愛知県美術館「トライアローグ」展 [美術]
4月25日(日)愛知県美術館へ行ってきました。
「横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館
20世紀西洋美術コレクション
トライアローグ」展をやっています。
4月23日(金)に始まったばかりで、私はGW後の平日にでもゆっくり
‥‥なんて考えてたけど、東京や大阪などで緊急事態宣言が出て、
休館する美術館や博物館が出てるってことで、
去年の、わずか3日で閉幕となってしまった「大浮世絵展」のことなど
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-04-18
思い浮かび、愛知県もコロナの状況は今後どうなるかわからないので、
とにかく早く行っておこうと。
(幸い、今のところ感染症拡大防止措置をとりながら開催できています。)
「トライアローグ」とは、鼎談・三者会談の意味。
20世紀の西洋美術を収集の柱のひとつとしている
横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館から
選りすぐりの作品で、20世紀の西洋美術の流れを
見ていくことができます。
横浜美術館で、2020年11月14日(土)~2021年2月28日(日)に
開催された後、巡回してきました。
愛知県美術館で、2021年4月23日(金)~6月27日(日) その後、
富山県美術館へ、2021年11月20日(土)~2022年1月16日(日)に
巡回予定。
横浜美術館でやってた時、日曜美術館アートシーンの
最初に紹介されていて、巡回を楽しみにしていたんです。
友の会の期限が3月末で切れていたので、
インフォメーションで、年会費8,000円を払って継続手続きをしました。
展示室入口のところに写真撮影についての注意がありました。
この展覧会、20世紀を30年区切りの3章に分けられています。
第I章 1900s- アートの地殻変動
最初に作風が違うパブロ・ピカソ(1881-1973)の作品4点!
見慣れた(?)愛知県美術館蔵、ピカソ「青の時代」の《青い肩かけの女》1902
隣の「キュビスムから 遠く離れて」って
‥‥この展覧会、キャプションにつけられたキャッチコピー(?)が
いいですね! 解説もわかりやすい‥‥
「新古典主義」の《肘かけ椅子の女》1923 は富山県美術館蔵
(チラシの表面にも使われています)
横浜美術館から来たのは、目が上下左右に離れてたりする
《肘かけ椅子で眠る女》1927
‥‥ピカソの4点の中では私この絵が一番好き
様々な視点から眺めた画像を合成する「キュビスム」の描法で
描かれた《座る女》1960 はピカソ79歳の作品
会場の写真、これくらいの大きさなら使ってもいいかな。
(あくまで私の判断です)
フェルナン・レジェ(1881-1955)が3点
《コンポジション》1931 が横浜美術館
《緑の背景のコンポジション(葉のあるコンポジション)》1931 が愛知県美術館、
《インク壷のあるコンポジション》1938 が富山県美術館
その前にあるのは、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)
《空間の鳥》1926(1982 Cast)
2019年12月に横浜美術館へ行って、
「ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」を見たんですが
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-12-15
横浜美術館の堂々とした吹き抜けのエントランスの
階段状の展示空間にあったなって。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-12-19
なんか面白い形って写真撮りました。
レイモン・デュシャン=ヴィヨン《馬の頭》1914 富山県美術館
写真、著作権保護期間が満了しているので、自由に利用できると
私、マルセル・デュシャンが3人兄弟の3番目だってこと、
初めて知りました。
一番上がジャック・ヴィヨン(1875-1963)
あ、この人の《存在》1920 愛知県美術館のコレクション展で
何度か見てて、不思議な絵だなーってくらいの印象だったんだけど、
「まず頭を 厚さ数センチ手度に スライスします」
って「構造的分解」と呼ばれている手法で描かれた絵なんだって。
二番目が《馬の頭》のレイモン・デュシャン=ヴィヨン(1876-1918)
‥‥早くに亡くなっているから、著作権保護期間が満了しているんですね。
(著作権保護期間は原則、著作者の死後70年まで)
三番目がマルセル・デュシャン(1887-1968)
男性用便器に《泉》と名付けて展覧会に出品しようとした事件が
有名な、20世紀美術の革命者。
唯一の映像作品だという《アネミック・シネマ》1926 横浜美術館
‥‥今見ると、モノクロだし、素朴な映像‥‥みたいに見ちゃうけど。
パウル・クレー(1879-1940)が5点ありました!!
