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東京都現代美術館コレクション展「いまーかつて 複数のパースペクティブ」 [美術]

6月27日(土)、東京都現代美術館へ行き、
「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を見たことは前記事に。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-07-12

東京都現代美術館では「もつれるものたち」という展覧会もやってて、
セット券がお値打ちだったので、私はそれを買ったんですが、

東京都現代美術館のコレクション展
「いまーかつて 複数のパースペクティブ」は、
どちらの企画展のチケットでも見られます。
(コレクション展のみは一般500円)

まずはコレクション展を先に見ました。
良かった!! スゴイ出品点数(およそ180点)で、
ついでってレベルじゃない!

結構しっかりしたリーフレットももらえるんですよ。
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東京都現代美術館の展覧会のページ
いまーかつて 複数のパースペクティブ
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/multiple-perspectives3/
からリーフレットの内容がpdfファイルで見られます。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/2020_leaflet_0623.pdf
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会場の配置はこんなカンジ。
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吹き抜けのアトリウムに置かれた
アルナルド・ポモドーロ《太陽のジャイロスコープ》
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展示室へ進むと、まずは、
1 戦中・戦後の画家たち

東京都現代美術館は、約3年にわたる改修工事を経て、
2019年3月29日にリニューアルオープンしたそうですね。

東京都現代美術館が開館した1995年当初は、1945年以降の美術を
「現代美術」として収集していたけど、やはり、
戦後活躍した個々の画家の営みを辿ろうとすると、戦前・戦中期を
どう過ごしたかを見る必要があるってことで、

休館の間にコレクターや作家の遺族の方々からの協力で、
1940年代のコレクションの充実を図ることができたそう。

1-1 オノサト・トシノブ

オノサト・トシノブ(1912-1989) の1930年代から1950年代の作品が
32点。資生堂名誉会長の福原義春氏からの寄贈。
オノサト・トシノブってイメージするモザイクのような幾何学模様の絵
以前の作品が並んでいます。

1931年19歳で上京、津田青楓洋画塾で学び、
1942年招集、満州で終戦、シベリアでの3年間の抑留生活。
戦前も丸をモチーフにした作品を描いていたけど、
1948年の帰国後、象徴的な人間像という具体から再開し、抽象へ。
画面に再び丸が現れるようになります。
1952年頃に、小野里利信をカタカナ表記へ改めた。


1-2 末松正樹

末松正樹(1908-1997) 全く知らない画家でした。
彼が絵画を終生の仕事にしようと心に決めたのは、第二次世界大戦末期の
1944年、フランスののペルピニャンで抑留生活を強いられていた時期だったそう。
遺族から寄贈されたその時期のデッサンが展示されていました。


1-3 コレクターの視点

近代日本絵画のコレクターとして著名な福富太郎氏(1931-2018)
(まぁ、私は全く知知りませんでしたが)
浮世絵、美人画の収集と並んで氏が力を注いだのが、
少年期がぴたりと十五年戦争に重なる
この戦争の時代を除いてしまっては、私は自分の歴史を考えることができない
という、1930年代から50年代にいたる戦争に関わる絵画の収集。

それぞれどんな絵だったか忘れてしまいましたが、
藤田嗣治《千人針》、福沢一郎《魚雷攻撃》や、
向井潤吉《好日》《影(蘇州上空)》
《影(蘇州上空)》は、展覧会ページに画像ありました
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/multiple-perspectives3/
宮本三郎《少年航空兵》など、
あの画家が戦争中はこんな絵を描いてたんだとか、
新海覚雄《独立はしたが?》1952年 は、
戦後の浮浪児と、壁の向こうに進駐軍と戯れる女性の絵
日本のあまり触れたくない過去かもしれませんね。
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(展覧会リーフレットより)


1-4 鈴木賢二

彫刻家、風刺漫画家、版画家として活動した鈴木賢二(1906-1987)の
木版画が並んでました。戦前、プロレタリア美術運動に傾倒した彼は、
戦後も「版画運動」として、庶民や労働の姿を力強く彫ってます。
木版画の木目も生かして単純化された人物は、とても力強くて迫力。


