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愛知県美術館「曽我蕭白」展のコレクション展 [美術]

11月14日(日)、テレピアホールで
「ちいさなひみつのせかい」展を見て、愛知県美術館へ。

「曽我蕭白」展 2回目の鑑賞

1回目のことはこちら
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-11-01

展示替えで、奈良県立美術館蔵の《美人図》が出てました。
ビリビリに引き裂いた手紙を加えた妖艶な美人。
蕭白、こんな絵も描いたんだって。

前回は「曽我蕭白」展に思ったより時間かかって、
コレクション展は途中までになってしまったので、
今回はコレクション展をじっくり見ようって思ってました。


展示室5 洋画特集―作品の情報を見る
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今までコレクション展で見たことのある絵も並んでいますが、
作品の額の裏に書かれた情報なども解説してあって、
あらためて興味深く見ました。

そして椅子に置かれていたレトロな新聞風の『速報洋画』!
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詳しい解説がびっしりと8ページあって、
下段のレトロな広告風の展覧会案内も面白い!!
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愛知県美術館のサイトからダウンロードできます!!!!
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/item01/sokuhouyouga.pdf


浅井忠《八王子付近の街》1887年 油彩
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3枚のカラーコピーが添えられています。
同じ場所を描いたと思われる水彩画なんですが、
東京国立近代美術館蔵《山村風景》1887年
東京国立博物館 高野コレクション《青梅街道》
個人蔵《上州風景》
と、4点ともタイトルが違っています。
一体どこを描いたのか?
この絵はほんとうに八王子??


久米桂一郎《秋景》1892年
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キャンバス裏面に3人ほどの人物が描かれているそう。
画家のパトロンとしても知られた今村繁三の旧蔵作品とのこと。

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中村彝《少女裸像》1914年
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とても健康的な少女の裸像。
この頃、相馬家の長女・俊子を集中的に描いているが、
むき出しの上半身を描いたこの作品は、俊子の通う
女子聖学院の校長から展覧会場からの撤収を要求されたそう。
Wikiで、彝は俊子に求婚するが結核を理由に反対されたと知りました。

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左が、岸田劉生《須光治君之肖像》1915年
キャンバスの裏面の写真が添えられています。

右が、木村荘八《壷を持つ女》1915年
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1915年に開催された巽画会第15回展に出品されたもの。
洋画部審査委員を岸田劉生と木村荘八が務めたそう。


村井正誠《ゴルフジュアンの船》1929年
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この絵、なんか気に入りました。
(1回目に行った時も、2回目も写真撮ってるー)
この絵とほとんど同内容、同サイズの作品が
目黒区美術館に所蔵されているそう。


小島善太郎《房州風景》1927-30年
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画面左下に「1930 ZNTARO. KOJIMA」と記されているが、
画面裏に巻き込まれたキャンバスがあり、そこには
「1927 Z.kojima」と書かれているそう。なので、
この作品は、1927年に制作され、その後描き直されたと
考えられると。


辻永《風薫る》1933年
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隣の小島善太郎《房州風景》と比べると、
とても穏やかな風景画だなって。


この対照的な裸婦像が並んでいるところ、面白いなって。
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左は、里見勝蔵《裸婦》1928-29年頃
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右は、満谷国四郎《裸婦》1930年
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同じモデルを使用したと考えられる2つの作品の
新聞記事に掲載された写真が添えられていました。


林重義《舞妓(赤)》1934年
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1934年の第4回独立美術協会展に出品された後、
京城(現在のソウル)の李王家徳寿宮石造殿における
日本美術品展観に出品されたとのことで、
作品裏の出品票の写真が添えられていました。


林武《石膏像のある静物》1931年
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ミケランジェロの瀕死の奴隷と
ファルコネのヴィーナス坐像と思われる石膏像が描かれているとのこと。
石膏像というと、美大受験のために描いた石膏デッサンを
思い出すんだけど‥‥
セザンヌ《キューピッドの石膏像のある静物》や、
(あ、愛知県美術館「コートールド美術館展」で見たっけ!)
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
マティス《石膏のある静物》等の影響も考えられるとのこと。


松本竣介《ニコライ堂》1941年
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(愛知県美術館のパブリック・ドメイン画像お借りしました)
1941年12月に描かれたもの。
この頃竣介は集中的にニコライ堂の作品を制作していたと。


矢橋六郎《武蔵野 冬 杉林》1941年
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冬? 杉林?? なんか紅葉した林のようにも見えるけど‥‥

