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練馬区立美術館「津田青楓」展 [美術]

3月15日(日)、練馬区立美術館へ行ってきました。
「生誕140年記念
 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」
という展覧会をやっています。
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3月14日(土)・15日(日)と、ダンナの仕事の手伝いで東京へ行ったんです。
新型コロナウィルスの影響で、私のパートもヒマで、
土日と連休になったので、(日曜はもともと休みなんですが)
ちょうど仕事で東京へ行くダンナが付いて来るか? と。

用事も日曜の昼頃には終わるので、どこか美術館へ行きたいけど、
新型コロナウィルスの影響で休館しているとこが多いからなぁ‥‥
と思ったけど、ネット調べると、ここは開館してる! って。
練馬区立美術館: https://www.neribun.or.jp/museum/

津田青楓という画家、チラシを見るまで知りませんでした。
この展覧会のチラシは地元の美術館(所蔵作品を貸し出している名古屋市美術館だった?
ポスターもあったかな??)へ行った時に手に入れてたんですね。

アール・ヌーヴォー風の図案――ステンドグラスのデザインにも使えそう!
――が、気に入って持ち帰ってきました。その時は
東京の、それも練馬だし、行けるとは思ってなかったんですが、
調べたら、渋谷からも東京メトロ副都心線直通で行けると知って。
(私は1回の乗換で行きましたが)西武池袋線「中村橋」駅下車、徒歩3分。

表示に従って線路(高架)沿いの道を歩くとすぐでした。
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美術館の隣が「練馬区立 美術の森緑地」として、
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不思議な動物たちの彫刻があちこちに! カラフルで楽しい!!
日曜だったこともあって、子どもたちや親子がたくさん来ていて、
いいですね! こんな公園!!
(写真いっぱい撮ったので、記事の終わりに詳しく載せます)

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階段を上がった2階が美術館の入口になっています。
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観覧料一般1,000円を払って、同じフロアの展示室へ
第一章 因習に背く 図案から美術へ

私好みの図案がまず目に入ってテンション上がります!
いいなぁ!!
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美術館で買った「津田青楓の図案」より

 1880年(明治13)に京都市中京区に生まれた津田青楓(つだせいふう、1880~1978、本名・亀治郎)は、1896年(明治29)に生活の糧として図案制作をはじめたことから画家人生の第一歩を踏み出します。歴史画家谷口香嶠に師事し日本画を学び、関西美術院では浅井忠らにデッサンを学んで(後略) チラシ裏面の文章より

京都国立近代美術館「世紀末ウィーンのグラフィック」展 で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-02-23

展示されている図案集とか素敵!!って見たんですけど、
それらにも通じるような(年代が同じ頃ですものね)

植物のデザインはアール・ヌーヴォーに通じるような
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青楓は関西美術院で浅井忠に学んでいるので――
アール・ヌーヴォー全盛期のフランスに留学した浅井忠は、帰国後、
京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)の教授となり、
関西美術院を開いて後進の育成に努力したと。
浅井忠の図案により、青楓の幼友達で「小美術会」を結成した杉林(浅野)古香が
蒔絵を作った《白川女小手筥》が展示されていました。
2018年暮にヤマザキマザック美術館で見た
「アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン」って展覧会
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(私好みの展覧会だったのに、感想が書けておりません)で、
これ展示されてました!! あらためてその時の出品リスト見たら、
「浅井忠図案、杉林古香作」って漆器が7点も出てた! し、
浅井忠が教材にするためにフランスから持ち帰ったミュシャなどのポスターがあって、
青楓もそれらを見て、参考にしたんだろうなって思いますが、
もともとアール・ヌーヴォーが日本美術の影響を受けているので、
親しみやすかったこともあるでしょうね。

田園風景を写生して図案化してたりするのもあって、
日本的な情緒がとても素敵。
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そんな中、青楓は徴兵され兵役に。除隊して兄一草亭と浅野古香により
「小美術会」を結成し、図案作品を発表する機関紙を創刊するも束の間、
日露戦争が勃発して、再び招集され、203高地の激戦地へ!
その凄惨な体験を赤裸々に1915年(大正4)文芸雑誌『白樺』などに発表しています。

1932年(昭和7)、青楓は『婦人之友』から届いた「世界からなくしたいもの」
というアンケートに答えて曰く、「戦争」と。(昭和7年ですよ!!)

