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名古屋ボストン美術館「ダブル・インパクト」展 [美術]

なかなか記事が書けませんが、8月13日(木)に行った
名古屋ボストン美術館「ダブル・インパクト」展のことを。
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この展覧会、ボストン美術館と東京藝術大学の所蔵作品から、
明治ニッポンが西洋文明から受けた衝撃(インパクト)と、
西洋が「不思議の国ニッポン」から受けた衝撃という
双方向の衝撃〈ダブル・インパクト〉を探る展覧会だそう。

4月4日(土)~5月17日(日)東京藝術大学美術館で開催された後、
名古屋ボストン美術館に6月6日(土)~8月30日(日)まで巡回してきました。
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パートが休みだった8月13日(木)、私のことなのでなかなか
出かけられなかったのですが、名古屋ボストン美術館は
平日は午後7時まで開館しているので有難いです。
入館料当日一般1,300円のところ、午後5時以降の入館料が1,100円に
なるのも嬉しいところ。

まぁ、そんなことを知っていたので、家を出たのが3時過ぎ、
金山駅に着いたのが4時半頃でした。
(交通の便がとてもいいのも有難いところです)
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帰りに撮影

で、5時まで待つか、チラシの100円割引で入るか‥‥と迷いながら、
いつものように美術館下のボストンカフェをチェックしたら、
今回もチケットと展覧会をイメージしたケーキとドリンクのセットが
1,700円であったので、まずはそちらを食べてから!
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タルトの上に龍のチョコレートがのっています。
ダブル・インパクト展の図録もあったので、入館前にちょっと予習(?)

美術館の3階には、これもいつものように(?)顔出し看板がありました。
(スミマセン、ボケちゃってますね)
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その隣には明治のドレス(試着できるようなんですが)
2015-8-13-(5).jpg

4階へエスカレーターで上がり、展示室に入ると、
最初に黒船を描いた《ペルリ浦賀上陸図》ボストン美術館蔵 以下(B)

日本は黒船来航に大きな衝撃を受けて、明治維新へと進むわけですが、
作者不詳のこの黒船図、文字もたくさん書き込まれていて、
西洋文明に驚きながらも、それを学ぼうという姿勢がすでに見られます。

黒船に驚く日本の様子を蒙古襲来に重ねて描いた浮世絵や、
洋館が立ち並び、洋装の人々が行き交う浮世絵。

でも衝撃を受けたのは日本だけではなく、来日した西洋人も、
大勢が一緒の風呂に入る日本の風習に驚き、ワーグマンが描写した絵を
高橋由一が模写した《浴湯図》東京藝術大学蔵 以下(藝)

そして日本の技巧を凝らした工芸品に驚いたそう。
大きな龍の置物は、関節や胴体が自由に動く「自在」置物
高石重義《竜自在》(B)

大きな水晶玉の台は帝室技芸員の鈴木長吉作(B)

そして、これカワイイ、欲しいなーって思っちゃったのが、
身長30センチほどのガイコツ。鹿の角でできているそう。
全ての関節が人体同様に動いて、いろんなポーズができると
旭玉山《人体骨格》(藝)

この展覧会の目玉の一つでチラシ等にも使われている
河鍋暁斎《地獄太夫》(B)
着物の模様なども偏執狂的に細かく描かれていて、とても素敵!
「クールジャパン」ってカンジ。
河鍋暁斎が外国人に人気だったってのもよくわかります。

柴田是真《野菜涅槃図蒔絵盆》(B)
漆の超絶技巧と、以前日曜美術館でも取り上げられていた柴田是真。
この蒔絵盆も、超絶技巧が凝らされているんでしょうが、
そんな技巧の知識のない私にはふーーん‥‥って。

柴田是真の花をデザインした天井綴織下図(藝)は素敵!って見ました。
水墨画の《雪中鷹図》(B)もいいなと。

ヤマザキマザック美術館「エマイユの煌き」展で、
明治の七宝の超絶技巧、無線七宝の濤川惣助(なみかわ そうすけ)を
知りましたが、この展覧会にも《七宝瀟湘八景図額》(B)が展示されていました。
七宝でこういうぼかしを表現するのは難しいってのを知らないと、
「水墨画みたいな七宝」くらいで見ていっちゃいそう。