須田国太郎《夏》1941年
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夏というより、光に包まれた秋の夕暮れのように思えるなぁ‥‥

野口謙蔵《虹のある雪景》1943年
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こちらは冬の雪の冷たさが伝わってくるような絵


山口薫《ボタン雪と騎手》1953年
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タイトルのボタン雪ってのは、馬の名前?
騎手はどこに描かれているんだろう?? とか
何が描かれているのかよくわからないんだけど、
なんか心ひかれる絵ではあります。


田渕安一《有機的表象》1955年
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これも、何なのかよくわからないけど、
内に秘めたエネルギーみたいな力強さ、いいなぁって。


オノサトトシノブ《三つの黒》1958年
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国立近代美術館京都分館で1964年に開催された
「現代美術の動向展」、
1966年の第33回ヴェネツィア・ビエンナーレ他
多数の展覧会に出品されているため、
額裏にはラベルが多く貼り付けられているとのこと。


杉全直《歪んだ空間B》1958年
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芸術は爆発だ! みたいな?


展示室6 グスタフ・クリムトと光の諸相
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(『速報洋画』の広告?より)

愛知県美術館が誇るクリムトの黄金の騎士さまをはじめ、
光を感じる作品が展示されています。

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左 ジャーコモ・バッラ《太陽の前を通過する水星(習作)》1914年
中 ライオネル・ファイニンガー《夕暮れの海Ⅰ》1927年
右 グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》1903年


光に包まれた崇高な雰囲気‥‥素敵!
中上清《無題》2007年
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うまく写ってないんですが、この作品いいなって
深い青の中に仄かに照らされて浮かび上がるような形が幻想的。
濃淡の細やかな諧調の表現ができるメゾチント技法で
作られているとのこと。
二見彰一《月魄》1970年代
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長時間露光によって、太陽の軌跡が光の線のように見える
北野謙《光を集めるプロジェクト》
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左が、《光を集めるプロジェクト、愛知県美術館から 2015年冬至-2016年夏至》2016年
右が、《光を集めるプロジェクト、石灰の積出港 大分県津久見市の石灰会社古手川産業社屋から 2015年冬至-2016年夏至》2016年


展示室7 版画家・野村博と『夕刊新東海』
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戦後の新興紙『夕刊新東海』の記者で、のちに版画家として活躍した野村博の旧蔵資料を中心に、当時の新聞紙面から垣間見える戦後愛知のアートシーンをご紹介します。
(出品リストより)

ってことですが、私には画家が描いた新聞のカットが興味深かったです。

壁に展示されているのは野村博の版画。
ガラスケースにはいろんな人が描いた『夕刊新東海』文化欄カット
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なんか面白い写真だなって
山本悍右《やさしい回帰》1948年
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山本悍右(やまもと かんすけ 1914-1987)
戦前からモダニズム詩やシュルレアリスム写真を発表、
日本におけるシュルレアリスムを代表する草分け的存在
展示作品は、1948年第2回VIVI社展出品作を、
『夕刊新東海』掲載用に別途プリントしたものだそう。

北川民次《南国の花》1940年 と、
根津済美「アメリカ通信」『夕刊新東海』や文化欄に描いたカット
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加山四郎《枯れたる花》1953年 と、
文化欄に描いたカット
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薮野正雄《砂上》1939年 と、文化欄カット
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大沢海蔵《ホルンのある静物》1961年 と、
「若き世代」『夕刊新東海』カット
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「若き世代」は、大沢海蔵が名古屋の若い世代の画家たちに向けた応援記事とのこと。


こちらの2点のカットは、中野安次郎の文化欄カット
このカットいいなって見たけど、中野安次郎の油彩画は写真に撮ってないー
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村松乙彦《氷原》1960年
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日本画。デザイン的、装飾的なところが素敵だなって見た。

田村一男《暁》1980年 と、
谷汲山一乗院「谷汲山参り思い出の畫帳」『夕刊新東海』カット
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杉本健吉《秘苑(昌徳宮後庭)》1971年
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イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活躍された
杉本健吉さん。10月31日で杉本美術館が閉館してしまって残念。
『夕刊新東海』文化欄カット
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水谷清「世界の春」『夕刊新東海』カット
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伊藤廉の文化欄カット
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展示室8 木村定三コレクション 浜田葆光と熊谷守一
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木村定三コレクションが生まれるきっかけとなった、1938年の熊谷守一の日本画展。この展覧会を実現させたのは画家の浜田葆光でした。関連資料や周辺作家の作品を通して、浜田の画業と熊谷との交流を振り返ります。

