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豊田市美術館「未完の始まり―未来のヴンダーカンマー」 [美術]

3月3日(日)豊田市美術館へ行きました。
「未完の始まり
 ―未来のヴンダーカンマー」という展覧会をやっています。
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うーん、正直タイトルからしてよくわからない
「ヴンダーカンマー」って?
絵画や彫刻に加え、動物の剥製や植物標本、地図や天球儀、東洋の陶磁器など、世界中からあらゆる美しいもの、珍しいものが集められた「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」。15世紀のヨーロッパで始まったこの部屋は、美術館や博物館の原型とされています。それは、見知らぬ広大な世界を覗き見る、小さいながらも豊かな空想を刺激する展示室でした。しかし、大航海時代の始まりとともに形成されたヴンダーカンマーには、集める側と集められる側の不均衡や異文化に対する好奇のまなざしも潜んでいました。
グローバル化が進み、加速度的に世界が均質化していくなかで、今改めて文化や伝統とはなにか、また他文化や他民族とどう出会うかが問われています。かつて「博物館行き」は物の終焉を意味する言葉でしたが、5人の作家たちは、歴史や資料を調査・収集し、現代のテクノロジーを交えながら、時を超えた事物の編み直しを試みます。美術館の隣に新しくできる博物館の開館にむけて開催する本展では、文化表象の実践の場としてのミュージアムの未来の可能性を探ります。
(チラシ裏面の文)
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でも、豊田市美術館の展覧会はいつもすごくいいし、
年間パスポートも持ってるので、何の知識もないまま
(チラシも美術館へ行ってから手に入れた)出かけました。

年間パスポートを提示して、この日の入場券をもらいます。
置いてあった作品リストがとても充実していました。
豊田市美術館のウェブサイトからダウンロードできます:
https://www.museum.toyota.aichi.jp/wp-content/uploads/2023/02/guide.pdf

この展覧会、5名の出品作家の作品で構成されています。

まずは、
ガブリエル・リコ Gabriel Ricl
[1980年ラゴス・デ・モレ(メキシコ)生まれ。グアダラハラ(メキシコ)拠点。]
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野ウサギの剥製が三角形のネオンを見つめています。
へー、なんか面白いなーって、タイトルを見たら
《ピタゴラスからペンローズへ(野ウサギ)》2019年
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後でネットで調べて知りましたが、ペンローズの三角形って、
ありえない形(不可能立体)なんですね
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(Wikipediaからお借りしました)
タイトルも意味深で面白い。
ウサギや鹿の剥製が人類の叡智と宇宙の法則の象徴である幾何学に対峙しています。南米の神話に登場するこれらの動物たちは、人間の経済活動の結果であるネオンや鉄などの工業製品でできた幾何学を静かに観察し、あるいはそれに絶望的に向き合っています。」(作品リストより)

鹿の剥製が半円形のネオンに向き合っているのは
《イエスの星占い(ダン、リチャード&ヨセフ)》2023年
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キリスト教に詳しくない私にはタイトルの意味が
よくわからないんだけど、なんか深い精神性が込められている?
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壁に掛かっている平面作品は
《ふたつめの原因はひとつめを説明するためのものである(パラモ山、オーク)》2020年
メキシコ・ウィチョル族の伝統的な手法で刺繍したものだそう。

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焚火を囲む4人の人物? だけど頭がそれぞれ違う
《頭のなかでもっとも甘美な》2021年
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色ガラスでできた人物の中のガイコツがユーモラス。左より
《あなたの無知を慰める(最大の障害)Ⅰ》2023年
《あなたの無知を慰める(最大の障害)Ⅱ》2023年
《あなたの無知を慰める(最大の障害)Ⅲ》2023年
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壁に展示されている作品左から
《よりたくましい自然...よりたくましい幾何学(47)》2020年

オレンジ色の四角い色ガラスの周りにギザギザの形がついてる
《もし太陽が私と私たちの間の空間でより小さくっていたとしたら、その色はもっと失われていただろう(ガラスの四角)》2020年

