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愛知県美術館「円山応挙展」 [美術]

3月7日(木)愛知県美術館の「円山応挙展」へ行きました。
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だいぶ前から、このチラシ見て、とても楽しみにしていたんです。
このチラシ、とてもステキです!
金地の襖絵も豪華な雰囲気ですが、その上部、黒ベタではなく、
ツヤ消しの黒地にツヤのある黒で竹の絵が印刷されていてステキ!

お手本を写す狩野派に対して、写生を重んじた応挙
かわいい子犬の絵とか、日本の幽霊が足がないのは応挙の絵からだとか、
そんな話は知っていましたが、私、
応挙の絵(ホンモノ)って見たことなかったかも‥‥
この間の、名古屋ボストン美術館でやってた「日本美術の至宝」展でも、
 名古屋ボストン美術館「日本美術の至宝」展(前期) 
 名古屋ボストン美術館「日本美術の至宝」展(後期)
曽我蕭白、伊藤若冲はあったけど、円山応挙はなかったなぁ。
この「応挙寺」とも呼ばれている大乗寺のことも知りませんでした。

そんな程度の知識だったんですが、このチラシの襖絵見て、
うわっ!この絵、なんて私の好みなんだろう!って。

金地が豪華というより格調を感じさせて、上品で穏やか。
空間のとり方もゆったりした感じでいいなぁって。

私、岐阜県美術館の所蔵作品で一番好きなのが、
川合玉堂《老松蒼鷹》なんですが(岐阜県美術館のHPに画像があります)
 (左隻) http://gifu-art.info/details.php?id=4906
 (右隻) http://gifu-art.info/details.php?id=4907
この絵の雰囲気に似ているなって。そして、
同じく川合玉堂の《》 http://gifu-art.info/details.php?id=3220 も
大好きなんですが、この絵は応挙の藤の絵(チラシ裏面2段目)がルーツなんですね。
川合玉堂は現在の一宮市に生まれ、京都で、はじめ望月玉泉、後に幸野楳嶺門下で
円山応挙を祖とする円山・四条派を学んだとのこと。

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この展覧会では愛知県美術館が所蔵する竹内栖鳳の《狐狸図屏風》が
出品されていました。この絵も私の大好きな絵です。狸のリアルさがすごい!
 (愛知県美術館のコレクション検索に画像があります
http://search-art.aac.pref.aichi.jp/search/p/sakuhin.php?OI=OBJ199800270

応挙から円山・四条派を経て近代日本画へと続く流れを知れば、
応挙がいかに偉大な画家であったかがわかります。

この展覧会、中日新聞が主催していて、新聞見開きの記事があったり、
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(2月27日(水) わかりやすい記事で良かった)
愛知県美術館のブログの記事で、
大乗寺の客殿を再現展示するための準備の様子が伝えられていて、
さらに期待が高まり、早めの平日に行こうと、7日(木)がパートが休みだったので、
その日を楽しみにしていました。前売り券を買わなかったのが残念だったのですが、
前日にツイッターをチェックしていたら、館長さんのツイートで
愛知県美術館の友の会がおトクだというのを読んで、
へー、どれどれって友の会のHP見てみたら、
http://www-art.aac.pref.aichi.jp/japanese/friend/member/members.html
年会費は8,000円とちょっと高めだけど、
年間のべ10回まで企画展が見られる(同伴者1名も含めることができる)とか、
広報宣伝用として展覧会の招待券がもらえるとか、特典がすごい。
うーん、8,000円のモトってなかなかとれないけど、
愛知県美術館には去年、ポロック魔術/美術エルンストと行き、
今年になってクリムトも行ったかー。これから応挙行くし、
プーシキン美術館展も見たいし、夏にはあいちトリエンナーレもあるなぁ‥‥
って考えて、思い切って入会することにしました。

当日、美術館入口の案内カウンターで申込をして、すぐに会員証が発行されました。

その会員証を応挙展の入口で提示し、裏にスタンプを押してもらい、
会員用のチケットを受け取って会場に入りました。

最初に応挙の肖像画が展示されてました。
山跡鶴嶺(やまあとかくれい)という、応門十哲の一人にも数えられる
応挙の弟子が描いたもので、応挙自身が、弟子に描かせた肖像画のうち
最もよく似ているとした絵だそう。
温和で真面目そうな性格が伝わってくるような肖像画です。
弟子の面倒見もいい人だったそうで、応挙を慕って集まった人々により、
自然と円山派という流派ができていったとのこと。

応挙は1733年に丹波(現在の京都府亀岡市)の農家の次男として生まれ、
京都でレンズを通して絵が立体的に見える「のぞき眼鏡」のための
絵を描いたそうで、
遠近法を強調した《眼鏡絵(日本名所のうち 三十三間堂 通し矢)》など、
極細の線で細密に描かれていて驚きます。

そして大津の円満院祐常(ゆうじょう)門主が応挙のパトロンとなります。
祐常が書いた『萬誌』という記録帳が出展されていましたが、
応挙から聞いた絵画制作の秘訣なども書かれているそう。

この最初の部屋ではまず《岩頭飛雁図》の雁の優美さに見ほれてしまいました。

そして《驟雨江村図》の墨のにじみを生かした嵐の空の表現が渋くていいなって。
この絵、伊藤博文の旧蔵品だそうで、風雨にさらされる樹木や岸辺の家を見て、
何を思ったのかなって想像してみたり。

《大石良雄図》の等身大の人物画は、ちょっと生々しいほどの、
中年男の存在感―お腹の出具合とか―に驚きます。

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会場入口にあった円山応挙展の「鑑賞ガイド+出品作品リスト」が
とてもわかりやすくて面白かったです。
「応挙 ここがすごい、新しい!」として、
《三美人図》について、
「現代のマンガでもそうですが、美女というのは作者ごとにだいたい同じような顔をしています。けれどもこの絵で応挙は(中略)三人それぞれの特徴を強調して、似顔絵のように描き分けています。」ってのに、すごく納得! なんかすごい生々しいカンジ。

「雨粒や風の線などを描くことなく、竹の形と墨の濃淡やタッチの違いだけで、空間の奥行きと、雨に濡れた竹葉の重み、湿った空気や風の音までも感じさせています」って
《雨竹風竹図屏風》もすごい!

ビックリしたのが《波上白骨座禅図》
江戸時代にこんなリアルな骸骨が描かれていたんだと。
この絵が描かれたのは1781~89年。「解体新書」が翻訳出版されたのが1774年。
しかし応挙は既に1767年に西洋の外科書(解剖書)の図がいいと言っていたとか。

極彩色で描かれた孔雀の絵はとても豪華。そして華麗なだけでなく、
首から胴にかけての立体感などすごいなって。

《黄蜀葵鵞鳥小禽図》のガチョウの立体感もすごい。抱えたら
ガチョウの体温まで感じられそう!

ウサギの絵もふわふわの毛の質感がなんて愛らしいんだろう《木賊兎図》

応挙の虎はかわいい‥‥って思ったら、応挙は生きた虎を見られないので、
猫をモデルにしたと。もちろん中国の絵や虎の毛皮なども参考にしたとのことですが。
明時代の陶佾(とう いつ)《鳴虎図》が参考作品として出品されていました。

なんて、すごいすごいって見ていったので、ここまででもかなり時間がかかったんですが、
ここからさらに屏風などの大作が並びます。

この展覧会の第三章のタイトルが「現実空間との連続性=トリックアート」
応挙は絵画の中で対象を三次元的に把握することを目指したが、
それは絵画と現実の境界を越えて、トリックアート的な空間を演出していると。

《秋月雪峡図屏風》穏やかな秋の景色と、冬の雪景色が描かれています。
屏風が座敷で使われているように、折り曲げて立てて展示してあり、
画面の凸部に描かれたものの中で手前にせり出すものが、
凹部に奥に引っ込む部分が配置されていて、巧みだなって。
暮に見た、清須市はるひ美術館「曲面絵画ブライアン・ウィリアムズ展」
を思い出しました。わずかな曲面で絵画が立体的に見えて面白いなって思ったけど、
既に応挙は絵画を現実空間の中で三次元的に見せることを考えていたんですね。
屏風を斜めから見ると、松の木の重なりがまた違って見えて面白かったです。

そして、この展覧会の一番の見せ場!
大乗寺の《松に孔雀図襖》と《郭子儀図襖》が、大乗寺の客殿二部屋分を
再現して展示されています。今では保存上の理由でこのオリジナルの襖絵は
収蔵庫に収められ、本堂には複製がはめられているそう。
そんな貴重な(重要文化財)襖絵が、ガラスケースなしで、
客殿の雰囲気はそのまま、かなり近くから見られます!
(大乗寺に行っても、複製ですらこんな近くからは見られないと思われます)
そして、パナソニックの協力による最新のLED照明で、朝昼夕夜と変わる
1日の光の変化を3分間8段階で再現していて、見ていると、金地の煌きが
複雑に変化して、墨一色の孔雀がまるで動き出すような、すごく幻想的とも
いえる、そんな豪華な空間に紛れ込んでしまったような気持ちになりました。
後で美術館ロビーで流れていた映像で知りましたが、
孔雀は青く発色する松煙墨で、松の幹は茶色に発色する油煙墨で描かれているそう。

