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岐阜市歴史博物館「北斎漫画」展 [美術]

5月13日(木)午後、岐阜市歴史博物館の「北斎漫画」展を見に行きました。
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4月25日のNHKテレビ「日曜美術館」で、「夢の北斎 傑作10選」として、
北斎の作品から10作品を選んで紹介していました。
その最初に取り上げられたのが「北斎漫画」でした。

「漫画」という言葉は、現在のコミックという意味ではなく、
「気の向くままに、漫然と描いた画」ということだそう。

北斎が絵の手本として出版した図案集で、
人物や風俗図、動植物、妖怪にいたるまで、
全15冊に4,000図近くが描かれているそうです。

この「北斎漫画」は、日本から輸出された陶磁器の詰め物として海外に渡り、
フランス印象派などに多大な影響を与えたそう。
番組ではマネの版画や、ゴーギャンの《説教のあとの幻影》と、
北斎漫画とを比べていました。

膨大な漫画本や絵の本が出版される現代にあっても、この「北斎漫画」
その様々なモチーフや、デッサン力はすごいと注目されるでしょうが、
当時のヨーロッパの人の衝撃はさぞかしだったろうと想像します。

そして、当時の日本の文化、大衆の文化の高さにも。
浮世絵もそうですが、北斎漫画の本も、陶磁器の詰め物として使われるほど、
ありふれたものだったということにも驚きです。

現在の漫画という意味とは違うと説明されていましたが、
チラシ裏面に載っている、
三つ目入道に三つ目の眼鏡を売りつける商人の絵などは、
商魂たくましい日本人のエコノミック・アニマル(今は死語?)ぶりを表す
戯画としてすごく面白いし、
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チラシ表やカタログの裏表紙にも使われている人物の百面相などは、
コマ割りされた漫画を思わせます。
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展覧会のカタログも買ってしまいました。1,700円。
本当は再摺された「北斎漫画」全15巻が欲しかったですが、
26万円ちょっとですから、さすがに手が出ませんでした。
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雀踊りの様々なポーズを描いたページは、まるでアニメーションのようです。

「日曜美術館」の最後で、北斎漫画の展覧会が、
なんと岐阜市歴史博物館で開催されていると出ていて、ちょっと驚きました。

岐阜公園内にある岐阜市歴史博物館は、岐阜の石器時代から、
信長が活躍した戦国時代、そして、現代まで続く伝統工芸など
岐阜の歴史を展示する博物館なんですが、
戦国時代の衣装を着ることができたり、
展示方法もパソコンなどを駆使したりして、
なかなか学芸員が頑張っているなと思える博物館なんです。
企画展も結構興味深いものをやっています。

これは絶対見に行かねば!と出かけました。
宅配の無料情報誌「ぷらざ」に、北斎漫画展の紹介と、
100円割引券がついていたので、高校生以上800円のところ700円で見れました。
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この展覧会には、江戸時代から伝承される版木を使って新たに摺り直された
版画約130点と、貴重な版木約50点が展示されていました。
新たに摺り直された木版なので、美しいです。
墨版と、薄墨版と薄赤版の3色刷りなんですね。

そして、びっくりするのが、その絵の細かいこと!
北斎55歳の時に刊行されたとのことですが、
コピーも拡大・縮小も無かった時代、
これらの図は全て原寸で描かれたんですよね。
北斎は老眼には悩まされなかったんでしょうか?
私は、鑑賞するために老眼鏡が必要だったんですが‥‥

北斎のデッサン力はもちろんですが、展示されていた版木には驚きました。
浮世絵は絵師と彫師と摺師の共同作業だったわけですが、
それぞれの職人――今となっては名もわからない人々――の技に感動です。
1本の線も、版木に彫るには両側を削らないといけないわけですよね!
その細かさ!気の遠くなるような作業ではないでしょうか?‥‥すごいです。

