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名古屋ボストン美術館「ヴィーナス」展 [美術]

10月8日(木)に仕事で行くはずだった会議が、台風のため16日(金)に延期になりました。
毎回、会議は1時には終わるので、その後、美術館などに行くのを楽しみにしています。

今回行ったのは、名古屋ボストン美術館の「ヴィーナス」展
ちゃんと、名古屋ボストン美術館のホームページ http://www.nagoya-boston.or.jp/ から、
入館料100円割引券もプリントアウトして持って行きました。
一般入館料1,200円が1,100円になりました。

展覧会のチラシがとても魅力的だったのです。
さすが、美の女神だけあって、この彫刻、すっごく美人!!
なんともいえない、かすかな微笑みに、つい魅せられてしまう。
venus.jpg
《アフロディーテ頭部、通称「バートレットの頭部」》
ギリシア、紀元前330年頃、大理石

白い大理石の頬に柔和な微笑みを湛えたこのアフロディーテの頭部は、ボストン美術館が誇る至宝です。古代ギリシアのクラシック時代末期からヘレニズム時代初期(紀元前330年頃)にかけて制作された作品で、当時ギリシア世界に名を轟かせていた彫刻家プラクシテレス作のアフロディーテ像(原作は現存せず)にひじょうに近い特徴をもつといわれています。
(名古屋ボストン美術館のホームページより)

なんと、2300年前の彫刻!
ルーブル美術館の《ミロのヴィーナス》よりも古い。
(Wikipediaによると、《ミロのヴィーナス》は紀元前130年頃とのこと)

うん、私はミロのヴィーナスより美人だと思う。
ミロのヴィーナスって、顔だけ見ると、結構いかつい顔をしているんですよね。
(昔、石膏デッサンをしながら思いました。もちろん、整った完璧な美しさがありますが)
その点、このアフロディーテさんは、たおやかな美人です。髪型も優雅だし。
白い大理石の質感も、なんか、透けるような肌のぬくもりみたいなものまで感じさせて、
すごくいいです。この展覧会の目玉ですが、私には、このアフロディーテさんだけでも、
この展覧会を見た価値がありました。

アフロディーテとはギリシア神話の愛と美の女神で、それがローマ神話でウェヌスとなり、
英語読みでヴィーナスとなったとのこと。

ヴィーナスは、愛と美の女神として信仰され、
古代ギリシア・ローマ時代から現代まで、様々な芸術作品に取り上げられてきました。

この展覧会は、ボストン美術館が所蔵するヴィーナスを題材とする作品135点が
展示され、ヴィーナスにまつわる神話や信仰なども丁寧に解説してありました。
様々なヴィーナスを見て、興味深かったですが、正直ちょっと疲れました。

ギリシア神話では、ヴィーナス(アフロディーテ)は、海の泡から生まれて、
キプロス島に上陸したとのこと(ゼウスの娘とする説もある)
この場面を取り上げた芸術作品で、最も有名なのが、
ボッティチェッリの《ヴィーナスの誕生》ですね。もちろんこの展覧会には
ありませんが、《貝から姿を現すアフロディーテ》という彫刻が素敵でした!
ギリシアまたはローマ 前1世紀または後1世紀の大理石像で、残念ながら頭部が
ないのですが、大理石のすべすべした肌がすごく美しかったです。
venus2.jpg
チラシからスキャンした画像なので、あまり鮮明ではないですが‥‥
名古屋ボストン美術館の「ヴィーナス展」の概要のページにも画像があります。
http://www.nagoya-boston.or.jp/exhibition/list/venus-200907/outline.html

ヴィーナスが出てくる神話に、「パリスの審判」があります。
争いの女神エリスが「最も美しい女神へ」と投げ入れた黄金の林檎をめぐって、
ヘラ、アテナ、アフロディーテが争い、その審判をトロイアの王子パリスが命じられる。
女神たちはパリスを買収するべく、ヘラは「世界の支配者」、アテナは「戦勝」
そしてアフロディーテは「絶世の美女」という条件を出す。
パリスは「絶世の美女」を選んで、アフロディーテに黄金の林檎を与えるという話。
この「絶世の美女」がスパルタ王の妻ヘレネーで、これがトロイア戦争の原因となったとのこと。

三人の美女(女神)が、美男のパリスの前で美を競うという、いかにも絵にしやすい話。
なので、様々なな画家が《パリスの審判》という絵を描いています。

しかし、この三択で「美女」を選ぶ? 私だったら「世界の支配者」だけどなぁ!
パリスってのはよっぽど、軟弱な色ボケなんだなぁと思ったんですが、
こんな興味深い記事を見つけました。
時々読んでいる、美術についての造詣も深い lapis さんのブログ「カイエ」の記事です。
パリスの審判 ―三女神の誘惑―
http://lapis.blog.so-net.ne.jp/2008-12-21-2
なるほどー、ある程度の生活レベルを得ていれば、
世界征服なんてのはかえって面倒なだけかもしれないと。
それなら、絶世の美女との結婚が一番魅力かもしれないですね。

そうか、私も、ヨン様並みの美青年が結婚してくれるっていうんなら、
全世界の支配より、二人だけの愛の世界を選ぶ?(ハハハ、すごい妄想)

しかし、ギリシア神話の神々は、争ったり、買収しようとしたり、とても人間っぽいです。
ヴィーナスさんの夫は、鍛冶の神ヘファイストスなんですが、彼女は彼の醜さを嫌い、
マルスを愛人としていたり、美少年アドニスを恋人にしたりと、ずいぶん浮気っぽい。

軍神マルスがヴィーナスの前で、鎧や兜を脱ぎ捨てて、骨抜きになっている絵
《マルスとヴィーナス》ニコラ・プッサン(フランス)1630年頃
なんかは、なかなかエロチックでよろしい!

