ヤマザキマザック美術館「聖なる風景」展 [美術]
1月24日(日)、ヤマザキマザック美術館へ行きました。
「ルネサンスからルオーまで
聖なる風景」という企画展をやっています。
ヤマザキマザック美術館は私のお気に入りの美術館で、
企画展毎に行っていますが、今回もとても良かった!!
西洋美術においては、宗教画はとても重要ですよね。
日本では西洋絵画というと、印象派以降が取り上げられることが多くて、
それ以前の古い絵画を所蔵している美術館はあまりないように思ってました。
(なので、ロココ絵画が見られるこのヤマザキマザック美術館、
私のお気に入りなんですが)
でも、今回の企画展に並んでいる宗教画、
岡崎市美術博物館と三重県立美術館の所蔵作品だってのに驚きました。
わりと近いところに、こんなすごいコレクションがあったなんて!!と。
今回の企画展の入館料、一般1,000円・18歳未満500円と、
コレクション展と同じ値段でお値打ちです。
(地下鉄のドニチエコきっぷや一日乗車券等で入館料割引があります)
エレベータで5階に行くと、無料の音声ガイドを貸してくれます。
最初の展示のボナール《薔薇色のローブを着た女》―ヤマザキマザック美術館の
創立者・山崎照幸が最初にコレクションした作品だそう―から、
ヴァトー《夏の木陰》が拡大鏡で見られる最初の部屋、
ブーシェやナティエ、ラルジリエール、ヴィジェ・ルブラン等
優美なロココ絵画が、どこかの宮殿にでも迷い込んだような
豪華な雰囲気の部屋で見られる、私のお気に入りの赤い壁紙の部屋
(以前撮影したロココ部屋の画像)
かなりの所蔵作品が撮影OKなのも驚きです(動画とフラッシュはNG)
そして、クールベやモネ、モーリス・ドニやヴィヤール等の
黄色い壁紙の部屋は以前来た時とほとんど変わりませんでしたが、
音声ガイドの説明がきめ細かくなっていたような?
そして、青い壁紙の部屋が、今回の企画「聖なる風景」の展示になっていました。
岡崎市美術博物館所蔵の17世紀スペインの画家による《受胎告知》
ちょっと素朴とも思えるような古典的で心落ち着く絵
‥‥あくまで私の印象だけど、大正ロマンに通じるようなレトロな甘さを感じました。
ニコラ=ベルナール・レピシエ《聖母マリアの御訪問》1769年
ドラマの一場面を見ているような、ちょっと大げさやな身振りや、
マリアの可愛らしさなど、見ていて飽きない優美な絵ですね。
レオナルト・ブラーメル《キリストの割礼》1631年
光が差し込む、なんか廃墟のようにも見える神殿の中で、
幼子イエスの割礼が行われている場面だそうだけど、
手前の金の装飾が豪華なガラス(?)壺とか、画面がとても緻密なカンジ。
レオナルト・ブラーメルは、フェルメールの師と言われる画家だそう。
右上からの劇的な光はレンブラントを思わせると。
伝フランチェスコ・トレヴィザーニ《キリストの聖杯拝受》17世紀
おびえたような表情の哀れっぽいキリストがなんか印象的でした。
母性本能をくすぐられるような‥‥って言ったら怒られるかな?