(あっしまった、クレーは写真利用できるのに、
撮影してくるの忘れちゃった。
愛知県美術館のコレクション検索で
「Public Domain」表示があったので、そちらの画像を)
《女の館》1921
《蛾の踊り》1923
《回心した女の堕落》1939
他2点は、
《攻撃の物質、精神と象徴》1922 横浜美術館
《レールの上のパレード》1923 富山県美術館
クレーの「油彩転写」って技法、初めて知りました。
‥‥私のクレーのイメージは、《回心した女の堕落》みたいな、
柔らかな色彩のメルヘンっぽい絵「晩年様式」って称されているそう。
でも愛知県美術館のコレクション展で《女の館》や《蛾の踊り》は
見た記憶があるのに、《回心した女の堕落》は、あらこんな
クレーの素敵な絵持ってるんだ! って。
で、「油彩転写」技法、黒い油絵具を裏面に塗った紙の上から尖筆で
なぞって転写するって、カーボン紙を使うみたいな技法なんですね。
なるほど、線に独特の質感が出て、画面のところどころに黒い
滲みのような絵具のむら(汚れに見えなくもない)が出ます。
《攻撃の物質、精神と象徴》、《レールの上のパレード》
そして《蛾の踊り》にもこの技法が用いられています。
メッシュ地のアルミ板の柔らかなフォルムが面白いなって見た
ナウム・ガボ《空間の構造》1959 横浜美術館
今まで名前も聞いたことがありませんでした。
ナウム・ガボ(1890-1977)
同じく彫刻家の兄アントワーヌとともに「ペブスナー兄弟」として知られるガボ(本名ナウム・ペブスナー)。ロシア領ベラルーシに生まれ(中略)ロシアアヴァンギャルド運動の理論的支柱となる。しかしソヴィエト連邦樹立に際し、思想的軋轢により兄とともに母国を離れ、第二次世界大戦後にはアメリカに渡って活動した。(図録より)
コーナーに置かれてインパクトあった
ウラジミール・タトリン(1885-1953)
《コーナー・反レリーフ》1915(1979再制作) 横浜美術館
ロシア帝国領下のウクライナ生まれ(中略)ロシア革命の動きに同期して構成主義運動を展開したが、1930年代のスターリン体制下において衰退。(中略)
タトリンのレリーフのほとんどは大戦後に行方不明となっており(大半は処分されたと目される)、作家没後に、写真や素材情報が残されていた作品群(本作を含む)がイギリスのアーティストの手により順次復元された。(図録より)
写真使っていいそうなので
部屋の真ん中に置かれていた ハンス(ジャン)・アルプ(1886-1966)の
彫刻《鳥の骨格》1947 富山県美術館 も面白かったなぁ!
第II章 1930s- アートの磁場転換
部屋の真ん中のガラスケースに、モコモコした
なんかカワイイオブジェが2つ並んでいます。
メレット・オッペンハイム(1913-1985)の、
ビールジョッキと人工毛皮で作った《りす》1969(1970再制作)
100点が作られたうち、横浜美術館と富山美術館にある2点が並んでました。
2つ並ぶと、さらにカワイイ。再会を喜んでるかな?
マックス・エルンスト(1891-1976)が3点
フロッタージュを油彩画に応用した(グラッタージュ)で描かれた
《森と太陽》1927 富山県美術館
第二次世界大戦中、敵性外国人となり収容所で描いた
デカルコマニーで偶然に生み出された形を怪物たちに見立てた
《少女が見た湖の夢》1940 横浜美術館
アメリカへ亡命した後、パリに戻って描かれた
レンブラントの絵をもとにした
《ポーランドの騎士》1954 愛知県美術館
この作品、コレクション展で何回も見てるのに、
キスしているような2羽の鳥や、その上の1羽の鳥は
今回解説読んで初めて見つけました(^^; 全く何見てんだか‥‥
幻想的な雰囲気がいいなーってくらいにしか見てない。
そういや、《ポーランドの騎士》ってタイトルなのに、
馬は描かれてるけど、騎士はいませんね。
ジュアン・ミロ(1893-1983)も3点
え?! これミロなの? って見た
《花と蝶》1922-23 横浜美術館 (チラシ裏面右下)
葉脈まで丹念に描かれた花や蝶のリアルさが、かえって不思議な存在感。
私が「雲の中の雨と太陽」って勝手に呼んでいる、ゆるーい雰囲気の
《絵画》1925 愛知県美術館
落書きみたいに見えるけど、赴くままに描いたのではなく、
スケッチブックの素描をカンヴァスに再現しているそう。
《パイプを吸う男》1925 富山県美術館
