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岡崎市美術博物館「渡辺省亭」展 [美術]

5月30日(日)岡崎市美術博物館へ行きました。

前日、5月29日(土)から、
「開館25周年記念
 渡辺省亭
 ―欧米を魅了した花鳥画―」をやっています。
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昨年末に、2021年の美術展を紹介した
「日経おとなのOFF
 2021年絶対に見逃せない美術展」で紹介されてて、
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付録のカレンダーの表紙が渡辺省亭の絵です

なんて私好みの絵!
岡崎市美術博物館に巡回してくるー!!! って楽しみにしていたんです。

5月9日の日曜美術館で
「孤高の花鳥画家 渡辺省亭」
と、取り上げられていて、
こんなスゴイ画家が、忘れられていたんだって驚きました。

東京藝術大学大学美術館での展示は、
3月27日(土)~5月23日(日)の会期のところ、
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、
4月25日(日)から臨時休館となり、
そのまま再開できずに閉幕となったそう。

岡崎市美術博物館への巡回は、5月29日(土)~7月11日(日)
予定通りに開幕したって知って、早く行きたいけど、
日曜は混むかな? 今週木曜がパート休みだからそれまで待つか?
なんて迷ったけど、行っちゃいました!
それほど混んでなくてよかったです。
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岡崎市美術博物館のウェブサイトで、WEB割引を見つけたので、
https://www.city.okazaki.lg.jp/museum/guidance/p029521.html
スマホ画面の提示で、一般1,000円の観覧料が900円になりました。

最初に渡辺省亭がエドガー・ドガに贈ったという
《鳥図(枝にとまる鳥)》1878年 の図が紹介されていました。
(岡崎市美術博物館ではホンモノの展示はありません)
日本美術愛好家たちの眼前で描き、居合わせた人が驚いたことが
美術評論家エドモン・ド・ゴンクールの日記に記されています。

1878年のパリ万博に省亭の《群鳩浴水盤ノ図》1877年 が出品されて、
(現在アメリカのフリーア美術館にあり、門外不出だそうで、
展覧会には出品されてません)
省亭はパリに渡ります。日本画家として初めての渡欧でした。


展示室に入ると、左側の映像コーナーで省亭の紹介がされてました。
日曜美術館でも知りましたが、

嘉永4年(1853年)生まれ、12歳で住み込みの丁稚奉公に出され、
慶応2年(1866年)16歳で歴史画家として著名な菊池容斎(1788-1878)に入門。
3年間、ひたすら文字を書く修練に明け暮れたそう。


第1章 作品でたどる省亭の生涯

最初に展示されていた《歴史人物画帖》1976年 は、
師・菊池容斎の人物画を踏襲しているが、
写生に基づくと思われる省亭独自の表現が見られるとのこと。

シェイクスピアの本(坪内逍遥訳)の挿絵や、
山田美妙「胡蝶」の挿絵なども並んでました。

《龍頭観音》などの掛軸に並んで
《牡丹に蝶の図》1893年 がありましたが、

私、最初見た時、え? これチラシとかに使われてる絵よね?
なんかジミ‥‥って思っちゃったんですよ。
装飾性が高い琳派風の絵と比べて派手さがないというか、
でもじっくり見ると、牡丹の花の繊細なグラテーションとか、
クロアゲハの精緻な描写にすごいなーって感心するんですけど。

名号を書いた双福の掛軸も展示されていました。
3年間、ひたすら習字をさせられたって省亭の字、
私には書はよくわからないけど、筆跡の強弱とか緩急?
なんかすごくいいなって見ました。

コーナーの最後に、特別出品として
《春の野邊(絶筆)》1918年 が展示されていました。

なんと、これ、5月9日の日曜美術館を見て連絡があり、
所在が明らかになった作品だそうで、
――番組の最後に、モノクロで紹介されてましたっけ!
  二匹のチョウが未完成のまま残されていると――
岡崎市美術博物館が初公開!

中日新聞5月30日(日)の記事
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第2章 花鳥画の世界

金屏風が2点展示されていました。
省亭の屏風の作品は珍しいのだとか。

省亭が忘れられていったのは、後半生(明治30年代以降)
画壇と距離を置き、公の展覧会に出品しなくなったせいだと。
自分の絵を求める人たちのために描いて、生活も安定していたから、
競争の場に身を置いて画壇政治に巻き込まることを嫌ったという
性分もあるんだろうけど、省亭の画風が、
じっくりと近くで見てスゴイ描写に驚くという絵で、
人目を引くような迫力という点では物足りなかったせいかもしれないなと。

この2点の金屏風、優美だけど、豪華さとか派手さはイマイチ‥‥

でも省亭の花鳥画、素晴らしい!

とりわけ鳥の描写がスゴイ!! 立体感、羽や毛の質感!!
日曜美術館で、省亭の生家の近くに、将軍の鷹のエサとなる
雀や鳩を飼っていた飼鳥屋敷があって、
幼い頃から鳥に親しんでいたのではないかと。
師からは習字と、自然をよく観察し記憶し写生せよと教わったそう。

ウサギの毛のふわふわ感もスゴイ!!

