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斎藤紘二「石棺」

12月24日の中日新聞夕刊の文化のページに載っていた詩。
とても良かったのでここに転記します。

石棺    斎藤紘二

その中で科学の全能を否定するために
その内側に文明の傲(おご)りを閉じ込めるために
まずは石棺の準備を急がねばならない
原子炉を襲うtsunamiが
あり得ないひとつの仮構とされた歴史を
今はにがく思い出しながら

焼(く)べた薪の火がはぜる暖炉ではなく
ただひたすら臨界のつづく炉の内部で
知らぬ間に融合されていた新しい時代のクライシス
安全神話の炉心溶融(メルトダウン)が近づいていた海辺の建屋

神話は滅びるための美しい仮象であろうか
三月のとある寒さの厳しい午後
時化(しけ)た海のマグロ漁船のように
この国の半分が激しく揺れて
やがて水素爆発とともに滅びた神話よ
信じてはならないものを信じたゆえの
あの爆発がこの国の風景を変えたのだ
自然の風景 心の風景もろともに

春まだ浅いふくしまの海辺
恐山の荒涼たる景色の地平を遥(はる)かにこえて
ヒロシマ・ナガサキの惨劇につらなるところ
人々は涙ながらに
はてしなく臨界を欲望する原子炉と
人間の倨傲(きょごう)をともに封印しようとするのだ
腐食(ふしょく)する木棺ではなく 石棺の中に
けっして腐食することのない石棺の中に


詩は好きだったのに、最近は全く読んでなくて、この
斎藤紘二(さいとう ひろじ)という詩人も知りませんでした。

新聞の紹介によれば

1943年、樺太生まれ。
詩集に『直立歩行』(2006年小熊秀雄賞)、『海の記憶』など。
仙台市在住。


とのこと(小熊秀雄賞なんて賞があるんだー)

福島原発収束宣言なんてのが出されたそうですが、ホントに?
そして、安全神話が崩れた今になってもまだ原発を続けようとする人がいる
(それもエライ人に結構‥‥)ってのがよくわからないんですが。

東日本大震災で被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。
特に原発事故で住む所を離れて暮らす方、放射性物質の心配をしながら暮らす方の
心境はいかばかりかと‥‥

石棺に原発と共に人間の倨傲を閉じ込める日が早く来ますように。
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