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もりたじゅん『ダニイル』 [マンガ]

アンドロイドと人間との関係ということで思い出すマンガがあります。

1969年(昭和44年)りぼんコミック11月号に掲載された
もりたじゅん『ダニイル』

もりたじゅんのマンガは、肉感的だけど健康で明るいヒロインが、
下町的な人情のなかで活躍するコメディーといった印象があるのですが、
この作品はもりたじゅんの作品の中でも異色作。
まだ少女マンガにSFは珍しかった時代で、私はこの斬新さにびっくりしました。

もう今、この作品を読むことは難しいと思いますので、ネタバレになりますが、
以下、私の持っている切り抜きからあらすじを紹介します。

DNL1.jpg
まず、ロボットに関する三か条から始まります。
第一条 ロボットは、人間に危害をくわえてはならない。
    また、人間が危険におちいった場合、それをみのがしてはならない。
第二条 ロボットは、人間の命令に従わなければならない。
    ただし、その命令が第一条にそむく場合は、従う必要はない。
第三条 ロボットは、第一、第二条に従うかぎり、自分で自分を守らねばならない。

これはSF作家アイザック・アシモフの作品で定義されたものだということを
後になって知りました。

DNL2.jpg
レイチェルは、ロボット会社の父の頼みで、ロボットを家庭に進出させるための
実験として、人間そっくりのロボット・ダニイルと三週間生活することになる。

最初はダニイルを気味悪がっていたレイチェルだが、
自分の劣等感や片思いの悩みを打ち明けていくようになる。

ダニイルは、レイチェルの部屋を飾り、彼女の髪型や洋服を変える。
そして、彼女に自信をつけさせるために、片思いの相手・ペインや、
ペインのガールフレンドで高慢なグローリアや友だちを家に招待しようと言う。

そして、皆を招待したその日、ダニイルはレイチェルを抱きしめ、
「出て行きたくない」とせまる。
DNL4.gif
びっくりして彼をはねつけたレイチェルだが、カーテンがあいていて、
その様子を皆に見られたことに気付く。

しかし、家に入ってきた皆は‥‥レイチェルがものすごいハンサムに
愛を打ち明けられたと思い、嫉妬している様子。
そして、ペインはレイチェルをデートに誘うのだった。

しかし、翌日。実験期間が終わり、帰宅した父に、ダニイルは会社に運ばれ、
解体されて検査されるということを聞く。
もう永久に会うこともないダニイル――レイチェルはペインからの電話にも出ず、
ヒステリーに近い状態に陥ってしまう。

報告書を読んだ会社では――
「ダニイル一号は修正の必要があるな」
「女主人に恋してしまうようなロボット」というジャン博士に対して、
アガサ博士が言う
「彼は恋などしておりませんわ」「もちろん工学上できるはずもありませんけど」
「彼は ロボット法三原則の第一条に従っただけですのよ」
「第一条は 人間に危害を加えてはならない それを見すごすこともならない
 そうでしたわね」
「ところがレイチェルに危害がおよぼうとしていた」
「彼女自身の劣等感によって 失恋という危害がね」
「だから彼は彼女の劣等感をとりのぞこうとしたのです 恋をしたふりをしてね」

しかし、今の彼女の状態は?

「われわれの誤算があったのです」
「私たちは先に気付くべきでした」
「機械が人間を恋することはできないけれど」
「女にはそれができるということに」

「けっきょく われわれの最大の誤算は」
「ダニイルを美しくつくりすぎたということです」

ラストの、顔をはがされ解体されるダニイルと悲しみに沈むレイチェルが衝撃的でした。
DNL5.gif

もう40年前の作品ですけど、今読んでも全く古く感じません。あらためてびっくりしました。
もりたじゅんにしては、かなりカッチリと描き込まれた絵です。ギャグも入りません。
まだ、もりたじゅんのスタイルができていない初期、色々トライしていた頃の
意欲作だったのではないかと思います。
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トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人)

 始めまして。拙ブログにお越しいただき、ありがとうございました。

 わーっ、なっつかしいー~。拙記事「もりた じゅん先生について話しましょうよ。」 → http://blog.goo.ne.jp/my-yoshimura/e/7e85b6d55fa4cf3365db0156bd1b3570
 
 ののち、森田先生の文庫の傑作選を入手して 「うみどり」「しあわせという名のおんな」「ちっちゃな時から」「ごくろうさん」などは再読出来たのですが、 記事はこちら → http://blog.goo.ne.jp/my-yoshimura/e/5b12f5dedbf6e09b2fd88724b80675ed

 「ダニイル」 は再読出来ていないんですよ。よく切り取ってありましたね~。私もそうすれば良かった。懐かしい絵を見られ感激です。

 これから前記事も読ませていただき、自分の読んだものがあればコメしますね。今後ともよろしくお願いいたします。m(_ _)m
by トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人) (2009-02-09 10:05) 

