SSブログ

岐阜県美術館「ディアスポラ・ナウ!」展 [美術]

12月14日(木)、岐阜県美術館へ行ってきました。

ディアスポラ・ナウ!
~故郷(ワタン)をめぐる現代美術
DiasporaNow!.jpg
という企画展をやっています。

 古代ギリシャ語に由来する「ディアスポラ」という言葉は、種などが「まき散らされたもの」を意味し、離れた地で芽吹きをもたらすことを含んでいましたが、第二次世界大戦で、ユダヤ人の「民族離散」の歴史を表現するようになりました。(チラシより)

‥‥うーーん、現代美術ってだけでも難しいイメージなのに、
中東情勢だの、難民だの‥‥政治的なコトには全く疎いので、
岐阜県美術館の後援会員で、全ての企画展を1回ずつ無料で見られる
ってことでなければ、行かなかったかもしれません。
DiasporaNow!-2.jpg

でも12月3日放送のNHK日曜美術館アートシーンで
取り上げられていたのを見て、ちょっと見直したというか、
地方の公共美術館にしてはなかなかトガった企画展ではないかと。

で、この展覧会の期間中、美術館のレストラン「Cafe Ruru―流々―」で、
「海を渡った故郷の味」って展覧会特別メニューがあるとのことで、
是非食べてみたいと思ったんですが、
ランチタイム11:00-13:30に間に合うように行こうと思うと、
朝の弱い私にはなかなかハードルが高かったです(^^)>
頑張って(?)私にしては早い時間に行きましたが、
1時過ぎていたので、まずはレストランから!

シガラボレイ(白チーズの春巻き)800円と
タピオカとサツマイモのデザート650円
2017-12-14-(6).jpg

シガラボレイは、ヨーグルトをつけていただくそう。
濃厚なヨーグルトが美味しかった。
2017-12-14-(7).jpg
タピオカとサツマイモのデザートは、
温かいココナッツミルクにタピオカと賽の目に切った
サツマイモが入っていて、優しい甘さでした。

どちらも珍しいし、美味しかったし、これだけでお腹も膨れたけど、
これなら、ランチタイム限定にしなくてもいいような気がしたけど。

展覧会場の入口で後援会会員証を提示して入ります。
撮影OKとのこと!(動画、フラッシュ撮影、自撮り棒等はNG)

まずは、パネルに文字(Eye、Nose、Mouth、Chin、Heart‥‥)のみが
プリントされて並んでいます。

いきなりのこの展示で、これをどう鑑賞していいか戸惑うんですが‥‥

もちろん、入口で作品紹介のリーフレットが貰えますし、
DiasporaNow!-3.jpg
それぞれの作家ごとに、詳しい作品の解説が、シートになっていて、
読めるように置かれていましたが。


アクラム・アル=ハラビ
Akram Al Halabi


《チーク(頬)》2015年
AkramAlHalabi.jpg
シリアの現状をとらえた写真に、写っている一つひとつ
‥‥目、鼻、口、喉、心臓‥‥を文字にして重ねています。

掲載画像の縁には「私たちは決してあなたたちシリアの子どもたちのことを忘れない
2012年1月30日」と記されているそう。
スミマセン、私、シリアでどんなことが起こったのか、よくわかってないんですけど、
この子どもたちは‥‥死んだの??
写真に文字を重ねるのは、死んだ子どもの母親が子どもの顔や体を
撫でているような行為なんだろうか‥‥?


ランダ・マッダ
Randa Maddah


入口から突き当りに見える映像が《ライト・ホライズン》2012年
RandaMaddah (1).jpg
壁に無数の銃弾の跡がある半ば破壊された家を掃除する女性。
1967年のイスラエルの侵攻によって破壊された、ゴラン高原の
シリア占領地域にあるアイン村
友人を招き入れるために掃除し部屋をしつらえるという当たり前の行為が、 この世界では、まるで儀式のような非現実的な行いになる。

壁にかかっていたモニタに映されていた映像は《グレイ》2017年
細かく砕かれた鏡に映る画像が万華鏡のようでもあり、
破壊された世界のようでもあり‥‥
RandaMaddah (2).jpg
ブロンズや焼成粘土で作られた素朴なレリーフや彫刻が、
よく見たら拷問される人だったりするんだけど‥‥


ラリッサ・サンスール
Larissa Sansour


LarissaSansour (4).jpg

宇宙飛行士の人形がたくさん置いてあって、可愛いって見たけど、
よく見たら、胸につけているのはパレスチナの国旗なんですね。
これは、隣で映写されていた映像の関連作品なんだそう。
LarissaSansour (1).jpg

《スペース・エクソダス》2009年
月面着陸をパロって、月にパレスチナの国旗を立ててたり、
2001年宇宙の旅のパロディーのようでもあり‥‥
宇宙空間をさまようパレスチナ人?