《わずかな差を埋めるにはⅦ》2022年
ウィチョル族の伝統的な技法であるチャキラ(ガラスビーズ)で作られています。
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《太陽の内部を直接見ることはできない(五角形とマスク)》2022年
真鍮の棒でできた太陽のような形の中に、
ネオンの五角形と仮面が目のよう?
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《最上級の味わいと見事な神聖さ(7)》2021年
真鍮の支柱に掛けられた枝の両端に金箔がぶら下がってる。
同じような形のネオンも掛けられています。
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一見ポップな印象の作品だけど、
タイトルも含め、いろいろ意味を考えさせられて面白い。

次のコーナーは、
タウス・マハチェヴァ Taus Makhacheva
[1983年モスクワ(旧ソビエト連邦)生まれ。モスクワおよびドバイ(アラブ首長国連邦)拠点。]

中央に置かれているのは、マハチェヴァのルーツである
ダゲスタン共和国にある山の模型
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なんか契約書みたいな書類が並んでいたんですが、
(写真には写ってない)
《リングロード》2018年
この山頂を一周する環状道路の施設プロジェクト案です。入口も出口もないこの山の道路建設にかかるプロセスと費用、契約書が壁に取り付けた台座に提示されています。もしこの不可能にみえる事業を実現することができるなら、この彫刻作品を手に入れることができます。しかしできない場合は、展覧会が終わり次第、速やかに作家に返却しなくてはいけません。(作品リストより)

映像作品とそこに出てくるペンダントのパーツが展示されていたけど、
《セレンディビティの採掘》2020年
これらのペンダントのパーツを身につけると、
それぞれ異なる機能が表れる?
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他の映像作品なども結局よくわからず(^^;>


田村友一郎 Yuichiro Tamura
[1977年富山生まれ。京都拠点。]

《TiOS 2024年》
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部屋の中央にゴルフ場のバンカーが作られていて、
砂の上に一本のゴルフクラブが置かれています。
(ペーパーバックの『ライ麦畑でつかまえて』もあったそうだが
気付かなかったなー(^^;)
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その上にUFOのようなものが吊り下げられています。
よく見たら、携帯電話が並んでるんだ!
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携帯電話のライトが点灯していくと、
ゴルフ場の砂がキラキラ光ってきれい!
この砂、液晶画面が砕けたものでできているのだそう。
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映像作品のナレーションは、AIにより蘇ったジョン・レノンの声!
空からの映像は、ジョン・レノンが今の世界を見下ろして
語りかけてくるかのようにも感じられる。
チタンって骨と結合するんだそうですね。
チタン製のゴルフクラブを見た宇宙人は、
こんな骨を持った生物がいたのかと勘違いするかも?

今やチタンはゴルフクラブや建築資材、戦闘機や宇宙船、
携帯電話にも使われているそう。

ステンレス製の寝椅子に置かれているのは、チタン製の骨
直立歩行を始めた最初期のアファール猿人ルーシーの骨
ルーシーという名前は60年代に流行したビートルズの楽曲
「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」に
因んで命名されたとのこと。
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骨やゴルフクラブや携帯電話のレントゲン写真も展示されてます。
知的好奇心が刺激されて面白かった。
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リウ・チュアン Liu Chuang
[1978年湖北省(中国)生まれ。上海拠点。]

《リチウムの湖とポリフォニーの島Ⅱ》2023年

映像作品なんですけど、うーん。なんかよくわからない。
少数民族のお祭り(?)とか、昔の中国の宮廷風の衣装の人、
皆がスマホを見ている現代中国の風景、
リチウムが採掘されるという湖とか‥‥
リチウムってスマホに欠かせない金属なんだそうですね。

しばらく見てたけど、ウトウトしてしまったこともあって、
途中で出てしまいました。作品リスト見たらこの作品
55分45秒あるんですって?!

以上が、1階の展示室8に展示されていた作品。
2階の展示室1へ行く前に、

豊田市美術館でのお楽しみ、カフェで
展覧会にちなんだ限定デザートをいただきました。
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レアチーズケーキにリチウムと湖をイメージしたメレンゲがのってました。
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甘酸っぱくて美味しかった。コーヒーを付けて1,500円
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さて、2階の展示室1 では、

ヤン・ヴォー Danh Vo
[1975年バリア(ヴェトナム)生まれ。ベルリン拠点。]

展示室の中に木でできた枠が組み立てられていて、
額に入った花の写真が並んでいます。
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これらの額は、ヴェトナム戦争を推し進めた
米官房長官ロバート・マクナマラの息子の農場で育った胡桃で
作られているのだそう。