画家が美しい女性のヌードを描きたい時に、ヴィーナスはいい題材となったんでしょうね。

あと、私が面白いと思ったのが、アフロディーテの彫像は、最初は服を着ていたのに、
ヌードの彫像ができると(初めて等身大の女性のヌード像を作った彫刻家が、プラクシテレス)
それを見るために、街に人が押しかけたそう。
ふふふ、その時代(古代ギリシア時代)芸術かワイセツかなんて議論も起こったんでしょうか?

イタリア・ローマのカピトリーノ美術館にある《カピトリーノのヴィーナス》
Wikipediaに画像がありました
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Capitoline_Venus_Musei_Capitolini_MC0409.jpg
ギリシア原作のローマ時代の模作とのことですが、このタイプの、
胸と下を腕で隠すヴィーナスが大人気で、ローマ時代にはいくつも模作が作られたそうです。
うーん、でも私はこのヴィーナスさん、あまりに生の女性っぽくて、ちょっと‥‥
やっぱり女神は、恥らったりせずに堂々としている方がいいと思うんですけど。

恋の矢を放つ翼のある幼児としてイメージされるキューピッドは、
ギリシア神話ではズバリ「愛」を意味する「エロス」
ヴィーナスの子供とされることもあります。まるで母子のような
《ヴィーナスとキューピッド》ジョン・シングルトン・コブリー(アメリカ)1779年頃
venus3.jpg
は、画家の妻と子をモデルに描かれたとか。
また、青年の姿のキューピッドの絵や、プシケーとの恋愛をモチーフにしたものもありました。

あ、現代のヴィーナス作品として、ボテロの太ったヴィーナスの絵には、
思わず微笑んでしまいました。

まぁ、ボテロの太ったヴィーナスは特別ですが、
美の女神は豊満な肉体をしていますよね。現代の感覚で言うと太りすぎというか。
でも、スリムな女性が好まれるようになったのは、ごく最近ではないでしょうか?
今、女性はやたらダイエットをして、痩せるのが流行ってますが、
ちょっと美意識を見直した方がいいと、健康診断でメタボを注意される私は言いたい!

あと、名古屋ボストン美術館の5階、オープンギャラリーでは、
「よみがえる400年前の輝き
 名古屋城本丸御殿 障壁画復元模写展」をやっていたので見てきました。
shouhekiga.jpg
戦災で消失した名古屋城本丸御殿、その障壁画の多くは、疎開させていたため、
今も残っているそうですが、平成4年から、その障壁画の復元模写が始まり、
現在までに328面が完成しているとのこと。
その主要な復元模写作品72面が展示されています。

チラシでは、色鮮やかな虎やヒョウ(実物を見ることのなかった昔の人は、
虎の雌がヒョウだと思っていたそうです)花鳥風月に、わー素敵と思っていたのですが、
実際に復元模写の障壁画を見ると、ちゃんと金箔を使っているのに、なんか安っぽく
見えてしまうのはなぜ?? 時間というのは、風格を加えるんでしょうかねぇ?
でも、この虎、来年の年賀状づくりの参考にしようっと。

そして、復元制作の様子が紹介されていて興味深かったです。

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symplexus

このアフロディーテの頭部の表情には
 どこかメランコリックな気配があるような・・
 目の表情が無気質に開いてはいないからでしょうか.
by symplexus (2009-10-23 10:05) 

しーちゃん

symplexusさん、nice! & コメントありがとうございます。そうそう、メランコリックな気配ありますよね。なんともいえない表情は、少し見る角度を変えると違って見えたりして、とにかく不思議で魅力的でした。
by しーちゃん (2009-10-23 12:34) 

しーちゃん

majoramuさん、nice! ありがとうございます。
by しーちゃん (2009-10-23 12:35) 

ゆい

私も本日、この展覧会に行ってきました。
ヴィーナスはやはり女性として興味ひかれるものがあり、とても楽しめました♪

ところで、唐突なんですが、アドニスの死を描いた絵、記憶にございますか?
・白黒の小さな絵(版画?)
・ヴィーナスがアドニスに狩りに行かないでと囁いている
・奥の背景にその結末として、イノシシに倒されたアドニスも小さく描かれている。
というのが特徴としてあるんですが、どうしてもタイトルが思い出せません・・・。図録を買う余裕がなかったので、ネットで探してるのですがどうにも;;

ぶしつけで申し訳ないんですが、よろしければお願いいたします。
by ゆい (2009-11-01 22:21) 

しーちゃん

ゆいさん、コメントありがとうございます。私も展覧会のカタログ買ってないんですよ。ヴィーナスとアドニスの絵があったことは覚えているのですが、誰の絵だったのか、覚えてないです。Wikipediakの「アドーニス」の項目 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%82%B9 に、ルーベンスやティツィアーノによる絵があって、ああ、こんな感じの絵だったなぁ、とは思うのですが。

by しーちゃん (2009-11-01 23:39) 

ゆい

返信ありがとうございます!
そうですか。そうなんですよね、うっすらなんですよねぇ;;
あぁ、なんでメモ取らなかったんだろうっ。

wikiまで載せていただいて、本当にありがとうございました!
by ゆい (2009-11-01 23:44) 

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