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岐阜県博物館「薩摩の陶と刀」 [美術]

8月17日(火)岐阜県博物館へ行きました。

「令和3年度特別展
 岐阜・鹿児島姉妹県連盟約50周年記念
 薩摩の陶(とう)と刀(とう)
 響きあう美濃との歴史と文化」という展覧会をやっています。
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江戸中期、薩摩藩によって実施された木曽三川の宝暦治水工事が契機となり、 昭和46年に鹿児島県と岐阜県とのあいだで姉妹県盟約が結ばれました。(チラシ裏面より)
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幕府によって薩摩藩に命じられた木曽三川分流の治水工事。
大変な難事業で、莫大な工事費用と犠牲者が出て、
責任者であった薩摩藩家老・平田靱負(ひらた ゆきえ 1704-1755)は、
工事完了後に責任をとって切腹。
木曽三川公園の南にある治水神社は、
平田靱負と犠牲となった薩摩藩士を祀っています。

そんな岐阜県と鹿児島県、姉妹県盟約が結ばれて
今年で50周年になるんですね。

「陶と刀」は、岐阜も名産地です。、
陶磁器については、岐阜県現代陶芸美術館や岐阜県美術館で、
刀は関鍛冶伝承館などで見ていますが、薩摩焼はともかく、
薩摩刀については、いままで知りませんでした。


8月17日(火)、ウチのパート先では、コロナのワクチン接種後、
2日間は休みにしているので、3連休の最終日。
副反応もないので、遠出しようか(豊田市美術館に行きたかった)
って考えてたんですが、
まぁ、なんかダラダラと昼過ぎまで過ぎてしまいまして‥‥
(いえ副反応のだるさではなくて、最近はいつもこんなカンジ)

そうだ、岐阜県博物館なら近いからいいか、って。

岐阜県博物館は百年公園の北入口より入ったところにあります。
2015年4月から駐車場が無料となりました。

「弥生大集落」展に行った時(え? 2013年? そんな前だった?!!)
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2013-11-08
駐車料金300円かかって、人件費出るのだろうか?って書いてます。
だいたいここ、車じゃないと行けないような辺鄙なトコだしー

雨も降っているので、公園内閑散としています。
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スロープカーのりば
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岐阜県博物館への坂道を上がるのはなかなかキツイので、
無料のスロープカー「らくらく号」があります。

登りは利用させてもらいました。冷房がしっかり効いていて快適。

スロープカーのりば(博物館側)
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下りは坂道を歩きました。恐竜の足跡がついています。
(帰りに撮った写真)
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赤色は、獲物を追う肉食の獣脚類(カルノサウルス類)の足跡
黄色は、体長10m以上にもなる竜脚類(ティタノサウルス形類)の足跡
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道を横切る青色の足跡は、
“ダチョウ”恐竜とも呼ばれるオルニトミモサウルス類だそう。
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岐阜県博物館
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入館料:一般600円が、JAF会員証で520円になりました。
大学生300(200)円 高校生以下無料 ( )は割引料金
マイミュージアムギャラリーのみは無料

エレベーターで3階へ上がり、本館への連絡通路を通って、
まずは4階の特別展示室へ

特別展示室入口の記念撮影スポット
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島津義弘の記念撮影パネル
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特別展示室内は撮影禁止でした
展示品は陶も刀も、ほとんどが
「鹿児島県歴史・美術センター黎明館」の所蔵品

鹿児島県歴史・美術センター黎明館:
https://www.pref.kagoshima.jp/reimeikan/

まずは薩摩の陶

陶1 薩摩焼濫觴

薩摩焼の始まりは、
秀吉の朝鮮出兵で島津義弘(1535-1619)が陶工を連れ帰って、
御庭焼で茶陶を作らせたことからだと。

おりしも茶の湯が隆盛を極めるなか、関ヶ原合戦を経たころには、
大名や茶人たちの評価を得るまでになっていたそう。

薩摩焼の絢爛豪華なイメージとは違って、
茶人が好みそうなシンプルな形

最初に展示してあった始良市指定有形文化財《黒釉茶碗》
 薩摩 御里窯 火計手 江戸時代初期 も素敵だけど、

次の《白釉茶碗 銘 すはま》薩摩 御判手 江戸時代初期
(チラシ裏面右上から2番目)や、

特に《白薩摩茶碗》薩摩 堅野系 江戸時代中期 と
《白薩摩酒注・猪口》薩摩 堅野系 江戸時代中期 が
とても気に入りました。

「白薩摩」は藩の御用品となって洗練されていったが、
この2点は「千鳥印」染付銘があるので、
市場で扱われたものと考えられるそう。


陶2 世界のSATSUMAへ

島津斉彬(1809-58)は薩摩焼を輸出工芸品に育てることを目的に
上絵具の改良に取り組みます。こうしたことが実を結び、
慶応3年(1867)のパリ万国博覧会に出品された薩摩錦手は
大変な人気を博すことになります。

NHK大河ドラマ「青天を衝け」で、渋沢栄一(篤太夫)が
徳川慶喜の弟・昭武の随行でパリ万博に行き、
幕府と薩摩が同格に扱われていると抗議するシーンが
ありましたね。

さらに明治6年(1873)のウィーン万博、
明治9年(1876)のフィラデルフィア万博と、アメリカにも販路を広げ、
薩摩の煌びやかな錦手や金襴手は、
海外で「SATSUMA」ブランドとして広く知られるようになります。

