SSブログ

ハルノ宵子『それでも猫は出かけていく』 [本]


それでも猫は出かけていく

それでも猫は出かけていく

  • 作者: ハルノ 宵子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本


たまたま図書館でこの本を見て、表紙のイラストに魅かれました。
猫を2匹以上飼った人なら、こういうシーンは必ず見たことありますよね!
HarunoYoiko-5.jpg

裏表紙
HarunoYoiko-6.jpg

ハイ、我が家も暮れに連れてきた猫と先住猫タビが毎日こんなカンジです。
2015-3-29-(2).jpg

手に取って、パラパラっとめくると、
猫が正確に、しかも優美に描かれていて、
へー、猫のイラスト(マンガ)上手いなーと、見て行くと、

最後の著者の紹介で、
1957年、東京生まれ。‥‥あ、私と同じ年!
父は思想家・詩人の吉本隆明。‥‥え?!ってことは? はい、
妹は作家のよしもとばなな。‥‥!!!

ってくらいの著者についての知識しかありませんでした。

この本は、(以下、「はじめに」より)
 真っ白な月が中天に輝く8年前の夏の深夜、隣の墓地で真っ白な子猫を拾いました。 それがすべての始まりでした。
 子猫は「馬尾神経症候群」という障害を持っていました。‥(中略)‥ちょこまか動き回るのに、 おしっこ・ウンコタレ流し!
(中略)
 子猫は「シロミ」と名付けられました。この時から艱難辛苦・試行錯誤の日々が始まりました。 ちょうどその頃、父に取材にいらした『猫びより』の編集者(当時)の稲田さんから、 「次号、シロミについて書きませんか?」という依頼を受けました。‥(中略)‥ 「1回ではムリです。連載ならできます」‥(中略)‥こうして『猫びより』での、8年にも及ぶ連載が始まったのです。
 まさに“激動”の8年間でした。シロミばかりか両親の介護、自身の病気。また“都市猫”という特異な野生たちとも、深く関わるようになりました。
(中略)
 この本は、吉本家最後の8年間の記録でもあるのです。

HarunoYoiko-2.gif

『猫びより』は隔月刊のようですね。この本には、その連載一回分の
イラストと文章が4ページ分ずつにまとめられ、50回分が収録されています。

『猫びより』2005年9月号から、2013年11月号まで!!
なんと8年以上!! 

その間、著者は、両親の介護と本格的に向き合い、二人とも見送り、
自身はガンの手術で片乳を失っておられます。

拾ったおしっこ・ウンコタレ流しのシロミの介護のこと
(一応この連載のタイトルは「ハルノ宵子のシロミ介護日誌」だそう)
最初はケージ飼いができないかとか、一部屋に閉じ込めておけないかとか、
いろんなオムツを試したり‥‥で、結局どれも諦めて、
ベッドに人間用モレ防止シーツを敷いて、暑さと寝苦しさに悩まされたり、
ペット用シーツを敷き詰めたり‥‥とガードを試みるも、

「せっかく気持ちのいい寝場所を見つけたのに、どうしてすぐに汚れて寝られなくなっちゃうんだろう‥‥」と、 シロミは本当に悲観した顔をすることがあります。その顔があまりにも哀れで‥‥。
(自分は所構わずモラすのに、清潔好きでちょっとのモレも許してくれないお嬢様キャラ!)
の結果、羽布団のクリーニング代にビビったり(申し訳ないけど、マンガが上手いので笑ってしまった)

父の原稿にモラされて、原稿が読めなくなった(父って!!)なんて“惨事”も!

細菌感染で膀胱内に炎症を起こし、一日おきに膀胱洗浄に通ったり、
フンづまりで動物病院でウンコ掘りしてもらったり、
部屋中にシロミの排泄物がベットリと付いているという大惨事も、
ナゾの物体‥‥シロミのおしりから出てきたからには、ウンコと言わざるをえません。」と、
なんともユーモラスな出来事のようになるのは(ほとんど無臭だったそうだけど)
著者の筆力なのか、性格のせいなのか、猫への愛情のせいなのか。

そして、「父の愛人・フランシス子」や他の吉本家の猫のこと、

外猫たちとの付き合い。著者の猫への愛情がすごいなぁと思うのは、

近所の猫たちにエサをやって回り、雌猫の避妊をしていること。

猫にエサをやることで、ご近所に苦情を言われたり、
猫クレーマー・ストーカーに付きまとわれたりすることもあるのですが、
著者は、

エサをやっていたら限りなく増えちゃうんじゃないか――いくら雌を避妊しても 1匹でも残れば子供を産んで、その中の雌が半年くらいでまた産んで、ネズミ算式に 増えていくから徒労じゃないか――という考えは間違いです。ノラの生存率は恐ろしいほど 低いのです。エサをやった位では限りなく増えません。私が完全避妊作戦に踏み切った理由も、 増えていく恐怖からではなく、逆に、春に生まれてコロコロとたわむれる仔猫たちがどんなに ケアしても秋冬になると一年草のように消えていくその繰り返しを見ているのに耐えられなくなったからなのです。