中央に置かれた彫刻は、紀元2世紀のローマ時代のもの
男性の肉体美の称揚にアメリカのミニタリズムを嗅ぎつけ、ギリシャ・ローマ時代を源流とする欧米文化の解体を暗示します。(作品リストの文より)
ってことだけど‥‥
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写真の下には作者の父により、花の名前が
美しいカリグラフィで書かれていて、
花の写真を見て、たまに名前が読めると嬉しかった。
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「未完の始まり:未来のヴンダーカンマー」の展示はここまで。

階段を上がって3階の展示室2からは
2023年度 第3期 コレクション展

こじんまりとした小部屋の3面の壁に
山口啓介のエッチング作品が展示されています。
《RNA World - 5つの空 5つの海》1991年
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右 《炭素の船》1990年

通路のようになった場所に、
ヨーゼフ・ボイスの展示ケースを使った作品が置かれています。
博物館っぽい! 「ヴンダーカンマー」展に通じるような展示ですね!
手前《ヴィトリーヌ:耕地の素描》1963-83年
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左 トニー・クラッグ《無題 (棚に置いた5本のボトル)》1982年
右 イチハラヒロコ《美術中。》2005年(first edition 1999)
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「美術中。」(笑)
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展示ケースに名並んでいると、博物館っぽいなぁ!
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色とりどりのランドセルが並んでいます。
コブラの皮革、タテゴトアザラシ(毛付)の皮革、タテゴトアザラシの皮革、イワシクジラの皮革、ダチョウの皮革、カイマンワニの皮革、カバの皮革、ヨシキリザメの皮革 でできたランドセルだそう。
村上隆《R. P. (ランドセル・プロジェクト)》1991年
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私が小学生だった頃は赤と黒くらいしかなかったランドセルも、
今やいろんな色があって、気に入ったものを購入するには
1年前くらいから準備しないといけないとか!
もちろんこんな希少動物の皮を使ったランドセルはありませんけどね。

不思議な形‥‥
左は、笹井史恵《secret negotiation 1》とsecret negotiation 2》2002年
乾漆に朱漆、塗立仕上
右は、さかぎし よしおう《8012》《5005》《5014》《7029》
セラミックでできているそう。
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榎 忠《薬莢》1991年
どこまでが作品なのか? 金メッキが施されている?
ガラスケース含め2点組で作品みたいだけど。
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フツーの美術館っぽい(?)展示
左より 河井寬次郎《象嵌草花扁壺》1941年頃 《碧釉扁壺》1964年
黒田辰秋《赤漆彫華紋飾手筺》1941年 《乾漆耀貝螺鈿捻十稜水指》1965年
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展示ケースに雑草が生えてる?
須田悦弘《雑草》2000年
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展示室4へ進むと、左から
白髪一雄《無題》1957年
吉原治良《無題》1961年
斎藤義重《作品》1959年
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ブリンキー・パレルモ《無題》1970年
奥は、櫃田伸也《風の出来事》1977年
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最後の小部屋に
奈良美智《Through the Break in the Rain》2020年
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階段を降りて2階の展示室5

豊田市美術館が誇る
クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》1913/14年

そして、エゴン・シーレ17歳の作品
《レオポルト・ツィハチェックの肖像》1907年 と、
《カール・グリュンヴァルトの肖像》1917年 が並んでました。
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このツーショットは珍しいのでは?

奥には自画像が3点。左から、
岸田劉生《自画像》1913年
オスカー・ココシュカ《絵筆を持つ自画像》1914年
そして、この小さな自画像は誰? とキャプション見たら、
藤田嗣治《自画像》1943年
豊田市美術館HPのコレクションの音声ガイドによると、
https://www.museum.toyota.aichi.jp/collection/foujita-tsuguharu
戦時下の日本で、昭和18年元旦に描いた自画像とのこと。
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1階の展示室6には、小堀四郎
展示室7には、宮脇晴と宮脇綾子の作品がありました。

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豊田市美術館: https://www.museum.toyota.aichi.jp/


このコレクション展の展示室4-5の展示は3/17(日)まで。
3/19(火)より 2023年 新収蔵品展が展示されるそう。

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