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愛知県美術館プロジェクト・アーチ「佐藤香菜―森の中へ」 [美術]

3月7日(木)愛知県美術館の「円山応挙展」を見終わり‥‥

コレクション展を見る前にちょっと迷ったんですよね。
応挙展がすごく良くて、かなり時間かかって見てたので、
一旦出て、休憩してこようかなぁって。(ちょっとお腹も空いてたし)

でも、友の会に入って、コレクション展の方は何度でも見られるそうだから、
会場を通り過ぎるくらいでもいいか‥‥って。

最初の展示室5の20世紀美術は、そんなカンジで、かなりスッ飛ばして見て行き、
同じ展示室5の「特集:追悼展示 東松照明」の最初に展示してあった
《皮肉な誕生》という写真、英字新聞の中から卵を持った人の手が出ていて
インパクトありました。他は戦後(1951年)の傷痍軍人の写真や、水害の写真、
豊川海軍工廠跡の生々しい戦争の跡など、興味深かったです。

展示室6は愛知県美術館の学芸員が若手現代作家を選んで紹介する
プロジェクト・アーチ
2012年春から始まったこのプロジェクトもvol.5となります。

KanaSato.jpg
今回は「佐藤香菜―森の中へ」
写実的な描写で動物が描かれているんですが――しかし、
応挙の絵を見た後なので、写実描写という点では物足りなく思ってしまうけど、
作者は写実を目指しているわけではないんですよね。
動物たちは写実的に描かれているのに、画面全体としては、
この世とは思えない、どこか不思議な世界。
ちょっと心がザワザワするような、死の世界のような‥‥

ところどころに塗りたくられたり、飛び散ったりした絵具があって、
これが「絵」という平面でしかないってことを思い出させたりするわけです。
応挙をはじめ画家たちは、平面の画面に、いかに三次元的な空間を表現するかって
ことに苦心してきたわけなんですが、もらったリーフの表紙に使われている《HOME》
印影をつけて立体的に描かれた鹿の顔にベタッと塗られた絵具。
鹿から生えている角のような木のようなものから芽吹いている葉や、
ひまわりの花は美しい刺繍でできていて、このリーフの中面にあった
大島徹也(愛知県美術館学芸員)の解説がすごく上手く説明してくれてました。
「はじめ刺繍を刺繍と意識せず、イメージとしてだけ見た時、それは写実的描写の一部として機能する。しかし、それは画表面に糸が縫い付けられたものであることを認識した時、絵具とはまた異質なその糸の物質性、そして作家による刺繍という行為の追体験が、我々の感覚を一気に現実世界へと引き戻す。」
KanaSato-2.jpg
まぁ、これらの絵を見た時はそこまで意識しなかったんですが、
なんか美しくも不思議な絵でいいなぁって見ました。
特に最新作の《落下する空、昇る海》(リーフ中面左上)がいい。
タイトルも詩的で素敵です。
愛知県美術館の公式ブログに、3月9日(土)に行われた
APMoA Project, ARCH 佐藤香菜展アーティスト・トーク
の様子がアップされていましたが、
この作品は、死産した子象のホルマリン漬けを東京大学総合研究博物館で見、
その子象への手向けとして描いたそう。

なんかとても不思議な世界を持った作家さんで、いいですね。

展示室7は木村定三コレクションの、修復をして一年の
寝かせ期間(ってのがあるそうです)が終わった作品が展示されていました。
与謝蕪村《富嶽列松図》は晩年の代表作のひとつで重要文化財とのこと。
へー、蕪村と応挙ってほぼ同世代人なんだ!(与謝蕪村1716-1783 円山応挙1733-1795)
蕪村は俳人としても(の方が?)有名ですね。
富士山と松林があっけらかーんといった雰囲気で描かれていて、
とてもモダンな印象。

須田剋太の油絵も6点ほど展示されてましたが、パワフルでいいですね。

上杉謙信が織田信長に送った書状もあって、へーって興味深かった。
(贈り物に対する礼状だそう)

展示室8は、ちょっと前に中日新聞に、不動明王の修復をした際に
胎内から鎌倉時代の仏画断片が見つかったってニュースが載ってましたが、
その「仏画断片」が初公開されてました。

‥‥疲れた、お腹空いたって思ってたけど、やっぱり展示見てると、
つい夢中になっちゃいます。ロビーに出ても大乗寺の襖絵についての映像が
流れていて、これも見入っていたら、閉館時間の6時近くなってしまい、
(愛知県美術館は6時までやってくれるのでとても助かります)
あわてて応挙の図録を買いに走ったのでした。

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