富山県美術館が建設準備中の1977年に購入した
西洋美術のコレクション第一号。
チラシ表面に使われている ルネ・マグリット(1898-1967)
《王様の美術館》1966 は、横浜美術館
いかにもマグリットって絵
富山県美術館は《真実の井戸》1963 を所蔵してます。
途中で切れた片足が立ってる。タイトルもなんか不思議
ポール・デルヴォー(1897-1994)が3点
私が好きな愛知県美術館所蔵《こだま(街路の神秘)》1943
隣に《夜の汽車》1947 富山県美術館
この2枚、1948年のパリの画廊の個展で一緒に展示されていた絵だと。
もう1枚は《階段》1948 横浜美術館
デルヴォーらしい不思議な世界。これ、新潟の先駆的な私設美術館・
長岡現代美術館の旧蔵で、1970年の閉館により「大光コレクション」
として売却された際、横浜美術館が10点購入したうちのひとつだそう。
チラシ表面の アレクサンダー・カルダー(1898-1976)
《片膝ついて》1944(1968鋳造) 愛知県美術館
6つのパーツがバランスを保っていて、触るとゆったりと動くそう
(もちろん展示は触れません)
カルダーといえば、モビール
《小さな銀河》1973 富山県美術館 は、
会場を出たところに展示されていました。
サム・フランシス(1923-1994)が2点
見慣れた(?)愛知県美術館の《焼失に向かう地点の青》1958 と、
富山県美術館の《プルー・イン・モーション3》1960
モーリス・ルイス(1912-1962)《ダレット・シン》1958 富山県美術館
茶色の絵具で描かれているのではなく、オレンジや青、緑、紫などの
アクリル絵具を流して染み込ませる「ステイニング」の技法で制作された
〈ヴェール〉絵画と呼ばれシリーズの1点。
タイトルはルイスの没後に、整理のためヘブライ語のアルファベットが
割り当てられたそう。
愛知県美術館の《デルタ・ミュー》1960-61 は、
作品が大きすぎて、持ち運びできないため、
この展覧会への出品を断念したそう。
(愛知県美術館友の会 会報「空中回廊」第50号 より)
https://apmoa-tomo.com/kaiho/kaiho50.pdf
愛知県美術館のコレクション検索でPublic Domain画像あったので
お借りしてきました。
第III章 1960s- アートの多元化
フランシス・ベーコン(1909-1992)が2点
《座像》1961 横浜美術館
《横たわる人物》1977 富山県美術館
うーん、私はベーコンのなんかおどろおどろしい人物の絵、
よくわからないんだけど‥‥富山県美術館の絵、制作後間もない
1979年に購入されていて、日本の公立美術館がベーコンを収集した
最も早い例とのこと。
富山県美術館は特に第III章あたりのコレクション充実してますね。
愛知県美術館のイヴ・クライン(1928-1962)
《肖像レリーフ アルマン》1962原型制作
「型取りされて 真っ青になった 友人の身体」(キャプションのコピー)
型取りされた友人・アルマン(1928-2005)の作品が置かれてました。
《バイオリンの怒り》1971 富山県美術館
バイオリンがバラバラに破壊されて、アクリル樹脂の立方体に
収められています。
これ面白かった! 古代彫刻風のブロンズ像が片手を揚げ、
大きな鏡に向かい合っています。
ミケランジェロ・ピストレット(1933- )
《エトルリア人》1976 富山県美術館
豊田市美術館の鏡に人物だけが描かれた
《窃視者 (M・ピストレットとV・ピサーニ)》1962,72
を思い出しました。
2018年8月に行った
DIC川村記念美術館「ブリジット・ライリーの絵画」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2018-08-27
で見たブリジット・ライリー(1931- )
《オルフェウスの歌Ⅰ》1978 富山県美術館
がありました。ライリーの絵画の中でもこの淡い色彩のゆらぎ
素敵だなって見た記憶があります。
ジム・ダイン(1935- )のバスローブのリトグラフが並んでいるのには、
名古屋ボストン美術館「ジム・ダイン」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2011-08-25
を思い出しました。(2011年?! もう10年前のことなんだ!)
