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中村文則『迷宮』 [本]

図書館で借りた中村文則『惑いの森~50ストーリーズ~』を
(感想はこちら: http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2013-01-14 )
返却に行った時に、棚にあったのを見つけて借りてきて読みました。

中村文則『迷宮』

迷宮

迷宮

  • 作者: 中村 文則
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/29
  • メディア: 単行本


発出は「新潮」2012年1月号
中村文則の11冊目の本になるそうです。
デビューして10年だとか。

活字も大きめで、そんなに長い作品でないので、すぐ読めました。
最初の印象はあまり良くなかったです。
ヘンにミステリーっぽくしているのが‥‥
その前に東野圭吾『容疑者Xの献身』と宮部みゆき『模倣犯』を読んでいたので、
うーん、やっぱりミステリーの面白さでは敵わないなーって。

もちろんこの作品、そんなミステリーの「謎」を楽しむものではないのはわかってます。
「僕」の内面のぐちゃぐちゃを読んでいくものなのだと。
でも、その「僕」のぐちゃぐちゃ、なんかイマイチ感情移入できなかったんですよね。

「僕」の中にいた「R」という存在について、著者はあとがきで
昔の僕の中に実際にいた存在だった。今でもいると思う。」って書いてますが、
自分の中にいる別人格、そんな感覚は私もすごくわかります。
私も幼い頃、そんな人格を作っていたような気もする。
それでも主人公のこのぐちゃぐちゃ「あぁ、なんでこんなことするかなぁー」って‥‥

職場のボスに「お前が今抱えている虚無みたいなママゴト」って言われているけど、
どっちかってと、私も(年齢的にも)このボスのような目線で見ちゃってるのかな。
ちょっとしたミスを見つけて社員を辞めさせようとする好きになれない経営者だけど。

本の帯には
僕が、ある理由で、知り合った女性は、一家殺人事件の遺児だった――  その迷宮事件へ、彼女へ、僕は、のめりこんでいく。」とあります。

ミステリー的にはなかなか魅力的な事件ではあります。
迷宮入りとなった殺人事件
密室状態の家で、父と母は刺殺され、兄は殴打されて毒を飲まされて致死。
そして母は衣服を脱がされ、色鮮やかな折鶴で埋まっている。
彼女は部屋で睡眠薬入りのジュースを飲み、生き残る。

平凡な公務員であった父親、不釣合いなほど美しい母親。
父は美しすぎる母がいつか自分から離れていってしまうのではないかという嫉妬に苦しめられ、
全ての出入り口に監視カメラをつけ、母の自転車を壊してしまうほどになる。
母は家の中を執拗に掃除するようになり、兄は少しずつ壊れていく。

でも、この密室殺人事件、長女の告白があるのですが、
謎が全てすっきりと解決しましたって訳でもない。

すべてがぐちゃぐちゃ、すべてが迷宮って印象の作品‥‥

そして、こういう内容だからか、私が好きなこの著者の文体
――キビキビとした緊張感のある文体――が、今回あまり感じられなかったってことも、
この作品、なんだかなーって思った一つの理由。
文章に傍点をつけたり、書体を変えたりするのも、私好きじゃないんです。

昔の作品が良かったってのは、言っても何の役にも立たないってのはわかってますが、
この著者には、ヘンに娯楽的な要素を入れないで欲しいなって思うんですよね。

中村文則の著作リスト
1冊目『銃』(新潮社)2003.3――新潮新人賞受賞作、芥川賞候補作
2冊目『遮光』(新潮社)2004.6――野間文芸新人賞受賞作
3冊目『土の中の子供』(新潮社)2005.7――芥川賞受賞作
4冊目『悪意の手記』(新潮社)2005.8
5冊目『最後の命』(講談社)2007.6
6冊目『何もかも憂鬱な夜に』(集英社)2009.3
7冊目『世界の果て』(文藝春秋)2009.5
8冊目『掏摸(スリ)』(河出書房新社)2009.10――大江健三郎賞受賞作
9冊目『悪と仮面のルール』(講談社)2010.7
10冊目『王国』(河出書房新社)2011.10
11冊目『迷宮』(新潮社)2012.6
12冊目『惑いの森~50ストーリーズ』(イースト・プレス)2012.9

中村文則公式サイト http://www.nakamurafuminori.jp/ を見てまとめました。
本のタイトルのリンクをクリックすると、私の感想記事が開きます。








タグ:中村文則
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