《郭子儀図襖》郭子儀(かくしぎ)とは、中国唐時代の名将で、
出世を果たし、子や孫に恵まれて長生きした人物で、
立身出世や子孫繁栄、長寿などを表す吉祥画題として多く描かれたそう。
展覧会には、郭子儀を家族が取り囲む《郭子儀祝賀図》も出品されていました。
この襖絵では、孫と思われる子供たちが遊んでいる姿を郭子儀が見守るように
描かれており、この部屋にいると、自分もそんな孫の一人として、
郭子儀に見守られているような気分になります。
映像で言ってましたが「八方にらみ」で、部屋のどこにいても
郭子儀の目がこちらを向いていて、沓の先がこちらに向いているように見えると。

‥‥もうこの展覧会すごいです。
なので、国宝の《雪松図屏風》も展示されているんですが、
うんうん、すごいねってくらいの感想になっちゃって。
(私個人としては《松に孔雀図襖》の方が好み)

《富士巻狩図屏風》なんかも、他の展覧会で見たらすごいんでしょうが、
もう名品のオンパレードで、ちょっと麻痺してきたみたいな感覚。

でもやっぱり応挙の子犬の絵には胸キュンとやられましたし、
《薔薇文鳥図》はすごく私の好みです。薔薇好きとしては、
へー、江戸時代にもこんな美しい薔薇がちゃんと咲いていたんだって。
(なんか薔薇って洋風のイメージであまり日本画に描かれてないように思いますが)

応挙の絵が当時の京都の人々に大いに好まれ、彼の画風は画壇を席巻したが、
応挙の絵を批判する人も多かったってのは私には意外でした。
当時の知識人には「見てわかる」絵なのが物足りなかったらしい。
えっ?それって悪いことなの?って今の私たちは思っちゃいますが、
予備知識がなくても愉しめる応挙の絵は時代に対して新しかったそう。

近年は伊藤若冲や曽我蕭白といった江戸時代の「奇想の画家」たちがブームで、
円山応挙は「普通」の画家って思われがちだが、実は驚異的な技量を持った
革新と魅力に満ちた画家だったと。

‥‥うん、私は伊藤若冲や曽我蕭白の偏執的に描き込んだ絵も面白い、すごいなって
思うけど、やっぱり上品で穏やかな円山応挙の絵の方が好きかな。

応挙の絵に入れられている落款の「應擧」って文字、
チラシや図録にも使われているんですが、
いかにも真面目で穏やかな絵柄、人柄を表しているようで印象に残りました。

展覧会見ても、なかなか図録まで買わない私なんですが、
やっぱり今回は買ってしまいました。
友の会の割引で、2,300円のところ、2,070円で買うことができて嬉しい。
Okyo-3.jpg

友の会で10回まで展覧会が見られるのだから《藤花図屏風》が展示される
4月2日(火)~4月14日(日)にもう一度行きたいなって。

この「円山応挙展」は愛知県美術館のみの開催で4月14日(日)まで。
国宝の《雪松図屏風》の展示は3月24日(日)までです。

観覧料金は一般当日1,300円。愛知県美術館のHPに100円割引券があります。

展覧会ウェブサイト: http://event.chunichi.co.jp/okyo/
愛知県美術館のHP: http://www-art.aac.pref.aichi.jp/
愛知県美術館ブログ: http://blog.aac.pref.aichi.jp/art/

【オマケ】
この展覧会、レクサス販売店が特別協力しているそうで、
愛知県美術館のある愛知芸術文化センターの2階には、こんな展示もありました。
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ハハハ、いやいや芸術活動にパトロンは大切です!
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村石太あ

円山応挙展 で 画像検索中です
こないだ 県美で 円山応挙展 行きました
よかったです。最高です。
伊藤若冲と江戸絵画展 と どこか 比較していたかもしれません。(少し応挙の作品もあった記憶です) 応挙の孔雀の絵は 素晴らしいですね。襖絵の孔雀と松の枝と松の葉先 スゴイ。
小さいパソコンで 鯉の滝登りの画像を見ていたときは 墨でかかれたラインかとおもっていた。
幽霊の髪の毛かなぁと 勘違いしていたかもしれません(笑い)。鯉の描写に 大拍手という気分。(マスキングで 描けるかナァ)
眼がね絵だったかなぁ。小さな絵の マクロ的というか人の描写。
ドでっかい屏風に書かれた 植物の絵の端に書かれた タンポポ 好きです。屏風の応挙が 書いた場所。
犬のかわいい絡み 太極図のような明暗
バランス おもしろいです。他
2時間ぐらいの拝観時間でした。常設展のときは クラクラした気分
ローソク時代の 襖 屏風絵 おもしろいです
絵画同好会(名前検討中

by 村石太あ (2013-04-13 15:25) 

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