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岐阜県美術館「不在の観測」展 [美術]

10月2日(土)、岐阜県美術館へ行って
「ミレーから印象派への流れ」展を見たことは前記事
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-10-10

岐阜県美術館では
「ab-sence/ac-ceptance アブセンス/アクセプタンス
 不在の観測」
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という展覧会もやっています。
チラシが面白い‥‥これ、包装紙とか薬の包み紙?に使われるような
薄い紙に、片面印刷して2つ折りにしてあるんですね。
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出品リスト・解説も薄い紙に印刷してあります。
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メインビジュアル(?)は不思議な言葉
それは名付けらまれすか。
それは測れすまか。
それはふちどまれすか。
それは在りすまか。

副題は、
この世界を受容する手立てが見えてくる、かもしれない。

会期が、2021年9月23日(木・祝)~11月28日(日)ってありますが、
コロナのため開幕は10月1日(金)になりました。

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裏面(?)の文章
この感染症の時勢下にあり、本展は、〈不在〉を主たるトピックとします。
本展のタイトルにある「ab-sence/ac-ceptance」は、意訳すれば「不在を受容」 あるいは「不在か容認か」となります。3組の作家は、姿をもたない存在や、言語に 回収されざる存在とのコネクトを試み、あるいは、認識の働きに潜む事象に目を 凝らしています。作家はまた、岐阜県美術館の所蔵品に新たな解釈を付加し、別 の時間軸に出現させていきます。本展では、それらの行為や思考を重ね合わせて いくことで、われわれが〈不在〉と考えているものの根拠、概念を問い直し、この世 界を新たに受容する手立てを探っていきます。


3組の作家
ミルク倉庫+ココナッツ
三枝愛(みえだ あい)
平野真美
は、2017年の
ART AWARD IN THE CUBE 2017
清流の国ぎふ芸術祭 (AAIC2017) の出展作家

岐阜県美術館「清流の国ぎふ芸術祭」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2017-05-18


展示室前で後援会員証を見せて、壁に見えるようなドアが開くと、
岐阜県美術館所蔵の大きな古い台のような木の作品が
成田克彦《SUMI 1》1969年

「不在の観測」と書かれた柱の横を通って進むと、

右のガラスケースの中に
ミルク倉庫+ココナッツ
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅱ――魂=21g》2021年
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(この展覧会、ミルク倉庫+ココナッツ、三枝愛、平野真美の作品は撮影可)
シーソーのような台の上に、自転車の車輪とフレームが別々になって
左に車輪、右にフレームが乗っています。他にも時計が針と別々に乗ってたり

人が死ぬと体重が21g減るということから、
魂の重さは21gだという説があるそう。

〈重さ〉をはかるという行為は、重量以外の要素を不在化させてしまいます。
(もらった出品リスト・解説より)


左のガラスケースには、
岐阜県美術館所蔵の野村仁《勃起する真空》1990年

そして、ミルク倉庫+ココナッツの作品
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅰ――観ることについて》2021年
顕微鏡が発明されたことで、それまで何も存在しないと思われていた
極小の世界にも、放散虫のような微生物が存在していることが
わかりました。しかし「スカイフィッシュ」のように、
ビデオには映るのに、カメラのモーションブラー効果による
幻影で、実在しないものもあると。
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放散虫の3Dプリントなどが展示されていました。
野村仁のガラスの作品に呼応しているようでした。


奥に進むと、三枝 愛 さんの展示
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岐阜県美術館所蔵の松尾芭蕉が書いた《山かげや》1688年
という作品と、その句碑が伊奈波神社近くにあるってことで、
その2つの作品を合わせようと思ったと、
句碑の拓本と
(この句碑、古いものなので、台座が壊されていたり、
所有者が誰なのかわからずに空き地で忘れられていたそう)
その拓本を基にした提灯。

