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岐阜県美術館「素材転生」展 [美術]

5月1日(土)岐阜県美術館へ行きました。
「素材転生
 Beyond the Material」という展覧会をやっています。
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「素材」を「転生」させて創作されている8名の作家
林茂樹(磁土・鋳込)
富田美樹子(磁土・色絵金彩)
根本裕子(陶)
宮田彩加(刺繍) 
大貫仁美(ガラス)
豊海健太(漆)
塩見亮介(鍛金)
ウチダリナ(和紙)
 が紹介されています。

この展覧会、チラシが8種類あるんです。
上にアップしたのは、代表的に使われてもいる林茂樹バージョン

裏面は全て同じです。
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岐阜県美術館後援会会員証を提示して入ると(写真撮影可!)
まず最初は、

林茂樹
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この方、岐阜県現代陶芸美術館「きになるかたち」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2015-06-27
とても面白いなって見たんです。

その岐阜県現代陶芸美術館蔵の作品も
奥に展示されていました。
《Q.P》2006
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赤ちゃんの顔の人肌のような質感と、
ツルツルの宇宙服の質感の違い、
同じ人形が3体並んでいるのが不思議でした。

これは、鋳込み成形という、量産を目的とする磁器の技法で
作られているからなんだそう。

アンティーク・ドールであるビスクドールの技法を参照した
無釉の磁器の焼き締めによる人肌のような質感と、
釉薬の艶やかな色との対比。

“やきもの”というより、工業製品のようなイメージ。
SF的な、シャープで精密な造形が魅力です。

《deva device "TC-Z"》2019
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両脇のガラスケースの中に使われた型が展示されていましたが、
膨大な量! すごく手間がかかっているのがわかります。
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大貫仁美

去年6月、岐阜県美術館で開催された
「清流の国ぎふ芸術祭 AAIC 2020」で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-06-10
《秘められた、その「傷」の在処》が展示されていました。
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ガラスを金継ぎでつないだ作品たち。
ガラスのもろさ、繊細さ、傷が美しさになってます。


以上の2名以外の6名の方はこの展覧会で初めて見ました。


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塩見亮介

金属板を金床(かなとこ)や当金(あてがね)に当て
槌(つち)や鏨(たがね)で叩いて成形と装飾を行う
鍛金(たんきん)という技法で
動物の面をもつ鎧兜が作られています。
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細かいパーツが組み合わさっていて、
すごい手間がかかっているのがわかって驚きます。

《狐面附面頬》2017
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明治工芸の超絶技巧を思い出しました。
まさに、現代の超絶技巧ですね。


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根本裕子

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展示室にたくさんの《野良犬》たちが。
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東日本大震災によって野生化した犬たちがモチーフなんだそう。
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痩せた姿から、彼らを襲った過酷な運命を思い、
それでも逞しく生きている姿に
なんとも言えない感情がわいてきました。
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リアル‥‥赤い口にドキッとします。
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これ陶でできているんですって?!


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宮田彩加

カラフルな布が吊り下げられています。
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刺繍なんですが、支持体となる布がないので、
鮮やかな糸が複雑にからまっていたり、
糸の絡みから向こうが空けていたりします。

自らのMIR画像を鮮やかな色で再構成したという
7枚組の作品《MRI SM20110908》2016-20 と、
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《MRI SM20121122》2021
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ウチダリナ

《みずとゆめ》2021
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鏡の上に置かれた作品は抜け殻のようにはかなくて、
上に吊り下げられた和紙がゆらめくと、光もゆらめき、
崩れてしまうようにも思えました。
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《Rebirth Ⅱ》
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和紙の白さを生かして作られた髑髏と、
和紙を焦がして模様をつけた蛾は、
ドキッとするほどリアル。


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豊海健太

漆黒の艶やかな面に、(正面から撮影しようとすると、
こっちが映り込んでしまって上手く写せません(^^;)
骨や細胞など生と死を思わせるような繊細な絵が描かれています。

《幽胎04》2018
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この白は、卵殻を用いているんですか?!
ものすごい超絶技巧なのでは??

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富田美樹子

金彩と色絵で細かく装飾された
宗教建造物を思わせるような陶磁器たち。
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過剰な程の装飾が、無限というか、祈りのような、
見ているとどこか恍惚とした気分にもなってきます。
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《魂のごとく組み合わされる時 Ⅲ》2001
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この展覧会、良かった!!
それぞれの作家の、現代の超絶技巧と思える技術もすごかったし、
すごく私好みの、お耽美(?)で装飾的な世界でした。


もちろんショップで図録買いました。
2,500円(税込)が、後援会員割引で2,250円になりました。
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所蔵品展は今回1d室のみでした。
2015年の「日韓近代美術家のまなざし」展で、特別出品されていた
川合玉堂《柳蔭閑話図》1922 が展示されていて、
紙の裏(スミマセンちょっとこのあたりうろ覚え)に金を使った
地の色が、朝鮮の輝くような日差しを表していて、
のどかな風景に、やっぱりいいなぁって見ました。
コレクション検索で画像見られます:
https://gifu-art.info/details.php?id=5124


県民ギャラリーの展示はコロナ禍で中止となっていました。

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アトリエ棟で、アーティスト・イン・ミュージアム
AiM Vol.10 田中翔貴 の公開制作が始まっていたので覗いてみました。
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ゼラチン・シルバー・プリントを独自の工夫で変化させた写真作品や 立体物に風景を転写した作品を制作」(チラシ裏面より)されている
田中翔貴
今回は、『うつす』をキーワードに2つの技法を織り交ぜ、 岐阜県美術館の植物を使った新たな写真撮影に挑戦する。

この日は、草花を布にたたき込んで染める制作をしていらっしゃいました。
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公開制作は4月28日(水)~5月23日(日)
作品展示は5月29日(土)~6月27日(日) とのこと。

作品が完成したらまた見に行きたいなぁ。

岐阜県美術館の庭では「ナンジャモンジャ」とも呼ばれる
「ヒトツバタゴ」が白い花を咲かせていました。
木の下の作品は、鯉江良二《森ヲ歩ク》1995
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岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
「素材転生」展のページ:
https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/events/beyond_the_material/

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