SSブログ

愛知県美術館「魔術/美術」展 [美術]

6月3日(日)、松坂屋美術館の「日春展」を見た後、
愛知県美術館の「魔術/美術」展へ行きました。
副題が「幻視の技術と内なる異界」
なんか面白そう!チラシもちょっと凝ってて素敵。
(下に割引券までついてます。一般900円が800円になりました。)
ARTasMAGIC-1.jpg
印象的な子供の顔は、中澤英明「子供の顔」シリーズの
《寝ぐせ》と《クマ》(どちらも部分)
じっとこちらを見つめている瞳がどこかウツロで不気味になってきます。

上のホラー屋敷のような絵(リトグラフ)は
ロドルフ・ブレスダン《魔法をかけられた家》(部分)
あ、岐阜県美術館の絵ですね。

この展覧会は愛知・岐阜・三重の三県立美術館協同企画で、
三館の所蔵作品を「魔術/美術」というテーマで構成して、
ちょっと違った角度から鑑賞してみるという展覧会。

‥‥こういう企画、以前、愛知県美術館の所蔵作品で構成された
「タイムスケーブ展」でも感じたんですが、愛知県美術館上手いですね。
学芸員が頑張っているんでしょうね。
学芸員さんたちが交替で書いている公式ブログも興味深いです。
愛知県美術館公式ブログ:http://blog.aac.pref.aichi.jp/art/
愛知県美術館のHP:http://www-art.aac.pref.aichi.jp/

今回も、入口で鑑賞ガイドをもらって会場に入ると――
(チケットは白地に模様がカラフルにデザインされていてカワイイ)
ARTasMAGIC-3.jpg

アンドレ・ブルトンの言葉が書かれた薄い布の幕が下がっていて、
その後ろに、野村仁《勃起する真空》が暗がりのなかでスポットライトを浴びてます。
‥‥わー!これ、岐阜県美術館で見たハズだけど、印象がまるで違う!!
ガラスの形が、なにか不思議なモノが生まれつつあるところのようなカンジに見えてきました。

そして壁には、能面がかかっています。《増女》‥‥気品のある女性の能面。
見ているとその表情が微妙に動いているように思えて、
わー、これが魔女の顔で《勃起する真空》は魔法の液体を合成しているところ‥‥?
なーんて想像までしてしまったのは、この展覧会の魔術にかかっていた??

別の壁面にはダリの遠近法的に腕をのばした人物群を描いた作品。

この最初の部屋がすごく素敵でした。
でもここで、入口でもらった鑑賞ガイドのQ1に気がつきました。

Q1.野村仁が作品として制作したことのあるものは次のうちどの車でしょう?
 1.ソーラーカー 2.リニアモーターカー 3.レーシングカー


え??って、もう一度展示されている解説を読んだけど、それらしいことはどこにも書いてない。
???どこに解答がって探したら、鑑賞ガイドの裏面にありました。
1.ソーラーカー
《サンストラクチャー》というソーラーカーでアメリカ大陸を横断するというプロジェクトを実現しているとか。

次の部屋にはエッシャーのだまし絵など。
写真と絵画について考えさせられたりする作品。
江戸時代の掛け軸で、表装まで描いている田中訥言《雪月花図》などは
江戸時代の遊び心を感じさせられました。
昔の人が目に見えないものをどのように表現したかということで、
狛犬などの民俗学的なものの展示もあって興味深かった。

そして、宮島達男《Opposite Circles》
これ、岐阜県美術館の田口コレクション展で見てるんだけど
(その時にちょっとパソコンで遊んで作ってみたもの)
number2.gif
数字がランダムに出てるんだとばかり思ってました。
鑑賞ガイドのQ6に、この作品の秘密はどれ?って、
1.一時間に一度、全てが1になる 2.数字の0が絶対に出ない 3.実は学芸員が裏で全てコントロールしている
答えは2だろうってのはわかりますが、答えのところに、
この作品、一見、数字の羅列に見えますが、1から99までの数字を順にカウントしています。そして100に達すると
となりの列が1からカウントを始めるので0は並びません。サークル自体も9つです。

その答えを知って見ると、数字の列で変化しているのはその一部で、
確かに1から順に9まで出ています。でも99まで?ってのは
よくわからなかったんですが‥‥
まぁなんか、何かの魔法の呪文のようにも見えてきます。

広い部屋に置かれた、
ジャウメ・プレンサの12のガラス瓶に刻まれた文字の作品が面白かった!
それぞれ台の上に置かれた透明なガラス瓶。表面に文字が刻まれています。
Who are you? とか What are you going? とか。簡単な英文の問いなんだけど、
ちょっとドキッとする。ガラス瓶の形がそれぞれ違っているのも、
質問との関連を考えたりして面白かった。

そして、半透明の白い樹脂に蜂が閉じ込められた作品群も面白かった。
ジャウメ・プレンサもこの作品も三重県美術館の所蔵。面白い作品持ってるなって。

「魔術/美術」展チラシ裏面
ARTasMAGIC-2.jpg

企画展を出て、所蔵作品展の部屋へ。
展示室4では、フェルナン・レジェの新収蔵作品が飾られていました。
ふーん、レジェね。あんまりこのあたりの絵は‥‥って見たんですが、
なんか‥‥これ、いいじゃないですか!ちょっとなつかしい〈モダン〉?って感じ。

そして、いつも新しい試みの作家を紹介している展示室6は、
「吉本直子――鼓動の庭」として、
着古した白いシャツを固めて壁のようにした素敵な空間となっていました。
一見、白いタイルのように見えたんですが、近づくとシャツのボタンや、
縫い目、かすかに黄ばんだところなどが見え、これらのシャツを着ていた
人のことなども思ったりします。
白い空間の中のイスに座ると、教会の中にでもいるような雰囲気でよかった。

ホールにはシャツの袖が立体的にからみあっているような作品もあって
面白かったです。

6月5日(火)の中日新聞朝刊の記事にもありましたが、この展示、
学芸員が注目作家を発掘するARCH(アーチ)というプロジェクトの第一弾だそう。
アーチで取り上げる作家はおおむね40歳までの若手から中堅。
今年度は「館長や副館長を含む各学芸員が持ち寄った候補15人をもとに議論を重ね、『県美術館で紹介するのにふさわしい』5人を選んだ
とのこと。来年度以降も継続されるようで、
現代美術の新しい流れが生まれるかもしれないと楽しみです。

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 0

コメント 2

副館長

愛知県美術館にご来館いただきありがとうございました。また、ブログで丁寧に魔術/美術展をご紹介いただき感謝いたします。美術作品は単に美術史的だけでなく、いろいろな文脈で見ていくと新しい発見があることが少しでも感じていただけたら嬉しく思います。次回の企画展はマックス・エルンスト展です。こちらもシュールレアリストとしての位置づけから別の視点で捉えた展覧会企画となっています。ぜひ来訪をお待ちしております。
by 副館長 (2012-06-15 10:34) 

しーちゃん

副館長さん、ブログ読んでくださって光栄です。コメントありがとうございました。「魔術/美術」展、見たことのあるアートも新しい視点から見ることができて楽しかったです。また所蔵作品展も展示室6の新しい試みから木村定三の渋いコレクションまでいろいろ楽しめておトク(?)なカンジ。HPや公式ブログも楽しみにしております。
by しーちゃん (2012-06-16 13:30) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました