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静岡県立美術館「みんなのミュシャ」展 [美術]

8月23日(日)、静岡県立美術館へ行ってきました。

「みんなのミュシャ
 ミュシャからマンガへ――線の魔術」をやっています。
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チラシ中面(クリックで拡大)
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この展覧会、名古屋市美術館で見るつもりだったんですよねー。
私にしては珍しく前売券、それも早割ペアチケットを買ってたんです。
(友人を誘うか、2回行ってもいいしーって思って)
それが‥‥新型コロナウィルスのため、名古屋市美術館での開催が
(4月25日~6月28日の予定だった)中止になりまして(T.T)

なので、次の巡回先の静岡県立美術館まで行ったというわけです。
静岡県立美術館へ行くのは初めて。HPでアクセスを調べて、
名古屋から東海道新幹線「ひかり」に乗車。ガラガラです。
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静岡駅で降りるのも初めて。
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静岡駅から静岡県立美術館行きのバスに乗るのが一番わかりやすいかなと。
北口11番のりばから1時間に1本出てます。10:58発のバスに乗りました。
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JR東静岡駅も経由して、約30分で終点の静岡県立美術館へ。370円
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マスク着用、サーモグラフでの検温、手指消毒をして、
整理券を受け取りました。11時半頃で217番でした。
入場まで1時間くらいかかりますと言われて(@.@)

行列に並び、わりと早く列が動いて良かったと思ったら、
1階の待機用の広い部屋(県民ギャラリー)に案内されて‥‥
入場できたのは最初に言われたように12時半近かったです。

1,400円でチケットを買い、展示室へ
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第1章 序―ミュシャ様式へのインスピレーション

8歳のミュシャが描いた《磔刑図》をはじめ、
教会の聖歌隊で歌っていたミュシャが親しんだであろう
教会の儀式に使われる振り香炉や、
モラヴィアの民芸品・花柄の花瓶とそれをミュシャが油彩で描いた静物画、
ウィーン時代にミュシャが購入したハンス・マカルトの画集、
そして、ミュシャが収集した日本の浮世絵や七宝焼、
中国の刺繍などが展示されていました。


第2章 ミュシャの手法とコミュニケーションの美学

パリに学ぶミュシャが、パトロンからの援助が打ち切られ、
経済的理由から挿絵画家として働き始めます。
大衆文化と印刷技術の進化が目覚ましいこの時期、
ミュシャのデッサン力と明確で流麗な描線は理想的だったと。

挿絵の習作の確かなデッサン力や、
カリカチュアのユーモラスな線など興味深かった。


第3章 ミュシャ様式の「言語」

1895年元旦にパリの街角に現れた
女優サラ・ベルナールのための劇場ポスター《ジスモンダ》が
大評判となり、ミュシャは一躍ポスター作家として有名になります。

この等身大のポスター、今までのミュシャ展とかで何回も見てますけど、
やっぱりインパクトありますよね。当時の人の衝撃はすごかったろうなと。
《ジスモンダ》《ロレンザッチオ》《ハムレット》と
サラ・ベルナールの劇場ポスターが並んでいて迫力!

そして、チラシにも使われている装飾パネル
《トパーズ、ルビー、アメジスト、エメラルド――連作〈四つの宝石〉より》や、
花や宝石などの装飾モティーフで飾られた魅惑的な女性を描いた宣伝ポスターなど、
いわゆる「ミュシャ様式」の作品が並びます。

今までのミュシャ展や本などでよく知った作品も、
これ見たことないかもってのも、習作とかもあって、
とにかくたくさんのミュシャの作品が並んでて満足~!


第4章 よみがえるアール・ヌーヴォーとカウンターカルチャー

で、この展覧会が今までのミュシャ展と違うのはここから。

ミュシャが亡くなったのは1939年 ドイツのプラハ侵攻の際、
ゲシュタポに逮捕・尋問された後に健康を悪化させて‥‥
没後、ミュシャはしばらく忘れられた存在であったと! (え?! そうなんだ!!)

1963年に英国で開催された2つのミュシャ展が、
ミュシャの業績に再び光を当てることになります。

1960年代後半以降、ミュシャ作品に触発された
サイケデリック・ロックのポスターやアメリカンコミックスなどが続々と登場。
「ミュシャ様式」がよみがえりまえす。

ロックのLPジャケットやポスターなどが展示してあって、
私はロックに詳しくないけど、そうだ! 確かに60-70年代のレコードジャケットって
こんなドハデな色を使ってて、サイケデリック・アートって言われてたけど、
流れるような曲線表現や装飾にミュシャの影響がわかりますね!


第5章 マンガの新しい流れと美の追求

そして日本では!