ぐるりと回った反対側のスクリーンで上映されていたのが
《未来では、彼らは最高級磁器で食事していたことになる》2016年
ゾーレン・リンドとの共作
28分37秒って長~い映像。正直途中でウトウトしましたが、
不思議な形の飛行船が飛び立つシーンや、空から皿が無数に
降ってくるシーン、そして主人公の女性や、死んだ妹のイメージ、
ほとんどモノトーンの映像が美しくて印象的だった。
主人公は歴史を書き換えようと、「将来の考古学的発見によって、 民族の歴史が主張されるように、地中に皿を埋め」ているんだそう。

隣で展示されていた《歴史修正主義の皿》2015年
LarissaSansour (2).jpg

《欠乏の考古学》2016年
LarissaSansour (3).jpg


ムニール・ファトゥミ
mounir fatmi


国旗が並んでいます。3本だけ、ブラシ(箒)の棒が竿になっています。
mounir-fatmi (2).jpg
《失われた春》2011年
国旗はシリアを含むアラブ連盟の22の国旗だそう。旗竿がブラシに
なっている3つは、チュニジアとエジプトとリビアの旗だそう。
アラブ諸国に見られる長期独裁政権を失墜に導いた民衆蜂起を示している
箒はコミュニティを構成する家庭の象徴であり、独裁者の一掃を示唆している。
竿のない旗は、『箒=家事をする人』のいないことを意味」しているそう。

この作品が立てかけられている壁(?)の反対側には、
《アーケオロジー》2016年
(Archaeology 考古学)
mounir-fatmi (1).jpg
黒い旗が箒に掲げられていて、箒には人骨が掃き寄せられています。
もちろん骨は複製だそうですが、やっぱりドキッとします。
mounir-fatmi (4).jpg

そして《風はどこから吹いてくる?》2002-
海や船、港の映像の前に、青い床材にタイヤ、そして服が置かれています。
mounir-fatmi (3).jpg
‥‥海を渡る難民のこととか考えてしまいました。
タイトルが日本語でも出るんですね。


ミルナ・バーミア
Mirna Bamieh


日曜美術館アートシーンでも紹介されていた
《どの旗も風になびかない》2015年
MirnaBamieh (1).jpg
銀の紙でできた旗が壁に並び、2台の首を振る扇風機の風で
カサカサと音を立てて一斉にはためいています。
ざわめいてはまた静かになる旗の動きが繰り返されるのを
見ていると、こちらの心もなんかざわざわします。

《中断された伝記》2014年
今はもう会えなくなってしまった外国に住む親戚の映像と、
個人的な家族の写真や手紙‥‥ありふれた家族の写真だけど、
こんなささやかな幸せがもう戻ってはこない。
MirnaBamieh (2).jpg

《チュートリアル:どのように消えて、イメージとなるか》2015年
ネットで見られるようなメーキャップのハウツー映像のようで、
自分の顔に背景と同じ緑色の絵具を塗っていって、背景に
溶け込んでいく様子を映像にしています。
MirnaBamieh (3).jpg
MirnaBamieh (4).jpg


キュンチョメ
KYUN-CHOME


ナブチ(1984年水戸生)とホンマエリ(1987年横浜生)の男女二人組の
アーティストユニット。2011年活動開始。

《ウソをつくった話》2015年
原発事故で道を封鎖しているバリケードの写真を、
フォトショップの画像処理(コピースタンプツール)を使い、
パソコンなど触ったこともないような住民(そこに住んでいた被災者)に
教えて消していきます。
KYUN-CHOME (1).jpg
‥‥他の作品は、どこかで、遠い国のことみたいに思って見てたところが
あるけど、なんかこの作品はグッときてしまった。
画像処理のように簡単にバリケードなど消してしまえたらどんなにいいだろう。
KYUN-CHOME (2).jpg
操作している住民たちが面白がって、「家も消して更地にしてしまえ」
みたいに軽い調子で言うのが‥‥重く響いてきた
KYUN-CHOME (3).jpg

《星達は夜明けを目指す》2016年
口にライトを加えた人物が歩いてくるのが星座のようにも見えます。
KYUN-CHOME (4).jpg

《ここで作る新しい顔》2016年
日本にある難民支援施設の協力で、自分たちの個展会場で、
難民と日本人来場者が一緒に福笑いを作っていく様子を撮影しています。
日本人来場者は毎回変わるのに、難民は何度もやるうちに
次第に上達して、来場者が作る歪んだ顔を修正していくようになっていったと。
KYUN-CHOME (5).jpg


それぞれなかなか重いテーマの現代アートで、
解説を読んだり、映像も多いので(正直私はあまり映像作品は好きではない)
思ったより見るのに時間かかりました。
写真撮っていいのは嬉しかったけど、気軽にツイッターでつぶやくには
心の整理がつかないカンジで、ブログにしました。

アートに何ができるのか??
鑑賞後の疲労感のようなモヤモヤ‥‥でも私はこういう印象
嫌いではありません。なかなかトガった展覧会で刺激になりました。

平日だし、鑑賞者いるかなー? って心配(?)だったけど、
若い人とか、監視係の人よりは鑑賞者の方が多くて安心しました(笑)

この後、県民ギャラリーの「源流展」とか見て、
所蔵品展は前回来た時(感想が書けてないけど)とほぼ同じだったけど
こちらも楽しんで帰りました。(何回見てもいいものはいいし、実は
あれこれ前回も見たっけ? って忘れているのも多い)

この展覧会、2018年1月8日(月・祝)まで。
月曜と年末年始の12月25日(月)~1月2日(火)まで休みで、
新年は1月3日(水)から開館するとのこと。
お正月に見るには少々重い展覧会じゃないかとも思いますが、
1月3日(水)は午後2時より新春コンサートもあるそうなので、
(入場無料・事前申込不要) 地方ではなかなか見ることができない、
アラブの現代アートを鑑賞してはいかがでしょう。
観覧料:一般900円 大学生700円 高校生以下無料

ショップでは
岐阜県美術館の監視係の方が描いた4コマ漫画が本になった
「ミュージアムの女」だけでなく、

ミュージアムの女

ミュージアムの女

  • 作者: 宇佐江 みつこ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/09/27
  • メディア: 単行本


アメや、今回新しくミュージアムの女チョコレートも売ってましたよー。

「ミュージアムの女」電子書籍版もあるんですね。


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。