と、コツコツと猫の避妊を続けているのがすごい。

ノラ猫の命が短いのは私もよくわかっています。
実家の物置きに、エサだけはもらう半ノラ猫たちのことはこのブログでも書きましたが、
たくさん子猫が生まれても、母猫のおっぱいで育つ間はまだいいのですが、
離乳期に多くの子猫が育たずに死んでしまうのを見るのがツラかったです。
成猫になっても、オスたちのケンカが始まったりして、10匹以上にはならなかったですね。
朝晩エサがもらえる状態でそんな程度なんですよね。
避妊してやれるといいんだけど、なんせ先立つものが‥‥

まぁ、著者も、

正直きびしい」とも。
避妊手術済みの猫が、月日を経ずして死んだ時、水の泡と消えるのは労力のみならず、お金もです。

何のために苦労して捕まえて、短い一生なのに怖い思いや痛い思いをさせたのか‥‥

でも、
悲しいかな、ノラの寿命が短いからこそ、避妊には効果があるのです。徒労なんぞと言ってるヒマがあったら、 コツコツと続けていくのみです。
うー、頭が下がります。

著者は妹から「猫界のマザー・テレサ」と呼ばれているそう。
で、父からは「猫界の光源氏」だと称されたと。
どんな猫にも分け隔てなく愛嬌をふりまくからだと。

生きているすべてのモノは、食う権利があるのです。生きている限りは手厚く、そして避妊は非情に――が、私の方針です。

ご近所の冷たい視線には、
「お宅がエサやってるんだから、ウンコ片付けてよ!」「はいはい、今やりますよ」だっていいんです。 しかし現代社会は、衝突よりは排除、あるいは“社会正義”と銘打って行政に丸投げ、という方向に向いているようです。

うんうん、最近の人間関係ってそんなカンジで、あけすけにケンカするより息苦しい‥‥
そんな中でも“応援団”はいるってのが、
ハルノさんの人徳によるところが大きいんでしょうが、ちょっとホッとします。
ハルノさん、頑張って!

口は悪いけど、動物への愛情が深い名医・D動物院長、
いいキャラですねぇ。
HarunoYoiko-3.gif

この本で「そうそう、私もそうなのよー」と思いながら読んだのは、
この本のタイトルにもなっている
「それでも猫は出かけていく」というところ。
 おおむね4半世紀、どっぷり猫と付き合ってきた私ですが、いまだにどうしても苦手なことが 2つあります。猫に食事制限をすることと、行動制限をすることです。

私も、猫の食事は、いつもカリカリは出しっぱなしだし、
いじられると(あれ?猫が食べ物を「いじる」ってもしかして方言?
先日「猫にばりかかれた」ってのが岐阜の方言だと知って驚いたけど)
つい、しょーがないなぁーと、与えてしまうんですよね。
これはやっぱり、私が、のべつ幕無しに甘いモノなどを口にしている
食いしん坊なんだからでしょうねぇ。健康診断で太りすぎと注意されても、
ダイエットなどハナから無理と諦めてます。
我が家の猫もメタボになっちゃうのは当然か。

行動制限も、街の猫は室内飼いにするのが一番だとは思うんですが、
我が家のタビは、外トイレ派なんですよね。
いろんなトイレ試したりもしたけど、やっぱり出て行ってしまう。

猫トイレについては、この本で、
我家の猫トイレは、スーパーやコンビニでも売っている、ごくごく一般的な、あの「重い・散らばる・ ホコリが立つ」とさして評判もよろしくない、「ベントナイト」主成分の猫砂を使っています。‥(中略)‥ ベントナイト製の砂は、尿比重が高いと固まらず、逆に尿比重が低ければ、ベッタリと固まるのです。 ‥(中略)‥健康な猫のおしっこは、皆様ご存知、きれいな“ブリオッシュ型”に固まります。しかし ‥(中略)‥高齢で腎機能が低下し、薄い水のようなおしっこだと、ベッタリとコンクリートのように 固まり、シャベルの柄さえ折れるほどです。

気にしたことなかったけど、ウチの猫砂、成分を見たらやっぱり「ベントナイト」だった。
そっかー、今はクロが使うので“ブリオッシュ型”に固まった砂を片付けることが多いけど、
底に平べったく固まっていることもあったなー。今までそんな違いを気にしたことなかったけど、
尿道結石で腎機能が落ちているタビがここでおしっこしてくれれば、
健康状態をチェックできるんですけどねぇー。

