愛知県美術館「これからの写真」展 [美術]
9月7日(日)、ヤマザキマザック美術館を見た後で、
愛知県美術館へ行きました。
「これからの写真
光源はいくつもある」という企画展をやっています。
正直、愛知県美術館の友の会会員で、無料で入れるというのでなかったら
行かなかったかも。「写真かぁ‥‥」って。
チラシの写真も、フツーに見るとハレーションをおこした失敗写真ですよね。
展覧会が始まって、展示されている写真がわいせつだと、
愛知県警が撤去を求め、それに対して写真に布をかぶせたという騒動が、
ツイッター等で伝わってきて、うーん、なんだかなぁ‥‥
まるで、黒田清輝の腰巻事件のようではないですか。
でも、ま、愛知県美術館がやる写真展ってのは、どんなのかな?
という興味はありました。
愛知県美術館、日曜日だけどそんなに人もいません。
ロビーには、ふじい忠一のぐにゃりとまがった大きな木の作品が2点。
岐阜県美術館の第3回円空大賞展(2005年)で見てビックリした人だ。
会場へ入って最初の部屋が、畠山直哉(はたけやま なおや)の展示。
ポスターに使われている写真、なんか迫力があるけど、
不思議な静謐感のようなものも感じていました。
石灰石を採掘するため鉱山をダイナマイトで発破する瞬間だそう。
発破された石が宙を飛ぶ瞬間が凝固してしまったよう。
次の部屋は、鈴木崇(すずき たかし)の展示。撮影OKでした。
写っているのは台所用スポンジ。
全て黒いバックで、様々な種類のスポンジが写っています。
チケットに使われているのはそのうちの1点。
そんな写真が500点近く並んでいます。
次が、新井卓(あらい たかし)
「ダゲレオタイプ」という古い写真の技法を使った作品。
手前の写真は現在の東北を撮影したものだそうだけど、
なんか古びた印象。
ライトが(わざとだろうけど)アクリル板に当たって見にくい。
奥には原爆ドームを写した写真とか、
こちらは第五福竜丸を写しているけど、金属板なので、
反対側の原爆の作品が映り込んでいるし、床には反射した光‥‥
中央に向かい合うように作品が置かれているけど、
何が写っているのかわからないなぁーと見ていたら、
いきなり強い光が中央の水銀灯から発せられて驚いた。
その光が当たっている間だけ、像が鮮明に浮き出てきました。
ふーん、なんかこのインスタレーションみたいな雰囲気面白いなぁと。
「ダゲレオタイプ」ずいぶん手間がかかる手法みたいですね。
ショップのビデオで制作の様子が紹介されていました。
田代一倫(たしろ かずとも)の写真は、最も写真らしい、
いわゆる記念撮影写真のような、一人の人物が真ん中に写っている写真。
どの人もカメラで撮られていることがわかっていて、こちらを見ています。
田代一倫が大震災の後、東北を回って写真に撮ってきた人々。
撮影の状況や、撮る時に交わした言葉などが写真の下に添えられています。
写真を見ただけでは、大震災があったことがわからない写真もありますが、
大震災の後も、普通の日常、生活は続くわけで‥‥。
新聞やテレビ等では、大震災の被害や避難所の人々、救援活動の自衛隊など、
ショッキング(?)というか、非日常的な写真が報道されるんですが、
そんな大震災の中でも、生きている人間はお腹も空くし、休息も必要なわけで。
写っている人々は特に何かを訴えているわけではないけど、
いろんな人が、それぞれ生きているんだなぁ‥‥みたいな。
木村友紀(きむら ゆき)
なんか古い家の内部を写したような写真がパネルに貼られています。
パネルが迷路みたいになってて、ふーん‥‥? みたいな。
入口にカーテンがかかり、「子どもは入室できない、一部の写真が
不快な印象を与える可能性もある」というような注意書きが提示された部屋が、
問題となった、鷹野隆大(たかの りゅうだい)の展示。
裸の男女、または男性同士が肩を組んで写っています。
どの写真にも写っている男性が、写真家本人の鷹野隆大。
普通、カメラで写す写真家は写真には写らないんだけど、
この人は被写体にもなっているんですね。
裸ではあるけど、これらの写真、エロとか猥褻とか、そんな雰囲気は
全くしなくて、ただ人間の肉体が大きく写っているなと。
まぁ、わざわざ性器まで写さなくても、問題のないところまでで
良かったんじゃないかって気もしますけどね。
次の部屋にはパネルで部屋が作られています。
小さな入口から中に入ると、
片隅にはソファやウィスキーが置かれたテーブルがあり、
「オトコの隠れ家」みたいな雰囲気。
これは写真愛好家であった尾張藩主、徳川慶勝ゆかりの茶室を
現代風のアレンジで甦らせた空間とのこと。
‥‥カメラ・オブスキュラとか、そんな説明もあったけど、
ふーーん‥‥って。写真はどこ??