ジローラモ・ディ・ベンヴェヌート《天使に支えられるキリスト》1505-10年頃
ルネサンス期の典雅な絵。ちょっと装飾的というかパターン化されたというか。
輪郭線があるんですね。
フランチェスコ・ツッカレリ《キリストの昇天》1761年
キリストが光に包まれて宙に浮かんでいる‥‥いかにも宗教画ってイメージの絵
すごい作品が並ぶこの部屋でも、ひときわ迫力があるのが、
バルトロメ・エステバン・ムリリョ《アレクサンドリアの聖カタリナ》1645-50年頃
この部屋で唯一私が名前を知っていた画家、スペイン・バロック絵画の巨匠
ムリーリョのかなり大きな絵で、チラシ表面に使われていますが、
実際に見ると、重厚な画面の迫力に驚きます。三重県立美術館所蔵で、
この作品を貸し出したのは、海外・国内合わせて二度限りという秘蔵の絵だそう。
そして、岡崎市美術博物館で秘蔵されてきた《聖テレサの法悦》という
謎の宗教画が、この展覧会を機に本格的な調査が行われ、
18世紀イタリアの画家によって描かれたことが推察されたそう。
その調査内容がパネル展示されていました。
全ての絵に音声ガイドの説明があるのも良かったです。
宗教画を見るには、やはりキリスト教の知識が必用ですからね。
次の部屋は、ルオーの版画集《ミセレーレ》と《受難》からの展示。
《ミセレーレ》は岐阜県美術館も所蔵していて(平成25年新収蔵作品)
ルオーの版画の深い黒と太い線がとても迫力があって、それまで
あまりいいと思わなかったルオーだけど、これスゴイ!!って。
でも、ケース入り一式で展示されていたので、一部しか見ていなかったんです。
この記事にちょっと感想書いてました
岐阜県美術館「彫刻のさんぽ道」(所蔵品展)その2
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-05-20
ここに展示されていたのは岡崎市美術博物館所蔵のもの。
《ミセレーレ》とは、「主よ憐みたまえ」という意味で、
父親の死と第一次世界大戦を経験したルオーが、
戦争の悲惨さと信仰に救いを求める心を力強く表現したものだそう。
19~20世紀の画家・ルオーがキリストを描く根底に
戦争の体験があったんだなぁと、ルオーの絵をより深く
見ることができるようになりました。
《受難(パッション)》こちらは三重県立美術館所蔵の版画集
カラーなんですね。ステンドグラス職人だったというルオーの
経歴がわかります。
ヤマザキマザック美術館所蔵のルオーの油絵《キリストと漁師》も
展示されていました。
5階からエレベータで4階へ。今回は右回りで、
ポール・アレクサンドル・デュマのナナカマドのモチーフがちらばめられた
食堂用家具一式の部屋、アールヌーボーの家具‥‥このあたりは以前とほとんど同じ
こちらの記事に写真あります
ヤマザキマザック美術館「動く絵」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-02-06
アール・ヌーボーのガラスが、今回は四季それぞれの絵画と共に
展示されていたのが素敵でした。
例えば、春のコーナーでは、
ルイ・ヴァルタ――フォーヴィズムの先駆けとなった画家だそう――の
《アネモネ》と並んで、
スミレなどの春の自然をモチーフにしたガラスが展示されていました。
ガレ《においあらせいとう文花器》
夏のコーナーでは、涼し気な水辺の風景にガレの朝顔文ランプとか、
秋のコーナーの絵気に入りました!
春のコーナーの《アネモネ》と同じルイ・ヴァルタの《秋の花》と
ドーム《葡萄文花器》やティファニー《蜻蛉文ランプ》が並んでいます。
冬のコーナーの絵はシダネル!! ヤマザキマザック美術館シダネル持ってたんだ!
アンリ・ル・シダネル《雪の下の藁ぶき屋根》
雪景色なのに、なんかあったかい雰囲気でいいなぁー
4階は常設展示だから‥‥って、サラッと見て行こうと思ったら、
思わぬ素敵な展示にテンションが上がりました。
ショップで、今回の企画展の図録はないのねーって、残念に思っていたら、
いくつかの参考図書の中に、
岡崎市美術博物館の開館特別企画展「天使と天女」の図録が並んでいました。
1996年7月6日、岡崎市美術博物館の開館を記念して作られた図録で、
展示作品以外の作品や図版も加えて編集してあってすごく面白い!!
そっかー、西の天使は有翼だけど、東の天女は羽衣ですよね。
3,500円という値段にちょっと迷ったけど、買ってしまいました。
もちろん、今回展示されていた岡崎市美術博物館の作品も載ってます。
裏表紙は展示されていた《受胎告知》の天使の部分ですね!
ゆったりしすぎて、ティールームの営業時間が終わってしまっていたのが残念だったー
外は冷たい風が吹く寒い日でした。《キリストの昇天》を使った垂れ幕
風でなびいてうまく撮れませんでした。
「聖なる風景」展は、2月28日(日)までです。
ヤマザキマザック美術館のHP: http://www.mazak-art.com
過去記事
ヤマザキマザック美術館: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-01-24
ヤマザキマザック美術館「ロココの雅」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-08-28
ヤマザキマザック美術館「エマイユの煌き」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2012-08-09
ヤマザキマザック美術館「フランスの美しい風景」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-05-29
ヤマザキマザック美術館「森の夢」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-07-28
ヤマザキマザック美術館「動く絵」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-02-06
ヤマザキマザック美術館「ポール・デルヴォーとベルギー近代絵画」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-09-10
ヤマザキマザック美術館「名古屋ひつじ物語」: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-01-15
ヤマザキマザック美術館「世界に挑んだ明治の美: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-06-16
「ルネサンスからルオーまで
聖なる風景」という企画展をやっています。
ヤマザキマザック美術館は私のお気に入りの美術館で、
企画展毎に行っていますが、今回もとても良かった!!