なんかお手軽‥‥って印象だった。
《赤い化粧着》と《夜の肖像》が富山県美術館
《自画像:風景》が横浜美術館 どれも制作年は1969
名古屋ボストン美術館での展覧会でもそうだったけど、
愛知県美術館の《芝刈機》1962 が
ジム・ダインでは一番面白いと思う。
ロイ・リキテンスタイン(1923-1997)
漫画を拡大して印刷の網点まで描いたポップ・アートが有名だけど、
「ピカソをポップに」した 横浜美術館の
《ピカソのある静物(版画集『ピカソへのオマージュ』より)》1973
もいいけど、富山県美術館の
《スイレン―ピンク色の花》1992 が良かった。
モネの〈睡蓮〉をもとに、ステンレスにエナメル塗料でプリントしたもの。
模様のついた金属板がキラキラと輝くのが水面の反射のよう。
彫り込まれた木製の額も素敵。
ポップ・アートの代表 アンディ・ウォーホル(1928-1987)
その代表作ともいえる《マリリン》10枚組 1967 富山県美術館
「色色なマリリン」ですね。
愛知県美術館からはドラァグクイーンを描いた
《レディース・アンド・ジェントルメン》1975
横浜美術館からはウォーホルが肖像画制作のために撮影した
写真が来てました。
クリスチャン・ボルタンスキー(1944- )
2019年に、国立国際美術館、新国立美術館、長崎県美術館を巡回する
展覧会があって、ポスターやチラシ見たり、
日曜美術館アートシーンなどで紹介されたこともあり、
なんかスゴイ現代アーティストなんだってくらいの知識はありましたが、
実際に作品を見るのは初めて。
《シャス高校の祭壇》1987 横浜美術館
なんかこの不穏な雰囲気いいですね。
ランプに照らされたぼうっとした顔写真は、1931年に撮影された
ウィーンのユダヤ人高校(ギムナジウム)の生徒たち。
彼らがその後、どのような運命をたどったかは定かではないそうですが、
第二次世界大戦中、多くのユダヤ人が犠牲となった
ホロコーストの悲劇も思いだされます。
なんでも包んじゃうクリスト(1935-2020)が、
フロリダ州マイアミ、ピスケーン湾に点在する11の島々の周囲を
幅61メートルのピンク色の布で包むプロジェクトの記録写真(4枚組)
クリスト&ジャンヌ=クロード
《囲まれた島々、フロリダ州マイアミ、ピスケーン湾のためのプロジェクト1980-83年》
ピンクの色が鮮やか!
ジャンヌ=クロード(1935-2009)は公私ともにクリストのパートナー
1994年に、それまでクリスト作品と表記されてきた屋外作品や
大規模インスタレーションを遡って2人の名義に変更したと。
現代ドイツを代表する画家ゲルハルト・リヒター(1932- )の
大きな絵《オランジェリー》1982 富山県美術館
が展示されていました(チラシ裏面2段目左)が、
うーん、この作品、よくわからない‥‥
今年1月、大阪の国立国際美術館へ
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を見に行った時、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-01-15
コレクション展で見たリヒターの細いラインが並んでいる
作品《STRIP (926-6)》2012 はいいなって思ったんだけど。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-01-18
でもリヒターの作品、今スゴイ値段が付いているんですって?
1984年にこの絵を購入した富山県美術館、エライなぁ!
出口のところで、各美術館がそれぞれの作品を収蔵した年が
一覧表になってたのがとても興味深かった。
美術館が設立された1980年代に多くの作品がコレクションされているのは
まぁ、当然といえば当然だけど、近年はあまり購入できてませんね。
日本が(特に文化面で)貧しくなってきているのがわかるというか‥‥
写真撮ってくるの忘れたので、
愛知県美術館公式ツイッター: https://twitter.com/apmoa の、
4月29日のツイートを貼っておきます。
会場の写真も撮れたし、おなじみ(?)の愛知県美術館の
コレクションが3分の1だし、図録はどうしようかって思ったけど、
解説がさらに丁寧だったので。ちょっと古風な、
図書館の本みたい?な製本も気に入りました。縦書きの右綴じ。
内容も20世紀美術の教科書的ですしね。
巻末の方に、山口つばさ「ブルーピリオド」番外編として、
「コレクション展に行こう」って4ページのマンガも載ってます!
特典として愛知県美術館所蔵作品カードの複製がもらえて、
2,750円(税込)が友の会割引で2,500円になりました。
愛知県美術館のコレクション展で見ていた作品も、
他館のコレクションと並んでいると、新しい気付きがありました。
解説がそれぞれ丁寧で(キャッチコピーがわかりやすい)
企画された学芸員さんたち、ありがとうございました。
「横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館
20世紀西洋美術コレクション
トライアローグ」展をやっています。
4月23日(金)に始まったばかりで、私はGW後の平日にでもゆっくり
‥‥なんて考えてたけど、東京や大阪などで緊急事態宣言が出て、
休館する美術館や博物館が出てるってことで、
去年の、わずか3日で閉幕となってしまった「大浮世絵展」のことなど
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-04-18
思い浮かび、愛知県もコロナの状況は今後どうなるかわからないので、
とにかく早く行っておこうと。
(幸い、今のところ感染症拡大防止措置をとりながら開催できています。)
「トライアローグ」とは、鼎談・三者会談の意味。
20世紀の西洋美術を収集の柱のひとつとしている
横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館から
選りすぐりの作品で、20世紀の西洋美術の流れを
見ていくことができます。
横浜美術館で、2020年11月14日(土)~2021年2月28日(日)に
開催された後、巡回してきました。
愛知県美術館で、2021年4月23日(金)~6月27日(日) その後、
富山県美術館へ、2021年11月20日(土)~2022年1月16日(日)に
巡回予定。
横浜美術館でやってた時、日曜美術館アートシーンの
最初に紹介されていて、巡回を楽しみにしていたんです。
友の会の期限が3月末で切れていたので、
インフォメーションで、年会費8,000円を払って継続手続きをしました。
展示室入口のところに写真撮影についての注意がありました。
この展覧会、20世紀を30年区切りの3章に分けられています。
第I章 1900s- アートの地殻変動
最初に作風が違うパブロ・ピカソ(1881-1973)の作品4点!
見慣れた(?)愛知県美術館蔵、ピカソ「青の時代」の《青い肩かけの女》1902
隣の「キュビスムから 遠く離れて」って
‥‥この展覧会、キャプションにつけられたキャッチコピー(?)が
いいですね! 解説もわかりやすい‥‥
「新古典主義」の《肘かけ椅子の女》1923 は富山県美術館蔵
(チラシの表面にも使われています)
横浜美術館から来たのは、目が上下左右に離れてたりする
《肘かけ椅子で眠る女》1927
‥‥ピカソの4点の中では私この絵が一番好き
様々な視点から眺めた画像を合成する「キュビスム」の描法で
描かれた《座る女》1960 はピカソ79歳の作品
会場の写真、これくらいの大きさなら使ってもいいかな。
(あくまで私の判断です)
フェルナン・レジェ(1881-1955)が3点
《コンポジション》1931 が横浜美術館
《緑の背景のコンポジション(葉のあるコンポジション)》1931 が愛知県美術館、
《インク壷のあるコンポジション》1938 が富山県美術館
その前にあるのは、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)
《空間の鳥》1926(1982 Cast)
2019年12月に横浜美術館へ行って、
「ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」を見たんですが
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-12-15
横浜美術館の堂々とした吹き抜けのエントランスの
階段状の展示空間にあったなって。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-12-19
なんか面白い形って写真撮りました。
レイモン・デュシャン=ヴィヨン《馬の頭》1914 富山県美術館
写真、著作権保護期間が満了しているので、自由に利用できると
私、マルセル・デュシャンが3人兄弟の3番目だってこと、
初めて知りました。
一番上がジャック・ヴィヨン(1875-1963)
あ、この人の《存在》1920 愛知県美術館のコレクション展で
何度か見てて、不思議な絵だなーってくらいの印象だったんだけど、
「まず頭を 厚さ数センチ手度に スライスします」
って「構造的分解」と呼ばれている手法で描かれた絵なんだって。
二番目が《馬の頭》のレイモン・デュシャン=ヴィヨン(1876-1918)
‥‥早くに亡くなっているから、著作権保護期間が満了しているんですね。
(著作権保護期間は原則、著作者の死後70年まで)
三番目がマルセル・デュシャン(1887-1968)
男性用便器に《泉》と名付けて展覧会に出品しようとした事件が
有名な、20世紀美術の革命者。
唯一の映像作品だという《アネミック・シネマ》1926 横浜美術館
‥‥今見ると、モノクロだし、素朴な映像‥‥みたいに見ちゃうけど。
パウル・クレー(1879-1940)が5点ありました!!