田村友一郎(たむら ゆういちろう)の作品
次の部屋が、加納俊輔(かのう しゅんすけ)
こんなオブジェクトが置かれています。
テープが貼られた木の立方体? いいえ、これはアクリルの立方体の中に
テープが貼られた木の写真が貼られています。
板に貼られたシール? シールが全く同じ位置に貼られていますね。
板も写真で、それが木材に貼られているんです。
大理石に貼られたテープ? を写真に撮って大理石に貼ってあります。
こんな無駄(?)な作業をすることで、写真とは何か?って問いかけてるわけですか?
そして、川内倫子(かわうち りんこ)の展示。
チラシ表面に使われている、ハレーションをおこしてるじゃないーって作品が
この人。月や太陽の光や、宇宙のようなイメージ等の写真の他、
最後の部屋で二面のスクリーンに映像が映されています。
特にストーリーはないし、場所なども特定できないような、
なんか普遍的なイメージ。降る雪とか、花火とか、小さな生き物とか‥‥
でもなんか見入ってしまう。映画の心理描写シーンにも使えそう?
まぁ、さすが愛知県美術館、写真展っても、どっちかってと
あいちトリエンナーレみたいなインスタレーションっぽい展示が多いなと。
ふーーん、って展示もあったけど、9人の写真家がそれぞれ違う
写真へのアプローチをしていて、やっぱり面白かったです。
これらの展示について、愛知県美術館の学芸員の中村史子さんが、
とても詳しい解説をしている映像があります(約30分)
中村史子「これからの写真」
http://www.curatorstv.com/video/5798811574206464
これを見たら、実際の展示を見なくてもいいくらい!
展示についてもしっかり紹介されています。
なので、まず自分の目で展示を見たい方は注意してくださいね。
私は展示を見終わってから見ましたが、あっ、そういうことだったのかって、
すごくいい復習になりました。鈴木崇のスポンジの写真、
モノクロ写真が並んでいるとばかり思っていたのが、
実はカラーだったということを知って、ちょっと驚いています。
へー、これはもう一度見てこなくてはいけない?
企画展を一度出て、コレクション展の方へ。
展示室4では、「これからの写真」展にあわせて、
日本の写真史を飾った写真家の「私の1枚」
―フジフィルム・フォトコレクションによる― が展示されています。
これぞ日本の写真の歴史?
植田正治、木村伊兵衛、大竹省二、細江英公、立木義浩、坂田栄一郎、
篠山紀信、土門拳‥‥私でも知っているそうそうたる写真家101人の
作品が並びます。
ま、スゴイ写真家のこの一枚って写真が並んでいるのでスゴイんでしょうが、
これだけ並ぶと、凄さが逆にわかりにくくなったりして。
展示室7では、新収蔵となった
志賀理江子「螺旋海岸」の写真25点が展示されていました。
あいちトリエンナーレ2010でも、2013でも見た作品たち。
あいちトリエンナーレ2013では、岡崎のシビコ6階の薄暗い中に、
迷路のように立てかけて展示してありました。
あいちトリエンナーレ2013 (3) 岡崎エリア その1
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-10
でもその時にも思ったけど、この人の写真、私にはどこがいいのかよくわからないなぁと。
今回きちんと額装して並んでいるんだけど、やっぱり‥‥ふーん‥‥としか。
その他の愛知県美術館のコレクション展や
プロジェクト・アーチのことは次の記事で。
愛知県美術館へ行きました。
「これからの写真
光源はいくつもある」という企画展をやっています。
正直、愛知県美術館の友の会会員で、無料で入れるというのでなかったら
行かなかったかも。「写真かぁ‥‥」って。
チラシの写真も、フツーに見るとハレーションをおこした失敗写真ですよね。
展覧会が始まって、展示されている写真がわいせつだと、
愛知県警が撤去を求め、それに対して写真に布をかぶせたという騒動が、
ツイッター等で伝わってきて、うーん、なんだかなぁ‥‥
まるで、黒田清輝の腰巻事件のようではないですか。
でも、ま、愛知県美術館がやる写真展ってのは、どんなのかな?
