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馳星周「楽園の眠り」 [本]

昨日はパートが休みで、何気なくテーブルにあったこの本、
ダンナが市民図書館から借りてきた馳星周「楽園の眠り」を手に取ったら、
止められずに、結局最後まで一気に読んでしまった。

グスタフ・クリムトの「人生の三時期」の絵の部分が印象的な表紙

幼児虐待や、携帯電話の出会い系サイトやメールなど、現代の諸問題を扱い、
裏切りに続く裏切りのスピーディな展開の中、追う側と追われる側の心理が迫力で描かれている。

特に、虐待を繰り返してしまう親の心理がよく描かれていると思う。
よく「こんな可愛い子供を虐待する親の心がわからない」と言う人がいるし、
この小説の中でも登場人物に言わせているが、それは子供を育てたことがない人だと思う。
子供は可愛いだけではなく、わがままで非常に手がかかる。
子守唄に「寝た子の可愛さ、起きて泣く子の面憎さ」という詞があるが、
子供を持たない頃は、起きて泣く子も可愛いと思うのが親の愛ではないだろうか、
なんて思っていたのだが、実際に子供が出来てからは、この詞が非常によくわかる。
助けてくれる人もなく、わけもなく泣く子といるのは、非常に神経を消耗させられる。
まさに「面憎さ」。 「なんで泣くの!」とひっぱたきたくなってくる。
そして、少し成長して自我が出来てくると、子供の主張(?)とぶつかり合うことになる。
一生懸命作った食事を食べたくないとひっくり返されたりすると、親に余裕のない時は
つい手が出てしまう。この小説の中でも、高校生が体で稼いだ金で、風邪気味の子供に
栄養のあるものを食べさせようとしているのに、ひっくり返されてしまうシーンがある。
そんな子供の、他人の苦労を思いやることができない「残酷さ」もちゃんと描かれている。
もちろん虐待は親に全面的に非があるのだけど、
子供を育てたことのない人が偉そうに非難して欲しくない。

しかし、私としては最後の章がなくて、なんとなくハッピーエンド風な終わり方でいいのでは
と思うが、作者としては、それではリアルさがないと思ったのかなぁ。
‥‥暗澹とさせるような結末だ。


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