(あっしまった、クレーは写真利用できるのに、
撮影してくるの忘れちゃった。
愛知県美術館のコレクション検索で
「Public Domain」表示があったので、そちらの画像を)
《女の館》1921
《蛾の踊り》1923
《回心した女の堕落》1939
他2点は、
《攻撃の物質、精神と象徴》1922 横浜美術館
《レールの上のパレード》1923 富山県美術館
クレーの「油彩転写」って技法、初めて知りました。
‥‥私のクレーのイメージは、《回心した女の堕落》みたいな、
柔らかな色彩のメルヘンっぽい絵「晩年様式」って称されているそう。
でも愛知県美術館のコレクション展で《女の館》や《蛾の踊り》は
見た記憶があるのに、《回心した女の堕落》は、あらこんな
クレーの素敵な絵持ってるんだ! って。
で、「油彩転写」技法、黒い油絵具を裏面に塗った紙の上から尖筆で
なぞって転写するって、カーボン紙を使うみたいな技法なんですね。
なるほど、線に独特の質感が出て、画面のところどころに黒い
滲みのような絵具のむら(汚れに見えなくもない)が出ます。
《攻撃の物質、精神と象徴》、《レールの上のパレード》
そして《蛾の踊り》にもこの技法が用いられています。
メッシュ地のアルミ板の柔らかなフォルムが面白いなって見た
ナウム・ガボ《空間の構造》1959 横浜美術館
今まで名前も聞いたことがありませんでした。
ナウム・ガボ(1890-1977)
同じく彫刻家の兄アントワーヌとともに「ペブスナー兄弟」として知られるガボ(本名ナウム・ペブスナー)。ロシア領ベラルーシに生まれ(中略)ロシアアヴァンギャルド運動の理論的支柱となる。しかしソヴィエト連邦樹立に際し、思想的軋轢により兄とともに母国を離れ、第二次世界大戦後にはアメリカに渡って活動した。(図録より)
コーナーに置かれてインパクトあった
ウラジミール・タトリン(1885-1953)
《コーナー・反レリーフ》1915(1979再制作) 横浜美術館
ロシア帝国領下のウクライナ生まれ(中略)ロシア革命の動きに同期して構成主義運動を展開したが、1930年代のスターリン体制下において衰退。(中略)
タトリンのレリーフのほとんどは大戦後に行方不明となっており(大半は処分されたと目される)、作家没後に、写真や素材情報が残されていた作品群(本作を含む)がイギリスのアーティストの手により順次復元された。(図録より)
写真使っていいそうなので
部屋の真ん中に置かれていた ハンス(ジャン)・アルプ(1886-1966)の
彫刻《鳥の骨格》1947 富山県美術館 も面白かったなぁ!
第II章 1930s- アートの磁場転換
部屋の真ん中のガラスケースに、モコモコした
なんかカワイイオブジェが2つ並んでいます。
メレット・オッペンハイム(1913-1985)の、
ビールジョッキと人工毛皮で作った《りす》1969(1970再制作)
100点が作られたうち、横浜美術館と富山美術館にある2点が並んでました。
2つ並ぶと、さらにカワイイ。再会を喜んでるかな?
マックス・エルンスト(1891-1976)が3点
フロッタージュを油彩画に応用した(グラッタージュ)で描かれた
《森と太陽》1927 富山県美術館
第二次世界大戦中、敵性外国人となり収容所で描いた
デカルコマニーで偶然に生み出された形を怪物たちに見立てた
《少女が見た湖の夢》1940 横浜美術館
アメリカへ亡命した後、パリに戻って描かれた
レンブラントの絵をもとにした
《ポーランドの騎士》1954 愛知県美術館
この作品、コレクション展で何回も見てるのに、
キスしているような2羽の鳥や、その上の1羽の鳥は
今回解説読んで初めて見つけました(^^; 全く何見てんだか‥‥
幻想的な雰囲気がいいなーってくらいにしか見てない。
そういや、《ポーランドの騎士》ってタイトルなのに、
馬は描かれてるけど、騎士はいませんね。
ジュアン・ミロ(1893-1983)も3点
え?! これミロなの? って見た
《花と蝶》1922-23 横浜美術館 (チラシ裏面右下)
葉脈まで丹念に描かれた花や蝶のリアルさが、かえって不思議な存在感。
私が「雲の中の雨と太陽」って勝手に呼んでいる、ゆるーい雰囲気の
《絵画》1925 愛知県美術館
落書きみたいに見えるけど、赴くままに描いたのではなく、
スケッチブックの素描をカンヴァスに再現しているそう。
《パイプを吸う男》1925 富山県美術館