ずっと昔、ニャンとも清潔トイレも使ったことあるんですが、
ウチの猫にはチップが大きすぎて埋めにくいようなんです。
部屋で使うには散らかりにくくていいし、
オシッコはこのトイレすごくいいんですが、
大は埋めにくいってのもあって、モロに匂うんですよね
(私が使ったのはだいぶ以前のことなので、今は改善されているかもしれませんが)
我が家は土間に置いているので少々散らかってもいいので、安い猫砂に戻しました。


図書館に、ハルノ宵子さんが【追想・画】を書かれた、
吉本隆明『開店休業』もあったので、借りてきました。

開店休業

開店休業

  • 作者: 吉本 隆明
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2013/04/23
  • メディア: 単行本



「戦後思想界の巨人」とも呼ばれた吉本隆明の最後の自筆連載、
「dancyu」食エッセイに、ハルノ宵子が追想文と画を書き下ろした本。

吉本隆明をマトモに読んだことがない私には、失礼だけど
なんか半分ボケた老人の繰り言のような文章だなぁと。

この本で、ハルノ宵子の追想文
 さて――父が病院で亡くなった夜、実は落語の“長屋噺”のようなドタバタ劇で、一時間後にはすでに 家に父を運び込んでいた。深夜の三時半、私は〆切をかかえていた。イラストのラフを今日中に 仕上げなければ、後々の騒ぎもあるだろうし、最終〆切に間に合わない。
 父の遺体の上に“ロックアイス”を一袋置き、“外界”を一切遮断して仕事にかかった。上がったのは 朝七時半だった。死んでる父に「どーだ! やったぜ!誉めてくれよ」とぴらぴらとラフを見せた。


という、壮絶な状態で描かれたのが、『それでも‥‥』の
その41なんですねぇ。

『それでも猫は出かけていく』を読んでいると、
大島弓子『グーグーだって猫である』を思い出しました。
『グーグー‥‥』の大島弓子さんも卵巣腫瘍の手術を受けたり、外猫の避妊をしたりされてますね――

グーグーだって猫である コミック 全6巻完結セット

グーグーだって猫である コミック 全6巻完結セット

  • 作者: 大島 弓子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/09/23
  • メディア: 単行本



『それでも‥‥』の中に、
猫にのめり込むのは独身女性が多いのです。と。
それはなぜかとハルノさんの考察は、
何の組織にも権威にも属さず、ただ独り“荒野”に立つのは疲れるのです。 特にその“疲れ”にさらされているのが、仕事も年齢も年収も関係なく 独身女性なのだと思います。共感能力の高い猫という生き物は、そっと側に寄り添うのです。

要するに、「心のすき間に“猫”」なんだそう。
うーん、まぁ、何の役にも立たない(現在ではネズミ獲りの役目も要りませんしね)
猫だけど、その存在だけで癒されるってとこなのかな。

この本、図書館で借りて、しっかり読んだんだけど、欲しくなってしまって‥‥
(借りてきた図書館の本にも、所々ページを折った跡があって、
 こらー、でも、わかるなと)
アソシエイトプログラムでギフト券が送信されてきたこともあり
(今は500円以上で送られてくるんですね。)
amazonでポチッとしてしまいました。

それでも猫は出かけていく

それでも猫は出かけていく

  • 作者: ハルノ 宵子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本



外猫の避妊を続けていらっしゃることへの、応援の気持ちを込めて‥‥

楽天ブックス


我家の猫砂は今これを使っています

部屋の中に置く猫トイレにはお勧めしませんが。

nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 2

sknys

少女マンガ家が描いた軽い「ネコ・エッセイ」かと思ったら、結構ヘヴィな実録ものだった。
イラストやマンガ、パステル・カラーの頁が内容を緩和しているように思います。

『なぜ、猫とつきあうのか』(河出書房新社 1998)、『フランシス子へ』(講談社 2013)、『開店休業』(プレジデント社 2013)‥‥と芋蔓式に読破。

父・吉本隆明の「いや〜‥‥オレも尿モレだから、捨てろとは言えないなぁ」という発言や
"最後の晩餐" が「きつねどん兵衛」だったというエピソードには不謹慎ですが、笑ってしまいました^^
by sknys (2015-04-13 01:53) 

しーちゃん

sknys さん、コメントありがとうございます。
「少女マンガ家が描いた軽い「ネコ・エッセイ」かと思ったら、結構ヘヴィな実録ものだった」
おっしゃる通り!!私も、優美な少女マンガ風ネコイラストにつられて読んだら、内容が結構へヴィで濃かったです。
by しーちゃん (2015-04-16 14:16) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました