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愛知県美術館「ジブリパークとジブリ展」のコレクション展 [美術]

11月3日(木・祝)に、愛知県美術館友の会の
特別鑑賞会で「ジブリパークとジブリ展」に行ったことは
前記事に書きました。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2022-11-26

11月3日には、美術館事業として、コレクション・トーク
(1) あさいますおの24年 14:30-15:30
(2) 木村定三コレクションの文人趣味 15:40-16-40

も開催されるってことだったので、せっかくなので
そちらも聴講しました。

まぁ、展覧会場空いてるようなら、そちら見てもいいかなと
思ってたんですが、祝日ですし、
当然ながら10階の美術館前には長い行列。
12階のコレクション・トーク会場まで上がりました。


以下、コレクション・トークの内容は、あくまで私が聞いたことなどから
書いてるので、聞き違いや、間違っていることがあるかもしれません


コレクション・トーク(1)
「あさいますおの24年」

講師: 石崎尚(愛知県美術館学芸員)

あさいますお? 名前も聞いたことがないし、
(「アイチアートクロニクル展」に作品が出てたそうですが
全く印象に残っていない(^^;>
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2019-04-15
事前にググってもほとんど情報がなかったです。

24歳で事故死された60年代のわずかな期間に活動された前衛芸術家で、
トークでは、地べたに寝たりするハプニング
(そうそう当時パフォーマンスのことをこう言ってましたっけ!)を行い、
ゼロ次元とも交流があったと。

あさいますお生誕80年となる今年、近年の調査で発見された
作品を一挙公開する本展は、貴重な機会となるであろうと。
あさいますおの作品集も発行される予定だそう。

コレクション・トークの後、その展示を見に行きました。

展示室6 生誕80年 あさいますお―不可視の後衛
愛知県長久手出身の前衛芸術家、あさいますお(1942-1966)。絵画の制作、前衛的なパフォーマンス、ガリ版誌の発行、日本各地の辺境への旅、子どもたちへの美術教育など、多岐にわたる活動を展開したこの知られざる作家の作品を紹介します。

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コレクション・トークを聞いて、60年代の
わけのわからないような独特のパワーやエネルギーを感じて、
うーん、私あまり好みじゃないかも‥‥なんて思ったんですが、
展示室の作品見たら、意外と(って言ったら失礼かもしれないけど)
いいじゃんって。
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なんか静謐ささえ感じるような画面‥‥
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『月刊漫画ガロ』1965年7月号 が展示されていて、
武良茂が「鳥」というエッセイ?を書いています。
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武良茂は水木しげるの本名で、登場するエカキが
あさいますお とのこと。
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水木しげるに、鳥のような自由な生活ができるものだナと
感心されています!


コレクション・トーク(2)
木村定三コレクションの文人趣味

講師: 中野悠(愛知県美術館学芸員)

文人とは? 中国と日本、また時代によっても違いがありますが、
中国・宋時代の科挙に合格できる程の教養を身に着け、
琴棋書画(琴と碁と書と絵)といった風流事を
自らの楽しみとした人々のことで、

日本では江戸時代から明治・大正時代にかけて、
中国の文人への憧れから、風雅を楽しんだ人々のこと

今回の展示構成(私のメモなので違っているかも)
1. 明清の書画
2. 日本の近世文人画
3. 玉器・青銅器
4. 文房具
5. 煎茶具


江戸時代前期、中国の禅僧・隠元隆琦(いんげん りゅうき1592-1673)が
渡来し、黄檗宗(おうばくしゅう)を開きます。

隠元は、中国の書や文化を日本に伝えました。
インゲン豆も、隠元から名前がついたとされます。

ダンナの実家が黄檗宗なので(ってことはウチも黄檗宗?)
ずいぶん前、義母と一緒に黄檗宗の本山、
京都・宇治の萬福寺(まんぷくじ)へ行ったことがあります。


展示室7
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開祖・隠元隆琦の書
《梅一大字 得色梅花三五點云々 七言二句》江戸時代前期(17世紀後半)
(愛知県美術館コレクション検索のパブリック・ドメイン画像お借りしました)
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費隠通容《七言二句「不藉春風千萬好」》中国・明時代(17世紀中頃)
費隠通容(ひいん つうよう)は、中国の禅僧で、隠元の師
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木庵性瑫(もくあん しょうとう)
《一行書「龜毛拂」「萬年春」「兎角杖」》 江戸時代前期(17世紀後半)
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即非如一(そくひ にょいつ)
《一行書「栴檀林裏鳳皇飛」》江戸時代前期(17世紀後半)
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隠元隆琦と、木庵性瑫、即非如一が
「黄檗の三筆」と称されているとのこと。

