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名古屋市美術館「ラファエル前派展」 [美術]

10月8日(木)、名古屋市美術館へ行きました。

「リバプール国立美術館所蔵
 英国の夢
 ラファエル前派展」をやっています。
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名古屋市美術館の前回の企画展「画家たちと戦争展」
来た時に、この展覧会の前売り券を買ってしまいました。
前売り券一般1,200円、当日一般1,400円

私、めったに前売り券って買わないんですが、
この展覧会はドンピシャだったので。
ロマンチックなラファエル前派は大好きなんですよ。

チラシ表面に使われているのは、
エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ
《フラジオレットを吹く天使》1878年

バーン=ジョーンズは、兵庫県立美術館まで
展覧会を見に行っちゃったくらいですから!

兵庫県立美術館「バーン=ジョーンズ展」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08

なので、3日(土)から展覧会が始まって、パートが休みだった
8日(木)に早速出かけました。

美術館回りが閑散としているのは、平日だからだと思ったのですが‥‥
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看板に使われているのは
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《デカメロン》
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名古屋市美術館の玄関横のチケット売り場がパネルでふさがれています。
2015-10-8-(9).jpg

パネルには、
ジョン・エヴァレット・ミレイ
《いにしえの夢―浅瀬を渡るイサンブラス卿》が
大きく印刷されていて素敵ですが‥‥

え?! 私ロマンチックなラファエル前派大好きだけど、
世間的には違うのかな??

展示室に入ると鑑賞者もそこそこいましたが。
授業なのか、女子大生(?)が集団で、先生の解説を聴いたり、
メモをとって見ていました。他に記者らしき人もいました。

最初に、チケット売り場のパネルに使われていた
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1956-1896)
《いにしえの夢―浅瀬を渡るイサンブラス卿》1856-57年 と、
その小さい水彩画のバージョン。
水彩画は大きな油彩画のためのスケッチかと思ったら、
制作年1863年(推定)で、コレクターや画商のための
再制作みたい。

でも大きな美しい作品で、英国の歴史か物語からの絵かと思ったけど
中世のバラッド詩に似せて書かれた批評家トム・テイラーの詩が添えられ、 頼もしい老騎士『イサンブラス卿』がどのようにして二人の子どもを自分の馬に乗せたか(しかし それ以上のそれ以上の物語の文脈は付されていない)という事がそこに記述されていた。他の一切は見る 者の想像に任されており(後略)
‥‥ふーん、特に物語の一場面ってわけではないのね。

老騎士の甲冑の輝きや、甲冑の頭飾りの孔雀の羽、
麗々しく飾られた黒い馬、
はだしの少女の上目づかいの顔、背負った薪、
遠くで見つめる尼僧(?)たち‥‥いろんな空想ができそう。

ミレイの作品が水彩画のバージョンも含めて8点展示されていて、
林檎の花の下に8人の若い女性が描かれている
《春(林檎の花咲く頃)》1859年

ロイヤル・アカデミーで展示された時、女性のサテンのドレスと
兵士の制服の質感が大絶賛されたという
《ブラック・ブランズウイッカーズの兵士》1860年

溺死による死刑を宣告され、ソルウェー湾の岸辺の杭に縛り付けられて、
満ちてくる潮に飲み込まれたという女性の、死の運命を甘受する表情が印象的な
《ソルウェーの殉教者》1871年頃
‥‥不謹慎かもしれないけど、萌え絵みたいって見た。

ラファエル前派は1948年、ロイヤル・アカデミーの保守的な教育方針に反発して、
当時絵画の絶対的手本とされてきたルネサンスの巨匠・ラファエロ以前に戻れという
主張で結成されたそうだけど、主要な創設メンバーのミレイは、
後にロイヤル・アカデミーの準会員になり、会長になっているんですよね。

今年の春に愛知県美術館で開催された「ロイヤル・アカデミー」展でも、
この展覧会に出品されているミレイ、ウォーターハウス、
ローレンス・アルマ=タデマ、エドワード・ジョン・ポインターらの
作品が展示されていました。

愛知県美術館「ロイヤル・アカデミー」展
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2015-04-16

私には「ラファエル以前の絵画」って言われてもピンとこないんですが、
私が彼ら(正確にはラファエル前派でない画家も多いんですが)の絵が好きなのは、
その物語性と装飾的なところ。ぶっちゃけて言うと、少女マンガのようなとこ。
あ、最近の少女マンガはいろんな作品がありますが、私が夢中になった昔の
少女マンガは、外国を舞台にした非日常のものが多かったですね。
私が一番夢中になったのは、水野英子『星のたてごと』
中世の騎士物語と神話がごちゃ混ぜになったような大ロマンでした。

