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『この星のぬくもり――自閉症児のみつめる世界』 [本]

最近読んで感動というか、読後感が重いというか、いろいろ考えてしまった本
(コミックですが、本のカテゴリーに入れます)

曽根登美子
『この星のぬくもり』

この星のぬくもり―自閉症児のみつめる世界 (たまひよコミックス)

この星のぬくもり―自閉症児のみつめる世界 (たまひよコミックス)

  • 作者: 曽根 富美子
  • 出版社/メーカー: ベネッセコーポレーション
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



副題は「自閉症児のみつめる世界」
自閉症者・森口奈緒美さんとお母様・尚子さんのお話を参考に作られたフィクションです。

‥‥しかし、感想をブログにアップするかどうか、ちょっと迷ってしまったのは‥‥
私がこの本で感動したことを書くには、息子のことを書かなくてはいけないから。
――実は、息子は今、ニートなんですよ。
大学を卒業して、4月から正社員となったんですが、色々うまくいかなかったようで
‥‥1ヵ月程で辞めてしまいました。

だいたい私の息子は、人間関係に問題があるというか‥‥ずっと友人もいないようですし、
とにかく動作がのろく、不器用です。

そんな性格なので、当然イジメにも遭ったようで、中学校の時に不登校もやりました。
私はずっと、この子はなんかヘン、ちょっとおかしいのではないかと思ってきました。
なので、ADHD(注意欠陥・多動性障害)とか学習障害についての本も読んだりもしてきました。
でも、そういう本は難しくて、なかなか全部を読み通すことができませんでしたし、
あまり理解できませんでした。

この本は、マンガだけあって、自閉症を持って生きるとはどういうことなのかというのを、
登場人物に感情移入して、すんなり読むことができました。
そして、自閉症児を持った親の大変さというのが、とてもよくわかりました。
我が子にどんなに愛情を持って接しても、自閉症の子供は、「人と物の区別ができず」
「母親の愛情さえも 理解することは困難です」と全く応えてもらえない状態。
そんな子供を育てるには、普通の子供の何倍もの負担がかかるのに、周囲からは「育て方が悪い」と、批判を浴びなくてはならない‥‥そんな母親の心を思って泣けました。

自閉症‥‥この言葉には、自分の意思で人との接触を断ってしまうようなカンジがありますね。
引きこもり=自閉症みたいな。

「自閉症はその子供たちが誕生か幼児の頃に受けた とらえがたい 脳の機能障害と考えられ
 原因は明確にわかってはいない。
(遺伝や親の年齢や 育て方との関係は 認められていない)

「自閉症児は特に 人間関係において
 正常な社会的発育ができない状態を指し、
 約3人に2人の割合で 知的障害を伴っている」とのことですが、

この本の主人公・中村愛里は自閉症だが、IQ上知的障害とみなされない高機能自閉症
「ハイファンクション」 なので、ずっと普通学級に通っています。

「『ハイファンクション』は、普通かそれ以上の勉強ができたり、優秀な能力を発揮したりするので、
 かえって『自閉症』を抱えている困難をわかってもらえず、
『わがまま』『自分勝手』『躾がなっていない』などと誤解されがち」

愛里ちゃんも、小学校、中学校、高校といじめられ続け、とうとう高校を中退して、
「それから長い時間 私は家に引きこもった」

「協調性」ということを特に求められる日本の社会や学校において、
愛里ちゃんのような自閉症児がイジメにあう可能性が多いことは容易に想像できます。

クラスのみんなから言われます。
「すぐにカンシャクを起こすから怖いよ」
「急に私たちの輪の中に入って 関係ないことを ずっとしゃべったりするのはやめて下さーい」
「愛里ちゃんがいるだけで 集団行動がみだれます」
「愛里さんはわがままです」
「みんなに嫌われて当然だよ」

