間がなんだかこの場所にとても似合うような気がした。(中崎透/本展キュレーター)
この展示を知ったのは、ツイッターで、
あいちトリエンナーレに行った人が、ついでにここも見て
面白かったってツイートしてたから。
旧豊田東高等学校は豊田市美術館の隣で、
ここの使われなくなったプールの底を立ち上げた
高嶺格の作品がトリエンナーレの作品として話題になっていました。
あいちトリエンナーレ2019(6) 豊田市美術館・旧豊田東高校プール
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-10-17
あいちトリエンナーレ2019の会期が14日(月・祝)まで、
豊田市美術館ではそれに加えて「クリムト展」もその日まで
開催されていたので、駐車場は満車。臨時駐車場として
案内されたのが豊田市立童子山小学校。
歩いて(結構距離あった)旧豊田東高等学校の校庭へ行くと、
「HYBRID BUNKASAI Ⅱ」ってイベントが開催されていて、
にぎやかでした。
えーーと、弓道場ってどこ?? あ、矢印があった!
この先? とちょっと不安になりながらも矢印をたどって行くと
案内の人が立っていました。(帰る時に撮った写真)
こんな場所だから、ここだけでなく
会場内は蚊取り線香の煙が立ち込めてました。
急な階段を降りていくと、
昼間でも薄暗い中に、蛍光灯の光が目立ちます。
本展キュレーターでもある
中崎透 NAKAZAKI Tohru の作品
取り付けられた板には、
豊田自動車の期間従業員をやってて、
期間工っていうんですけど、期間契約で、いわゆる契約社員。
バイトとはちょっと違って、ボーナスがあって、
正社員に登用される機会がある枠で、そこから社員になる人も多かった。
チラシの文にある「豊田に所縁のある人に出品してもらいつつ、それぞれのインタビューを録らせてもらって作品と共にその言葉も展示させてもらおうと思った。」
ってことですね。
あちこちの壁や窓などに書いて(シルクスクリーン印刷?)ありました。
ドアに書かれている文
昭和42年にトヨタに入った。ものすごい急勾配の時期。
ある時にね、会社の工場、製造ラインのところ、
床はもともと木だったんだけど、そこにグリーンの絨毯をバーっと敷いたの。
びっくりして、どういうことって、工場に絨毯ってって?
でもその効果は絶大で、すごい力があった。
それをやることによって、全部が変わっていった。
釣り合うように綺麗にとか、周りを整頓しなきゃとか。
これはすごいおもしろかった。
カラフルな光が薄暗い会場で幻想的です。
(撮影した時間が違うので、西日が入って印象も違います)
旧トイレだった場所には
河西進 KAWANISHI Susumu
「韓国で贈られた私への大切な手紙と時間」
韓国の切手が貼られた作品がドアに貼られています。
トイレ個室の中にも作品がありました。
膨大な作品量です。
挙母(ころも)って街が豊田市になった。
豊田市っていうのはもともとトヨタの名前だった。
会社と街は普通の生活として繋がってるんじゃないかな。
奥へ進むと、
高校で、トヨタ自動車の養成校というのがあって、
豊田学園っていって、二年生になるとトヨタ自動車の社員になる。
即戦力を作るために自動車工学とか電気系とか習って、
4年かけて卒業で、トヨタの中で高卒だけど学園卒って括りが違うの。
田代智裕 TASHIRO Tomohiro
「中庭の獣」
志賀ニュータウンっていう、親父が長崎から移ってきた。
年代的に、集団就職。金の卵とかなのかな。
親父もトヨタだし、うちの近所のおじさんたちもみんなトヨタ。
上手く写ってなくてスミマセン‥‥
水野なな MIZUNO Nana
「師匠と豊田といろんな日々たち」
安藤卓児 ANDO Takuji
「じくたうどんあ」
カラフルでパワフルな作品が並びます。
今は小原地区というとこにいて、
おじいちゃんおばあちゃんの家で、自分のルーツに繋がってる場所。
墓もあって、子供のの頃、薪で焚く風呂があったり、原点みたいな。
もともとは小原村というところで、たぶん20歳くらいの頃に合併。
だからあんまり豊田ってイメージじゃないかも。
梶千春 KAJI Chiharu
「JKN-DOTシリーズ」「JKN-KMシリーズ」「JKN-TCシリーズ」
ロッカールーム?の棚にいろんな作品が置かれています。
高校生の頃、あのグラウンドのむこう側には、
童子山小学校があって、そこが移転になって、
あれ、その場所が美術館になったのかな。
つちやみさ TSUCHIYA Misa
「きっとおおがかりなこいでした」
長い洗面台の中に大量の作品が置かれています。
鏡にも作品が貼られているのが面白い
風呂場(なんてのが高校にあったんですね!)には
山岸大祐 YAMAGISHI Daisuke
「Receptacle of Perception」
この人の陶芸作品、私
岐阜県現代陶芸美術館「世界とつながる本当の方法」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2015-03-20
で、見たことがあります。
2014年、多治見で開催された「第10会国際陶磁器展美濃」の
コンペティションで入賞されてましたね。
1984年 豊田市生まれの方なんですね。
ちょっとエロティックな形が面白いなって見たんですが、
こんな場所に置かれると、猥雑さ?みたいなのがよけい感じられて
面白いけど、私はちょっと生理的嫌悪感みたいなカンジも‥‥
千賀英俊 SENGA Hidetoshi
「石和温泉郷」
旧男子トイレには、石和温泉郷で出会った人々を撮った写真が
「蒼茫の記憶」
豊田市の保見団地で撮った肖像写真
移民としてブラジルに渡り、ブラジルから帰って来た人たちだと
普段から被写体は探していたけど
きっかけは偶然で、団地があるなって入ってみたら、
外国の人が多くて、なんだか雰囲気が違ってた。
声をかけて写真を撮るところから始まった。
あまのしんたろう AMANO Shintaro
「愛環クエスト・豊田編」
岡崎で、248号線から少し入ったところに自分の家があって。
248号線は豊田の市街地を通っていてそこからまっすぐ行ったところ。
陸上をやっていたので、豊田は陸上競技場が猿投にふって大会で行く場所だった。
あ、展示写真の下にプラレールの電車が! 面白い!
廃墟のような会場内に、蚊取り線香の煙と共に
歌のような女性の声が響いていました。
キュレーターの中崎透さんが「トリエンナーレの地域展開事業に出品されていた荒木優光の豊田で制作した作品がとびきり素敵」って
荒木優光 ARAKI Masamitsu
「Sami-Khedi-Ra-Biot(microcosm)」
無人の豊田スタジアムで発声する女性の声が、
弓道場(今は林みたいになってるけど)や、
シャワールームや、
体育館やらのモニタやスピーカーから響いています。
「土地や街に根ざした作品や言葉、声や歌の響いて交差するような空間がなんだかこの場所にとても似合うような気がした。」
廃墟のような空間に流れる歌声。忘れ去られようとしている場所が
声をあげようとしているのかも。面白かったです。
この記事を書くにあたり、出店作家の一人、
あまのしんたろう さんのブログ記事を参考にさせていただきました。
かつて女子高校だった豊田の廃墟、その最深部がアート会場
『としのこえ、とちのうた。』
https://yummyart.shintaro-amano.com/entry/2019/09/15/080000
コメント 0