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愛知県美術館「線の美学」展 [美術]

12月13日(日)、愛知県美術館のコレクション企画
「線の美学」展へ行ってきました。
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なかなか行けないうちに、とうとう最終日になってしまい焦りました。

全てが愛知県美術館の所蔵作品という展覧会で、
まぁ、チラシ等もはっきり言って地味かな。
観覧料も当日一般500円と、とてもお値打ちです。
(私は友の会会員なので無料で見られますが)

でも、愛知県美術館のコレクションはスゴイし、
「線」という視点からどんな展覧会の構成になっているのか
(愛知県美術館の学芸員さんは頑張ってますから)
楽しみでもありました。

最終日の日曜だけど、館内は閑散としていて、
ゆったり鑑賞できて良かったけど、もったいなーって気も。

だって、まず最初の部屋の、日本の毛筆で描かれた絵のスゴイこと!!

13~14世紀の紫の絹地に金泥で描かれた《如意輪観音像》に驚きました。
品のある線で描かれた観音様のお顔や手もいいけど、
衣の模様が、私の老眼の目には最初なんかぼんやりした濃淡のように
見えたんですが、鳳凰とか植物文様などがホントに細~い線で
描かれているのがわかって、ビックリしちゃいました。

そして「三位」という画家(?)が描いた《不動明王像》は、平筆の使い方や
ちょっとユーモラスにも見える不動明王が面白い。15~16世紀の作品だと。

このあたりの展示はほとんど木村定三コレクションだそうで、
あらためて木村定三コレクションのすごさに驚きました。
白隠慧鶴《布袋図》18世紀 は布袋の袋に描かれている「寿」が
横になっているので、魚みたいにも見えて面白い。

江戸時代の京都の浮世絵師・西川祐信の肉筆浮世絵《秋籬美人図》は、
女性の着物の線や、籬(まがき)のグネグネとした線などの違いで、
質感を表現していて興味深かった。

曽我蕭白《寒山拾得図》は、箒で蜘蛛の巣をはらっている拾得が面白い。

やはり、筆を使う日本や東洋では線は古くから重視されて、
芸術としての書も盛んだったんですね。

本阿弥光悦と近衛信尹と松花堂昭乗が「寛永の三筆」と称せられたということを
初めて知りましたが、その近衛信尹(このえ のぶただ)の《渡唐天神図》は、
おおらかな筆で描かれた天神さん。
「天」の字で頭を書いているのはわかったけど、
「神」の字で衣を書いているってのはよくわからなかった。

松花堂昭乗(しょうかどう しょうじょう)の《天神図》も並んでいました。
「松花堂弁当」はこの人の名前に由来するそうですね。

これらに対して、反対側の壁には、
デューラーの細密な線で描かれた銅版画や、ゴヤの版画、
チラシ裏面にも使われているマティスの《マラルメ詩集》と、
全く違う線の作品が並び、東洋と西洋の違いがよくわかって、とても面白い!!

次のコーナーでは、油絵具の線についての展示。
熊谷守一のチューブから出した油絵具をそのまま塗りたくったような《裸婦》の
絵があって面白い。これも木村定三コレクション。

以前コレクション展で見てとてもインパクトがあった 小山田二郎《愛》
この大きな男は悪魔?? 油絵具を削った線も印象的だなぁと。

次の部屋は線そのものをテーマとするような抽象絵画が並びます。

庄司達《原形と写形No.2》って作品、紙に鉛筆で描いた曲線だけなの!?
なんか、線が立体的にも見えたり、線が動き出すようで、私この作品好きです!
庄司達さんって、布を糸で吊り下げた作品の人ですよね。
こんな作品も作っているんですね。

その隣に展示してあった、大きな画面にグレーのストライプだけって、
ミニマリズムの作品 アグネス・マーティン《Untitled #3》
こんなので作品なの?って気もしますが、見てると落ち着くって
気分になって、なんかいいなって。

コレクション展では常連(?)の桑山忠明《茶白青》も並んでいました。

黒い画面に斜めのシャープな白い線が上昇を感じさせていいなって見た絵は、
名和晃平《Direction #94》(寄託作品)
へー、名和晃平さん、こういう作品も作っているのね。2013年の作品だそう。

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そして、チラシ裏面にも使われている立体作品
袴田京太朗《ハルガ》
去年「これからの写真」展へ行った時のコレクション展で、
平成25年度新収蔵作品として紹介されていて、わー面白い!!って
インパクトのあった作品。

こちらに感想を書いています
愛知県美術館プロジェクト・アーチ「末永史尚―ミュージアムピース」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-09-14

その時に一緒に展示されていた山田正亮《Work C.33》
今回も近くに展示されています。

その隣の部屋では石田尚志《フーガの技法》って映像作品が上映されていました。
バッハの音楽にのせて、線が増殖したり動いたりしていきます。
ふーん‥‥これ見てたら、私もこんなの作ってみたいなって思っちゃいました。
ちょっとパソコンで(もちろんレベルは全く違うけど)できそうじゃないですか。

映像上映のために薄暗くされた部屋の壁に飾られた
伊藤福紫《空間と時間の中に 1805》の
ネオン管やアクリル板の光の作品もいいカンジ。

パウル・クレー《蛾の踊り》ブルーのグラデーションが美しいです。

そして、隣の部屋では、
猪熊弦一郎《マンハッタンA》いいなって。
単純な線の集まりが高層ビル群にも見えてきます。

マツダジュンイチ《そして種は世界に蒔かれた》という3点組の絵(日本画)が
抽象的でありながら詩情とか物語みたいなものも感じられて、
タイトルとも響き合っていい雰囲気!