中でも私が気に入ったのは《春野鳩之図》
散り始めた枝垂れ桜の下の3羽の鳩の描写が素晴らしい!
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掛軸の展示ケースが、近くで見られるのはいいんだけど、
鳩が低い位置になるので、しゃがんでじっくり見ほれちゃいました。

しかし、この西洋画を取り入れたような立体感、どこで会得したのか?
渡辺省亭(1852-1918)って、生まれ、早いんですよね。

横山大観(1868-1958)が西洋画の画法を取り入れ、線描を抑えた絵で
「朦朧体」と批判されたのが明治30年頃、

竹内栖鳳(1864-1942)が渡欧したのが明治33年(1900年)
ターナー、コローなどの影響を受け、それまでの「棲鳳」から
西洋の「西」にちなんで号を栖鳳と改めたんですね。

省亭が渡欧したのが1878年、でもその1年前に描いてパリ万博に出した
《群鳩浴水盤ノ図》で、すでに輪郭線を描かずに
立体的な鳩を描いてますものねー。

このあたり、日曜美術館で、展覧会を監修した東京藝術大学の
古田亮教授も不思議がってました。


第3章 七宝焼に花開く省亭の原画

日曜美術館で省亭が原画を描いて、濤川惣助が七宝焼焼きにした
迎賓館赤坂離宮の花鳥の間の七宝額が紹介されてましたが、
その省亭の原画が展示されていました。

省亭が原画を描いたと推定される濤川惣助の七宝の花瓶なども
並んでいました。

焼成前に金属線を取り除いてぼかしを表現した「無線七宝」で
知られる濤川惣助と、渡辺省亭の協働作業は、
省亭がパリから帰国してまもない頃から始まっていて、
多くの七宝作品に省亭が原画を提供していたと考えられるとのこと。


それを知ると、
岐阜県現代陶芸美術館で見た「超絶技巧!明治工芸の粋」展 や、
続編の「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」展 で見た
濤川惣助の七宝作品、省亭が原画を描いたように見えますね!
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「驚異の超絶技巧!」展図録より


第4章 江戸の情緒を描く

花鳥画の名手・渡辺省亭ですが、師・菊池容斎の影響を受けた
人物画、歴史画も多く描いているとのこと。

まぁ、花鳥画のすごさに比べたら、ふーん‥‥なんか古いカンジ‥って
この上品さ、繊細さが私にはちょっと物足りなく見えちゃったんですね。

そんな中、《塩治判官の妻》見て、あれこれどこかで見た‥‥って
2019年に一宮市三岸節子記念美術館で見た「美人画」展、
培広庵コレクションの美人画が展示されてて、
この絵を含む3点が出てたんでした!
(鎌倉市鏑木清方記念美術館の学芸員・今西彩子さんの
講演会も聞いたのに、ブログに感想が書けておりません。)
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図録「美人画の雪月花」より

今回の展覧会ではその中の2点が出品されてます。


第5章 明治出版界での活躍

多色摺木版による口絵や挿絵、
省亭の花鳥画を多色摺木版で刊行した『省亭花鳥画譜』など、
多方面の活躍をした人なんだなと。


すごく私好みの絵が並んだ展覧会でした。
でも、前期(5/29-6/20)と後期(6/22-7/11)で展示替えをする絵があり、
日曜美術館で紹介されてた《十二ヶ月花鳥図》は後期展示とのこと。
できたら後期もう一度見に行きたいなぁ‥‥

もちろん図録(公式ガイドブック)買いました。2,600円(税込)
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出品作品がすべて掲載されているのはもちろん、
解説も詳しくて、展覧会見られなかった方にも、
渡辺省亭についてよくわかる本になっています!
一般書店でも販売するほか、
東京新聞オフィシャルショップでも販売してます。
https://tokyo-np.hanbai.jp/products/list.php?category_id=242


展覧会の後、美術館のカフェレストラン『YOUR TABLE』へ
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ガラス張りの店内からは緑豊かな周囲の自然と町が見下ろせます。
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季節限定のメロンのパンケーキとコーヒーをオーダー。1,630円
パンケーキは焼き上がりまで45分程かかるって言われたけど、
図録読んだりして待ちました。
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でもちょっとこのパンケーキ、私にはふわふわすぎたなぁ‥‥

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岡崎市美術博物館前の恩賜池
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燈籠めぐりができる「石の野外ミュージアム 恩賜苑」や
いくつもの散策コースが用意されている健康の森もあるんですが‥‥
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入口だけで帰りました(^^;

あ、こんなところにも安田侃(やすだ かん)の彫刻がある!
《ひとつ が ふたつ》1992年
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ついでに、来た時に撮影した 安田侃《天光散》1993年
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青野正《天をめざす街》2010年
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岡崎市美術博物館全景
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岡崎市美術博物館: https://www.city.okazaki.lg.jp/museum/

「渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画―」
展覧会公式サイト: https://seitei2021.jp/

--中日新聞2021年5月6日(木)夕刊の記事--
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gillman

東京藝大美術館で観ましたが、すばらしかったですねぇ。コロナが落ち着いたら赤坂迎賓館に行ってみたいです。
by gillman (2021-06-13 11:22) 

しーちゃん

gillman さん、nice! &コメントありがとうございます。
東京藝大美術館で見られたんですね。コロナで会期途中で閉幕となってしまったとのことで、無事に岡崎市美術博物館で開幕できるか心配していました。見られてよかったです。赤坂迎賓館の七宝額、赤坂迎賓館が参観できるって知ったので、私も是非見てみたいです。
by しーちゃん (2021-06-17 13:32) 

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