富山県美術館が建設準備中の1977年に購入した
西洋美術のコレクション第一号。
チラシ表面に使われている ルネ・マグリット(1898-1967)
《王様の美術館》1966 は、横浜美術館
いかにもマグリットって絵
富山県美術館は《真実の井戸》1963 を所蔵してます。
途中で切れた片足が立ってる。タイトルもなんか不思議
ポール・デルヴォー(1897-1994)が3点
私が好きな愛知県美術館所蔵《こだま(街路の神秘)》1943
隣に《夜の汽車》1947 富山県美術館
この2枚、1948年のパリの画廊の個展で一緒に展示されていた絵だと。
もう1枚は《階段》1948 横浜美術館
デルヴォーらしい不思議な世界。これ、新潟の先駆的な私設美術館・
長岡現代美術館の旧蔵で、1970年の閉館により「大光コレクション」
として売却された際、横浜美術館が10点購入したうちのひとつだそう。
チラシ表面の アレクサンダー・カルダー(1898-1976)
《片膝ついて》1944(1968鋳造) 愛知県美術館
6つのパーツがバランスを保っていて、触るとゆったりと動くそう
(もちろん展示は触れません)
カルダーといえば、モビール
《小さな銀河》1973 富山県美術館 は、
会場を出たところに展示されていました。
サム・フランシス(1923-1994)が2点
見慣れた(?)愛知県美術館の《焼失に向かう地点の青》1958 と、
富山県美術館の《プルー・イン・モーション3》1960
モーリス・ルイス(1912-1962)《ダレット・シン》1958 富山県美術館
茶色の絵具で描かれているのではなく、オレンジや青、緑、紫などの
アクリル絵具を流して染み込ませる「ステイニング」の技法で制作された
〈ヴェール〉絵画と呼ばれシリーズの1点。
タイトルはルイスの没後に、整理のためヘブライ語のアルファベットが
割り当てられたそう。
愛知県美術館の《デルタ・ミュー》1960-61 は、
作品が大きすぎて、持ち運びできないため、
この展覧会への出品を断念したそう。
(愛知県美術館友の会 会報「空中回廊」第50号 より)
https://apmoa-tomo.com/kaiho/kaiho50.pdf
愛知県美術館のコレクション検索でPublic Domain画像あったので
お借りしてきました。
第III章 1960s- アートの多元化
フランシス・ベーコン(1909-1992)が2点
《座像》1961 横浜美術館
《横たわる人物》1977 富山県美術館
うーん、私はベーコンのなんかおどろおどろしい人物の絵、
よくわからないんだけど‥‥富山県美術館の絵、制作後間もない
1979年に購入されていて、日本の公立美術館がベーコンを収集した
最も早い例とのこと。
富山県美術館は特に第III章あたりのコレクション充実してますね。
愛知県美術館のイヴ・クライン(1928-1962)
《肖像レリーフ アルマン》1962原型制作
「型取りされて 真っ青になった 友人の身体」(キャプションのコピー)
型取りされた友人・アルマン(1928-2005)の作品が置かれてました。
《バイオリンの怒り》1971 富山県美術館
バイオリンがバラバラに破壊されて、アクリル樹脂の立方体に
収められています。
これ面白かった! 古代彫刻風のブロンズ像が片手を揚げ、
大きな鏡に向かい合っています。
ミケランジェロ・ピストレット(1933- )
《エトルリア人》1976 富山県美術館
豊田市美術館の鏡に人物だけが描かれた
《窃視者 (M・ピストレットとV・ピサーニ)》1962,72
を思い出しました。
2018年8月に行った
DIC川村記念美術館「ブリジット・ライリーの絵画」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2018-08-27
で見たブリジット・ライリー(1931- )
《オルフェウスの歌Ⅰ》1978 富山県美術館
がありました。ライリーの絵画の中でもこの淡い色彩のゆらぎ
素敵だなって見た記憶があります。
ジム・ダイン(1935- )のバスローブのリトグラフが並んでいるのには、
名古屋ボストン美術館「ジム・ダイン」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2011-08-25
を思い出しました。(2011年?! もう10年前のことなんだ!)