西洋美術においては、宗教画はとても重要ですよね。
日本では西洋絵画というと、印象派以降が取り上げられることが多くて、
それ以前の古い絵画を所蔵している美術館はあまりないように思ってました。
(なので、ロココ絵画が見られるこのヤマザキマザック美術館、
私のお気に入りなんですが)
でも、今回の企画展に並んでいる宗教画、
岡崎市美術博物館と三重県立美術館の所蔵作品だってのに驚きました。
わりと近いところに、こんなすごいコレクションがあったなんて!!と。
今回の企画展の入館料、一般1,000円・18歳未満500円と、
コレクション展と同じ値段でお値打ちです。
(地下鉄のドニチエコきっぷや一日乗車券等で入館料割引があります)
エレベータで5階に行くと、無料の音声ガイドを貸してくれます。
最初の展示のボナール《薔薇色のローブを着た女》―ヤマザキマザック美術館の
創立者・山崎照幸が最初にコレクションした作品だそう―から、
ヴァトー《夏の木陰》が拡大鏡で見られる最初の部屋、
ブーシェやナティエ、ラルジリエール、ヴィジェ・ルブラン等
優美なロココ絵画が、どこかの宮殿にでも迷い込んだような
豪華な雰囲気の部屋で見られる、私のお気に入りの赤い壁紙の部屋
(以前撮影したロココ部屋の画像)
かなりの所蔵作品が撮影OKなのも驚きです(動画とフラッシュはNG)
そして、クールベやモネ、モーリス・ドニやヴィヤール等の
黄色い壁紙の部屋は以前来た時とほとんど変わりませんでしたが、
音声ガイドの説明がきめ細かくなっていたような?
そして、青い壁紙の部屋が、今回の企画「聖なる風景」の展示になっていました。
岡崎市美術博物館所蔵の17世紀スペインの画家による《受胎告知》
ちょっと素朴とも思えるような古典的で心落ち着く絵
‥‥あくまで私の印象だけど、大正ロマンに通じるようなレトロな甘さを感じました。
ニコラ=ベルナール・レピシエ《聖母マリアの御訪問》1769年
ドラマの一場面を見ているような、ちょっと大げさやな身振りや、
マリアの可愛らしさなど、見ていて飽きない優美な絵ですね。
レオナルト・ブラーメル《キリストの割礼》1631年
光が差し込む、なんか廃墟のようにも見える神殿の中で、
幼子イエスの割礼が行われている場面だそうだけど、
手前の金の装飾が豪華なガラス(?)壺とか、画面がとても緻密なカンジ。
レオナルト・ブラーメルは、フェルメールの師と言われる画家だそう。
右上からの劇的な光はレンブラントを思わせると。
伝フランチェスコ・トレヴィザーニ《キリストの聖杯拝受》17世紀
おびえたような表情の哀れっぽいキリストがなんか印象的でした。
母性本能をくすぐられるような‥‥って言ったら怒られるかな?