しーちゃん

トミー。さん、お越し頂きありがとうございます。
トミー。さんのブログ、懐かしいマンガがいっぱいで、嬉しいです! そして詳しい! コメントもアツくて、つい、色々読んでいて返事が遅くなりましてすみません。「うみどり」について今、書こうと思っていますが、私のことですから、何事にものんびりですので‥‥
by しーちゃん (2009-02-12 01:24) 

ちぃーちゃん

わたしは51歳ですが、りぼんだったけ、この作品は心にのこっています。当時、異色作でした。何十年たっても忘れないなんてすごい。じつは、題名を忘れていたのですが検索できて、すっきりしました。記憶がよみがえります。ありがとう。
by ちぃーちゃん (2010-05-07 22:56) 

しーちゃん

ちぃーちゃん、ご訪問 & コメントありがとうございます。ふふふ、私の方が少し年上ですが、同世代ですね。この作品はりぼんコミックに掲載されたものです。たしか‥‥連載漫画が多くて、付録がついていたりぼんに対して、りぼんコミックは付録なしの読み切り漫画の雑誌で、もりたじゅんや一条ゆかり、山岸凉子など、その頃出てきた漫画家さんが意欲作を発表していたように記憶しています。この作品も当時の少女マンガとしては異色作で、すごいすごいと感激して読んだ覚えがあります。
by しーちゃん (2010-05-08 01:49) 

かへらて

もりたじゅん作品を探してたどり着いちゃいました。スルーするのも失礼なのでコメントを残しておきます。
捜していたのはまさしく『ダニイル』でした。私、男ですがマンガが大好きで、この頃は男女の区別無く読み漁っており、女の子のマンガは近所の女の子から借りてました。
そんな中で『ダニイル』は衝撃的で、いつまでも記憶に焼きついていましたが、いつしかタイトルさえも薄れてしまったのです。
一念発起・・・検索の結果ここであらすじまで。髪をカットするシーンなどがよみがえってきましたよ。
楽しい時間でした。」
by かへらて (2010-09-03 18:29) 

しーちゃん

かへらてさん、ご訪問&コメントありがとうございます。当時、女の子が少年マンガを読むのはよくありましたが、男の子が少女マンガを読むのはあまりなかったというか、少女マンガはまだ一段低く見られていました。そんな中、このような意欲作がどんどん出てきて、少女マンガの黄金期に入っていったように思います。とにかく衝撃作でしたね。
by しーちゃん (2010-09-09 00:58) 

とおりすがり

はじめまして、「もりたじゅん」で検索してたどり着きました。「ダニイル」
懐かしいです。小学生の時、古本屋さんにあったコミックス?を立ち読みして
何となく覚えていた作品なのですが、こちらの記事をよんで記憶のトビラが
開いてきました。ラストの顔が剥がされたダニイルのコマは子供心にも衝撃的でした!もりたじゅんさんの作品は、ヒロインの体型がセクシーなんですよね。
私は、ハーフの演歌歌手とマネージャーの悲恋を描いた「しあわせという名の女」も忘れられない作品です。トップスターになったヒロインの「カツ丼が美味しくないの」と言うせりふが忘れられません。最後は事故で死んじゃうはず?
・・脱線しましたが、貴重な切抜きのupありがとうございます。

by とおりすがり (2010-11-25 17:28) 

しーちゃん

とおりすがりさん、コメントありがとうございます。「しあわせという名の女」雑誌掲載からだいぶ経ってから読みましたが、あのストーリー、少女マンガを超越してましたね。大人の世界を覗くようなドキドキ感がありました。ヒロインも肉感的ですし。あの頃のマンガを語り合うことができて嬉しいです。
by しーちゃん (2010-11-28 00:55) 

nano

はじめまして。
もりたじゅん を検索していてたどり着きました。
私はコミックスの中の一遍として「ダニイル」を読んだ覚えがあります。
何冊かコミックスを持っていたのに、結婚前に処分してしまって悔やまれます。
今月書店で、「同期生」(集英社新書)という本を買って、もりたじゅんさんが6年程前に引退されたことを知って、寂しい気持ちがしています。
上記にコメントされているトミー。様のところにも 実は書かせていただきました。
こちらで、「うみどり」の のゆりや、ダニイルの絵が見られて嬉しかったです。 私も50代です。どの作品も、今読み返しても、きっと興味深い内容だと思います。
by nano (2012-10-08 19:57) 

しーちゃん

nano さん、コメントありがとうございます。もりたじゅんさんが引退されたこと初めて知りました。私は読んでませんが、レディースコミックでずっと描いていらっしゃると聞いてたので‥‥。ずっと描いてこれらたことが素晴らしいんでしょうが、やっぱりちょっと寂しい気がしますね。
by しーちゃん (2012-10-08 21:50) 

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