浜田葆光(はまだ しげみつ 1886-1947)初めて知った画家ですが
熊谷守一(1880-1977)とともに二科会のメンバーで親しい関係だったよう。
一時期、熊谷は奈良の浜田の家に居候していたこともあったと。

これは熊谷守一が描いた《浜田葆光像》1930-40年代
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ガラスの映り込みがあって上手く撮れてないですが、
浜田葆光《自画像》1912年
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最初に浜田葆光の絵が4点展示してありましたが、
額装されていない小さな作品で、私はふーーん、なんて
見てしまったんですが、
これはその中で、いかにも印象派ってカンジの明るい絵でした。
浜田葆光《大森風景》1912年
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愛知県美術館(藤井達吉コレクション)
パブリック・ドメイン画像お借りしました。

右が、浜田葆光《品川停車場》1912年
左は、オタカル・クビーン《女の肖像》1923-25年頃(個人蔵)
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 1922年から丸2年間渡欧した浜田は、フランスで出会った画家 オタカル・クビーン(フランス名はオットン・クビン)に師事します。 クビーンはチェコ出身の洋画家で、印象派的な画風で知られています。
(キャプションの文章)

浜田葆光《静物》1910-20年代
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雑誌『文章世界』4巻1号(1909年)に掲載された
日本で初めて紹介されたセザンヌの作品図版
《オリーブ色の花瓶にいれた花のある静物画》を
参考にした可能性が高いと。

浜田葆光のスケッチブック(個人蔵)
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浜田葆光は「鹿の画家」として知られた洋画家だったが、
日本画でも鹿を描いた作品が展示されていました(どちらも個人蔵)
(映り込みで上手く撮れてなくてスミマセン)
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熊谷守一に日本画を描くように勧めたのも浜田葆光だったそう。
熊谷守一《蒲公英に蝦蟆》1938年
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横井礼以《茄子之図》1939年
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戦前、浜田や熊谷と同じ二科会で活動した横井礼以(禮市)
横井は熊谷をとても慕っていたので、熊谷に倣う形で
こうした日本画作品を手がけたのかもしれないと。
木村定三が購入した横井の作品としては最初のものだそう。

下には、横井が浜田に宛てた書簡が。内容は、
熊谷の日本画展を名古屋で開催するにあたっての相談。


奈良に住んでいた浜田葆光
奈良の芸術文化についても展示されていました。

「観音院サロン」という文化人のサロンがあったんですね。
中心にいたのは、
第206世東大寺別当・上司海雲(かみつかさ かいうん1906-1975)
左が、上司海雲の書《壺中天》
上司は壺のコレクターとしても知られていたそう。
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右は、須田剋太《東大寺落慶供養》1987年
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須田も「観音院サロン」のメンバーの一人、
画面にちりばめられた色紙(?)がとても華やかで素敵!

「奈良の杉本」と呼ばれるほど、奈良に通って絵を描いた
杉本健吉。観音院の古い土蔵を改造してアトリエにしてもらい、
そこで制作したとのこと。
杉本健吉《仏頭》1944年
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突き当りの窓のところには、
野永信《六面体をくぐりぬける円環》1980年
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そして、令和2年度新収蔵作品として、
筧忠治の作品が!

筧忠治《母の像2》1928年
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今年6月20日(日)に一宮市博物館の
「所蔵品による企画展 筧忠治」を見ましたが、
10年かけて描いたという《虫眼鏡を持てる老母》1930-40年 が
すごかったなぁ!!

左は、筧忠治《枯れ花》1954年
右は、筧忠治《本とパイプとランプ》1987年
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でも、風景画や静物画は意外と穏やかな雰囲気だなって。



ルネ・ラリック《コキーユ文オパルーセントガラス皿》
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愛知県美術館、ラリックも持ってたんだ!
木村定三コレクションとのこと。

今回、プラスキューブのアニメーションも見ました。
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辻直之《影の子供》2006年

一枚の紙に木炭で動きの基点となる絵を描き、それを消しては次に続く少し異なる絵を描いて...、という作業を繰り返してアニメーションを制作しています。
ってことで、大変な作業じゃん!!って。
ちょっと怖い、グリム童話のような不思議な世界?

今回もとても充実した展示でした。
写真もたくさん撮らせてもらったし、ブログ記事がだらだらと
長くなってしまいました。読んでくださった方、お疲れ様でした。


愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/

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