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野村知紗『看護助手のナナちゃん』 [マンガ]

ブログもずっとほったらかしてしまいました。
いまだに謹賀新年のトップってのもどうなのかと思いながら‥‥

クリスマスから入院された義母の経過はとても良く、
18日(土)に退院となりました。
寒中のなか、設備の整った病院と違って、部屋と廊下の温度差や段差など、
迎える義兄宅では、不安もあるようですが、96歳の義母が退院できるのは、
おめでたいことなんでしょうね。

義母のお見舞いに病院へ通っていて思うのは、病院には多くのスタッフがいて、
それぞれ大変な仕事だなぁと。

野村知紗『看護助手のナナちゃん』

看護助手のナナちゃん (ビッグコミックススペシャル)

看護助手のナナちゃん (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者: 野村 知紗
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/03/30
  • メディア: コミック


このマンガは、タイトルそのまま、看護助手として働いているナナちゃんの物語です。

「看護助手は、
 看護師さんの
 サポートや、
 患者さんの生活を
 お手伝いする
 お仕事です。」

排泄の介護から、入浴の介護、洗髪、食事の配膳・下膳、体位交換、シーツ交換など、
いわばもっとも患者さんに寄り添う仕事かもしれません。

現在も「ビッグコミックオリジナル」で連載中で、楽しみに読んでいるのですが、
このマンガを最初に見た時――初掲載はビッグコミックオリジナル増刊号'09年5月号――は、
「何この小学生の落書きみたいな絵は?!」ってビックリしました。

現在もその絵は変わりません。
最新の「ビッグコミックオリジナル2014.1.20号」に載った第168話の一部です。
nana-chan.jpg
nana-chan2.jpg

今ではこの絵も含めて、ナナちゃんのやさしさにほっこりして癒されてます。

見開き2ページで1話(たまに1ページのみの話も)。毎回それが2話くらい掲載されています。

去年の秋にブックオフで単行本の(1)を見つけたので買ってしまいました。
こうやってまとめて読めると、またすごくいいですね。
読んでいるとじわっと泣けてきちゃいます。

看護助手の仕事の大変さが伝わってきます。
セクハラされたり‥‥痛くて拭けないから下も拭いてと言われて拭いていたら、
ベテラン看護師が見つけて「自分で拭けるじゃろ!!」「若い子に拭かせんさんな!!」と
怒ってもらえたり。

認知症が始まったカズコさんに「財布を盗った」と言い立てられたり。

仕事中に倒れてずっと寝たきりの浮雲さんの介護で、アザになるほど手をつかまれたり。
でもナナちゃんのすごいところは、そんなことをされても、
「浮雲さんて、いつも何を考えているんですかね?」「認知症じゃないけぇね」
「気持ちが少しでも、わかるようになりたいな」と思うところ。

認知症のマメさんがベッドの柵から自分までうんちを塗りたくっていても、
「もっと早く来れば良かったな‥」と、お風呂に入らせて、
「こりゃ大仕事じゃ。」「でも今日は笑ってたから、よかった」
と掃除をするところがすごい。

点滴の管をすぐに抜いてしまう大竹さん、だんだん悪くなって、
黙って天井を見上げていることが多くなると、
ナナちゃんも同じ高さから見上げてみて「泣きそうになった」と。
大竹さんのことは亡くなってみんなでお見送りをする話まであります。

病院には元気になって退院する人もいるけど、
そうじゃない退院‥‥余命宣告されての退院とか、
亡くなって出ていく人もあるし、患者さんもそれぞれ。

ガンの末期で抜け毛を気にしている陽子さんに、
娘さんはかわいい帽子を作ってお見舞いに来ている。
ナナちゃんは洗髪の時に、抜け毛を見られないように手早く捨ててる。
「この日々が長く続きますように」と。

ホームレスの人も入院してくるし、イレズミの人もいる。
「イレズミのとこは、毛穴に墨入れて塞いどるけ、体温がないんで。」
「夏はひんやり気持ちいいけど、冬はひんやり寒いんよ。」と言われて、
イレズミに触ってみるナナちゃん。

ゴミ屋敷で何か月も風呂に入らずに倒れていたサナエさんの入浴介助で、
サナエさんが話す「私ね、息子を捨ててるの」
「まだ小学生のときよ。好きな人ができてね。」
「その人ともすぐうまくいかなくなって、今の人と暮らしてたんだけど、」
「あの人にも女が出来てね。」「今度は私が捨てられたの。」
この素朴な絵なのでスラスラっと読めちゃうんですが、すごいドロドロした話ですよね。
「(息子に)私、会いに行ったの、そしたら、『お前なんか知らん』って。」
「自業自得よね。」と泣くサナエさんの話を聞いて、
「息子さんが幸せでいてくれくれたらいいですね。」とナナちゃん。

入院中の山田さんを西広島の耳鼻科へ連れていく仕事で、タクシーの中で
山田さんの話を聞く「ピカのときは真っ黒でなんにもなかったのにねぇ」
「もう。木も草も何十年も生えんじゃろって言われとったのに、ちゃんと生えてきた。」
「自然の力ってすごいんよね。」「人を殺す力以上に。」
「戦争は、ほんま地獄よ。」「大切な人を簡単にとっていくんじゃけ。」と聞かされて、
「山田さんの旦那さん、戦死したんよね‥」
「焼け野原で生き抜くってどんなだったんじゃろう‥」と思うナナちゃん。
ナナちゃんの世界では皆やさしい。この話の最後のコマは、
「その後、ビルの入り口の段差で車イスが上がらなくて困ってたら、」
「タクシーやトラックの人、通行人のおじさん達が走ってきて、
 みんなで手伝ってくれた。」と、この素朴な絵で描かれているのが、
よけいじわっときてしまう。
nana-chan3.gif

作者は実際に看護助手してたんだろうな。でなきゃここまで描けない。
もしかしたら、現役の看護助手さん?って思ってたけど、
1巻のあとがきによると、
結婚するまでの3年間、看護助手をしていました。」とのこと。
それが、
最初に高知新聞の黒潮大賞に送ったときは、
 もしかしたら、西原理恵子さんにみてもらえるかもしれないという夢と、
 いつか息子に『かあちゃんはこんな素敵な人たちと出会える仕事してたんよ』
 と見せたい一心で描きました。
」と。

それから1年が経って、そのときの漫画を偶然見てくれたY編集長が
 私を見つけて下さいました。
 コマ割りもわからない私にずっとついてくれた担当さん。


そうだったのかー。Y編集長の慧眼はすごい。
奥付に「連載担当・廣岡伸隆」ってあるけど、この方がコマ割りから指導した担当さん?
この方々がいたから、『看護助手のナナちゃん』の本があるわけですね。

オリジナルでの連載を読んでいたから単行本まではいいかと思ってたけど、
こうやってまとまって読めるとまた感動が新たになります。
ナナちゃんの漫画を知らない方は、ぜひ一度読んでみてください。お薦めです。

ただ、この単行本、カバーの、作者が作ったという消しゴムはんこは
素朴でいいんだけど、印刷の色が、
古い雑誌をイメージしたようなブルーとエンジ色なのは、評価が分かれるとこかな。
素朴さがいいとも思うけど、ちょっと読みにくい‥‥。

今、単行本は(3)まで出ているんですね。







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