という興味はありました。
愛知県美術館、日曜日だけどそんなに人もいません。
ロビーには、ふじい忠一のぐにゃりとまがった大きな木の作品が2点。
岐阜県美術館の第3回円空大賞展(2005年)で見てビックリした人だ。
会場へ入って最初の部屋が、畠山直哉(はたけやま なおや)の展示。
ポスターに使われている写真、なんか迫力があるけど、
不思議な静謐感のようなものも感じていました。
石灰石を採掘するため鉱山をダイナマイトで発破する瞬間だそう。
発破された石が宙を飛ぶ瞬間が凝固してしまったよう。
次の部屋は、鈴木崇(すずき たかし)の展示。撮影OKでした。
写っているのは台所用スポンジ。
全て黒いバックで、様々な種類のスポンジが写っています。
チケットに使われているのはそのうちの1点。
そんな写真が500点近く並んでいます。
次が、新井卓(あらい たかし)
「ダゲレオタイプ」という古い写真の技法を使った作品。
手前の写真は現在の東北を撮影したものだそうだけど、
なんか古びた印象。
ライトが(わざとだろうけど)アクリル板に当たって見にくい。
奥には原爆ドームを写した写真とか、
こちらは第五福竜丸を写しているけど、金属板なので、
反対側の原爆の作品が映り込んでいるし、床には反射した光‥‥
中央に向かい合うように作品が置かれているけど、
何が写っているのかわからないなぁーと見ていたら、
いきなり強い光が中央の水銀灯から発せられて驚いた。
その光が当たっている間だけ、像が鮮明に浮き出てきました。
ふーん、なんかこのインスタレーションみたいな雰囲気面白いなぁと。
「ダゲレオタイプ」ずいぶん手間がかかる手法みたいですね。
ショップのビデオで制作の様子が紹介されていました。
田代一倫(たしろ かずとも)の写真は、最も写真らしい、
いわゆる記念撮影写真のような、一人の人物が真ん中に写っている写真。
どの人もカメラで撮られていることがわかっていて、こちらを見ています。
田代一倫が大震災の後、東北を回って写真に撮ってきた人々。
撮影の状況や、撮る時に交わした言葉などが写真の下に添えられています。
写真を見ただけでは、大震災があったことがわからない写真もありますが、
大震災の後も、普通の日常、生活は続くわけで‥‥。
新聞やテレビ等では、大震災の被害や避難所の人々、救援活動の自衛隊など、
ショッキング(?)というか、非日常的な写真が報道されるんですが、
そんな大震災の中でも、生きている人間はお腹も空くし、休息も必要なわけで。
写っている人々は特に何かを訴えているわけではないけど、
いろんな人が、それぞれ生きているんだなぁ‥‥みたいな。
木村友紀(きむら ゆき)
なんか古い家の内部を写したような写真がパネルに貼られています。
パネルが迷路みたいになってて、ふーん‥‥? みたいな。
入口にカーテンがかかり、「子どもは入室できない、一部の写真が
不快な印象を与える可能性もある」というような注意書きが提示された部屋が、
問題となった、鷹野隆大(たかの りゅうだい)の展示。
裸の男女、または男性同士が肩を組んで写っています。
どの写真にも写っている男性が、写真家本人の鷹野隆大。
普通、カメラで写す写真家は写真には写らないんだけど、
この人は被写体にもなっているんですね。
裸ではあるけど、これらの写真、エロとか猥褻とか、そんな雰囲気は
全くしなくて、ただ人間の肉体が大きく写っているなと。
まぁ、わざわざ性器まで写さなくても、問題のないところまでで
良かったんじゃないかって気もしますけどね。
次の部屋にはパネルで部屋が作られています。
小さな入口から中に入ると、
片隅にはソファやウィスキーが置かれたテーブルがあり、
「オトコの隠れ家」みたいな雰囲気。
これは写真愛好家であった尾張藩主、徳川慶勝ゆかりの茶室を
現代風のアレンジで甦らせた空間とのこと。
‥‥カメラ・オブスキュラとか、そんな説明もあったけど、
ふーーん‥‥って。写真はどこ??