三枝愛さんのAAIC2017の出品作《庭のほつれ》は、
岐阜県加子母(かしも)産の檜でつくられたキューブ
(AAICは、それぞれの作家が幅4.8m×奥行4.8m×高さ3.6mの
キューブに作品を展示する企画公募展)
の中に、椎茸栽培の原木が転がっているという、私には
????ってカンジの作品だったんですが、
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キューブをつくっていた檜のベニヤ板は、展覧会の終了後
解体・処分されました。残しておくことができたのは、
使われていたベニヤ板の端材のみ。美濃で制作した和紙に
こんにゃく引きの加工を施し、ベニヤ板を拓本によって複製し、
キューブを原寸大で復元した作品
《庭のほつれ|箱のゆくえ》2021年
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ミルク倉庫+ココナッツ の展示

AAIC2017 で大賞を受賞した7名のアーティストコレクティブ。

でも私はなんかよくわからなかった。
モノが突然動き出したりして、面白いとは思ったけど。

《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅲ-2――プロセスの欠如(直結/短絡)》2021年
壁の紙には「怠け弁当」という、
「よく働くのは弁当をたくさん食らうから」と地主に言われた
作男がとった行動は‥‥という日本昔話が書かれていました。
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台の上で、2つのスピーカーがレールの上を動いています。
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅵ――声(問いと解答)》2021年
声も含め、すべての音は空気の振動によるものです。この振動に、真逆(逆位相)の振動をぶつけると、振動同士は相殺されて音も消失します。また真逆の振動であっても、わたしたちには、元の振動とまったく同じ音として聴こえてきます。
この作品は、特殊なスピーカーを使用し、こうした音の性質を利用した作品です。

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壁の2つの映像は、
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅷ――砂山のパラドクス》2021年
砂粒を一粒ずつ取り除いていく映像と、一粒ずつ増えていく映像。
6時間以上にもおよぶ映像のどこかには、砂山が消失する瞬間が
映っているってことですが‥‥

岐阜県美術館所蔵作品の 伊佐治勝太郎《午睡》1937年 を
読み解いた解説もありました。
私もこの作品面白いと思っていたけど、
描いている絵も描いているとか、
パレットナイフが目立っているけど、この絵には
パレットナイフで描いたところなんてないとか、
女性の腋毛についてとか、図解興味深かった。

岐阜県美術館のコレクション検索で画像見ることができます
伊佐治勝太郎《午睡》
https://gifu-art.info/details.php?id=914


平野真美 さんの展示
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AAIC2017で、私が一番いいと思ったのが、
平野真美《蘇生するユニコーン》
生命維持装置につながれ血管がピクピク動いているユニコーン。
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平野真美さんはユニコーンの前に、
亡くなった愛犬をそっくりに作った作品があります。

今回の展示では、その愛犬を火葬した遺骨が納められた骨壺を
骨箱ごとCTスキャンして、遺骨を3Dプリンターで出力、
それをパート・ド・ヴェールという古代のガラスの技法で
作ったものや、陶の鋳込み成形で作ったものなどが展示されています。
《変身物語 METAMORPHOSES シリーズ》

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壁に投影されているのは、CTスキャンの映像
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透明なガラスや真っ白な陶で作られた今にも壊れそうな作品は
儚げでとても美しい。
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骨壺のレントゲンフィルム
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もう愛犬は「いない」のだって平野さんの想いが伝わってくるようで
作品についての文を読んで、ちょっと泣きそうになっちゃった。
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そして、このガラスの立方体、すごく美しい。
遺骨(を3Dプリンターで出力したもの)が閉じ込めてある?
《変身物語 METAMORPHOSES #5 Presence or absence》2021年
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平野真美さんの展示、すごく良かった!

2021年9月27日(月) 中日新聞(夕刊)の記事
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本来ならオープニングの日であった 9月23日(木・祝)に
おこなわれた、出品作家と担当学芸員による作品紹介
オープニング・クロストーク


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