1900年代初頭、日本の文芸誌の表紙はミュシャ風に染まりました。
一條成美や藤島武二による『明星』の表紙

一條成美の『明星』の挿絵とか、ミュシャの絵そのままなんてのもありますね。

私、一條成美は今まで知りませんでした。
ミュージアムショップで売られていたこちらの本
大塚英志「ミュシャから少女まんがへ」を読んで
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副題に「幻の画家・一条成美と明治のアール・ヌーヴォー」とありますが、
内容はほとんどが一条成美についてです。

この本では「一条成美(いちじょう せいび)」と書かれているんですが、
「みんなのミュシャ」図録には「一條成美」と表記されています。

当時の『明星』の一条成美の装画は絶大な人気だったと。
それがいろいろあって、藤島武二に替わり、早世したこともあって
一条成美は忘れられていきます。

藤島武二がデザインした与謝野晶子の歌集『みだれ髪』の表紙は有名ですね。

私、日本のレトロポスターとか好きなんですが、
中山道広重美術館「日本のポスター芸術」展と講演会 に行った時、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2014-11-15

フランスに留学した画家が、帰国時にミュシャのポスターなどを
持ち帰って、展覧会で公開したりして(1900年の「白馬会 第5回展」が、
ミュシャが日本の公の場に展示された初だと)
ミュシャのポスターとそっくりなものが作られたりしていると聞きました。
今なら盗作とかパクリとかって問題になるんでしょうが、当時は
外国の文化に接することのできる人は少数で、見習うべきとされ、
褒められこそすれ、非難する人はいなかったと。

ミュシャ様式やアール・ヌーヴォーはほぼリアルタイムで日本に流入して、

1900年代初頭のわずかの期間、日本の文芸誌の表紙はミュシャ風に染まる。 そこで描かれた女性画は、この国の少女画の起源にもなっていくが、大正、 昭和と時代を経るなかで、ミュシャの名は忘却されれ、ただ、意匠化された星や花や流線の髪が 様式として受け継がれた。(中略)少女マンガという領域がミュシャと「再会」するのは、 トキワ荘グループ唯一の少女マンガ家・水野英子、そして、彼女に続く「24年組」の登場を 待たねばならない。(「みんなのミュシャ」展図録より)

水野英子とミュシャとの出会いは、
1960年頃、銀座のイエナという洋書屋で、ポスターだったかな、ミュシャを1枚絵で 初めて見たんです。それがとても印象的でした。ミュシャは当時まだそれほどは 知られてはいなかったんですが、いわゆる普遍的な美に通じる、様式化された表現法に ショックを受けました。[…]その頃もっと日本で知られていたビアズリーの線描と比べると(後略)
(「みんなのミュシャ」展図録のインタビューより)

あぁ、銀座のイエナ! 懐かしいなぁ。大学生の頃たまに行きました。
洋書が高価だった頃、英語なんて読めないけど、絵を見るだけでも
なんか新しい文化を覘いたような気になりました。

多分、これらの本イエナで買ったと思うんですが‥‥
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水野英子は1969-1971年に、ロック歌手を描いた「ファイヤー!」という漫画を
描いているので、ロックのジャケットやベトナム戦争中のアメリカの
サイケデリック・アートに流れるミュシャ様式にも反応したんでしょうね。

山岸凉子も、ミュシャに出会ったのは銀座のイエナだと
「アラベスク」を連載し始めていた頃に、ミュシャというか、ミュシャ風のものに出会いました。 当時銀座にあったイエナ書店に、イギリスのヴィクトリア朝の挿絵本とかアメリカのイラスト集とかがたくさん入ってきていたんです。そのなかにミュシャもありました。

この展覧会でも展示(複製)されてましたが、いかにもミュシャって
山岸凉子《真夏の夜の夢》「アラベスク」
(『花とゆめ』1975年4月9日号付録ポスター用イラスト)
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(私が持ってる山岸凉子の画集からスキャン)

1975年ってことは、まだ日本初のミュシャ展の前ですね。

1978年に、東京・伊勢丹で、日本で最初のミュシャ回顧展
「アール・ヌーボーの花―ミュシャ展」が開催されました。

この展覧会、当時大学3年生だった私も見に行って、
ポスターを買って(連作パネル〈4つの花〉だったと思う)部屋に貼ってたなぁ!
(図録ももちろん買いました)

「みんなのミュシャ」展図録で、
花郁悠紀子さんについて、実妹の波津彬子さんが
1975年くらいのことですか‥‥デビュー前の姉(花郁)が東京で ひとり暮らしを始めておりまして、彼女の部屋の壁にミュシャのポスターが 貼ってありました。(後略)
と、回想しておられて、すごくわかるというか、嬉しいというか‥‥