愛里ちゃんは必死で、カンシャクを起こすのを我慢し、みんなに合わせようと努力します。

でも‥‥「集団でやらなければならないこと」に真面目に取り組んでいるのに、
なぜかいつも「集団」から浮き上がってしまう。

自閉症の人は“空気が読めない” 本音と建前の使い分けができない。
例えば、お祝のスピーチにそぐわないことを言って、周囲から非難されても、
本人は、正しいことを言ったのに、なぜ歓迎されないか全く理解できないとのこと。

「自閉症の子供は 他人がみているものは 理解できるのですが
 何を考えているか ということを おしはかることが困難なのです」

なので簡単にだまされたりもする。相手の心の裏側(複雑な感情)がみえないから。

愛里ちゃんは
「幼稚園に通う頃になっても 私は人の顔がわからず
 せいぜい大人と子供の区別がつくぐらいだった。」

小学生になってもクラスのともだちの見分けがつかない。
「私は未だ“トモダチ”の顔の表情が読み取れず
 目・鼻・口のその時の違いを一つ一つ絵にして
 まる暗記して コミュニケーションに役立てようとした」

「クラスメート全員の顔の見分けがつくようになったのは
 小学校6年生になった頃だった」 とのこと。

ウチの息子も、もしかしてクラスメイトの顔の見分けがついてなかったんじゃないかと思います。
クラスメイトの名前とか、先生の名前もほとんど覚えてないみたいなんですよ。

まぁ、実は私も顔の見分けについては苦手で、スターの顔とかもあまりわからないのです。
私がドラマや映画にイマイチのめりこめないのは、このあたりも関係しているかと思うのですが。
(登場人物がごっちゃになっちゃうんです。その点、アニメは“記号的”なのでいいのですが)
パート先でも、何回も来て下さるようなお客様がわからないので、よく怒られています。


しかし、この本を読んで感じたのは、
「息子はこの愛里ちゃんほどひどくはないが、愛里ちゃんほど頭はよくない‥‥」

なにより、息子は多動ではないし、パニックなども起こさなかったので、育てるのはラクでした。
愛里ちゃんの母親の苦労には本当に大変だなぁーと同情します。
愛里ちゃんがパニックを起こすのは、
「どうして 決められた場所に決められた物がないの!?」と「ワタシの世界が壊れる」時、
なので、お店の陳列が変わっていたり、部屋に見慣れないモノがあったりすると大暴れしたりする。

あぁ、こういう「こだわり」って、あるみたいですね。
パート先には時々近くの授産施設の子(肉体的には成人なんですが)が時々お客様で来てくれるんですが、なかなか注文が厳しいんですよね。ショーケースが変わっていたりすると「これなに?これなに?」と、やたらうるさくて、うっとおしがられているんですが、これは、脳の何かの機能障害のせいなんでしょうか?

でも、この本でも、はたして息子は自閉症なのかどうかは、わかりませんでした。
どこからが自閉症で、どこからが正常なのか、
(私についても、対人的な事はどうも苦手とか、人の顔の区別がつかないことなど、
 このマンガを読んでいて、自分も自閉症的な傾向があるのかなぁと思ったりもしましたし)
一口に自閉症と言っても、色々な症状があり、様々な子供がいるので、
ネットなどで少し調べても、専門家でも判断が分かれたりするようですね。
最近よく聞くようになった「アスペルガー症候群」は「知的障害がない自閉症」でいいのか、
自閉症と注意欠陥・多動性障害とか学習障害とはどう違うのかとか、
これから調べてみたいと思います。
脳の機能障害と、性格とか個性といったことについても考えてしまいました。

そして、何より知りたい、息子にこれからどう接していったらいいかということも‥‥

この本のモデルとなった森口奈緒美さんがあとがきで書いています。
「今までの自閉症児教育の一番の問題点は、とかく症児の社会性や協調性の訓練だけが強調され続け、本人の長所や才能を伸ばす教育が、あまりにも疎かにされてきた事だと思います。」