それから、とにかく大きな、矢印がいっぱい描かれた絵(?)に
「あぁ、荒川修作ね」とか、

鳥かごの中のチェス盤に糸がからまっている
工藤哲巳《無限の糸の中のマルセル・デュシャン》に、
ふーーん‥‥と。なんかガラクタみたいにも見えちゃうけどね。

伝説のモデル・山口小夜子が出ている映像
勅使河原三郎《T-CIYT》1993年
モノクロの映像がアーティスティックで美しいですが、
うーん、どうも私は映像作品はイマイチ好きでないなぁ。

企画展最後のコーナーは、
戸張孤雁や佐分真、宮脇晴などのドローイングが並んでいました。

続いてコレクション展の展示室4では、日本の抽象彫刻家5人
久野真、湯原和夫、清水九兵衛、多和圭三、細井篤
の作品が展示されていました。

私が知っているのは清水九兵衛くらい。

分厚いフェルトをボルトで大きな円筒形にしたものと、
よく街中でも見かける滑り止め加工をした鉄板を円筒形にしたものが
並んでいて、これ面白いな‥‥って思ったのは湯原和夫の作品かな。

前室にあった青く光る山口勝弘《港 No.2》って立体も印象的だったけど、
回転灯がちょっと‥‥私の好みから外れるんですけど。

展示室5は、まあいつもの常連作品が並んでましたが、
クリムトの《黄金の騎士》は、今(10月16日~2016年1月11日)
国立西洋美術館で開催されている「黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝」に
貸し出されているそう。この日(12月13日)放送された日曜美術館の
アートシーンで、《黄金の騎士》の絵も含めて紹介されていました。
「黄金伝説展」西洋美術館、宮城県美術館の後に、ここ愛知県美術館に
巡回してくる(2016年4月1日~5月29日)予定だそうで、楽しみww

藤田嗣治の絵が3枚展示されたそばに、
オシップ・ザツキンの彫刻《チェロのトルソ》が展示されていて、
この間見た映画「FOUJITA」パリのカフェでの乱痴気騒ぎの中で、
ザツキンが出てきたなと。(ドンゲンやスーチンも出てきたし、壁には
モディリアーニの絵が掛けられていたりして嬉しくなりました。)
ここでも、モディリアーニ《カリアティード》が近くに展示されていて、
ザツキンの彫刻との響き合いみたいな視点でも楽しめました。

展示室6のプロジェクト・アーチ
いつも若手アーティストの展示を楽しみにしているんですが‥‥
第17回となる今回は松村かおり「一点を紡ぐ」
‥‥うーん。これは?? なんか意味のない落書きのようで、私にはどうもわからない
MatsumuraKaori.jpg
(置いてあったリーフレットには、線が‥‥みたいな解説もあったけど)

展示室7は北川民次と彼の薫陶を受けた画家の作品の展示

展示室8は、木村定三コレクションの茶陶の展示。
「線の美学」展で木村定三コレクションのすごさに驚きましたが、
ここに展示してある数々の抹茶茶碗、さぞすごいモノなんでしょうね。
私はイマイチひしゃげたようなワビさびがわかりませんが‥‥。
私がいいなって思ったのは、岩田安弘の燿彩天目茶碗
銘「極楽浄土」と銘「花火」の2つの茶碗、キラキラしてきれいだなって。

いつもながら、愛知県美術館に来ると、企画展だけでなくコレクション展も
充実しているので、つい長居してしまいます。
(感想もついダラダラ書いてしまうので、読んで下さった方、お疲れ様でした)
せっかく名古屋へ来たのだから、もう一館くらい行きたいとも思ったんですが、
お腹も空いたので、愛知県美術館と同じ階にある
「ウルフギャングパック レストラン&カフェ」で、
まだランチ大丈夫だったので、本日のパスタランチを。(サラダorスープ、ドリンク付)
友の会会員証で10%割引きになって1,098円でした。
2015-12-13-(3).jpg

愛知県美術館のHP: http://www-art.aac.pref.aichi.jp/

伝説のモデル・山口小夜子のファッションドキュメンタリー映画
12/23(水)~1/8(金)名古屋シネマテークで公開だそう
http://yamaguchisayoko.com/
yamaguchisayoko.jpg

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