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岡崎二郎「アフター0 Neo」は傑作! [岡崎二郎]

岡崎二郎のファンである私だけど、最近のビッグコミックの「宇宙家族ノベヤマ」にはちょっと失望していた。
もう連載(?)が始まってずいぶん経つ(2月末には単行本第1集が出るそうだ)のに、最初からの疑問である、なぜこの家族が宇宙へ行くのか、メッセンジャーとは何かということがよくわからない。相変わらず端正に描きこまれた絵は可愛いし、細かいディテールなんかも――立体映像に触れてみる翔太とか、コンピュータのキャラクターとかも可愛い――凝ってるんだけどねー。宇宙を舞台にしたストーリーは二郎先生のキャラに合っていると期待していただけに、なんかこの宇宙旅行に付き合っていくのも飽きてきてしまったというか。特に、今回は、前回の終わり方が「次回メッセンジャーの意味が明らかに」みたいになっていただけに、メッセンジャーの意味は、正しい宇宙語によると「知らせる者」もしくは「教えてくれる者」ということがわかったという展開には、なんかガクッときてしまった。二郎先生煮詰まってきたのかなー?だいたい忘れた頃にしか載らないんだから、あまり引っ張らないで、理屈ばかりこねてないで、ストーリーを展開して欲しいなーとか思っていたのだった。

それで、2月17日発売(ここらでは16日から発売されているが)のビッグコミック3.17増刊号にも二郎先生の「アフター0 Neo」が載っているので買ったけど、ちょっと心配しながら読み始めたのだった。

ところが、これが、近年にない(二郎先生には失礼だけど)傑作だった!

以下、ネタバレになります。まだ読んでいない方は、ぜひコンビニ等へ行って、桜塚やっくんの表紙のビッグコミック増刊号を立ち読みしてきてください。二郎先生の作品以外にも、「獣医ドリトル」とか「公家侍秘録」とか、時々本誌にも載る作品があって、今回の増刊は読み応えがあるので(最近、本誌の方はイマイチなんだけど)290円出して買う価値は充分あります。

「アフター0 Neo」EPISODE21 ジンクス
扉をめくった見開きは、星占いの結果をあれこれ披露する女性に、上司の男性が「うんざりなんだよ」と言う、あちこちの職場等でよく見られる光景――と思ったら、ページをめくると、そこは太陽系から離れること1千光年の宇宙の中! という展開が洒落ている。そして、日本人クルーが交通安全のお守りを宇宙船にぶら下げていたり(実際、やってそうだ)、救援に向う宇宙船がJAFだったり、星占い大好きな彼女が「ダモーク人!? あのダサイ奴ら? 迷信にとりつかれた超マイナーな連中」と言って「あんたが言うな!!」と突っ込まれてたりと、細かいとこも凝ってて面白い。

そして最後に、あわや小惑星に衝突というところで、ロボットが「統計学に基づく方法です。」と、「ここに この鉢を置いた時に、エンジントラブルが直ったことが 3回あります。」と、ロボットの無表情で言うところでは、思わず笑ってしまった。

「偽陽性の誤謬」とか、スキナー箱の中のハトとか、今回はそんな小難しい理屈も効果的に使われていて、占いとか、迷信を信ずる心について考えさせられたりして、知的興味も満足させられて良かった。

やっぱ、二郎先生は、話がずーっと続く長編より、センスの良い、ヒネリの効いた短編が合うんだろうね。だから毎回話を一から作らなきゃいけないから、大変だとは思うけど、またセンスの良い話を待ってます!

---- この「ジンクス」のエピソードは、 「アフター0 Neo」第2巻に収められています。
アフター0 neo 2 (ビッグコミックス)

アフター0 neo 2 (ビッグコミックス)

  • 作者: 岡崎 二郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/04/26
  • メディア: コミック

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コメント 2

lenny-tohno

しーちゃんさんへ。
『岡崎二郎』で検索し、こちらのブログ記事を拝読しました。
一人暮らしの猫飼いこと、Lenny-tohnoともうします。
岡崎二郎の作品はどれも好きですが、『宇宙家族ノベヤマ』は、『アフター0』とは別の魅力が有ると思っていました。
『宇宙家族ノベヤマ』は単行本で後から読み返すと、色々な事を考えさせられます。
大げさに書けば、“人類が進むべき方向を示唆している”ように感じました。(手塚治虫の『火の鳥』を連想させます)

1話完結のショートストーリーではなく連載の長編ものとして考えると、『宇宙家族ノベヤマ』は、編集者(出版社)の立場ではどんな評価だったのか知りたい気もします。

『アフター0 Neo』ですが、(単行本2巻収録)ジンクスも面白かったですね。
3人が固唾をのんで聞いた、“エンジントラブルの解決方法”を知った時の驚愕の表情。
吹き出しました。
(単行本1巻収録の)もの知りの寓者たち(前後編)が、個人的には好きです。
私は単に面白いだけではなく、思い、考えさせられる話に、惹かれる人間です。
『アフター0 Neo』が2巻で完結せずに、続いて欲しいと思います。

長文失礼しました。
Lenny-tohno
by lenny-tohno (2014-02-21 00:40) 

しーちゃん

Lenny-tohno さん、岡崎二郎作品への熱いコメントありがとうございます。『宇宙家族ノベヤマ』単行本で読み返すと、壮大なドラマなんですけど、やっぱり私には難しすぎて‥‥。もちろん岡崎作品はどれも好きですが。最近は新作の発表がなくて寂しいです。
by しーちゃん (2014-02-25 14:16) 

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