なんかお手軽‥‥って印象だった。
《赤い化粧着》と《夜の肖像》が富山県美術館
《自画像:風景》が横浜美術館 どれも制作年は1969
名古屋ボストン美術館での展覧会でもそうだったけど、
愛知県美術館の《芝刈機》1962 が
ジム・ダインでは一番面白いと思う。
ロイ・リキテンスタイン(1923-1997)
漫画を拡大して印刷の網点まで描いたポップ・アートが有名だけど、
「ピカソをポップに」した 横浜美術館の
《ピカソのある静物(版画集『ピカソへのオマージュ』より)》1973
もいいけど、富山県美術館の
《スイレン―ピンク色の花》1992 が良かった。
モネの〈睡蓮〉をもとに、ステンレスにエナメル塗料でプリントしたもの。
模様のついた金属板がキラキラと輝くのが水面の反射のよう。
彫り込まれた木製の額も素敵。
ポップ・アートの代表 アンディ・ウォーホル(1928-1987)
その代表作ともいえる《マリリン》10枚組 1967 富山県美術館
「色色なマリリン」ですね。
愛知県美術館からはドラァグクイーンを描いた
《レディース・アンド・ジェントルメン》1975
横浜美術館からはウォーホルが肖像画制作のために撮影した
写真が来てました。
クリスチャン・ボルタンスキー(1944- )
2019年に、国立国際美術館、新国立美術館、長崎県美術館を巡回する
展覧会があって、ポスターやチラシ見たり、
日曜美術館アートシーンなどで紹介されたこともあり、
なんかスゴイ現代アーティストなんだってくらいの知識はありましたが、
実際に作品を見るのは初めて。
《シャス高校の祭壇》1987 横浜美術館
なんかこの不穏な雰囲気いいですね。
ランプに照らされたぼうっとした顔写真は、1931年に撮影された
ウィーンのユダヤ人高校(ギムナジウム)の生徒たち。
彼らがその後、どのような運命をたどったかは定かではないそうですが、
第二次世界大戦中、多くのユダヤ人が犠牲となった
ホロコーストの悲劇も思いだされます。
なんでも包んじゃうクリスト(1935-2020)が、
フロリダ州マイアミ、ピスケーン湾に点在する11の島々の周囲を
幅61メートルのピンク色の布で包むプロジェクトの記録写真(4枚組)
クリスト&ジャンヌ=クロード
《囲まれた島々、フロリダ州マイアミ、ピスケーン湾のためのプロジェクト1980-83年》
ピンクの色が鮮やか!
ジャンヌ=クロード(1935-2009)は公私ともにクリストのパートナー
1994年に、それまでクリスト作品と表記されてきた屋外作品や
大規模インスタレーションを遡って2人の名義に変更したと。
現代ドイツを代表する画家ゲルハルト・リヒター(1932- )の
大きな絵《オランジェリー》1982 富山県美術館
が展示されていました(チラシ裏面2段目左)が、
うーん、この作品、よくわからない‥‥
今年1月、大阪の国立国際美術館へ
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を見に行った時、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-01-15
コレクション展で見たリヒターの細いラインが並んでいる
作品《STRIP (926-6)》2012 はいいなって思ったんだけど。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-01-18
でもリヒターの作品、今スゴイ値段が付いているんですって?
1984年にこの絵を購入した富山県美術館、エライなぁ!
出口のところで、各美術館がそれぞれの作品を収蔵した年が
一覧表になってたのがとても興味深かった。
美術館が設立された1980年代に多くの作品がコレクションされているのは
まぁ、当然といえば当然だけど、近年はあまり購入できてませんね。
日本が(特に文化面で)貧しくなってきているのがわかるというか‥‥
写真撮ってくるの忘れたので、
愛知県美術館公式ツイッター: https://twitter.com/apmoa の、
4月29日のツイートを貼っておきます。
「トライアローグ」展、本日4/29も開館しております。会場には出品作の収集年一覧という少しマニアック(?)な表を用意しました。縦軸が制作年、横軸が収集年。富山県美さんがベーコンやリヒターを制作直後に押さえている!とか、3館とも2000年代以降の収集がさみしい...とか、色々わかっちゃいます。
— 愛知県美術館 (@apmoa) April 29, 2021
pic.twitter.com/t27c60enBK
会場の写真も撮れたし、おなじみ(?)の愛知県美術館の
コレクションが3分の1だし、図録はどうしようかって思ったけど、
解説がさらに丁寧だったので。ちょっと古風な、
図書館の本みたい?な製本も気に入りました。縦書きの右綴じ。
内容も20世紀美術の教科書的ですしね。
巻末の方に、山口つばさ「ブルーピリオド」番外編として、
「コレクション展に行こう」って4ページのマンガも載ってます!
特典として愛知県美術館所蔵作品カードの複製がもらえて、
2,750円(税込)が友の会割引で2,500円になりました。
愛知県美術館のコレクション展で見ていた作品も、
他館のコレクションと並んでいると、新しい気付きがありました。
解説がそれぞれ丁寧で(キャッチコピーがわかりやすい)
企画された学芸員さんたち、ありがとうございました。
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