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名古屋ボストン美術館「永遠に花咲く庭」展 [美術]

1月27日(水)は久しぶりに仕事で名古屋まで行きましたので、
その後、いつものように美術館へ。

愛知県美術館の「大ローマ展」も捨てがたかったのですが、
名古屋ボストン美術館の「永遠(とわ)に花咲く庭」展へ行きました。
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しっかり、名古屋ボストン美術館のHPから、割引券もプリントアウトして行きました。
(一般1,200円の入館料が100円引きの1,100円になりました。
 65歳以上のシルバー、学生は900円の入館料が100円引きの800円に(証明書提示)
 中学生以下は無料です。)

サブタイトルが「17-19世紀の西洋植物画」ということで、
ルドゥーテの『バラ図譜』のバラの絵(チラシ表面に使われているのがその1枚です)をはじめ、
114点の植物画が展示されています。

花の絵がいっぱい見れそうで楽しみーって、軽い気持ちで行ったんです。
チラシの裏面
boston2.jpg

もちろん、ルドゥーテのバラの絵は美しかったですし、椿の絵や、珍しい南米の植物、
花や実の構造、そして虫までも細かく観察されて描かれた絵は、アートとして鑑賞する他、
描かれた花への興味という点でも楽しめました。が、それらの歴史的な背景、
例えば植物学が植物画へ与えた影響――植物学は17世紀末から18世紀初めにかけて急速に発展し、ロンドンとニュルンベルクが植物学の活動の中心地となりました。植民地化によって世界各地から多様な植物がヨーロッパ大陸にもたらされると、植物学は流行の学問となり、18世紀半ばには、リンネによって植物の分類体系が整えられました。植物画では植物の全体から花自体に目が向けられ、芸術的かつ科学的な植物画が生みだされました。
そして、印刷技術の発達という面からも、いろいろ勉強になりました。
展示にも、そんな歴史的背景の説明がついていましたが、特に5Fのレクチャールームで
上映されていた作品解説のビデオがわかりやすかったです。

ほとんどの植物画が額に入って展示されていましたが、どれも
本として発行されたものだということです。(本の形での展示も3点ほどありました)
なので、全てが版画というか、本として印刷されたものなんです。

当然ですが、現代のようなカラフルな印刷技術もない時代ですから、
彩色はほとんどが手彩色です。(時代が下ってくると多色刷りの作品もありますが)

現代でも、カラー写真を多用した花の図鑑などは結構高価ですが、
当時の書物が、どれほど貴重で高価なものであったか!
印刷物に囲まれた現代からは想像もつかないでしょうね。

これらの書物は、珍しい植物を集めている園芸家、植物学者、画家、版画家が
力を合わせた一大事業だったそうです。

そして、「植物画の黄金時代」と呼ばれた18世紀後半から19世紀前半、
王侯貴族だけでなく豊かな市民の間でも植物画が享受されたとのこと。

例えば、チラシ裏面の真ん中のアマリリスの絵、1824年に発行された
『ロンドン園芸協会紀要』の、アマリリスの1交配種の絵だそうです。
当時のロンドンで、アマリリスの園芸が楽しまれていたんでしょうか。

右下の豪華なツバキの絵は、1819年発行の
『ツバキ属誌―クララ・マリア・ホープによる原画素描図版』の中の絵で、
当時、日本から渡ったツバキが大人気だったそうです。
(小説『椿姫』が出版されたのが1848年)

そして、印刷技術の面から見ると、1713年に発行されたバジル・ベスラー
『アイヒシュテット庭園植物誌』のヒマワリの絵。
当時ヒマワリは植民地の北アメリカから渡ってきたとても珍しい花だったそうです。
いかにも銅版画という、細い線を組み合わせて表現しており、それに後から絵の具を
塗っています。

ルドゥーテのバラの絵などには、輪郭線がなく、花びらの柔らかな質感などが
見事に表現されています。
これは、エングレーヴィングという、凹版画の技法なんだそうです。

凹版画については、エッチング、ドライポイント、メゾチントなどという
技法があることは知っていましたが、
エングレーヴィングという技法の名前は初めて聞きました。
点描で諧調を表現するので、繊細な表現ができるが、技術的に難しいというような
説明があったので、私はてっきりエッチングなどの後にできた技法だと思ったのですが、
ネットで調べると、エングレーヴィングは凹版画の直接法のひとつなので、
腐食作用を利用した間接法のエッチングより成立は早く、鮮明な線が特徴とのことです。
そういわれれば、ヒマワリの絵も技法は「エングレーヴィング」と書かれています。
なので、ルドゥーテの時代、繊細な植物画に用いられたエングレーヴィングの技法は、
特別に発達したもので、熟練した技術者がいたんでしょうね。

そして、19世紀に入ると、石版刷り技法(リトグラフ)が発明されます。
水と油の反発作用を利用した平版画は、画家の描写をそのまま版画にでき、
多色刷りも容易なことから、広く普及していきます。
このリトグラフで刷られているのが
ジョン・フィスク・アレンの『オオオニバス』(1954年)
アメリカの巨大スイレン・オオオニバスの開花の過程が6点の図版で描写されています。
子供が乗っても沈まないほど大きな葉を持つオオオニバス。その花もとても大きく、
たった一晩しか咲かないそうです。その貴重な開花の過程が記録されていて、
興味深く見ました。当時の人の驚きはどんなだったでしょう?

しかし、1839年に写真が発明されると、伝統的な植物画に終止符が打たれたとのこと。
対象を正確に描写するということを考えると、写真にはかなわないんでしょうが、
丹念に描かれた植物画には、写真にはない魅力があると思うのですが‥‥
しかし、趣味としての要素が加わった植物画は、植物を愛する人々の中で今も色あせることなく描かれ続けています。

青字は、名古屋ボストン美術館「永遠に花咲く庭:見どころ」のページより引用しました。
http://www.nagoya-boston.or.jp/exhibition/list/garden-200912/point.html

名古屋ボストン美術館の建物はホテルでもあります。建物の前にあった看板。
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へー、この「永遠に花咲く庭」展の開催期間中、
展示してある絵をモチーフにしたランチをやっているんですね。洒落てますね!
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『ツバキ属誌』をモチーフにしたオードブルに、
『オオオニバス』をモチーフにしたメイン料理(若鶏のミンチと白身魚のムースのコラボ ラザニア風)
デザートがヒマワリをモチーフにした、ショコラのアイスクリーム マンゴー風味
そしてコーヒーか紅茶がついて、1人前3,000円かー。
今の私の経済状態では無理だけど、こんな、目と舌で味わうアート、優雅だなぁ!
ボストンランチについて詳しくはこちらで http://www.grandcourt.co.jp/res_bar/0912-1004sg_boston.html

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たまのママ

ルドゥーテは、私が大好きな画家です。
私が習っているボタニカルアートの大師匠(笑)
バラを描かせたら、この人の右に出る人はいないと思います。
私も数冊持ってます。
ボストンランチもいいですね。。
by たまのママ (2010-01-29 21:41) 

しーちゃん

たまのママさん、コメントありがとうございます。ルドゥーテのバラの絵、優雅で素敵ですね。この展覧会を選んだのは、チラシの絵がかなりの決め手だったんです。もちろんとても素敵でしたが、版画でこんな繊細な表現ができているんだというのは驚きでした。
ボストンランチ、いいですよね!
by しーちゃん (2010-01-31 19:58) 

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