青楓が戦地から浅野古香に送った葉書が展示されていました。

20代の5年間を奪われた青楓(死と隣り合わせの激戦地!)
遅れを取り戻すべく、農商務省海外実業練習生に合格し、
1907年(明治40) フランスへ。アカデミー・ジュリアンで学びます。

デッサンを習ったジャン=ポール・ローランスの《ピエトロ》1907年
という絵が展示されていました。古典的で重厚な歴史人物画。

フランス留学で一緒だったのが、8歳年下の安井曾太郎

異国での3年間を共に過ごした安井とは生涯の友となります。

1910年(明治43)帰国した青楓は191年1(明治44)東京へ。
夏目漱石と出会い、親しく交わるようになります。

漱石とその周りに集まる十弟子(11人の図もあり)を俳画風に描いた絵が楽しい。

漱石晩年に出版された著書の多くの装丁を青楓が手掛けているとのこと。

1916年(大正5)12月9日、漱石が亡くなった時、青楓は人目を憚らず号泣します。

この部屋だけでも、図案集やハガキ等の資料がいっぱいだったんですが、
「上の階に続きます」って言われて、階段を上がった最初の部屋には
青楓が装丁した本がずらっと並んでいます。

夏目漱石だけでなく、漱石門下の森地草平、鈴木三重吉、
与謝野晶子や高浜虚子など多くの本の装丁をしていたことがわかります。

ずっと前に古本市で買った(私が買うんだから安かったとは思うんですが)
漱石遺作「明暗」 大正6年1月26日発行 大正14年3月3日58版発行 岩波書店
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主人公の名前が「津田」です。
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装丁者の名前は書いてないし、今回の展覧会には別の装丁本が出てたけど、
青楓の装丁かなぁ??
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さて、次の展示室からが
第二章 帝国に背く 社会派の画家

1911年(明治44)文部省美術展覧会(文展)に入選するが、
1913年には落選、アカデミズムに凝り固まった洋画の鑑査に不満を持った
青楓は、1914年、同じ意識を持つ画家たちと二科会を設立。
反文展の在野美術団体 二科会の中心メンバーの一人として活躍します。

1923年(大正12)関東大震災の混乱を避けて京都に戻った青楓は、
マルクス主義経済学者・河上肇と出会います。

河上の影響で、社会思想への関心を深め、活動の援助をおこないます。

この頃の青楓の絵は、正直、私にはうーーん?ってカンジなんですけど、
《研究室に於ける河上肇像》1926年 はいいなって見た。

そして、国会議事堂と民衆の住むバラック建築を対比的に描いた
1931年(昭和6)の第18回二科展出品作
《ブルジョワ議会と民衆生活》の下絵
展覧会出品時には、タイトルも「新議会」と改題を命じられたそう
隣に展覧会に出品された本画の絵葉書が展示されていましたが、
1933年に青楓が逮捕された折に官憲に押収され、現在は下絵しか残っていないそう。

やっぱり迫力なのは、1933年(昭和8)、特高の拷問を受けて獄死した
小林多喜二のデスマスクも展示された一角。
十字架のキリスト像にも匹敵するようなものにしたいといふ希望を持って
描いたという《犠牲者》1933年
画面左下の鉄格子の窓から見える国会議事堂が強烈な批判になってます。

この絵は、青楓が官憲に踏み込まれる直前に気付いて隠したため、
押収を逃れたが、敗戦から5年後の1950年(昭和25)にやっと初公開されたとのこと。

逮捕された青楓は、転向を誓約することで釈放されますが、
洋画断筆を宣言して、二科会からも脱退します。

河上肇を支援する一方、青楓は1926年(大正15)「津田青楓洋画塾」を開き、
1930年にはその東京塾を、1932年には名古屋研究所を開き、塾生は
京都、東京、名古屋を通して約150名にまで及んだそう。

塾生であった今井憲一や、下郷羊雄、北脇昇、オノサトトシノブの絵や
青楓塾展のポスターも展示されていました。

下郷羊雄(しもざと よしお)と北脇昇!
愛知県美術館「アイチアートクロニクル展」で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-04-15
1930年代の名古屋はシュルレアリスムの一大拠点だったと、
その中心人物として、下郷羊雄が紹介されてて知ったんですが、
下郷が実家の援助で名古屋市内に構えたアトリエに
津田青楓塾名古屋研究所を開くんですね。
まぁ、なんとも個性的な絵を描く人です。