そしてヤマザキマザック美術館で8月30日(日)までやっている
「世界に挑んだ明治の美」展で、宮川香山の陶芸作品が展示されていましたが、
宮川香山の《猩々噴水》が話題を呼んだという
1881年の上野公園内国勧業第二博覧会の様子を伝える三代歌川広重の錦絵も
展示されていました。

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チラシ裏面(?)下に使われている明治の文明開化で洋装の女性を描いた錦絵が
揚州周延《梅園唱歌図》(B)

錦絵に描かれている明治天皇・皇后や周囲が次第に洋装になっていくのも
興味深かった。

少し前に、林真理子『ミカドの淑女(おんな)』を読んだんですが、
明治天皇の宮中がこんなに時代がかっていたとは!!って驚きました。

ミカドの淑女(おんな)

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  • 作者: 林 真理子
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下田歌子をめぐるスキャンダルを、周辺の人々から見て描いた小説。
歴史で習った明治天皇や乃木希典らが生き生きと描かれていて面白かった。

そして、西洋美術を学んでいく日本。
五姓田義松《自画像》(藝)や、

彫刻教師として来日したイタリアのヴィンチェンツォ・ラグーザの
《日本の大工》(藝)は、時代劇に出てくる丁髷姿のいなせな若者が
今にも語りかけてきそうな生き生きとした胸像。背中のイレズミも面白い。

必死に西洋美術を学習してきた日本ですが、このままでいいのかと、
日本の伝統美術を見直そうとする機運が高まります。

名古屋ボストン美術館では狩野芳崖の《悲母観音》(藝)は出品されていませんが、
岡倉秋水による模写《悲母観音》(B)が展示されていました。

名古屋ボストン美術館では展示替えがあり、
横山大観《村童観猿翁》(藝)が見られたのはラッキーだったかな。
チラシにも使われている、大観の東京美術学校卒業制作。
翁は先生の橋本雅邦、童たちは同級生の幼顔を描いているのだとか。

大観というと「朦朧体」ですよね。実は私、あまり大観の作品の良さが
よくわからないんですよ。当時批判した人の気持ちがわかるというか。
でも、ここに展示されていた《海》(B)良かった!
もう一つの波打ち際の《月下の海》(B)(チラシ中面にのっている方)は
「ふーーん‥‥」だったんですけどね。

チラシ中面のに載っている菱田春草《水鏡》(藝)は展示替えで見られませんでしたが、
東京美術学校の卒業制作《寡婦と孤児》(藝)が展示されていました。

そして、最後の第5章「近代国家として」の展示では
竹内久一《神武天皇立像》(藝)まずその大きさに驚きました。
弓が復元されたとかで、すっくと立つ大きな立像はとても威厳がありました。
明治天皇の姿を投影したものだとか。

他にも明治天皇を描いたものや、日本武尊を描いた高橋由一の油絵、
日清・日露戦争を題材にした錦絵、

別室のようになったコーナーに展示されていた六曲一隻の屏風
鈴木松年《戦勝萬歳図》(B) 1904年(明治37年)
日露戦争の戦勝を祝う提灯行列が描かれて、
当時の日本のナショナリズムに浮かれた雰囲気が感じられて、
今の私から見るとなんだか危ないなぁ、って感じるんだけど‥‥。

最後に、この展覧会の目玉の一つ
黒田清輝《婦人像(厨房)》(藝)
落ち着いた色調の中、婦人と光が差し込む厨房とが穏やかに描かれていて、
(これ名古屋展のみの出品だそうですね、見れてラッキー!)
いいなぁーって。

洋画の世界では、フランス留学から帰国した黒田、久米桂一郎らが、
新しい流れをつくっていったそう。

明治という激動の時代の中で、美術がどう変わっていったか、
そんなことがわかる展覧会でした。

名古屋ボストン美術館のウェブサイト:
http://www.nagoya-boston.or.jp/

「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」公式サイト:
http://double-impact.exhn.jp/

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ミカドの淑女(新潮文庫)

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