展覧会の解説にもありましたが、摺り直しはこれが最後ではないかと。
摺り職人の減少だけでなく、薄くて丈夫な手漉き和紙の職人も
もういなくなるとのことで。

しかし、平日のちょっと遅い時間だったせいか、鑑賞者がほとんどいませんでした。
ゆっくりじっくり鑑賞できて私としては良かったのですが、
こんないい展覧会がと、ちょっと残念な気もしました。

岐阜市歴史博物館で5月30日(日)までです。
ちょうど岐阜公園の新緑も美しい季節。行楽がてら出かけられてはいかがでしょう。

北斎漫画展――江戸伝承版木を摺る
2010年4月23日(金)~5月30日(日)
開館時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時30分まで)
岐阜市歴史博物館


その後の巡回

北海道立文学館
 2010年7月24日(土)~9月5日(日)

富山県水墨美術館
 2010年9月25日(土)~11月3日(水・祝)

郡山市立美術館
 2010年11月13日(土)~12月19日(日)


気持ちのいい快晴の日で、岐阜公園の新緑を堪能しました。
駐車場の横には大きなニセアカシア(しかし「ニセ」なんて失礼な名前)の木が。
白い花がよい香りを放っていました。
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「ナンジャモンジャ」とも呼ばれる「ヒトツバタゴ」の木
白い花が雪をかぶったように見えて美しいです。
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緑がしたたるような岐阜公園内の池
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岐阜市歴史博物館の隣には、名和昆虫博物館もあります。
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板垣退助の銅像
1882年4月6日、板垣退助がこの地で暴漢に襲われ、
「板垣死すとも自由は死せず」という有名な言葉を叫んだ
(本当にそう叫んだかどうかは不明)「岐阜事件」を
後世に残すために建てられた銅像。
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長良川では岐阜市の名物、鵜飼いも始まり(5月11日~10月15日)
川には観覧船がつながれていました。
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影丸

ナンジャモンジャって岐阜や愛知に多いそうですね、なぜでしょうか?
水戸黄門が名付け親だとか、・・・今朝TVでやってました。
by 影丸 (2010-05-20 20:25) 

しーちゃん

影丸さん、コメントありがとうございます。ナンジャモンジャ、日本では対馬と岐阜・愛知だけに自生しているという珍しい分布形態をとる木だそうです。絶滅危惧種だそうです。最近よくこのあたりの公園に植えられていますが、この時期、雪が積もったように見えて美しいですが、花だと知らないと、「ナンじゃこりは」と思わず言ってしまうかもしれませんね。水戸黄門が名付け親なんですか?
by しーちゃん (2010-05-20 20:49) 

しーちゃん

スーさん、nice! ありがとうございます。
by しーちゃん (2010-05-20 20:50) 

たまのママ

“北斎は老眼には悩まされなかったんでしょうか?”
・・・(笑)
きっと北斎は近視だったんですよ~。
だって、私も、近視の乱視&老眼だから、メガネもコンタクトもせずに裸眼で見たら近くのものはクリアに見えますから・・・(笑)
以前TVで、ゴッホもモネも安藤広重から多大な影響を受けたというのを聞いたことがあり、実際に安藤広重の作品“猿わか町 夜の景”を元に作られたのがゴッホの“夜のカフェ”だということで、面白いなぁと思ったことを思い出しました。
北斎も同じく、海外の画家に影響を与えていたんですね。
芸術は素晴らしい!!
by たまのママ (2010-05-27 20:38) 

しーちゃん

たまのママさん、コメントありがとうございます。私最近、老眼が進んで色々不便なんですよねー。運転免許がギリギリクリアできるくらいの近視なんですが、遠くも見えないし、近くも見えない‥‥なので、この版画、老眼鏡をかけて見て、その細かさにつくづく北斎のすごさを感じたわけで。
北斎に広重‥‥この時代の日本の文化の高さ、あらためて誇らしく思えますね。

by しーちゃん (2010-05-30 21:59) 

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