その「津田青楓塾」も津田の逮捕と共に終わってしまいました。
窓側の廊下を通って次の展示室へ行くと、


第三章 近代に背く 南画の世界へ

青楓は二科会の中心メンバーとして活躍していた時でも、
日本の伝統的画材による作品も描いていましたが‥‥

どこの谷川の風景か? って見たら、遠くにニコライ堂も見える
《お茶の水風景》1918年 とか興味深かった。

1933年の官憲の弾圧による洋画断筆宣言以降、伝統的な日本画、
なかでも詩と画の交錯する南画の世界を追求していくことになり、

なかでも、良寛への関心を深めていきます。
良寛の「堪えしのぶ」生き様を自分と重ねていたんでしょうか。

津田青楓、画家3人分くらいの仕事をした人ですね!
明治・大正・昭和にわたる98歳の生涯

多くの作品や資料に丁寧な解説がついて充実した展覧会でした。
見に来ることができて良かったです。

図録をぜひ買わなくちゃと、ショップ(ってほどのものはなく、
チケット売場のカウンターの前に机一つおいてあるくらい)へ行くと、
「津田青楓の図案」って本が置いてあって、津田青楓の仕事の中で、
私は図案が特に気に入ってたので、この本欲しくなっちゃったんですね。
2,800円+税かー、図録(2,700円+税のところ、税抜の2,700円で買える!)
あきらめてこっち買おうかな‥‥とも思ったんですが、やっぱり図録も
欲しくて2冊奮発しちゃいました!
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ついでに練馬区立美術館の隣の美術の森緑地のペンギンさんを使った
オリジナルクリアファイル350円も買っちゃいましたー!!
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津田青楓の美術館が、山梨県笛吹市にあるそうですね。
青楓と親交のあった笛吹市一宮町出身の歴史家 故 小池唯則氏が
私財を投じ、昭和49年(1974)10月23日に開館した、
ぶどう畑の中にある小さな美術館。
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青楓の遺族からの寄贈もあり、現在500点以上の作品を収蔵していて、
今回の展覧会にも多くの作品が出品されてました。
この展覧会最大201×353cmの《疾風怒濤》1932年 もここの所蔵。
「背く画家」らしい反骨と迫力が感じられる作品でした。
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さて、美術の森緑地の不思議な動物?たちを紹介します。

美術館の前にあるのが《うつるもの》鞍掛純一
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階段の両脇に《トンボ》内山翔二郎
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隣の建物2階になかなか良さそうなカフェ? 発見!
昼ごはん食べてなかったことを思い出して、行ってみることに。
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《キリン》以下、鞍掛純一
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《ゾウ》
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《ペンギン》
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《ゴリラ》
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《手長サル》
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《イヌ》
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《ライオン》
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ずんぐりむっくり《カエル》
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カラフルな《トカゲ》
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《トラ》
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《ヘビ》
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なんとも幸せそうな、寄り添う《ネコ》島田紘一呂
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後ろの塔の上の彫刻は《森の幻想》古賀忠雄
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練馬って言ったら、大根のイメージですよね。
《ネリマーマ》あきびんご
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練馬区立美術館のキャラクター
《ネリビー》ナガクラトモヒコ
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隣は「サンライフ練馬」中高年齢労働者などの雇用促進と
福祉の向上を図るための労働相談などを行う施設なんだとか。
2階に、さっき雰囲気良さそうって見たレストラン「月の風」があります。
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公共施設にあるレストランにしては、ランチやカフェだけでなく、
ディナーもやってアルコール等もある本格的なイタリアンレストラン。
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ガラス張りの開放的な雰囲気も素敵。
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かなりお腹空いてたので、今月のメニューの
白菜ときのこのクリームパスタをいただきました。
美味しかった。かなりのボリューム!
ちょっと中途半端な時間にお腹いっぱいwwになっちゃいました。
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アイスカフェオレつけて1,320円でした。

練馬区立美術館: https://www.neribun.or.jp/museum/


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--追記--
中日新聞2020年3月24日(火)夕刊に載った
練馬区立美術館学芸員の喜夛孝臣さんが寄稿した記事
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