まぁ、私には書はよくわかりませんが‥‥


江戸時代中期、中国の文人画に憧れて、南画が誕生します
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重要文化財の
与謝蕪村《富嶽列松図》江戸時代中期(18世紀後半)
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浦上玉堂の絵がいくつか展示されていましたが、
なんか私には高尚すぎる? っていうか、ジミな絵‥‥なんて(^^;


呉春《急須に燭台図》江戸時代後期(18世紀末‐19世紀初)
「ほととぎす いかに若衆(わかしゅ)の声がはり」
 呉春は与謝蕪村、円山応挙に学び、両者の画風を採り入れつつ自らの画風を築き、京都四条派の祖となりました。句は呉春と同じ蕪村門下の俳人・高井几董(きとう)の作です。煎茶用の急須と燭台の組み合わせ、さらに夜もなくほととぎすの句から、この作品は夜を徹しての遊興の成果なのかもしれません。
(キャプションの説明)
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このあたりの俳画風の洒落っ気は結構好きかも。

風外慧薫《芦葉達磨図》江戸時代前期(16世紀後半-17世紀前半)
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展示室8

文房具の、筆・墨・硯・紙は、文房四宝と呼ばれる
木村定三コレクションでは、硯が多いとのこと。

文人の嗜みとされた煎茶
初期の煎茶は中国製が多かった。

右《青花山水文水注(古染付)》景徳鎮窯、明時代末(17世紀前半)
左《三彩鯱文水注》石湾窯、清時代(18世紀~19世紀)
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左、青木木米《交趾写魚形水注》江戸時代後期(19世紀)
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青木木米《白磁双龍宝珠文急須》江戸時代後期(19世紀)
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煎茶の道具は、ちょっと小ぶりで、抹茶の道具より繊細なカンジ。
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螺鈿が豪華!
《黒漆楼閣人物図螺鈿卓》中国・明時代(16世紀-17世紀)
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右《青磁魚耳三唐子/四唐子花生(七官青磁)》明時代後期(16世紀~17世紀前半)
左《青花花鳥文瓶》景徳鎮窯、明時代末(17世紀前半)
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右《青花唐草文瓢形瓶》景徳鎮窯、明時代末(17世紀前半)
左《茶葉末釉瓶》景徳鎮窯、清時代末~民国以降(19世紀~20世紀)
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12階のアートスペースで行われた
コレクション・トークが終って、まだ特別鑑賞会まで
時間があるので、10階へ降りました。

コレクション展だけ見るつもりだったんですが、
人の流れにつられて「ジブリパークとジブリ展」の入口へ
行ってしまい、

友の会会員証で入れるので、まぁ特別鑑賞会の前にざっと見るかって
思ったんです。最終入場枠の時間がそろそろ終わる時間だったので、
少しは空いたかと思ったんですが、甘かった~!

人がいっぱいでなかなか進めない。コレクション展を見る時間が
なくなるーと焦りました。


2022年度第2期コレクション展

展示室5 ピカソと同時代の作家たち
他館の展覧会への出品が続いたパブロ・ピカソ《青い肩かけの女》が当館に戻りました。この作品を中心に、ピカソの版画や陶器、同時代の作家の作品を紹介します。また日本の美術界におけるピカソの影響について、作品や関連資料を展示します。

国内外の20世紀美術をコレクションの柱の一つとしている
愛知県美術館の常連(?)作品
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左・アメデオ・モディリアーニ《カリアティード》1911-13年
中・エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《グラスのある静物》1912年
右・エミール・ノルデ 《静物L(アマゾーン、能面等)》1915年


ピカソの日本美術への影響のコーナーでは、
この作品、好きだなー!
太田三郎《三嬌図》1929年
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シャガール風の幻想的な画面が素敵
川口軌外《二婦》1939年
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東郷青児《月夜》1958年 が展示されていました。
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前のケースには、ピカソに関する書籍などが。



