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京都高島屋「犬塚勉展」 [美術]

1月22日(日)、京都高島屋「犬塚勉展」を見に行きました。
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2009年7月5日に放映された日曜美術館で犬塚勉のことを紹介していて、
すごくいいなって思ったんです。

日曜美術館「私は自然になりたい 画家・犬塚勉」
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2009/0705/index.html

特に番組で紹介された《梅雨の晴れ間》という作品。
特別な風景が描かれているのではなく、
どこかで見たような風景‥‥梅雨の頃の緑が旺盛に生育する時期、
雨で生き生きした草や木に光が当たって‥‥草や木、土の香りまで
漂ってきそうで。前景の楚々としたヒメジョオン(?)がまたいい!
普通、こんなどこにでもある雑草をこんな丁寧に描かないよねって。
一木一草のすべてに心を込めて描いてるカンジがすごくいいなって。

この絵を描いた犬塚勉さんは、1988年9月
「水が描けない、もう一度水を見てくる」と言い残して谷川岳で遭難、
帰らぬ人となった。38歳だった。とのこと。

没後20年を機に何度か展覧会が開かれて以来、静かな話題を呼んでいる。
ということで、日曜美術館で紹介されたそうですが、

こんな画家がいたんだ!って驚いたのは私だけではなかったようで、
この日曜美術館、大きな反響があったようです。

その時の展覧会は、せせらぎの里美術館(東京・奥多摩町)と
長野県で、この頃はパートが不規則で忙しかったこともあり、
行けないなーってあきらめてたんですが、
去年の9月11日の日曜美術館のアートシーンで、犬塚勉展を紹介していて、
東京展の後、京都、長野、広島へ巡回するってあったので、
ちょっと心に残ってたんです。

去年12月18日(日)に奈良県立美術館へ「磯江毅=グスタボ・イソエ」展
見に行ったりして、京都が行く気になりさえすれば
わりと近いことに気がついたんですよね。
(JR西岐阜から、京都は1,890円。豊橋も1,890円。そして下呂も1,890円。
 高山は2,520円。岐阜県内の高山よりずっと近いってのは意外でした。)

京都高島屋で1月6日(金)~23日(月)かーって。意外と会期が短くて、
どうしようかなーって思っているうちに、行けるのは22日(日)しかない、
やっぱ行こうって、私のいつものパターンですが、
デパートでやるので、午後8時まで開館しているってのはありがたかったです。

日曜美術館を見て、洗濯干して、それから列車の中で読む本を借りようって、
図書館まで寄ってから行きました。JR西岐阜前の駐車場に車を入れ、
大垣、米原で乗り継いで、京都駅に着いたのが午後3時頃。
地下鉄で四条駅まで行き、人でごったがえす四条通りを歩いて高島屋へ。
(京都の繁華街を歩くのは初めて)途中、チケットセンターで
犬塚勉展のチケット当日一般800円のところ600円で売っていたのでゲット!
(招待券でした)
高島屋7階グランドホールとのことでしたが、7階に行っても、レストラン街や
ギフト解体セールとかやってて人でいっぱい。
犬塚勉展はどこ?って。片隅にありました。
でも中は結構広かったです。観覧者も結構入ってました。

最初に若き日の自画像、そしてまだ画風が確立しない時代の、
スペインの風景や人物、仏像や馬、多摩の風景画など。
色面的に構成されていたり、絵の具の垂らしこみやスパッタリングなど、
様々な技法が使われています。
失礼かもしれないけど、公募展とかグループ展などでよく見るような絵。
でもちょっと童画のような詩的な雰囲気が素敵です。
多摩の風景画は、私は大学が八王子にあったので、そのあたりの風景を
思い出して懐かしい気分になりました。

転機になったのは、体調を壊して制作できなかった1983年から1984年。
《一度死んだと思うべきだ》と、古い棚を整理してデッサンを処分して、
《ナチュラリティーとリアリティー》という言葉で表現される一つの方向に向かう
とのこと。(図録より)

それからチラシ表面にも使われている(部分)《ひぐらしの鳴く》などの
自然を写実的に描く作風へと変わります。

この作品、結構大きいんですよね。97.0×260.6cm
大画面に一面の草原。その草一本一本が細かく描かれています。
ただ、それぞれの草がリアルというよりは、
《一つ一つの植物が本物に似ているかどうかではなく、密度であり、全体から感ずること》
《描いて描いて描き込んで、自然そのままの密度に到達する》
と犬塚勉さんはノートに書かれているそうですが、
あくまで絵として美しく構成されています。

‥‥密度なんでしょうね、感動するのは。
たとえば、図録の表紙に使われている《林の方へ》
InuzukaTsutomu3.jpg
ここって絵とか写真になりにくい場所ですよね。
絶景でもない、ありふれた景色。
写生するなら、もっと前景、中景、遠景がはっきりした場所を選びなさいって
忠告するところです。でも、こういう自然の中に立った時に感じる
木や草や土の香り、湿度‥‥自然から感じられる美や感動‥‥
そんなものが感じられるように思うのは、木々の葉の一枚一枚、草の一本一本を
手で描いているからなんでしょうか‥‥。

あぁ、ブログに展覧会の感想をアップしようと思ってから、
なんでこんなにかかるのか?疲れてきてしまいました。
すごく良かったって言葉だけでは足りないような気がして‥‥
私はこのあたりの野や林を描いた絵がとても好きです。

この後、石やブナの木を描いた絵は、アンドリュー・ワイエスの絵を思わせるような、
(図録に「犬塚が敬愛するアンドリュー・ワイエスの――」という文があります)
静謐な雰囲気。自然の厳しさと美しさが感じられていいんですが‥‥

やっぱり自然の緑、潤いが感じられる景色が素敵だな、癒されるなって思うのは、
私の個人的な好みかも知れませんが。

展覧会の図録、ハードカバーの装丁もすごく良かったし、
何より表紙の絵が素敵だったので買ってしまいました。2,100円でした。

微笑んでしまったのは、隣に磯江毅展の図録とか、高島野十郎の画集とか、
去年6月26日の日曜美術館「記憶に辿りつく絵画~亡き人を描く画家」で
紹介された諏訪敦の画集などが並べられていたこと。
なんで私の好きそうな画家が並んでるの?って。
犬塚勉が好きな人は、こういった写実画家も好きだろうって?

犬塚勉展はこの後、長野・広島に巡回します。
長野展 2012年4月14日(土)~6月3日(日) 東御市梅野記念絵画館
広島展 2012年11月2日(金)~12月25日(火) 奥田元宋・小由女美術館

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鋭理庵

ボクもNHKを見て、奥多摩せせらぎの里美術館に行きました。それ以来写実絵画に興味を持ち始めました。

http://kaorun2480.blog.so-net.ne.jp/2009-07-24
by 鋭理庵 (2013-02-21 01:52) 

しーちゃん

鋭理庵さん、nice! & コメント、ありがとうございます。奥多摩せせらぎの里美術館、なんて素敵な環境にある美術館なんでしょう!犬塚勉の作品の展示にピッタリですね。
by しーちゃん (2013-02-25 01:33) 

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