カズオ・イシグロ/土屋政雄=訳『わたしを離さないで』 [本]
カズオ・イシグロ/土屋政雄=訳『わたしを離さないで』読了しました。
介護人キャシーの告白という形で語られる
ヘールシャムという施設で過ごした青春時代の回想など。
親友のルースのちょっとしたイジワルとか、
からかわれて癇癪を起こしていたトミーのこととか。
どこにでもありそうな話なんだけど、
話が進むにつれおぞましい真実が明らかになってきて‥‥
当事者のキャシーがあくまで穏やかに話すのがコワイ。
私にしてはちょっと違うジャンルの本‥‥これはSFになるんでしょうか?
カズオ・イシグロという作家の名前もそれまで知りませんでした。
この本にあった著者紹介によると、
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、五歳のとき、海洋学者の父親の仕事の関係でイギリスに渡る。以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景にして育つ。
1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を受賞。
1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞に、
1989年発表の第三長篇『日の名残り』ではイギリス文学の最高峰であるブッカー賞に輝いている。
この『わたしを離さないで』は2005年に発表された著者の第六長篇。
発売と同時に英米のベストセラーリストを賑わせ、《タイム》誌においては文学史上のオールタイムベスト100に、刊行したその年に選ばれるという驚くべき快挙を成し遂げている。
映画にもなったそうですね。私は映画はあまり興味がないので、知りませんでした。
この本は早川書房から2006年4月30日に初版発行されています。
早川書房が日本語版翻訳権独占とのこと。
この本を読もうと思ったのは、たまたまラジオで紹介していたので。
図書館の棚にあったので借りてきました。
ラジオの紹介で、タイトルから甘いラブストーリーを連想すると全く違うよと。
まぁ、ヘールシャムの真実は、ラジオで聞いた時から、薄々解ってましたが。
この本でもわりと早い段階で一人の保護官が明かします。
なので、これは真実をつきとめていくミステリーのようなハラハラ・ドキドキ感はありません。
コトの倫理や善悪を問いかける作品というわけでもないように思います。
もちろん社会の不正を暴いたり訴えたりする作品でもない。
読書にカタルシスを求める人にはこの作品は物足らないのでは?
読了感はなんかモヤモヤしたものが心に残るカンジ。心の疲労感みたいな?
‥‥でも私はそんな読了感が結構好きなんですよね。
なぜキャシーたちは、猶予を願ったりするのに、それ以上の‥拒否とか‥ことを
訴えようとか、試みようとかしないのだろうか、残酷な運命をこんなに素直に受け止めてしまって‥‥
でも考えたら、私たち普通の人間も運命からそんなに自由なわけではないんですよね。
死病にとりつかれる人もいるし、戦争に行かなければいけない人は《提供者》とどう違うのかとか。
ラストの文章は印象的です。
顔には涙が流れていましたが、わたしは自制し、泣きじゃくりはしませんでした。しばらく待って車に戻り、エンジンをかけて、行くべきところへ向かって出発しました。
‥‥ヒロインのキャシーが涙を流すのはこのラストのみだったと思います。
語り口が淡々としているのがこのグロテスクな世界を描くのにいいんでしょうね。
もちろん日本語訳がいいんでしょう。
訳者の土屋政雄さんはカズオ・イシグロの『日の名残り』や、
ジョン・スタインベック『エデンの東』など英米文学の多数の翻訳をされているそう。
私は今まで翻訳小説ってあまり好きじゃなかったんですよ。やっぱ文章がこなれてないっていうか。
でもこの文章いいですね。
寄宿学校とも言えるヘールシャムは、ハリー・ポッターの魔法学校のような
イメージで読みました。
文庫にもなっているんですね。
介護人キャシーの告白という形で語られる
ヘールシャムという施設で過ごした青春時代の回想など。
親友のルースのちょっとしたイジワルとか、
からかわれて癇癪を起こしていたトミーのこととか。
どこにでもありそうな話なんだけど、
話が進むにつれおぞましい真実が明らかになってきて‥‥
当事者のキャシーがあくまで穏やかに話すのがコワイ。
私にしてはちょっと違うジャンルの本‥‥これはSFになるんでしょうか?
カズオ・イシグロという作家の名前もそれまで知りませんでした。
この本にあった著者紹介によると、
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、五歳のとき、海洋学者の父親の仕事の関係でイギリスに渡る。以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景にして育つ。
1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を受賞。
1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞に、
1989年発表の第三長篇『日の名残り』ではイギリス文学の最高峰であるブッカー賞に輝いている。
この『わたしを離さないで』は2005年に発表された著者の第六長篇。
発売と同時に英米のベストセラーリストを賑わせ、《タイム》誌においては文学史上のオールタイムベスト100に、刊行したその年に選ばれるという驚くべき快挙を成し遂げている。
映画にもなったそうですね。私は映画はあまり興味がないので、知りませんでした。
この本は早川書房から2006年4月30日に初版発行されています。
早川書房が日本語版翻訳権独占とのこと。
この本を読もうと思ったのは、たまたまラジオで紹介していたので。
図書館の棚にあったので借りてきました。
ラジオの紹介で、タイトルから甘いラブストーリーを連想すると全く違うよと。
まぁ、ヘールシャムの真実は、ラジオで聞いた時から、薄々解ってましたが。
この本でもわりと早い段階で一人の保護官が明かします。
なので、これは真実をつきとめていくミステリーのようなハラハラ・ドキドキ感はありません。
コトの倫理や善悪を問いかける作品というわけでもないように思います。
もちろん社会の不正を暴いたり訴えたりする作品でもない。
読書にカタルシスを求める人にはこの作品は物足らないのでは?
読了感はなんかモヤモヤしたものが心に残るカンジ。心の疲労感みたいな?
‥‥でも私はそんな読了感が結構好きなんですよね。
なぜキャシーたちは、猶予を願ったりするのに、それ以上の‥拒否とか‥ことを
訴えようとか、試みようとかしないのだろうか、残酷な運命をこんなに素直に受け止めてしまって‥‥
でも考えたら、私たち普通の人間も運命からそんなに自由なわけではないんですよね。
死病にとりつかれる人もいるし、戦争に行かなければいけない人は《提供者》とどう違うのかとか。
ラストの文章は印象的です。
顔には涙が流れていましたが、わたしは自制し、泣きじゃくりはしませんでした。しばらく待って車に戻り、エンジンをかけて、行くべきところへ向かって出発しました。
‥‥ヒロインのキャシーが涙を流すのはこのラストのみだったと思います。
語り口が淡々としているのがこのグロテスクな世界を描くのにいいんでしょうね。
もちろん日本語訳がいいんでしょう。
訳者の土屋政雄さんはカズオ・イシグロの『日の名残り』や、
ジョン・スタインベック『エデンの東』など英米文学の多数の翻訳をされているそう。
私は今まで翻訳小説ってあまり好きじゃなかったんですよ。やっぱ文章がこなれてないっていうか。
でもこの文章いいですね。
寄宿学校とも言えるヘールシャムは、ハリー・ポッターの魔法学校のような
イメージで読みました。
文庫にもなっているんですね。
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