展示室4 追悼 設楽知昭
昨年3月に愛知県立芸術大学を退任後、7月に急逝した設楽知昭(1955-2021)。人が世界を「見る」意味から問い直し、自分の着衣や鏡に描いた作品、世界をドームに見立てた立体と絵画、約4×11mの《透明壁画》など23件の所蔵品ほかを展示します。

右・設楽知昭《目の服・上衣》1993年
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壁一面に《透明壁画、人工夢》2005年
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立体の《ドーム》の後ろの壁には、ドームの内部を描いた絵が
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ドーム内部には船の絵が描かれ(鏡で内部が見えるようになっていました)
1枚の絵にも描かれて展示されています。

夢の中のような、ぼんやりと静謐な絵、好きだなー。
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設楽知昭《母子手帳をください》2001年
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それから、コレクション・トークで聞いていた、
展示室6 生誕80年 あさいますお―不可視の後衛
展示室7・8 木村定三コレクション 文人趣味と煎茶
を見ました。

閉館時間つまり「ジブリパークとジブリ展」の特別鑑賞会の
集合時間が迫っていて、かなり駆け足になってしまいましたが‥‥

「木村定三コレクション 文人趣味と煎茶」は
前期(10/29-11/27)、後期(11/29-12/25)でかなり入れ替えがある
とのことなので、できればもう一度見に行きたいです。


愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/
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愛知県美術館「ジブリパークとジブリ展」 [美術]

なかなかブログが書ませんが、
11月3日(木・祝)に、愛知県美術館へ行ってきたことを

「ジブリパーク開園記念
 ジブリパークとジブリ展」をやっています。
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愛知県長久手市「愛・地球博記念公園(モリコロパーク)」内に
11月1日、ジブリパークが開園しました。

11月1日の中日新聞はこんな紙面で包んで配達されました。
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日時指定の予約制。ウェブサイトには
「ゆっくり きて下さい。」と。
ジブリパーク: https://ghibli-park.jp/

テレビなどでも紹介されていましたが、
あまりジブリのアニメを知らない私(^^;>でも面白そうと。

しかし、ジブリの人気はすごいですね。
愛知県美術館では昨年「ジブリの大博覧会」が開催されて、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-08-01

見に行ったんですが、すごい混雑(日時指定制だったんですが)で、
あらためてジブリの人気に驚きました。

今回も事前予約制ですが、日時指定券に残部がある場合のみ、
愛知県美術館のチケット売場で当日券が買えます。
(「ジブリの大博覧会」の時は美術館でのチケット販売さえなかった)

でも友の会会員は予約不要で、土日祝を含め、
いつでも入場できるんです。混雑は必至なので
いつ行こうかなぁ? なんて考えてたら、

友の会の事業で、閉館後の会場を
友の会貸し切りで見られる特別鑑賞会が11月3日にあると!!

私のパートは祝日は休みではないんですが、たまたま
11月3日はシフトで休みになってたんですっ!!
こんな機会を利用しない手はない!!
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11月3日には、美術館事業として、コレクション・トーク
(1) あさいますおの24年 14:30-15:30
(2) 木村定三コレクションの文人趣味 15:40-16-40

も開催されるってお知らせもあったので、せっかくなので
そちらも聴講しました。そのこととコレクション展のことは
次の記事で書くとして、

集合場所の10階チケット売り場前へ行くと、
10階ホールの長いベンチ(藤江和子のデザインによる長椅子)に
大勢の人が座っています。
え?! 友の会の会員がこんなに集まっているの初めて見たー

10階の記念撮影スポット
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閉館時間の18時になって、会場へ。

展示会場内に5つの写真撮影OKの場所があります。
入口においてあった会場マップ
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まず、ネコバス! 乗ることもできます!!
(外観のみ撮影可。ネコバス内では不可)
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それから三鷹の森ジブリ美術館の紹介。
どんな美術館を作りたいのかというコンセプトから始めて、
プランを練り実現していき、さらにこれから‥‥
「はじまりは三鷹の森ジブリ美術館」