そんな、ロマンチックで、甘美な絵が並んでいます。
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ラファエル前派創設メンバーの一人、詩人としても有名な、
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-1882)
《シビラ・パルミフェラ》1865-70年(チラシ裏面右上)
ロセッティの絵はたいてい女性の半身像ですよね。
そして、《パンドラ》1878年 は、ロセッティが繰り返し描いた女性、
友人のウィリアム・モリスの妻、ジェーン・モリスですね。
岐阜県美術館「象徴派」展で、
郡山市立美術館所蔵の《マドンナ・ピエトラ》見ましたが、
同じ顔です。

ダニエル・マクリース(1806-1870)
《祈りの後のマデライン》1868年に最初の出品
細部まできっちりと描かれたとても美しい絵。
ジョン・キーツの『聖アグネス前夜祭』からの絵だそうで、
祈りの後、寝るために髪飾りを外しているマデラインが色っぽい。
絵ではわからないけど、クローゼットにはポーフィロという恋人(?)が
隠れているのだそう。

それから、出品リストや図録の構成とは違い、
「Ⅳ 19世紀後半の象徴主義者たち」の絵が展示されていました。
ジョージ・フレデリック・ワッツの代表作《希望》のためのスケッチや、
《愛と生》1904年

チラシ表面に使われている
エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ(1833-1898)
《フラジオレットを吹く天使》1878年 は、水彩が
典雅な雰囲気で、天使の輪に使われている金彩も素敵!!

大作《スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)》1891年 と、
その女性頭部の習作も展示されていました。

ジョン・ロダム・スペンサー・スタナップ(1829-1908)
《楽園追放》1900年に最初の出品
発表当時、「時代遅れ」とか「不自然」と酷評されたそうだけど、
私はこの装飾過多ともいえる花を散りばめた画面とか、天使(?)の鎧の
装飾の立体的なとことか結構好きです。
アダムが後悔しているように見えるのに、
イブがふてくされているように見えるところも面白いなと。
そして、豪華で装飾過多なキンキラの額もいいなぁーと。
(他の作品も凝った額だなーってのが多くて面白かった)

そして、この展覧会で至福!!だったのが、
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849-1917)の大作が
3点並んでいる部屋!!

チラシ裏面左上に使われている《エコーとナルキッソス》1903年
美術館前の看板に使われている《デカメロン》1916年
そして、《魔法をかけられた庭》1916-17年

うんうん、やっぱりウォーターハウス、私のツボだわー!!!
《デカメロン》は、図録の表紙にも使われていますが、
ペストから逃れて田舎の城にこもった10人(男3・女7)
各々が1日1話ずつ、10日間にわたって計100話を語ります。
で、画面には庭を散歩している男女を含めて9人しか描かれていないのは謎だそう。
Pre-Raphael-(8).jpg
展覧会図録2,300円

《魔法をかけられた庭》は、印象派のようにタッチが荒いなって見たら、
この作品は画家の最後の年に描かれて未完成のままなんだそう。

そして、3点の絵の隣の壁にあった絵がまた素敵だった!!
エレノア・フォーテスク=ブリックデール(1872-1945)
《小さな召使い(乙女エレン)》1905年に最初の出品
伝統的な民謡の詩句を絵画化したもので、
冷酷な恋人に召使いのように仕えるエレンの物語で、
恋人に命ぜられて、森の中で、少年に見られるように男装し、
美しい髪を切ろうとしている場面。
小姓の身なりをしたエレンの美しい髪や、脱ぎ捨てられたドレス、
細部まできっちりと描かれた柳の幹と葉、ノイバラやニワトコ(だと図録の
説明で知った)の花がとてもリアルで美しい!!

2階へ上がると「Ⅱ 古代世界を描いた画家たち」の展示

ローレンス・アルマ=タデマ(1836-1912)の、
これはヌードを描きたかったんだなって思われる
《テピダリウム(テピダリウムにて)》1881年
古代ローマ公衆浴場にあった微温浴室で寝そべる若い女性
カラー写真もない時代、こんな絵はとてもエロティックで
男性たちにウケたでしょうね。でも大理石の床や毛皮、
女性のなめらかな肌の描写とてもきれいです。

フレデリック・レイトン(1830-1896)《プサマテー》1879-90年
私はアングル《トルコ風呂》を思い出しましたが、
後ろ向きのヌードの肌がきれいです。

ロイヤル・アカデミーの会長として絶対的な権威を誇ったという
フレデリック・レイトンですが、
「ロイヤル・アカデミー展」では、ジョージ・フレデリック・ウォッツ描く
《フレデリック・レイトンの肖像》は展示されていましたが、
レイトンの作品は展示されていませんでした。
レイトンのアラビア趣味がわかる《書見台での学習》1877年 と、
1985年に愛知県美術館他で開催された「ラファエル前派とその時代展」の
(私はこの展覧会見てないですが、図録持ってます)
《音楽のおけいこ》1877年
描かれている少女は同じですね。
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コニー・ギルクリストという子どもで、一時期かなりのレイトンの作品に登場するが、 ホイッスラーの絵画にも描かれている。」(図録より)

チャールズ・エドワード・ペルジーニ(1839-1918) という画家の
《シャクヤクの花》という絵が素敵でした。
シャクヤクの花が入った鉢を持った若い女性の半身像なんですが、
ドレスの質感やシャクヤクの花びらがとても美しい!!

《ドルチェ・ファール・ニエンテ(甘美なる無為)》1882年に最初の出品 も、
若い女性が二人、とても美しく描かれているけど、カタツムリを見てる?
カーネーションの鉢植えにたくさんの棒が立てられているのはなぜ?
きれいな絵だけど、ちょっと私の趣味と微妙に違うかなぁ‥‥?

愛知県美術館にある私の好きな絵、
エドワード・ジョン・ポインターの
《世界の若かりし頃》1891年 を思い出しました。
愛知県美術館のウェブサイトで画像を見ることができます。
http://search-art.aac.pref.aichi.jp/dat/pic/1997/obj199704949l.jpg

そのエドワード・ジョン・ポインター(1836-1919)
《愛と神殿のプシュケ》1882年 と
《テラスにて》1889年に最初の出品 が出てました。

「ロイヤル・アカデミー展」にも《占い師》1877年 って絵が出てて、
それはちょっと女性がゴツくて私には気に入らなかったんですけど、
今回の作品も、うーんちょっと違うかなぁ‥‥って。
やっぱり、愛知県美術館《世界の若かりし頃》はこの画家の作品の中でも
名品だと思う。

アルバート・ジョセフ・ムーア(1841-1893)
《夏の夜》1890年に最初の出品
4人の半裸の女性が描かれた優美で様式化されたような絵。
私の趣味のはずなんですけど‥‥

そして最後の「Ⅲ 戸外の情景」の展示は、
うーん、なんだか地味‥‥って。ラファエル前派の展覧会に
これらの絵が展示されている意味もよくわかりませんでしたし。

最後に映像で、今回の展覧会の作品を収蔵する
リバプール国立美術館の、ウォーカー・アート・ギャラリー、
レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー、サドリー・ハウスの3美術館の
紹介がされていました。
港湾都市リバプールは、造船業や工業製品の輸出で栄え、富を蓄えた
企業家たちは、ラファエル前派をはじめ新興画家たちの作品を購入。
そのため、リバプール国立美術館は、19世紀のラファエル前派とその周辺作家の
作品を豊富に所蔵する美術館として世界的に知られているとのこと。

豪華な調度品も並ぶ美術館に、子どもたちもたくさん見に来ている様子が
映っていました。子どもたちに美術館を見せるのはいいことなんでしょうが‥‥
展示されているものにもよりますけど、私個人的には
美術館で子どもと一緒には見たくないなぁーって思っちゃうんですが。

今回の展覧会、思った以上に大作が展示されていて、
特にウォーターハウスの大作3点が並んでいるところは至福でした。
1階の展示がツボだっただけに、2階の部屋へ行ってちょっと‥‥って
カンジもしましたけど。

この「英国の夢 ラファエル前派展」
新潟市美術館で2015年7月19日(日)~9月23日(水・祝)で開催された後に、
名古屋市美術館で2015年10月3日(土)~12月13日(日)まで開催され、

その後、
Bunkamura ザ・ミュージアムで2015年12月22日(火)~2016年3月6日(日)
山口県立美術館で2016年3月18日(金)~5月8日(日)へと巡回します。

東京展より先に見られてちょっと嬉しい(笑)

オマケ
中日新聞の記事
Pre-Raphael-(6).jpg

さらにオマケ
「ラファエル前派とその時代展」図録
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1985年1月26日~2月24日 伊勢丹美術館
1985年3月5日~24日 浜松市美術館
1985年3月28日~4月14日 愛知県美術館
1985年5月1日~13日 大丸ミュージアム(大阪・梅田)
1985年5月25日~6月23日 山梨県立美術館
で、開催されたそう。
私は見に行ってないんですよー。愛知県美術館でもやってたのに。
古本屋で図録を見つけて買いました。

表紙に使われているウォーターハウス《マリアムネ》1887年
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この絵がものすごく素敵です!!
ユダヤの王ヘロデと結婚したマリアムネは、
王の姉妹のサロメたちの陰謀で不義の嫌疑をかけられて死刑の宣告を受け、
今まさに刑場に赴こうとしている場面だそう。

こちらも古本屋で見つけて買いました
「ロセッティ展」
Pre-Raphael-(11).jpg
1990年9月22日~11月14日 Bunkamura ザ・ミュージアム
1990年11月21日~12月9日 愛知県美術館
1991年1月6日~2月11日 石橋財団石橋美術館(久留米)

こちらも愛知県美術館でもやってたのに~。見てないんですよね。
《シビラ・パルミフェラ》も展示されていたようです。
Pre-Raphael-(13).jpg

名古屋市美術館: http://www.art-museum.city.nagoya.jp/
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