田村友一郎(たむら ゆういちろう)の作品
次の部屋が、加納俊輔(かのう しゅんすけ)
こんなオブジェクトが置かれています。
テープが貼られた木の立方体? いいえ、これはアクリルの立方体の中に
テープが貼られた木の写真が貼られています。
板に貼られたシール? シールが全く同じ位置に貼られていますね。
板も写真で、それが木材に貼られているんです。
大理石に貼られたテープ? を写真に撮って大理石に貼ってあります。
こんな無駄(?)な作業をすることで、写真とは何か?って問いかけてるわけですか?
そして、川内倫子(かわうち りんこ)の展示。
チラシ表面に使われている、ハレーションをおこしてるじゃないーって作品が
この人。月や太陽の光や、宇宙のようなイメージ等の写真の他、
最後の部屋で二面のスクリーンに映像が映されています。
特にストーリーはないし、場所なども特定できないような、
なんか普遍的なイメージ。降る雪とか、花火とか、小さな生き物とか‥‥
でもなんか見入ってしまう。映画の心理描写シーンにも使えそう?
まぁ、さすが愛知県美術館、写真展っても、どっちかってと
あいちトリエンナーレみたいなインスタレーションっぽい展示が多いなと。
ふーーん、って展示もあったけど、9人の写真家がそれぞれ違う
写真へのアプローチをしていて、やっぱり面白かったです。
これらの展示について、愛知県美術館の学芸員の中村史子さんが、
とても詳しい解説をしている映像があります(約30分)
中村史子「これからの写真」
http://www.curatorstv.com/video/5798811574206464
これを見たら、実際の展示を見なくてもいいくらい!
展示についてもしっかり紹介されています。
なので、まず自分の目で展示を見たい方は注意してくださいね。
私は展示を見終わってから見ましたが、あっ、そういうことだったのかって、
すごくいい復習になりました。鈴木崇のスポンジの写真、
モノクロ写真が並んでいるとばかり思っていたのが、
実はカラーだったということを知って、ちょっと驚いています。
へー、これはもう一度見てこなくてはいけない?
企画展を一度出て、コレクション展の方へ。
展示室4では、「これからの写真」展にあわせて、
日本の写真史を飾った写真家の「私の1枚」
―フジフィルム・フォトコレクションによる― が展示されています。
これぞ日本の写真の歴史?
植田正治、木村伊兵衛、大竹省二、細江英公、立木義浩、坂田栄一郎、
篠山紀信、土門拳‥‥私でも知っているそうそうたる写真家101人の
作品が並びます。
ま、スゴイ写真家のこの一枚って写真が並んでいるのでスゴイんでしょうが、
これだけ並ぶと、凄さが逆にわかりにくくなったりして。
展示室7では、新収蔵となった
志賀理江子「螺旋海岸」の写真25点が展示されていました。
あいちトリエンナーレ2010でも、2013でも見た作品たち。
あいちトリエンナーレ2013では、岡崎のシビコ6階の薄暗い中に、
迷路のように立てかけて展示してありました。
あいちトリエンナーレ2013 (3) 岡崎エリア その1
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-09-10
でもその時にも思ったけど、この人の写真、私にはどこがいいのかよくわからないなぁと。
今回きちんと額装して並んでいるんだけど、やっぱり‥‥ふーん‥‥としか。
その他の愛知県美術館のコレクション展や
プロジェクト・アーチのことは次の記事で。
コメント 0