三鷹の森ジブリ美術館を手がけた宮崎吾朗監督が、
ジブリパークの制作現場を指揮されてるんですね。


「アニメーションの世界をつくる」では、
宮崎吾朗監督の3DCGアニメ『アーヤと魔女』の
作り方が解説されています。

アニメが手がかかるものだってことは知っていましたが、
3DCGアニメもずいぶん手間がかかるものなんだなぁと。
例えば、主人公の動きによっては、スカートの表面から
足がはみ出てしまったりするので、修正していかなくては
ならないとか、セルアニメとはまた違った苦労が
たくさんあるようです。コンピュータが描画してくれるんだから、
もっと簡単にできるかと思ってた(@o@)

「アニメーションの世界を本物に」
撮影可スポット・「サツキとメイの家1/5スケール模型」
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愛・地球博のパビリオンとして建てられた
「サツキとメイの家」を手がけたのも
宮崎吾朗監督なんですね。
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「サツキとメイの家」は万博後も残されて、
ジブリパーク「どんどこ森」のランドマークとなります。
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こちらのパーゴラの再現展示には、実際に使用された
柱が使われているそう。
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わー、人がいない写真が撮れたって喜んだけど、
それだけ鑑賞会の終了時間(19時まで)が近いってことで(@.@;;
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次の「ジブリパークのつくりかた」はほとんどすっ飛ばして、

撮影スポット「にせの館長室」
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そして最後の撮影スポット

「ジブリのなりきり名場面展」
カオナシと一緒に記念撮影ができます!
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この場所の前には、行列のためのロープが張り巡らされていました。
普通なら長い行列に並ばないといけないんでしょうね。
特別鑑賞会に感謝です。

まぁ、私は混雑なしで展覧会が見られてすごく良かったんですが、
当然ですが、特設ショップはやってないわけで。
いろんなオリジナルグッズが買えるショップも、
大人気のようですよ。


「ジブリパークとジブリ展」の展覧会特設サイト見たら、
この展覧会、全国を巡回するんですね。

愛知県美術館の前に、
長野県立美術館で、2022/7/16(土) ~ 10/10(月・祝) に開催され、

ここ、愛知県美術館で、2022/10/29(土) ~ 12/25(日)

熊本県立美術館で、2023/1/20(金) ~ 3/26(日)

神戸市立博物館で、2023/4/15(土) ~ 6/25(日)

山口県立美術館で、2023/7/15(土) ~ 9/24(日)

とのこと。西日本ばかりですが、その後巡回が決定するところも
あるかもしれません。(昨年愛知県美術館で開催された
「ジブリの大博覧会」は、5年間で国内全11ヵ所の巡回の最後でした)

ジブリのファンの方、3DCGアニメの作り方に興味のある方、
子どもさん連れでも楽しめる展覧会です。
(まぁ、ちょっと混雑しすぎですけど)


愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/

展覧会特設サイト: https://ghiblipark-exhibition.jp/
愛知会場特設サイト: https://ghiblipark-exhibition-aichi.jp/

ジブリパーク: https://ghibli-park.jp/

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岐阜県美術館「前田青邨 展」 [美術]

10月27日(木)、岐阜県美術館へ行きました。

「開館40周年記念
 前田青邨 展
 究極の白、天上の碧
 ―近代日本画の到達点―」
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すごく良かった! 力が入った展覧会だなってカンジ。

前田青邨(まえだ せいそん 1885-1977)
岐阜県中津川市出身で、
大正から昭和の日本美術院で中核を担った日本画家。

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岐阜県出身の日本画の巨匠ということで、
岐阜県美術館の所蔵作品も多いです。

最初の部屋がすごい!

まず、
《大久米命》明治40(1907) と、
《囚はれたる重衡》明治41(1908) が並んでいます。
2つとも岐阜県美術館の所蔵作品なので、
今までも何度か見たことがあるんですが、
どちらも青邨の初期の作品、そして《大久米命》は、
第一回文展へ応募して落選した作品なんだと知りました。
この作品が落選? とちょっと驚くけど、
これが青邨の生涯一度の落選作なんだそう。

続いて、チラシ中面に使われている六曲一双の金屏風
《罌粟》昭和5(1930) 光ミュージアム
右隻には白い花が横一線に並び、左隻には罌粟坊主が
倒れたようになったところに赤い花が1点(と少し)
デザイン的なセンスが素敵だなぁと。

そして、墨色と余白がとても美しい
《鵜》昭和15(1940) 株式会社十六銀行
嘴や目に施された淡彩も上品

その後ろが《洞窟の頼朝》のコーナーのようになっていました。
重要文化財に指定されている
《洞窟の頼朝》昭和4(1929) 大倉集古館
二曲一隻の重厚な絵

美術館入口の看板に使われています。
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実は、私このブログの2006年の記事
岐阜県美術館「前田青邨展」で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2006-09-08
「実物を見ると、鎧の細部まで細かく描いてあるが、いまいち着色がどんくさいというか‥‥実物を前にして、印刷物とはまるで違ってスゴイという驚きはなかった。」
なんて、まぁ生意気にも書いていて、我ながら赤面するんですが<;@o@;;;
(えー?! 今回見てスゴイと思ったけどーー)

まぁ、厚塗りの絵具が重厚というか暗いカンジで、
その手前に展示してあった昭和32(1957)制作の
《洞窟の頼朝》の方が好きではありますが。
どちらも、鎧や衣装の細かな文様の描き込みに感心します。

後年、青邨はこの作品について、
兜や甲冑に気持ちが傾きすぎたとも語っていたそう。

歴史画と並び、青邨の絵というと思い浮かぶ
(チラシ中面にも《洞窟の頼朝》と並んでますね)
《紅白梅》昭和39(1964) 公益財団法人ひろしま美術館

図録の表紙にも《紅白梅》が使われています。
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岐阜県美術館蔵の高松宮喜久子妃の肖像画
《ラ・プランセス》昭和32(1957)

昭和30年、前田青邨は皇居仮宮殿「饗応の間」の壁画を依頼され、能「石橋(しゃっきょう)」を題材に赤獅子の舞う姿を描いた。その際、モデルを依頼した14世喜多六平太の出を待つ構えを見て、新たに本作品を構想したと伝わる。(図録より)
《出を待つ》昭和30(1955) 岐阜県美術館(チラシ中面下段)

その奥の、いつものはルドンの版画などが並んでいる部屋に、
チラシ表面に使われている
《羅馬使節》昭和2(1927) 早稲田大学 會津八一記念博物館

約3mもある(291.0×196.0cm)大きな作品!
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秘蔵の大作、40年ぶりに郷土で特別公開」とチラシなどにありますが、
早稲田大学 會津八一記念博物館で専用の固定展示ケースの中で
額装され建物と一体化して保管されている状態のこの作品を
借用し、搬送して、ここに展示するには数々の苦労があったとのこと。
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会場に置いてあった岐阜新聞の記事

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青邨は大正11(1922)年10月から翌年8月まで、
日本美術院の泰西芸術視察海外研究生として、
欧州へ留学します。この旅が大きな転機となります。
それまで
自分の進む道を模索し、西洋美術の方がこれからの時代にはふさわしいのではないかと悩んでいた青邨が、イタリアで見た中世の絵画に日本画との共通点を見いだし、日本画の将来性に確信を得たからである。
岐阜新聞の記事より

欧州で膨大なスケッチと共に、大量の写真資料――絵画や建築彫刻、
中でも初期ルネッサンス壁画が多い――を購入しているそう。
それらを基に、欧州留学の集大成として取り組んだ作品。

この作品の下図や、やや小ぶり(110.0×63.5cm)な
《羅馬使節》昭和5(1930)頃 公益財団法人 二階堂美術館
も展示されていました。
黒い馬と赤い馬具、背景の建物も少し平面的で
全体に装飾的なのが、私はこちら好きですけど。

同じ部屋に東大寺二月堂の「お水取」を描いた絵巻や
スケッチなども展示されてました。
青邨は昭和34年2月から3月まで奈良に滞在し、
何百枚もスケッチしたそう。

行事を見守る群集の中に、スケッチする画家が描かれている
とのことで、探して見つけてニヤッとしました。

いつも抹茶茶碗などが展示されている小部屋には、
《遊漁》大正10(1921) 公益財団法人 三渓園保勝会 と
《遊漁》大正10(1921)頃 岐阜県美術館 が

向かい合わせに展示されていて、それまでのカッチリした絵に
比べ、ゆるいというか、ちょっと抽象画にも見えるような、
面白い空間になっていました。

私どちらも同じ六曲一双の金屏風だと思っていたら、
岐阜県美術館蔵の方は「紙本金彩
数種類の金泥(金箔を粉状にし膠水で溶きまぜたもの)だけで表現した作品」で、

再興第八回院展に出品された原三渓旧蔵品の方は「絹本着色
裏箔(絹地の裏から金箔を押して、木滑の隙間から柔らかく金を光らせたもの)に墨と金泥とで描き、より繊細な雰囲気を漂わせたものとなっている。