波津彬子さんの言葉として
少女マンガ家たちは、みな綺麗な絵を描きたいと思うわけですが、じゃあ 具体的にはどうしたら自分のイメージを表現できるのかしらと思案する。 そんな時にミュシャを見ると、ああ、そうなのか、みたいなことになるわけです。

すごくよくわかります!! 私も当時、ミュシャみたいに描けたら! と
思って、マネしようとしたんですが‥‥まぁ、私の力不足で。

山岸凉子さんのインタビューは続いて、
実際のミュシャの絵にたどり着く前に、アメリカ人アをーティストによるイラストの中で、 円環のモティーフのなかに主題を入れ込むあの“様式”を知ったんです。これすごいと思って 影響を受けながら描いているうちに、ミュシャの画集を見て、ああ、これが先かと思って びっくりしましたね。
私は伊勢丹のミュシャ展で、ミュシャを知りました。
それまでミュシャ“様式”の絵も見てたはずですが、
ミュシャという名前は知りませんでした。(水野英子さんも言われてますが、
ビアズリーは知ってました) で、あぁ、この人が本家なのか! って。
少女マンガの絵って、この人が源流なんだ! って思いましたね。

水野英子、山岸涼子、花郁悠紀子、波津彬子、松苗あけみ と、
私が大好きな、または私と同世代の少女マンガ家の
美しいカラーイラスト(複製)が展示されていて嬉しい!

天野喜孝は息子がプレイしていたゲームで知りました。
へー、今の子(90年代後半当時)も、こんな世紀末的お耽美な絵、
好きなんだ(私が好きなので)って見たことを覚えてます。

出渕裕は知りませんでしたが、ミュシャの影響は、少女マンガだけでなく、
ファンタジー小説のイラストにも及んでいるんだなぁと。
この方のインタビューで「1970年代にミュシャ展があり、その時に出てきたいろんなグッズやカレンダー、画集などで見たのが最初のミュシャとの出会いだった」ってあって、
あぁ、1958年生まれの方だから私と同世代だなーって。
あの日本初のミュシャ展の影響力って大きかったのかもって。


あれからミュシャ展は日本で何度も開催されてますね。

2017年に国立新美術館でミュシャ後半生の一大プロジェクト
《スラヴ叙事詩》全作品20点が展示された展覧会はすごかった!
国立新美術館「ミュシャ展」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2017-04-28

大阪・堺市には
堺 アルフォンス・ミュシャ館: http://mucha.sakai-bunshin.com/
がありますし。ここは、カメラのドイ創業者である
故・土井君雄氏(1926-1990)が収集した約500点にのぼるミュシャの作品が
堺市に寄贈されてできたんだそう。

土井君雄氏はミュシャの息子・ジリ・ミュシャ氏とも親しく、
1989年にチェコスロヴァキア文化功労最高勲章を授与されています。
日本初のミュシャ展開催の中心人物でした。

今では日本で大人気のミュシャですが、ミュシャの作品をよく知る人も、
あまり知らない人も満足できる展覧会だと思います。

2019年7月13日(土)~東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで
始まったこの展覧会、京都文化博物館、札幌芸術の森美術館と巡回して、

名古屋市美術館での巡回展は中止になりましたが(T.T)

静岡県立美術館で2020年9月6日(日)まで開催された後、

長野県の松本市美術館で9月19日(土)~11月29日(日)へ巡回します。

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静岡県立美術館、「みんなのミュシャ」展に続いて、
収蔵品展「激突! 東西の狩野派」と、ロダン館を見ましたが、それは次の記事で。

ミュージアムショップで、図録2,640円(税込)と、
クリアファイルは、ちょっと高かったけど、メタリック加工が豪華で
素敵だった《椿姫》550円(税込)を購入。
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ペコちゃんがミュシャが描いたようなドレス姿で立ってて、
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なんと! ペコちゃんとミュシャがコラボ!!
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ペコちゃんサクサクサブレ1,296円(税込)

ペコちゃんの顔の形のサブレが5枚入ってます。
美味しかった。さすが不二家
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1階にあった記念撮影コーナー
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美術館前の看板
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静岡県立美術館: http://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/

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開催中止になった名古屋市美術館のチラシ
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(早割ペアチケットの発売用の先行チラシ)
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堺 アルフォンス・ミュシャ館 
「生誕160年記念 アルフォンス・ミュシャ 創作の軌跡」
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ここ一度行かなくちゃって思ってるんですけどね。
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この企画展は11月8日(日)まで。




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今は電子書籍で昔のマンガが手軽に読めるようになって嬉しい。
水野英子の小学館漫画賞受賞作「ファイヤー!」
もう50年も前の作品ですか! いろいろ革新的な作品だったなぁ‥‥










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