1-5 浜田知明、秀島由己男、荒木高子

メゾチントの深い黒に浮かび上がる詩的な世界
秀島由己男(ひでしま ゆきお 1934-2018)

自身の戦争体験から「どうしても描かずにはいられなかった」
浜田知明(1917-2018)《初年兵哀歌》シリーズ

薄く伸ばした磁土の一枚一枚に聖書の文字を転写し、重ね合わせて
高温で焼く〈聖書シリーズ〉荒木高子(1921-2004)
岐阜県現代陶芸美術館の《退廃の聖書》の人ですね!
岐阜県現代陶芸美術館の収蔵品データベース:
http://jmapps.ne.jp/momca/det.html?data_id=720


2 松江泰治

写真なんですが、いわゆる美しい風景を写したのではなく、
無機質な俯瞰の中に豊かな細部を含んだ独自のスタイル
写真にしか実現しえない視覚世界の可能性を追求してきた写真家
ってリーフレットの解説にうんうんって。面白い!
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撮影可だったので1枚だけ。やっぱこれらの写真、
小さいとその迫力がわからないんですが‥‥
川に面した巨大なアパート。
それぞれの部屋の細部まで写し取られていて、それぞれにどんな
生活があるのだろうって想像しちゃいます。


3 mamoru

スタッフの方に「ただいま見ることができません」って
言われたので‥‥映像を含むインスタレーションみたい。
(時間と人数を限っての予約制のよう)


4 オノ・ヨーコ

2013年のあいちトリエンナーレでは、街のあちこちに
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2013-09-06
「生きる喜び」って書かれてて、
へーこんなのもアートなの?って思ったけど、
〈インストラクション・ペインティング〉
アーティストの文章によりインストラクション(指示)を鑑賞者が想像したり、行動することで完成する表現」なんだそう。
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ポモドーロの彫刻を見下ろしながら階段を上って、3階の展示室へ
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5 岡本信治郎

あ、昨年秋に愛知県美術館で見た「地球・爆」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-11-20
制作中心画家! その時の展覧会企画業務課長・拝戸雅彦氏のレクチャーで
岡本氏は現在入院中って聞いていましたが、

今年2020年4月8日に亡くなられたと掲示がありました。
(私がもらってきたリーフレットでは、岡本信治郎(1933- )ってありますが、
展覧会ページからダウンロードできるpdfでは(1933-2020)ってなってます。)

岡本信治郎《銀ヤンマ(東京全図考)》1983年
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少年期の戦争の記憶から、巨大ヤンマとB29が結び付けられた、
2011年の個展「空襲25時」で、連作の序章とされた作品とのこと。

地球・爆」でも描かれていたモチーフがあちこちに。
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岡本信治郎《ころがるさくら・東京大空襲》2006年
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あいちトリエンナーレ2013で展示されていた作品だ!
あいちトリエンナーレ2013 (1) 愛知芸術文化センター その1
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2013-09-04

一見、明るくポップな展示なんですが、よく見ると‥‥
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《ころがるさくら・東京大空襲》は、1945年3月10日の大空襲を原風景にもつ画家が、70代の挑戦として取り組んだパノラマです。左に上野地下鉄ストア、中央に九段坂、右に浅草デパートと軍艦大和を配し、それが焦土と化す世界、さらに未来空間の黙示録的世界を描いています。
(展覧会リーフレットより)


6  豊嶋康子

豊嶋康子《殺菌》2006年
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展示ケースの内側に殺菌灯と色見本が置かれた作品です。殺菌灯が発する紫外線によって、色見本の色彩が徐々に退色していきます。
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外界から作品を守るため展示ケースに貼られた紫外線カットフィルムの役割は、ここでは、外界/鑑賞者を守ることへと反転しています。

豊嶋康子《隠蔽工作_20120625》2012年
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豊嶋康子〈パネル〉
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本来見せない裏側を見せる作品

豊嶋康子《前例》2013/2015年
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20世紀になってから敗戦までの美術家の、欧米以外の渡航先と渡航理由を調べて」作られた作品。作品に使われている和紙は作家の地元で作られたもので、修復にも用いる澱粉糊で貼付けたそう。


7 モニール・ファーマンファーマイアン、ブレンダ・ファハルド、ジャジア・シカンダー

イラン生まれのモニール・ファーマンファーマイアン(1924-2019)の、
鏡を使ったモザイクのような作品が素敵だった。
イランの伝統的な建築意匠である、鏡片による幾何学モザイクとガラス色彩技術に着想を得た作品なんだそう。

ブレンダ・ファハルド(1940- )は、フィリピン女性作家の草分け的な存在。

ジャジア・シカンダー(1969- )は、パキスタン北部のラホールでインドーペルシアの細密画を学んだあと、1995年より雨根かをベースに活動している作家とのこと。


8 草間彌生

1951年に松本で描いた初期のドローイングから、
「ソフト・スカルプチュア」の《死の海を行く》や《ドレッシング・テーブル》や、
コラージュ作品など14点が出てました。


9 宮島達男

宮島達男(1957- )のデジタル・カウンターを用いた巨大な作品
《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》1998年
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この美術館の展示空間に合わせて制作されたものなんだそうですね。
私、テレビでこの作品を作っているドキュメンタリーを見た記憶があります。
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前回来た時(2003年の「田中一光 回顧展」なのでもう17年前かぁ)と
変わらず迫力だなーと、見たんですが、説明を読むと、
この作品は20年近くにわたって、この場所で展示されてきました。時が経つにつれ、当初は一様だった明るさに次第に個体差が生じるようになりました。そのため、この休館中に点検と修復を行うことで、眩い光の空間が戻ってきました。
ってことで、変わらずにあるには修復という変化をしないといけないわけですね。
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1728個のデジタルの数字は、ランダムに表示されているのではなく、
それぞれが1から9まで順番に表示していて(0の表示はなく暗闇になる)
そのスピードが違うんですね。
素早く変わるのと、ゆっくり変わるのと‥‥
なんかそれぞれの人生を見ているみたいだなぁとか。
ついつい見続けちゃいますよね。
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実はコレクション展に入る前に、こちらのリーフレットを見て
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-道草のすすめ-「点 音」 and "no zo mi"(PDF)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/oto_date_MAP_jp_20190405.pdf

屋外展示場へ行ってみたんですね
サウンド・アーティストのパイオニア 鈴木昭男の
代表的なシリーズだという「点 音(おとだて)」と、
この美術館のためにつくられた階段状の作品"no zo mi"
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一応、プレートの上で耳を澄ましてみたんですが‥‥
うーん、なんかよくわかりません。
自然の音に耳を澄ませてみようってことですか?

建物の裏のようなこの場所の「はるか」では、
空調の屋外機?の音が結構聞こえました。
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そういえば私、2008年に、たまたま行った一宮市三岸節子記念美術館で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2008-08-08
鈴木昭男展「点気ki-date」を見たハズなんですけど、
その時も、???って状態でした。

この場所以外にも、美術館内外に足跡のプレートがあったそうなんですが、
気が付きませんでした。

ただ、ベンチの形が面白いこの中庭、
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玉を転がすような涼やかな音がしていたんですが、
「点 音」の作品「あびる-1」だったのかな?

コレクション展示室の前のガラスには、
昨年2019年7月23日、24日に公開ドローイングを行った
文谷有佳里さんの作品がありました。
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あいちトリエンナーレ2019で、愛知芸術文化センター10階の
展示室のガラスケースにドローイングを描かれてましたね。
あいちトリエンナーレ2019(2) 愛知芸術文化センター10階
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-09-08


ついダラダラと書いちゃいましたが、長くなったので、
「もつれるものたち」展のことは次の記事で。


東京都現代美術館: https://www.mot-art-museum.jp/

東京都現代美術館「MOTコレクション いまーかつて 複数のパースペクティブ」
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/multiple-perspectives3/

MOTコレクション 出品リスト(PDF)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/List_MOTCollection_0526.pdf

MOTコレクション リーフレット(PDF)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/2020_leaflet_0623.pdf

-道草のすすめ-「点 音」 and "no zo mi"(PDF)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/oto_date_MAP_jp_20190405.pdf

MOTみつけるMAP(PDF)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/MOT_mitukerumap_200303.pdf

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