ジローラモ・ディ・ベンヴェヌート《天使に支えられるキリスト》1505-10年頃
ルネサンス期の典雅な絵。ちょっと装飾的というかパターン化されたというか。
輪郭線があるんですね。
フランチェスコ・ツッカレリ《キリストの昇天》1761年
キリストが光に包まれて宙に浮かんでいる‥‥いかにも宗教画ってイメージの絵
すごい作品が並ぶこの部屋でも、ひときわ迫力があるのが、
バルトロメ・エステバン・ムリリョ《アレクサンドリアの聖カタリナ》1645-50年頃
この部屋で唯一私が名前を知っていた画家、スペイン・バロック絵画の巨匠
ムリーリョのかなり大きな絵で、チラシ表面に使われていますが、
実際に見ると、重厚な画面の迫力に驚きます。三重県立美術館所蔵で、
この作品を貸し出したのは、海外・国内合わせて二度限りという秘蔵の絵だそう。
そして、岡崎市美術博物館で秘蔵されてきた《聖テレサの法悦》という
謎の宗教画が、この展覧会を機に本格的な調査が行われ、
18世紀イタリアの画家によって描かれたことが推察されたそう。
その調査内容がパネル展示されていました。
全ての絵に音声ガイドの説明があるのも良かったです。
宗教画を見るには、やはりキリスト教の知識が必用ですからね。
次の部屋は、ルオーの版画集《ミセレーレ》と《受難》からの展示。
《ミセレーレ》は岐阜県美術館も所蔵していて(平成25年新収蔵作品)
ルオーの版画の深い黒と太い線がとても迫力があって、それまで
あまりいいと思わなかったルオーだけど、これスゴイ!!って。
でも、ケース入り一式で展示されていたので、一部しか見ていなかったんです。
この記事にちょっと感想書いてました
岐阜県美術館「彫刻のさんぽ道」(所蔵品展)その2
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-05-20
ここに展示されていたのは岡崎市美術博物館所蔵のもの。
《ミセレーレ》とは、「主よ憐みたまえ」という意味で、
父親の死と第一次世界大戦を経験したルオーが、
戦争の悲惨さと信仰に救いを求める心を力強く表現したものだそう。
19~20世紀の画家・ルオーがキリストを描く根底に
戦争の体験があったんだなぁと、ルオーの絵をより深く
見ることができるようになりました。
《受難(パッション)》こちらは三重県立美術館所蔵の版画集
カラーなんですね。ステンドグラス職人だったというルオーの
経歴がわかります。
ヤマザキマザック美術館所蔵のルオーの油絵《キリストと漁師》も
展示されていました。
5階からエレベータで4階へ。今回は右回りで、
ポール・アレクサンドル・デュマのナナカマドのモチーフがちらばめられた
食堂用家具一式の部屋、アールヌーボーの家具‥‥このあたりは以前とほとんど同じ
こちらの記事に写真あります
ヤマザキマザック美術館「動く絵」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-02-06
アール・ヌーボーのガラスが、今回は四季それぞれの絵画と共に
展示されていたのが素敵でした。
例えば、春のコーナーでは、
ルイ・ヴァルタ――フォーヴィズムの先駆けとなった画家だそう――の
《アネモネ》と並んで、
スミレなどの春の自然をモチーフにしたガラスが展示されていました。
ガレ《においあらせいとう文花器》
夏のコーナーでは、涼し気な水辺の風景にガレの朝顔文ランプとか、
秋のコーナーの絵気に入りました!
春のコーナーの《アネモネ》と同じルイ・ヴァルタの《秋の花》と
ドーム《葡萄文花器》やティファニー《蜻蛉文ランプ》が並んでいます。
冬のコーナーの絵はシダネル!! ヤマザキマザック美術館シダネル持ってたんだ!
アンリ・ル・シダネル《雪の下の藁ぶき屋根》
雪景色なのに、なんかあったかい雰囲気でいいなぁー
4階は常設展示だから‥‥って、サラッと見て行こうと思ったら、
思わぬ素敵な展示にテンションが上がりました。
ショップで、今回の企画展の図録はないのねーって、残念に思っていたら、
いくつかの参考図書の中に、
岡崎市美術博物館の開館特別企画展「天使と天女」の図録が並んでいました。
1996年7月6日、岡崎市美術博物館の開館を記念して作られた図録で、
展示作品以外の作品や図版も加えて編集してあってすごく面白い!!
そっかー、西の天使は有翼だけど、東の天女は羽衣ですよね。
3,500円という値段にちょっと迷ったけど、買ってしまいました。
もちろん、今回展示されていた岡崎市美術博物館の作品も載ってます。
裏表紙は展示されていた《受胎告知》の天使の部分ですね!
ゆったりしすぎて、ティールームの営業時間が終わってしまっていたのが残念だったー
外は冷たい風が吹く寒い日でした。《キリストの昇天》を使った垂れ幕
風でなびいてうまく撮れませんでした。
「聖なる風景」展は、2月28日(日)までです。
ヤマザキマザック美術館のHP: http://www.mazak-art.com
過去記事
ヤマザキマザック美術館: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-01-24
ヤマザキマザック美術館「ロココの雅」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2011-08-28
ヤマザキマザック美術館「エマイユの煌き」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2012-08-09
ヤマザキマザック美術館「フランスの美しい風景」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-05-29
ヤマザキマザック美術館「森の夢」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-07-28
ヤマザキマザック美術館「動く絵」展: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-02-06
ヤマザキマザック美術館「ポール・デルヴォーとベルギー近代絵画」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-09-10
ヤマザキマザック美術館「名古屋ひつじ物語」: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-01-15
ヤマザキマザック美術館「世界に挑んだ明治の美: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-06-16
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