ここまで青邨の代表作ともいえる名品がズラリと並んでいて、
見ごたえ充分なんですが、実はここまでが展覧会の序章(!)


ここから青邨の芸術が7つの章に分けて紹介されます。

第一章 古きものへの愛
青邨初期の作品が並びます。

青邨は16歳で梶田半古(かじた はんこ)に師事します。
兄弟子に小林古径(こばやし こけい)がいて、
生涯の盟友となります。

《袈裟御前》明治35(1902)頃 中津高等学校同窓会

師の梶田半古から「青邨」の雅号を受けた17歳頃の作品。
どこかで見たような絵だなって思ったら、
菊池容斎『前賢故実』を参考にしつつ細部に変更を加えて描いたと。

「渡辺省亭」展を見に行って、省亭の師だと知った菊池容斎
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-06-09

菊池容斎『前賢故実』は、歴史上の人物581名の肖像と
漢文による略歴を記した労作で、明治から大正にかけての
歴史画家にとって最大のお手本であり、
絵を描く際のネタ本だったと。


第二章 異文化体験と惑い
青邨が参加した美術団体「日本美術院」では、所属作家が積極的に海外を旅して異国の文化を体験しており、青邨もまた繰り返し海外へ渡ってその見聞を絵にした。

この頃の青邨は日本画に対して惑いを抱いていた
とのことですが、デザイン的な構図のセンスとか
洒落てるなぁって見ました。


第三章 いにしえびとへの愛

青邨は「人物をかくのが一番むずかしく、人物がかける者は花鳥でも山水でもかけるのだという気持ちがあって抜けません。」と言ったそうですが、
歴史上の人物画は青邨のライフワークでした。


作品をたくさん鑑賞して、少し疲れたので、
ソファで一休みしたんですが、そこに図録と共に置いてあった
中津川市が発行した前田青邨の伝記漫画がとてもわかりやすくて、
最後まで読んでしまいました。非売品ってことで残念!


第四章 究極の「白」を求めて

青邨の水墨画が並びます。線の魅力を存分に発揮した
白描(墨の線だけで表す描法)による肖像画は、
画面の余白が美しく、緊張感があります。

喜寿を迎えた青邨の横向きの自画像
《白頭》昭和36(1961)東京藝術大学
横向きの自分を描くために二枚の鏡を合わせたりして苦労したそう。
眼鏡をはずし画架を見つめる白髪の画家の鋭い目
余白に緊張感のある作品ですが、画家の横に置かれた鉢にある
果物は、白桃? タイトルとの遊び心?


第五章 美しき彩りへの偏愛

白描画の一方、大和絵に学んだ華麗な色彩も青邨の特徴で、
混色が少ないために、色の固有の美しさが際立っています。

これは、青邨27歳の明治45(1912)年、紅児会の展覧会場で
岡倉天心に「前田さん、にごりをお取りなさい」と
言われたことも、きっかけではないかと。

岐阜県美術館蔵の《応永の武者》昭和22(1947) も
ここに展示されていました。
会場入口前の記念撮影コーナーに使われていました
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第六章 可愛い青邨

ここに展示されてた
《動物の舞踏会》昭和33(1958) 公益財団法人 二階堂美術館
すっごく気に入りました! ユーモラスで可愛い!!
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1958年の第29回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展に
出品された作品の1つ。《鳥獣戯画》の継承ですね!
イタリアでこの作品を見た人も、きっと笑みを誘われたでしょう!!

花瓶の桃花や薔薇、ペンギンや枝長、果物鉢など、
個人蔵の小品が多いですが、こういう
ちょっと力の抜けたというか「可愛い」絵、いいなぁ!!


第七章 画禅入三昧―ただ絵を愛す

青邨の座右の銘「画禅入三昧」
スランプに陥っていた30代半ばの青邨は、鎌倉・円覚寺の老師、
釈宗演(しゃく そうえん)へ参禅し、この偈文
―自己の全てを絵に投入する―を記した掛軸を与えられた。
青邨はこれを生涯の指針とし、難しい制作の時は書を
画室の床へ掲げたとのこと。

老いてなお意欲的な制作を続ける青邨最晩年の作品が並びます。

《異装行列の信長》昭和44(1969) 山種美術館
《水辺春暖》昭和48(1973) 岐阜プラスチック工業株式会社(大松美術館にあった作品ですね)
《富貴花》昭和49(1974) 名古屋市美術館
など、どれも老いを全く感じさせない大作!

青邨は、画家仲間からも「絵を描くことが好き」と
言われるほど、作画三昧の人だったそうで、
それが、歴史画から風景、花鳥画、肖像画など幅広い題材を
水墨画も着色画も描いた近代日本画の巨匠の源だったんでしょうね。

そこには絵への、
 愛がある。
」(チラシのサブコピー)


映像コーナーでは、皇居仮宮殿「饗応の間」の壁画を依頼され、
14世喜多六平太をモデルに描いた《石橋》の制作過程を
記録した映像が上映されていました。

この《石橋》、現在皇居「石橋の間」に
後年描き足された紅白の牡丹図と共に配置され、
天皇陛下の記者会見の折りには背景画になっています。


図録がまたいい!
特色が使われているのかな? 金色がすごくきれいに出てます。
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2,900円+税金のところ、後援会員は税込3,000円で買えました。

中津川市発行の前田青邨の伝記漫画、売ればいいのに。

ショップで、青邨が郷里から取り寄せていたという好物、
栗菓子が売られていたので購入。
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栗納豆3個、渋栗納豆3個入りで1,555円(税込)でした。
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あ、このヤマツ食品の初代の次男が青邨とのこと。
つまり、青邨の実家なんですね。
青邨は次男なので、好きな絵の道に進むのもいいだろうと
上京を許されたそう。

店舗の2階には、前田青邨を記念した
「ギャラリー前田館」があるそう。
中津川に行く機会があったら行ってみたい!

栗納豆、美味しかった!
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岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/

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奥村晃史展 村国theミュージアム [美術]

10月23日(日)、各務原市の国指定重要有形民俗文化財
農村歌舞伎舞台「村国座」へ行きました。

「奥村晃史展 村国theミュージアム」が開催されています。
期間: 2022年10月22日(土)~11月6日(日)
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「村国座」は、各務原市各務おがせ町の村国神社境内にあります。
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「村国座」は、明治時代に建てられた農村歌舞伎舞台で、廻り舞台を備えた舞台と客席を持つ本格的な地歌舞伎舞台です。130年という長い時間の中で建物が老朽化したため、約3年間の「村国座 平成の大修理」を行い、2009年1月に完成しました。(チラシ裏面の説明より)
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村国神社の祭礼で、氏子が奉納する地芝居を上演するために
建てられた村国座。私は、2011年秋の祭礼に奉納された
子供歌舞伎を見に行ったことがあります。

村国座の奉納子供歌舞伎:
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2011-10-10

平成の大修理が終わった後は、歌舞伎以外の公演にも
活用されるようになりました。

2013年に村国座でおこなわれた創作歌舞伎「男依歌舞伎」
見に行ったことはこちらに:
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2013-11-05

奥村晃史さんは、1972年各務原市生まれ、在住の画家。

岐阜市の上宮寺で開催された岐阜アートフォーラムや、

奥村晃史さんと望月鮎佳さんの二人展「純情動物園」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2018-10-11

2012年の各務原市中央図書館で開催された
奥村晃史展「すごいどうぶつ」などで作品見てます。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2012-02-22

ヤギやヒツジ、うさぎなどの家畜をモチーフにした絵で
国内外の画廊、百貨店、アートフェアなどで
作品を発表していらっしゃいます。
2023年には台湾で個展を開催予定とか。