とにかく派手でキラキラの薩摩焼はやっぱり目を引きます。

チラシ裏面左上の《錦手牡丹文花瓶》薩摩 苗代川系 
十二代沈壽官 森山周運絵付 明治時代中期 は、総高91.5cm

金キラの《金襴手風俗図大花瓶》薩摩様式 素地:苗代川系 明治時代
は、なんと高さ121cm

こういう絢爛豪華な薩摩焼が欧米でもてはやされたのはわかるけど、
日本人の美意識からするとちょっとクドイような気がする。

チラシ表面に使われている《錦手松竹梅鶴亀波紋浮彫花生》
 薩摩 苗代川系 東郷壽勝 明治時代中期 は、
白い地肌が上品で、そこに描かれた松がとても優美。
青海波の部分も浮彫になっていたりと凝っています。

チラシ裏面右上の《錦手鹿児島八景図大皿》
 薩摩 堅野系 慶田政太郎 山下雪山絵付 明治31-大正2年頃
中央に桜島が描かれ、周囲に7つの団扇を配して、
団扇に鹿児島の7か所の景色が描かれているという洒落た意匠。


陶3 百花みだれる薩摩焼

薩摩焼は一般に、堅野(たての)系、苗代川(なえしろがわ)系、
西餅田系、龍門司系、平佐系、種子島系の6系統に分類されているそう。
(以下は図録の説明をまとめました)

竪野系は、薩摩藩御用窯として、島津義弘に伴って渡来した
朝鮮陶工によって初期には茶陶を作り、のちに白薩摩の優品も焼いている。

苗代川系も、朝鮮陶工の開窯に始まり、黒薩摩に続き白薩摩も手掛け、
幕末・明治には海外の万博で注目される存在になる。

西餅田系は、主に鉄釉を掛けた日用品を焼いたが、
手の込んだ花生なども作っていた。

龍門司系は、白化粧による技法を特徴とし、さらに
玉流しや鮫肌などの多彩な加飾技法も見られる。

平佐系は、肥前有田の陶工を招いて磁器を製造し、
さらに長崎より学んだべっ甲釉を生み出した。

種子島系は、素朴で力強い風合いのものが多く、
民芸陶として注目されるようになった。

ってことで、様々な薩摩焼が並んでいました。


さらに参考出品として、岐阜県博物館所蔵の
成瀬誠志《金彩中国故事図茶碗》明治時代前期 と、
岐阜県現代陶芸美術館所蔵の
成瀬誠志《上絵金彩妖怪図置物》明治時代前期 が展示されていました。

薩摩焼が欧米で大人気になると、国内各地で薩摩焼にならった
輸出向けの陶磁器が作られるようになり、それぞれの産地名を冠して、
京薩摩や東京薩摩などと呼ばれたんですね。

このあたり、名古屋の横山美術館が明治時代以降の輸出陶磁器を
中心に展示をしていて、詳しいです。
(横山美術館のことブログ記事にできてなかったなぁ‥‥)
横山美術館: https://www.yokoyama-art-museum.or.jp/

成瀬誠志(1845-1923)は、はじめ茄子川焼(現岐阜県中津川市)の
陶工だったが、明治4年(1871)に東京で薩摩様式の絵付けを始め、
細密な絵付けをした東京薩摩を制作しました。


さて、薩摩の刀

近頃、刀剣女子なんて日本刀が人気なんだそうですが、
私は刀を鑑賞するって、どこを見たらいいのかもわかりません。

でも、これだけ並んでいるとなんか迫力ですね。
暗い中に刀が鋭く光っています。

刀1 薩摩島津家伝来の名刀

島津家は鎌倉時代に封ぜられてから幕末まで薩摩の地を治めてきて、
多くの名刀が伝えられています。

が、私にはどれも同じような刀に見えて、違いがよくわかりません。


刀2 薩摩刀

そんな私でも、なんかこれスゴイ‥‥って感じたのが、
重要文化財《太刀 銘 波平行安(号 笹貫)》
 薩摩 波平系・古波平 波平行安 13世紀後半 京都国立博物館蔵

妖刀とされていたって解説を読んで、よけいに凄みを感じました。


もう一つ、印象に残ったのが、
ほとんど反りのない長い刀
《刀 銘 築州住守次藤原是利/明治二年十一月吉日》
 筑前 是利 明治2年
人斬り半次郎としておそれられた桐野利秋佩刀と伝わる刀


刀3 薩摩の美濃刀

西郷隆盛愛刀と伝わる脇差、
《脇差 銘 兼房》美濃 初代兼房 15世紀後半
美濃(関)の刀なんですね。


図録がそれぞれの解説や年表なども詳しくてよかったです。
2,000円(税込) ブログの参考にさせてもらいました。

表紙は、《錦手松竹梅鶴亀波紋浮彫花生》
 薩摩 苗代川系 東郷壽勝 明治時代中期
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裏表紙は、《刀 銘 (一ツ葉葵紋) 主馬首一平藤原安代/遥奉鈞命於薩州作之 享保甲辰年》薩摩 享保9年
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岐阜県博物館: https://www.gifu-kenpaku.jp/
百年公園: https://hyakunen-kouen.jp/

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中日新聞の「薩摩の陶と刀」コラム生地
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