‥‥確かに、日本の普通の学校教育においては、自閉症児は多分いじめに遭うと思われ、
無駄な努力をした挙句、かえって引きこもりになってしまったりする結果になってしまうかもしれない。

でも、ある程度は集団生活での訓練というものは必要ではないかと思うし、
森口さんは現在は執筆活動などをされる程の才能があるのでいいし、
切り絵画家や彫刻家、家具職人として成功している自閉症の人を紹介されていたが、
自閉症なら何か特別な才能があるわけではないでしょう。「長所や才能を伸ばす教育」と言われてもねぇ‥‥

これなら人には負けないとか、寝食を忘れて熱中するほどのものがあれば、それを生かした仕事がないかと思うのですがねぇ。ずっとパソコンの前でネットやってます(2チャンネルとか) この不況で、息子のように不器用で社会性もない者には、なかなかバイトもみつからないんですよねー。

家にいるのなら、掃除とかの家事をさせたいのですが‥‥ものすごく不器用なのと、私に忍耐力がないのとで、なかなかさせられないんですよ。例えば、洗濯ものをたたむというのも、何度も見本を見せているのに、そのとおりにたたむというのができないんですよ。別に難しいたたみ方をさせているわけではないんです。タオルをたたむことさえ、時間がかかった挙句、きちんとできてないんです。それも言わないとやらない。掃除も、見ている間はものすごくゆっくり手を動かしているんですが、「じゃ、あとは頼むね」と私がいなくなると、もうそれまでなんですよね。こんな仕事はイヤだと反抗しているわけではないんです。
つい「なんでこんな簡単なことができないのッ!」と声を荒げてヒステリックに怒ってしまいますが、「なぜできないのか」と本人が一番思っているのかなぁと、後で反省したりするんですけどね。

あぁ、本の感想から、最後はグチになってしまいました。まとまりなく長くてすみません。
‥‥ブログにアップしていいかなぁ。

でも、この本、今まで自閉症に興味がなかった人には自閉症についてわかりやすく書かれているし、
身近に自閉症児がいる方には、なぜ自閉症児が「ヘン」な行動をとってしまうのかわかりますし、
自閉症で苦しんでいる本人には、ずいぶん救いになるのではないかと思います。

平成9年(1997年)出版の本です。私はたまたま図書館の「マンガ」の棚で見つけました。
もし図書館等でありましたら、ぜひ読んでみてください。

2007年に出版された文庫版もあるようですね。

この星のぬくもり―自閉症児のみつめる世界

この星のぬくもり―自閉症児のみつめる世界

  • 作者: 曾根 富美子
  • 出版社/メーカー: ぶんか社
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 文庫



タグ:自閉症
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コメント 9

神奈川のしーちゃん

お久しぶりです。
なかなか難しい問題だと思います。
自閉症であるかどうか、これからどう対応したらいいのか、やはり、専門医に相談するのが1番いいと思いますが…
あと、障害児育児ランキング村をみると、いろいろなケースの方(お子さんとか、本人が障害を持ってる)のブログがあるので、参考になるかもしれませんよ。
私の友達もお子さんが自閉症なので、ちょっと気になって見てましたが、ケースはホントに人それぞれです。
でも、ご本人にあった指導法で、きっと道は開けますよ。
しーちゃん、元気だしてガンバ!
by 神奈川のしーちゃん (2009-07-28 22:41) 

しーちゃん

神奈川のしーちゃんさん、コメントありがとうございます。障害児育児ランキング村、あ、そういうのがあるんだと、見てみました。皆さんそれぞれ苦労していらっしゃるんだなぁと。こういうのを読んでいると、息子はこの子とは違うけど、この子のようなことはあったなぁ、とか、参考になりますし、なにより、我が家だけじゃないんだと、ちょっと安心(?)するような気持ちになります。
ただねぇ‥‥専門医は、不登校の時にちょっと相談したんですけど、なんかちょっと不信感というか‥‥ まぁ、今はジンチャレの人なども対応してくれているようですし、あまり追い詰めないように、でも引きこもってしまわないように、見守っていきたいと。ありがとうございました。
by しーちゃん (2009-07-29 23:12) 

