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赤座憲久『かかみ野の土』『かかみ野の空』 [本]

11月3日(日)、各務原市各務の村国神社にある農村歌舞伎舞台
「村国座」で、村国男依を題材にした創作歌舞伎を見てきたことは
前記事に書きました。

村国男依(むらくに の おより)を祭神に祀る村国神社がある各務原市では、
村国男依はオペラになったり、市の広報誌に今、
「壬申のあとさき」って連載小説が載っていたりするので、
まぁわりと有名なんですが、全国的には知っている人は少ないでしょうね。

壬申の乱で大海人皇子の将軍として活躍。その功績を認められ、
連姓を与えられ貴族の仲間入りをしたと、「日本書紀」に書いてあるそうで、
壬申の乱を扱った歴史書や小説とかには(ちょっとだけのことが多いけど)
出てきたりします。

各務原出身の児童文学者 赤座憲久(あかざ のりひさ)
『かかみ野の土』と『かかみ野の空』という作品を紹介します。

Kakaminonotuchi.jpg
『かかみ野の土』は、
村国男依(オヨリ)の子・志賀麿(シガマロ)の目を通して描かれる壬申の乱。
(志賀麿も男依の息子として日本書紀に名が記されているそう。)

各務原の農家に生まれた私としては、出だしの
かかみ野の土は、におう。どこを掘っても、黒ぐろとにおう。
って文に、ちょっと涙が出そうになっちゃいます。
そう、各務原の土って真っ黒なんですよ!

子どもの頃は土って真っ黒なものだって思ってたので、ヨソの土地の
褐色や灰色に近いような土を見て驚いたものです。

なので、壬申の乱で死んだ村国の里人が葬られている近江の塚に、
かかみ野の黒い土を運んでやるってオヨリやシガマロの想い、すごくわかる。
先の大戦で異郷で亡くなった兵士達への想いにも重なるんだろうなと。

これからまんだ、生きたかった人たちばっかしじゃ

シガマロの岐阜弁のセリフに涙が出ます。

一家の働き手、愛する夫、息子、父を戦で亡くした人の悲しみも、
著者が先の大戦の時に見たり聞いたりして実感したことなんだろうなと。

(赤座憲久さん、1927年生まれだそう。敗戦の年は18歳‥‥。
 ネットで検索していたら、2012年8月31日に亡くなったとありました。)

壬申の乱について、大海人皇子や大友皇子などの権力者側から書いたものは
多くあります(トンデモ本のようなものも多いし)が、
布を赤く染めるためにアカネ草を集めたり、
瀬田川を渡るためのイカダ橋をつくるために家を壊される人々
‥‥そんな庶民の側から描いた話は、
いつの時代も戦争は悲劇でしかないってことがわかります。

勝ち戦で、「この戦いに勝ったらくらしがうんとよくなる」って思ったのに、
新しい都のための瓦を焼くために、子どもも辛い土踏みの仕事をしなくてはならない
日々は変わらない‥‥そんなシガマロの失望のような思い。

この作品、1985年10月16日から翌年4月21日まで、
岐阜日日新聞(現・岐阜新聞)の朝刊に連載したものを基にして仕上げたものだそう。
児童文学者の赤座憲久だけあって、読者対象は8歳以上上限なしということで、
この本、創作児童文学というジャンルに入っていて、文字も大きいし、
難しい漢字にはルビがふってあるし、すごくわかりやすいけど、
大人が読んでも充分に面白いし、感動します。

Kakaminonosora.jpg
続編の『かかみ野の空』は、1986年12月4日から翌年4月3日まで、
岐阜日日新聞に連載したものを基に仕上げられた本。
壬申の乱の後、高市王子の舎人となったシガマロ。
王位継承をめぐる対立、大津王子の刑死、持統天皇の即位などが
描かれます。

この2冊、たしか息子の小学校(幼稚園だったかな?)を通じて、
案内があり、購入申込をした本だったような。

壬申の乱あたりの歴史に興味がある人、各務原の歴史に興味がある人、
村国男依について知りたい人にお薦めの本です。


かかみ野の土―壬申の乱 (こみね創作児童文学)

かかみ野の土―壬申の乱 (こみね創作児童文学)

  • 作者: 赤座 憲久
  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 1988/12
  • メディア: 単行本



かかみ野の空―女王の時代 (こみね創作児童文学)

かかみ野の空―女王の時代 (こみね創作児童文学)

  • 作者: 赤座 憲久
  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 1989/02
  • メディア: ハードカバー



村国男依は、持統天皇を描いた、里中満智子『天上の虹』にも
ちょっとだけ登場します。
oyori-tenjounoniji.jpg


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