なので、各務原市図書館でこのチラシを見た時、
村国座で奥村晃史さんの個展?! と、楽しみにしていたんです。

観覧無料 撮影可

《動植物図襖絵》2009年
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左《黄金の山羊》2018年 右《黄金の羊》2018年
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左《Traditional Sheep》2022年
トラディショナルなネクタイやボタンをつけた羊
右《Lumino-Goat》2022年
油彩で描かれているのに、本当に光っているように見える!
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左《Bearish Sheep》2022年
クマのぬいぐるみをたくさんつけた羊
右《Five Waves》2022年
5本のリボンがかかった羊
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舞台の前に、狛犬のように置かれた一対の作品は、
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奥村晃史さんと各務原市在住の陶芸家・木村洋子さんのコラボ作品
《狛山羊(こまやぎ)》2022年
左が長男
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右が次男
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奥村晃史さんと陶芸家・大野裕之さんのコラボ作品が
《狛羊(こまひつじ)》2022年
あれ? こっちは左が次男で、
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右が長男
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(私には違いがよくわかりませんが(^^;)


廻り舞台の上には、苧ケ瀬池の鯉を描いた絵をプリントした布
(この上には乗ってもOK! 苧ヶ瀬池の鯉に食べられる気分になれる?)
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その上に展示された作品は、
羊やヤギが各務原航空宇宙博物館にある戦闘機・飛燕になって飛んでます!
左《Flying Swallow S》2022年
右《Flying Swallow G》2022年
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奥村晃史さんがこの展覧会に込めた思いが綴られています。
(クリックで拡大します)
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舞台の上手側の小部屋のような場所には、
「太夫座(たゆうざ)」と言うそうですね
各務原市のウェブサイト「村国座とは」より
https://www.city.kakamigahara.lg.jp/kankobunka/1010039/murakuniza/1004876.html
《Corolla》2020年
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金屏風に描いたのではなく、金屏風「も」描いてます。
宙に浮いたような羊と山羊が面白い。
《Tiger and Dragon》2021年
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タイトルを知ってよく見たら、羊は虎柄の布を、
山羊は空の靴下や炎の腹巻?をしています。

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バイオリンにインコがとまっているのは
《Child Violin》2016年

うさぎがエリザベスカラーをしています
《Elizabeth》2019年


左《三種の靴下》2013年 右《Patchworked Sheep》2019年
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村国座の太い梁から、たくさんの絵が吊るされて、
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ゆっくりと回っています。これらの絵は、
「写動物」のワークショップで描かれた作品を展示したもの。
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その「写動物」を体験できるコーナーがありました。
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「写動物」とは?
専用の転写台を使用して奥村氏の絵画を描き写したもの。
まるで写経のように半紙に描き写すことから、
写経ならぬ「写動物」と。
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私もチャレンジ!
並んだ転写台から好きな絵柄を選び、
半紙をマグネットで留めます。
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筆ペンで描き写して、
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用意されている村国theミュージアム限定の
ハンコを押して完成です!

無料で、材料も全て用意してもらって出来、
素敵なお土産ができました。
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村国座の2階客席から見た展覧会場
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この展覧会、見逃して残念だという方、
会場内を歩き回れる、臨場感たっぷりの
VRデジタルアーカイブが公開されています!
https://my.matterport.com/show/?m=4bnU5pQ9SgJ

見てきた方も、タイトルなども確認できますので、
もう一度会場へ行った気分になれますよ!


奥村晃史さんのウェブサイト: https://okumura1.com/

奥村晃史さんの画集やグッズが買えるサイト:
村奥: https://muraoku.stores.jp/

この展覧会の主催「かかみがはら未来文化財団」
https://www.kakamigahara-mirai.or.jp/

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村国神社
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パワースポットだという御神木 後ろの建物が村国座
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苧ヶ瀬池の鯉についても書いた過去記事:
おがせ池の桜
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2011-04-10

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館: http://www.sorahaku.net/
‥‥いつの間にか名称に「岐阜」がついてる!
Wikiによると、2018年のリニューアルオープンで、
各務原市と岐阜県の共同所有、運営になったからとのこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%90%E9%98%9C%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%81%BF%E3%81%8C%E3%81%AF%E3%82%89%E8%88%AA%E7%A9%BA%E5%AE%87%E5%AE%99%E5%8D%9A%E7%89%A9%E9%A4%A8

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