マアカ

大人になってから発達障害に気がつく人はたくさんいます。
ご心配でしたら、ぜひ受診されることをお勧めいたします。
どのような病院を受診したらいいかは、各市役所の障害福祉関係の部署で教えていただけると思います。
なんで出来ないんだろうって悩むより、これだから出来ないんだ、こうすればいいんだって分かった方が本人様にとってもずっと楽だと思います。
自閉傾向及び重度の知的障害を持つ子の母でした~。

by マアカ (2009-07-31 07:04) 

スー

世の中には、いろいろな仕事があるので、
単純な動作の繰り返しで、それほど人に合わなくとも済む、
ような仕事もあると思います。
あきらめず、しかし、思いつめず、
がんばって探し続ければ、きっと受け入れくれるひとや仕事が
あると、わたしは信じてます。

by スー (2009-07-31 16:43) 

しーちゃん

マアカさん、コメントありがとうございます。障害児を育てていらっしゃる方の苦労というのは並大抵ではないだろうとお察しします。ウチの息子は、ぼさっとしていることはあっても、問題行動とかはなかったので、今まで、なんかヘン‥‥と思いつつ、特に何も対処せずにここまできてしまいました。この記事を書いて、貴重なアドバイスをいただき、やはり専門家にもう一度相談してみようかと思っているところです。
by しーちゃん (2009-07-31 19:54) 

しーちゃん

スーさん、nice! & コメントありがとうございます。息子の場合、例えば、あるゲームについてとか、ものすごく狭い範囲で、マニアックな知識があったりして、ピタッとハマると、滔滔と知識を披露してくれたりするんです(ただ、聞いているこちらのことは全く考慮しない)そんな、息子にピタッとハマった仕事が見つかれば一番幸せなんですけどね。
by しーちゃん (2009-07-31 20:03) 

春分

子供たちの社会を見てると、多数派こそが異常な印象があります。違ったものを神経質に見つけ出し、皆で処理してしまうような怖さがあります。
自閉症やアスペルガーについて(これらは別と思うんですが私は)ずいぶん知見も増え一般の理解も進んでいるようですし(私は門外漢ですけども)、かつてよりはいい時代なのかと思います。ですが、それにしても何倍も苦労することは違いないのでしょうね。
うちの子たちも大丈夫かなー。苦労して、いろいろ得たことはあるようだし、変に個性のない子じゃなくてとてもよかったけど。ゲーム好きとかマンガ好きになってしまったのは親の育て方に問題があったかと私も反省するんですけどもね。
まじめにお考えなのに、軽い返しですみませんね。
本は、うーん、読まないかも。絵があまり好きではないから。

by 春分 (2009-08-13 15:00) 

しーちゃん

春分さん、nice! & コメントありがとうございます。最近は、うつ病とか、自閉症などにも、一般の理解が進んだように思います。私ももっと勉強しようと思っているところです。息子の育児をしている頃は、知能に問題がないのに、なんでこの子はできないんだろうというのを、本人の努力が足りないと責めたり、私の育て方に問題があったと(実際あるんでしょうが)悩むばかりでした。こうだからできないんだとわかると、対処法も少しずつわかってきますよね。
曽根登美子さんのマンガは初めて読みました。(私はこの本、マンガとして読んだわけではなかったので)絵に魅力はあまり感じませんでしたが、読みやすくまとめられていました。
by しーちゃん (2009-08-14 11:22) 

グッチ バッグ

突然訪問します失礼しました。あなたのブログはとてもすばらしいです、本当に感心しました!
by グッチ バッグ (2013-03-11 07:52) 

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